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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

啓一と満谷と別れた彰は 重い足取りで帰路についた

日下部彰

ただいま・・・

日下部千里

あ!おかえり!彰!

彰がリビングへ入ると 不安な表情をした 千里が小走りでやって来た

日下部彰

千里!起きてたのか?

日下部彰

寝てくれてても
良かったのに・・・

日下部千里

いや、寝れないよ・・・

日下部千里

あんな話聞かされたら

日下部彰

ああ・・だよな

日下部千里

それで河上さんは
大丈夫だったの?

日下部彰

ああ・・・

日下部千里

一緒にいてあげなくて
大丈夫だったの?

日下部彰

まぁ、助けてやりたい
気持ちやまやまなんだけど

日下部千里

何かあったの?

日下部彰

あ、いや・・・

日下部千里

・・・・・

千里は彰に 不安な眼差しを向ける

日下部彰

ああ!わ、分かった!

日下部彰

話す!話すから!

日下部彰

そんな顔するなよ・・

日下部千里

何も言ってないけど

日下部彰

あ、いや、顔に
書いてあったから・・

日下部千里

あ!分かった?

日下部彰

もう、バリバリ伝わった

日下部千里

で、何があったの?

日下部彰

それが・・・

彰は病院での出来事を 丁寧に千里に聞かせた

日下部千里

え!?偽警官?

日下部千里

大丈夫なの?

日下部千里

それって・・・

日下部彰

だから一緒に行って
あげたかったんだけど

日下部彰

千里にもしもの事が
あったらって言う
河上くんの気持ちもわかるし

日下部千里

・・・・・

日下部彰

河上くんは初めて
出来た部下だし

日下部彰

ずっと弟みたいに
思ってたからさ・・

日下部千里

・・・・・

日下部彰

まぁ、でも警察官も
一緒だからさ

日下部彰

大丈夫だとは
思うんだけど

日下部千里

わ、私は・・・

日下部彰

ん?

日下部千里

正直言って私は
行ってほしく無い

日下部彰

千里・・・

日下部千里

だって、仮に彰が
危ない目に
遭ったりしたら・・

日下部千里

私・・・

日下部彰

大丈夫だよ

日下部彰

行ったりしないから

日下部千里

彰・・・

日下部彰

俺が行ったら
河上くんの気持ちを
裏切る事になるし

日下部彰

それに・・・

日下部千里

ん?

日下部彰

まだ子供の顔を
見る前に死ねないよ

彰は千里のお腹を 優しく摩りながら言った

日下部千里

彰・・・

日下部彰

さぁ!もう寝ようか

日下部彰

さすがにクタクタだよ

日下部千里

ふふふ、そうだね

都内某所の雑居ビルの一室

薄暗い室内では 数名の男が密談していた

 

あの・・・

 

あ?どうした?

 

本当に今回の一件

 

新人に任せたりして
大丈夫なんですか?

 

ああ、それか・・・

 

俺の出した
指示が不服か?

 

いや、不服とは
言いませんが・・

 

まぁ!まぁ!

 

こいつだって
クラブの未来を
考えての事で──

 

わかってる!

 

まぁ、何かあれば
”ボス”が護ってくれる

 

心配するな

 

そうですね・・・

 

仮に河上がこの場所を
突き止めたとしても

 

警察が動くなんて事は
万に一つもあり得ない

 

ああ!そうだ!

 

俺たちのバックには
”ボス”が付いてる

 

ですよね?

 

近衛(このえ)副総監

男の問いかけに 紺色のスーツに身を包んだ 中年男性が応える

近衛副総監

だが油断するなよ?

近衛副総監

警官の警察手帳に
GPS発信機を
付けているとは言え

近衛副総監

警官の行動を遠隔で
管理できる訳では無い

 

はい!心得てます

近衛副総監

それと新人にはもう
伝えたのか?

 

はい!問題
ありません!

 

警官が行動を開始
したと伝えました

近衛副総監

おそらく河上が持つ
契約書のコピーを
取りに向かったのだろう

 

おそらく・・・

近衛副総監

我々の目的に
感づかれるとは・・

 

申し訳ありません

近衛副総監

まぁ、その警官より先に
コピーを奪取できれば
問題はない

近衛副総監

仮にその警官に
先を越されたとしても

近衛副総監

副総監命令として
そのコピーを私の元へ
持ってこさせる事も出来る!

近衛副総監

少々面倒だがな

 

なるべくなら先に
手に入れる方がいいと?

近衛副総監

ああ、そうだな

 

では急ぐように
加えて指示を出します

近衛副総監

ああ!

日下部彰

ふわぁ〜眠い

彰はパ大きなあくびをしながら パジャマに着替えず ベッドに横たわる

日下部千里

ちょっと彰!

日下部千里

ちゃんと着替えて!

日下部千里

シワになっちゃうでしょ?

日下部彰

いいって!少しくらい

日下部千里

ダメだってば!

日下部千里

誰がアイロン
すると思ってんの?

日下部彰

わかったよ・・・

彰はうんざりした様子で 上着を脱ぐ

パサッ

彰が上着を脱ぐと同時に 内ポケットに入っていた 何かが床に落ちる

日下部千里

ん?彰?何か落ちたよ?

日下部彰

ああ、いいよ、別に

日下部千里

もう!彰ったら

千里はうんざりした様子で 床に落ちた何かを拾う

日下部千里

え!?ちょ!何よこれ!

床に落ちた何かを拾った千里 青ざめた顔で声を荒げる

日下部彰

ん?なに?何か
変なもんでもあった?

日下部千里

いや、これ・・・

千里は拾った”ソレ”を彰に見せる

日下部彰

え!?

日下部千里

これって──

日下部千里

警察手帳だよね?

日下部千里

何で彰がこんな物
持ってるの?

彰が脱いだ上着の 内ポケットに入っていたのは 警察手帳だった

日下部彰

え!?な、なんで!?

日下部千里

いや、私が聞きたいわよ

彰は恐る恐る 警察手帳を開く

そこには──

巡査部長 満谷翼

そう記されていた

日下部彰

やべっ!これ
満谷さんのだ!

日下部千里

満谷さん?

日下部千里

満谷さんってさっき
彰が言ってた警察官?

日下部彰

俺、満谷さんから
警察手帳を預かって

日下部彰

警察署に身元確認の
電話をしたんだよ

日下部千里

まさか、そのまま
持って帰って
来ちゃったの?

日下部彰

そうだと思う・・・

日下部彰

俺返し忘れてたんだ

日下部千里

何やってんのよ!もう!

日下部彰

ごめん・・・

日下部千里

私に謝って
どうすんのよ!

日下部彰

俺、返しに行って来るよ

日下部彰

多分今なら河上くんの
家に居るはずだから

日下部千里

うん!わかった!

日下部彰

急がないと!

彰が手早く上着を羽織り 玄関に向かおうとすると

ピンポーン

インターフォンか鳴り響く

日下部彰

もう!誰だよ!

日下部彰

こんな時に!

日下部千里

あ!もしかして
さっき言ってた
満谷さんじゃない?

日下部彰

あ!そうかも!

日下部千里

早く開けてあげなきゃ!

日下部彰

そうだな!

彰は玄関へ走り ドア開ける

日下部彰

すいません満谷さん

日下部彰

俺警察手帳を──

 

・・・・・

しかしそこに立っていたのは 別の男だった

日下部彰

え?満谷さんじゃない?

 

・・・・・

日下部彰

あの・・どちら様ですか?

 

河上は何処にいる?

日下部彰

は?河上くん?

 

居るのは分かっている

日下部彰

あの・・何の事だか

日下部彰

河上くんなら
自分の家に居るんじゃ
ないでしょうか?

 

とぼけるな!

 

居るのは手帳の
発信機が示してる

日下部彰

は?発信機?

 

不要な問答は
時間の無駄だ!

 

入らせてもらう

男は彰を押し退けて 無理やり部屋に入る

日下部彰

ちょっと!アンタ!

日下部彰

何を勝手に──

日下部千里

彰?何があったの?

 

・・・・・

日下部千里

え?誰?

見知らぬ男性の突然の訪問に 驚きを隠せない千里

日下部彰

千里!そいつから
離れるんだ!

日下部千里

え!?

男は無言のまま 部屋を見渡し──

 

河上と警察官は?
何処にいる?

日下部彰

だからさっきから
何言ってんだ!

日下部彰

ここには居ない
って言ってるだろ!

 

ふざてけんじゃねー!

 

河上はともかく

 

警察がここに
居るって事は

 

手帳の発信機は
確かにこの家を
示してんだ!

 

これ以上の嘘は──

日下部彰

(手帳?)

日下部彰

手帳って・・この
警察手帳の事か?

彰は上着の内ポケットから 満谷の警察手帳を取り出す

 

は!?

 

なぜお前がそれを
持ってんだ?

 

何処で手に入れた!?

日下部彰

いや、何処って・・・

日下部彰

あ!あんた!その顔──

彰には男の顔に見覚えがあった

日下部彰

あんた!病院に来た
偽警官だろ!!!

 

あ!?

 

なんでそれを──

 

!!!!!!

 

そうか・・お前か・・

日下部彰

て事はお前は
Dクラブの関係者!!

 

そうか・・そこまで
把握してやがったか

 

こっちの目的は
筒抜けって訳か

日下部彰

目的?ああ!河上くんが
持ってるって言う
契約書のコピーか?

日下部彰

ここには無い!

 

そうか・・・

 

なら仕方ねーな・・

そう言うと男は懐から バタフライナイフを取り出して 不的な笑みを浮かべる

日下部彰

(ナ・・ナイフ・・)

日下部彰

(まさか・・こいつ)

男の笑みから千里に 危険が迫っている事を 感じ取った彰は

日下部彰

千里!そいつから──

「そいつから離れるんだ!」

彰がそう言いかける前に 男は千里の体を自分に抱き寄せる

 

おっと!そうはいかねーよ

日下部千里

きゃぁ!

日下部彰

くそ・・先手を打たれた

 

くくく・・・

日下部彰

(でも・・・)

日下部彰

(相手は1人だけだ)

日下部彰

(その気になれば
俺1人の力でも──)

彰は足に力を入れて 男から千里を救い出そうとするが

 

おっと!動くな!

男は薄ら笑いを浮かべながら バタフライナイフをくるくると回す

日下部彰

く・・・

 

それ以上近づくと──

男は千里の首筋に バタフライナイフの刃先を押し当てる

日下部千里

・・・・・

 

この可愛い嫁の
喉笛掻っ捌くぜ?

千里はかつてない恐怖を 感じているせいか 潤んだ瞳でブルブルと震えている

日下部彰

待ってくれ!

日下部彰

千里は関係ないだろ!

 

あ?

日下部彰

アンタの目的は契約書の
コピーのはずだろ?

日下部彰

ここには
そんな物は無い!

 

この女が無関係か
どうかは、俺が決める

日下部千里

(彰・・・)

日下部彰

く・・・

 

だが俺の目的は
確かにお前が
言ったように

 

河上が持ってる
契約書のコピーで

 

この女の命じゃない

日下部彰

ああ!だから
千里を人質にする
必要なんて無いだろ?

 

だから、お前に
ひとつ仕事をしてもらう

日下部彰

は?仕事?

 

俺の見立てでは
お前は河上の
上司かなんかだろ?

 

違うか?

日下部彰

ああ・・・

日下部彰

河上くんは俺の部下だ 

 

だったら河上の住所も
把握済みって事か?

日下部彰

ああ・・知ってる

 

だったら話は早い

 

女の命を救いたいなら

 

俺の代わりに
河上が持ってるコピーを
俺の元へ持ってこい

日下部彰

な、何で俺が
そんな事を──

 

嫌なら別に構わねー

 

この女が
死んでもいいならな

日下部彰

(くそ・・こいつ・・)

 

さぁ!どうする?

日下部彰

(こいつらは余裕で
犯罪集団だ・・・)

日下部彰

(こいつの代わりに
契約書のコピーを
取りに行ったりしたら)

日下部彰

(俺は犯罪の片棒を
担ぐことになる・・・)

日下部彰

(けど・・・)

日下部彰

(それをやって
千里を救えるなら・・・)

日下部彰

わ、わかった・・・

 

懸命な判断だ

 

なら引き渡し場所は
追って連絡する

日下部彰

あ、ああ・・・

男はそう言うと 千里を連れて玄関先へ歩いていく

日下部彰

千里!!

日下部千里

あ、彰・・・

日下部彰

絶対に助けるから!

日下部彰

信じて待っててくれ!

日下部千里

うん・・・

日下部千里

待ってるから・・・

 

じゃあな

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