サトル
バイト始めた
コウタ
いつから?
サトル
今日から!
コウタ
もう23時だし終わりか?
サトル
今から出勤
コウタ
は!?
コウタ
夜勤か
コウタ
バイトだよな?
サトル
おう、コンビニだぜ
サトル
結構時給いいんだぞ?
コウタ
へぇ、いくら?
サトル
3000円!
コウタ
あれ、すごくね?
サトル
だろ?
コウタ
俺もやろっかな
サトル
おい社会人
コウタ
なんだよ、フリーター
コウタ
はーぁ、俺も会社辞めてそっち行こうかな
サトル
いいねえ
サトル
来るなら紹介する
コウタ
今の会社パワハラ三昧だからな
コウタ
辞めたら連絡するわ
サトル
わかった
サトル
じゃあな、また飲みに行こうぜ
コウタ
おう
深夜コンビニ
サトルはスマホをしまうと、手早くコンビニの制服に着替えた。
サトル
おはようございます
店長
ああ、田中君……ええと悪いんだけど
店長
他にも田中君がいるから、名前で呼んでいいかね?
サトル
いいですよ
店長
じゃあ、サトル君
店長
とりあえず……経験者ってことだけど
サトル
はい、高校の頃にバイトしてました
店長
そうなんだね
店長
じゃあ、夜勤は初めてか
サトル
そうですね
店長
仕事は夕方の時とあんまり変わらないから
店長
気負わなくていいよ
サトル
わかりました
店長
ただね、これは守ってほしいってことがあるんだ
サトル
なんですか?
店長
24時を過ぎたら「いらっしゃいませ」を使わないで欲しい
サトル
……はぁ
サトル
じゃあ、お客さんが来たらなんて言うんですか?
店長
『ご来店ありがとうございます』だね
サトル
でも、なんでそんなことを……
その時、来店音が鳴った。
サトル
いらっしゃいませ!
サトル
あ……
店長
今はいいけど、気を付けてね
サトル
それで、いつまで言っちゃダメなんです?
店長
それはね……アイツ次第かな
サトル
アイツ?
店長
……とりあえず仕事をしようか
店長はそそくさとレジに立って前を向く。
何かを隠すような言い方が、サトルは気になった。
24時
店内で時報が鳴った瞬間、店長がサトルの肩を叩いた。
店長
見てごらん
サトル
はい?
店長の指さした先には、真っ黒な影があった。
サトル
なんですか、あれ?
店長
……さあね
サトル
『さあね』って……
サトル
意味わかんないですよ、あれ
店長
私もわからないんだよ
店長
でもとにかく……さっき言ったようにあの言葉を言ってはダメだ
サトル
いらっ
店長
ダメ!
店長はサトルの口を手で押さえた。
サトル
もがっ
そんなに怖いものなのかと思い、外を見る。
カチッカチッ
真っ黒な影に白い歯だけが見える。
それはカチカチと鳴って、注目を集めようとしていた。
サトル
気持ち悪い……
店長
だろう?
店長
あれが中に入ってくると……本当に怖いんだ
店長
だからいいね、言ってはダメだよ
店長
あと、出入り口を開けっぱなしにしたり
店長
あいつを手招きするのもダメ
サトル
わかりました……
サトル
(通りで……破格の時給なわけだ)
サトルはそう思いながら、黒影をチラリと見る。
いつの間にか目が出来てた影は、サトルをジッと見つめていた。






