TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

暗黒街の銃声

一覧ページ

「暗黒街の銃声」のメインビジュアル

暗黒街の銃声

20 - 地獄へのカウントダウン

♥

3

2024年10月03日

シェアするシェアする
報告する

桃音と凜々愛は合流し、康一は瑠花を無事救出、そして大輝は屋上FIGHTなう

そんな中 作者が忘れかけていた麗は”教祖”の居場所を突き止めるべく、教祖の元へ報告しに行った信者の女を追っているところだった。

姫宮 麗

(どこに行ったのかしら?)

姫宮 麗

(確かにここに入ったと
思うんだけどなぁ)

麗がいるのは信者全員が収まるほど広い礼拝堂。女がここへ入ったのは間違いない。しかし警戒しながら隅々まで探したが女の姿がどこにもない。

姫宮 麗

(それにしてもやけに静かね?)

姫宮 麗

(彼女を追ってから私まだ信者の誰とも会ってないわ)

そう。この頃、信者のほとんどが桃音を1人狙いしていたことも、その他信者や幹部は凜々愛や康一、拷問されている瑠花の元にも数人の下っ端信者が集合している事は、麗は知る由もなかったのだ。

大輝の対戦相手は…分からん。 誰アレ?

姫宮 麗

(瑠花ちゃんと大輝くん…大丈夫かな?無事だといいんだけどな)

姫宮 麗

(助けに行きたいけど、今ここで彼女を逃したら”教祖”の元へ行けないし…)

他の人たちと全く同じことを考えた。しかし やはりこちらも手が届かない。

姫宮 麗

(大輝くんに関してはどこにいるかも分からない…)

姫宮 麗

…っていうか!
もう逃しちゃってるし!

その通り。信者の女は足の速い麗ですら追いつけない程の逃げ足が早かった。

姫宮 麗

いや…ダメよ麗!
しっかりしなきゃ!

麗は自分の頬を両手で叩いて小声で自分を叱るように言った。 ……独り言を。

姫宮 麗

でもどういう事なの?ここ以外に逃げる場所は無いと思うんだけど…

姫宮 麗

……ん?

辺りを見渡すと、祭壇の裏の壁に大きな額縁に入れて飾られていた1枚の油絵があった。その下を見ると、床にパンプスの靴跡があることに気付いた。

自分の記憶が正しければその信者の女はパンプスを履いていた。 その上、その絵が少し傾いているように見えて不自然だと感じた。

姫宮 麗

うーん…

姫宮 麗

まさかね

そう苦笑いをした麗は額縁に手を伸ばした。すると壁と額縁の隙間から冷たい風が吹いた。

姫宮 麗

え?

まさかの?と思いつつ油絵を少しずつ動かしてみると、なんと油絵はドアのように開き、その先には次の部屋への隠し通路が続いていた。

姫宮 麗

……

姫宮 麗

ハ●ー・ポッ●ーかしら?

某魔法界を思い出したが、今はそんなことどうでもいい。ここに逃げた事に確信した麗は中へと入って行った。

ギィッ

隠し通路を通ると広い部屋があった。複数のドアがあり、これじゃどこへ行ったのかがわからない

姫宮 麗

な、何ここ…

姫宮 麗

!!

バンッ!

ふと後ろを向くと麗は西洋式銃を向けているのに気づき、撃つ直前に反射神経で避けた。

信者(西洋式銃)

チッ…!

姫宮 麗

あっ、貴方!

背後から撃ってきたのは麗が追っていた信者の女だった。後ろから撃つとはなんて卑怯なんだ。

バンッ バンッ

また2発。 女は撃つが麗は殺し屋顔負けの素早さで避けつつ、女との距離を縮める。

信者(西洋式銃)

この魔女め…!
ちょこまかと動きやがって!

姫宮 麗

(あの銃…西洋式ね)

姫宮 麗

(確か6発が装弾数の上限って桃音ちゃんが言ってた気がするわ)

姫宮 麗

(…ってことは、残り3発!)

ここで麗は1つ策を思いついた。

姫宮 麗

私ね、銃の凄腕知ってるの

信者(西洋式銃)

は?

姫宮 麗

見向きもしないで命中できる。まさに射的の天才なのよ。

麗は毒針を構えながら、 遠回しで桃音について話し始めた。

信者(西洋式銃)

何が言いたい?

姫宮 麗

貴方と彼女じゃ天と地の差だわ

女は頭に血が上った。

姫宮 麗

撃ってみなさい。
貴方にできるのなら

信者(西洋式銃)

なっ…!

信者(西洋式銃)

なめやがって!!

バンッ バンッ バンッ!

3発の弾丸を避けつつ一気に距離を縮める。そしてついに銃口が額に付くぐらい近くまで来た。

信者(西洋式銃)

(もらった…!)

女は口角を上げ、引き金を引いた。

カチッ カチッ

信者(西洋式銃)

!弾切れ…!

狙い通り。わざと女を挑発させることで弾が残り3発だということを気にせず撃たせ、弾切れという隙を作らせたのだ。

信者(西洋式銃)

!しまっ…

ドスッ!

信者(西洋式銃)

ゴフッ!

麗は毒針の持ち手の方の先端で女の鳩尾(みぞおち)を突いた。

ドンッ! ドンッ!

そして隙を与えず、厚底ヒールの硬さを利用して、女の胴体を蹴り、そのまま押し倒した。

信者(西洋式銃)

ゴホッ…

信者(西洋式銃)

この…!

姫宮 麗

動かないで!

麗は毒針の先端を女の首に向けた。

姫宮 麗

”教祖”はどこ?

信者(西洋式銃)

…チッ

信者(西洋式銃)

フローライト・アイの化け物め…!

シャキッ!

その言葉を聞いた途端、一瞬だけ我を忘れたかのように麗は毒針を振り下ろし、針の先が眼球に届く前に手を止めた。

信者(西洋式銃)

ひっ!!

姫宮 麗

いい?よく聞いて

姫宮 麗

この針には毒が塗ってあるの

姫宮 麗

もし教えなかったら
……わかるよね?

毒針を女の片目に向け、声のトーンを低くして言った。下から見ると長い前髪で隠れた麗の目のハートは赤く(怒り)なっていた。

信者(西洋式銃)

…っ!!

信者(西洋式銃)

………正面の、ドアだ

女が指を指す方を見ると、少し派手な装飾をしたドアがあった。

姫宮 麗

…そう

姫宮 麗

わかったわ

女がそう答えると、麗はゆっくりと毒針を降ろし、立ち上がった。

信者(西洋式銃)

死ねぇ!この魔…

ザシュッ

女が隠し持っていたナイフを取り出し、麗を刺そうと振り上げた瞬間、心臓に麗の毒針が刺さっていた。

姫宮 麗

…ごめんなさい。でも苦しむ間もない毒だからね

そう呟いた後、麗は毒針を抜いた。

麗は天才化学者である。殺人術は桃音や凜々愛には流石に劣るが、なろうと思えば殺し屋になれる実力はある。しかし本人は願わくば人を殺したくない。その為、彼女は助っ人ポジションで、自分で開発した刺した瞬間ですら苦痛を与えず、一瞬で死ねる毒を武器としている。

この物語の中で最も慈悲深いのである。

正面のドアを開けると、そこは真っ白の大理石の床の豪華な装飾の多い、家具などが一切置かれていない広々とした部屋だった。奥を見ると部屋の色と同化するような白いスーツを身にまとった男が背を向けて立っていた。

教祖…

教祖…

やぁ、来たかい殺し屋さん

男は麗の気配を感じ取ってこちらを振り向いて言った。手には高級感のある金の彫刻があるステッキがあった。

姫宮 麗

…貴方が”教祖” ね

教祖…

そうさ

男は不敵な笑みを浮かべて答えた。

教祖…

君は確か…

教祖…

”ボツリヌスの魔女”か

姫宮 麗

…その異名は気に入ってないけど

姫宮 麗

そうね。その通りよ

不機嫌そうに言った。こういう任務に来る時、誰彼構わず異名やコードネームで呼ばれることが多い。

しかし桃音達の場合、いつしか誰かが勝手に異名を付けて裏社会に知れ渡った。 (ただし大輝のハッカー名は除く。)

姫宮 麗

(本名バレたりしないから別にいいけど)

たまに本名も知られている者もいます。 元軍人の康一とか。

教祖…

”ボツリヌスの魔女”

教祖…

せっかく1人ここまで辿りつけたところ
すまないが

教祖…

ここは”教祖”である私しか入れない、神聖な場所なんだ

そう言いながら男はステッキの持ち手を引いた。するとそこから銀色の刃がきらりと光った。あのステッキは仕込み刀だったのだ。

教祖…

君のような魔女が立ち入ってはならないのは理解できるだろう

姫宮 麗

(仕込み刀…!?)

殺気を含んだ言葉で緊張感が高まった。麗は毒針を握り直した。

姫宮 麗

(この男、完全に私を殺し屋だと思ってる…)

姫宮 麗

(そして、こんなに人がいないという事は、他は桃音ちゃん達の方に全振りしてるはず…)

男はゆっくりとこちらへ近づいて来る…

姫宮 麗

(きっとここへ来れる余裕は無いかもしれないわ)

姫宮 麗

(私1人じゃ絶対戦力不足なのは承知の上…)

姫宮 麗

(けど…!)

麗は毒針を構えつつ、袖の中に忍ばせている睡眠薬が入った注射器をすぐに出せるように準備をした。

姫宮 麗

(私の役目はこの男を殺すことじゃない!コレで”眠らせる”こと…!)

姫宮 麗

(これは私がやらなきゃいけない!)

ダッ

その強い意志を胸にしたちょうど時、男はこちらへ駆け出した。

姫宮 麗

っ!!

ヒュンッ!

剣が交差すると同時に風を切る音がした。麗は後退りしながら避けたが、頬を掠り血が1滴流れた。

ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ!

姫宮 麗

(は…早い!)

続ける男の攻撃には隙が無かった。麗は避けることで精一杯で、男に注射器を刺すどころか剣と毒針を合わせることすらできなかった。

姫宮 麗

(でもよく良く考えれば…下手に近距離戦を繰り広げても、万が一毒針の毒が剣に付いたら こっちが毒でやられるわ…)

姫宮 麗

(なら…!)

麗は男が大きく剣を振り下すのと同時に後ろへ跳ねるように避けた。

着地した際にふわっとめくれ上がったロングスカートによって男からの死角の脚のケース付きガーターベルトから試験管を1つ取り出した。

教祖…

どうした殺し屋?
怖気付いた……

パリンッ!

ボワッ

麗は男の足元にその試験管を投げると、割れた途端紫の煙が男の視界を遮った。

教祖…

な、なんだ!?

教祖…

(目眩しか!?)

しかしただの目眩しではなかった。男は紫の煙に触れた瞬間、顔や手がヒリヒリしてきたのだ。これは麗が作った目眩しと同時に皮膚に侵食する毒霧だったのだ。男の剣が手から離れ、それが床に落ちた時だった。

教祖…

!!

教祖…

(後ろ…!)

男の背後には麗が注射器を握っており、男の首筋を狙っていた。

薄茶色の人工皮膚を縫い付けた素手で

姫宮 麗

(いける…!)

ドスッ!

姫宮 麗

カハッ…!?

首筋に注射器の針が刺さる あと少しのところだった。麗は男に腹部を思いっきり蹴飛ばされ壁まで飛んだ。

姫宮 麗

うぅ…

教祖…

危ない危ない…

教祖…

かなり飛んだな、軽いからか?

パリン

姫宮 麗

あ…っ!

男は麗が落とした注射器を踏んで割り、こちらへ歩いて来る。

教祖…

君のその見るからに筋力もさほど無い軽そうな身体で私に挑むとはな…

教祖…

愚かだがその意志だけは褒めてやろう

姫宮 麗

…っ!

麗はすぐに立ち上がり、毒針を構えた。

ガシッ

姫宮 麗

男は険しい表情で麗の構えている両手を片手で掴んだ。

教祖…

こんな弱い力で…

教祖…

言え。あの薬品は毒か?

教祖…

それとも…何か目的がある前提の睡眠薬のようなものか?

姫宮 麗

………

姫宮 麗

逆になんだと思うの?

教祖…

ふむ…

ドコッ!

男は掴んでいる麗の手を引き、こめかみを殴った。

麗は床に倒れ、毒針は彼女の手から離れた。すぐに手を伸ばしそれを取ろうとするが、男に拾いあげられた。

教祖…

それがお前達の目的なら許されざる行為だ。タダではすまないぞ

姫宮 麗

っ…!

男は毒針を向けて言うが、麗の前髪からはキッと睨みつけた赤いハート(怒り)が覗かせた。

教祖…

その目…”フローライト・アイ”か

教祖…

実際に見るのは初めてだな

麗は男への目線を変えずそのまま立ち上がろうとした。

ドガッ

姫宮 麗

カハッ…!

今度は足蹴にした。麗はまた床に倒れた。しかし麗は諦めず、床を這いつくばるように顔を上げた。

教祖…

……

教祖…

魔女…お前は今から処刑する

教祖…

何をしようとしても無駄だと言うのに

教祖…

なぜそんなに立ち上がる?

教祖…

命乞いか?死ぬのが怖いのか?

男は麗を見下して言った。

姫宮 麗

うるさいわね…

姫宮 麗

弱くても何度だって立ち上がるわよ

教祖…

………

姫宮 麗

命乞い?死ぬのが怖い?

姫宮 麗

そんなんじゃこの世界では生きていけないのは貴方も重々承知のはずよ?

姫宮 麗

でしょ?マフィアの幹部さん

教祖…

…!?

姫宮 麗

麗が口角を上げて言うと、動揺したのか、男は一瞬だけ片目を細めた。

教祖…

…ははっ

教祖…

そうかそうか

ドンッ

姫宮 麗

きゃっ!

また立ち上がろうとする麗を足蹴にした。

教祖…

ではさっさと楽にしてやろう

男はそう言って毒針を振り上げた。

姫宮 麗

!!

教祖…

魔女め自分の毒で朽ちてしまえ!

姫宮 麗

(睡眠薬はもう無い…!)

姫宮 麗

(でも私がどうにかしなきゃ…)

あれ…自分が開発した毒が塗られた毒針…だよね?

姫宮 麗

(でもまず避けなくちゃ…)

これ…刺さったら一瞬で毒廻って死ぬのかな……?私が今まで……任務でしてきた時のように………

姫宮 麗

(早く足動かさなきゃ…!)

あぁでも、”もう戻れない”から”この道”を選んだんだから…いつかこの時が来るのも当然だわ

姫宮 麗

(何か…他に…!)

男が毒針を振り下ろすこの0.5秒の間、麗は焦っていたが、今まさに自分がこの同行の任務で敵を倒すためにしてきたやり方が、自分へ返ってくる事が脳裏に浮かぶせいで充分に集中できない。

何せあの毒は対象者が苦しまないよう、刺した瞬間に全身に毒が廻り死に至る毒。この毒を開発するために研究した麗だからこそ、誰よりもこの毒の恐ろしさを知っていた。

パスッ!

キィン!

姫宮 麗

きゃっ!?

カァン!

教祖…

!?

毒針が麗に届くまで数mmの時だった。銃弾によって毒針が弾かれた。さらにその銃弾は白い壁に弾かれ、男の背中に当たった。

教祖…

誰だ!?

百峰 桃音

待たしたなぁ麗

入口のドアの方を見るとそこには銃口から出る硝煙。銃を構えた桃音と、その隣には凜々愛がいた。

神楽 凜々愛

……遅くなって、ごめん

姫宮 麗

桃音ちゃん!
凜々愛ちゃん!

教祖…

に、”人間兵器”…!?

教祖…

嘘だろ!?50人向かわせたのに…

教祖…

”人斬り人形”の助太刀か…!?

姫宮 麗

(え、50人!?)

神楽 凜々愛

(そんな多人数を…!?)

50人というワードを聞いた凜々愛と麗は目を丸めた。

百峰 桃音

へー、50人?やっぱ下っ端たちはウチを1人狙いする回しもんやったんやな

教祖…

な、何…!?

教祖…

まさか、お前……

百峰 桃音

全員ご愁傷様でーす

桃音は手を合わせて 揶揄うような口調で言った。

教祖…

貴様ぁ…!!

姫宮 麗

(それで私誰とも会わなかったんだ)

麗は男が桃音たちに気を取られている隙に、弾かれた毒針を拾い構えた。

姫宮 麗

(!…嘘っ)

そして、拾った際に見た弾丸が当たった男の背中に息を飲んだ。

教祖…

!この魔女め…!!

麗に気付いた男は苦虫を噛み潰したような表情をした。

教祖…

貴様らこれ以上この神聖なる場に汚れた血で汚す気か…っ!!

百峰 桃音

はははっ笑 さっきの絵のドアといい汚れた血ぃとか!

百峰 桃音

ハリ●・ポ●ターかいな!

姫宮 麗

(桃音ちゃん大怪我なのに
結構元気ね…?)

神楽 凜々愛

……ボク達、
マグル生まれの殺し屋

姫宮 麗

凜々愛ちゃん!??

相棒として桃音とずっと一緒にいたせいで、物静かで彼女とは正反対の凜々愛がノリにのるという意外なことには流石に声が出た。

百峰 桃音

まぁそれはさておき…

「アンタうちの麗を殺そうとしたな?」

桃音は先程の陽気な表情から打って変わって、怒りが込められた表情で男を睨めつけて言った。

姫宮 麗

(桃音ちゃん…!(嬉) )

神楽 凜々愛

……麗、ボク達が来るまで、よく頑張ったね。(桃音、すごく怒ってる…)

姫宮 麗

わ、私言うほど何もしてないよ?

教祖…

ハッ!仲間思いってやつか?

教祖…

しかし君に殺れるのか?そんな体で

男はゆっくりと歩き出し、 落とした剣を拾った。

教祖…

たった一人で50人…確かにその傷の数から見ると嘘ではなさそうやな

教祖…

特にその大きな傷…結構深いんだろ?

百峰 桃音

………

男は剣で指しながら言った。

図星だった。実際のところ桃音の体力は限界に近づいていた。胴体を大きく切りつけられた傷は、幸いにも内臓までには届いていなかったが当然かなり痛い。

百峰 桃音

ふっ…確かに

百峰 桃音

めっっっちゃ痛い
この傷ぅ…っ!!

神楽 凜々愛

(やっぱり…)

姫宮 麗

(桃音ちゃんなんであんな傷で立ってられるの!?)

桃音は歯を食いしばるように言った。

教祖…

けどその身体じゃ体力が持たないだろう

教祖…

頑張ったところで無駄死にだ。今ここで楽に地獄へ送ってやってもええ

男が剣を構えて言った。

百峰 桃音

心臓破り…ってことか
(自転車ちゃうけど)

百峰 桃音

ゴホッ…!

神楽 凜々愛

……!も、桃音!

吐血した。凜々愛は心配そうに俯いた桃音に寄りかかった。

百峰 桃音

大丈夫や

百峰 桃音

なぁ教祖さん。自分教祖だの神聖だのゆーてるけど

百峰 桃音

マフィアの幹部であるアンタが1番汚れてるんちゃうん

教祖…

……!

百峰 桃音

………

百峰 桃音

それにな

百峰 桃音

ここにおる殺し屋達は
そう簡単に死なへんわ!!

桃音は血を流した顔を上げて言った。口角を上げた口元には血が垂れていた。

教祖…

ふんっ…見上げた根性だ

教祖…

私を地獄へ叩き落とすつもりか

桃音と凜々愛は各々の武器を構えた。

百峰 桃音

地獄へのカウントダウンや

百峰 桃音

百峰ぇ行きまーす

神楽 凜々愛

……”人斬り人形”、
及び”双晶”、神楽凜々愛

神楽 凜々愛

参る!

パスッ!

最初に、桃音が男の肩を撃った。

教祖…

!?

弾丸は肩に当たったが、その箇所からは血が一滴も流れていない。

百峰 桃音

!!

百峰 桃音

防弾チョッキ…!?

教祖…

ふっ、残念だったな

姫宮 麗

桃音ちゃん!頭を狙ってもこの部屋全体は弾丸を弾くわ!

百峰 桃音

なんやて!?

男の後ろに立っている麗はそう叫んだ。

桃音が男が振り下ろす毒針を銃で弾いた時、弾丸が毒針を弾いた後 壁に当たり、そのまま跳ね返って男の背中に当たったのを、麗は目にしたのだ。

教祖…

よくぞ見抜いたな

教祖…

ここは教会の心臓だ。そう簡単に傷ができてはならないから……

キィン!

男が話している最中に、凜々愛が刀を振り下ろした。男は剣で受け止めた。

神楽 凜々愛

……そういうの、もういいから

冷めきった態度で口にする凜々愛。 それに男は口角を上げるだけ。

キィン!キィン!

刀がぶつかり合う音が鳴り響く。 目の前で繰り広げられるのは 凜々愛と男の一騎打ち。

教祖…

その異様な剣術…

教祖…

”山吹族”か!

神楽 凜々愛

………

今日はよく自分の正体がバレる凜々愛。 彼女はただその言葉を返す気もなく自身の繊細で綺麗な刀術を続ける。

姫宮 麗

山吹族?

百峰 桃音

山吹村っていう凜々愛と悟郎の幼馴染みコンビが生まれ育った殺し屋の村や

百峰 桃音

もう崩壊したらしいけど

姫宮 麗

そ、そうなんだ…

男と凜々愛を挟むように立っている桃音と麗は援護という形になった。

百峰 桃音

(でもあの男…なんかおかしい)

姫宮 麗

(何かぎこちない感じがする…)

本当(ホンマ)に ”教祖”なの(なん)?

桃音と麗はこの教祖と名乗る男に違和感を感じていた。

この男、「マフィアの幹部」という時に確かに動揺していた。

まず麗が言った時、一回目はただの正体がバレて動揺したのかと思った。しかし桃音が言った時の二回目は、どちらかと言うと「衝撃」のように見えた。

途中から来た桃音の場合、組織の頭 特有の威圧感や雰囲気がこの男からは全くしないという、殺し屋としての嗅覚がそういっていた。

それに桃音は下手な演技は見抜ける事が出来るというちょっとした特技があった。腕は達者だが、男の身振りに違和感を感じた。

しかし確かにこの男は事前に貰った資料の顔写真と一致している気はするが…

実際はまるでマフィアという言葉さえ初めて聞いたかのようだった。

百峰 桃音

(…まさか!?)

ビュン!!

すると突然、斧が飛んできた。

百峰 桃音

わああ!?

斧が桃音の横を通り…

神楽 凜々愛

!!

教祖…

っ!?

交戦してた凜々愛と男の間を横切り…

姫宮 麗

きゃっ!?

カァン!

麗がすぐさま避け、斧は壁に当たり、 また跳ね返った。

姫宮 麗

う、嘘でしょ…!?

斧が当たった箇所を見ると、 壁が凹んでいた。

まずこの斧を投げる容易くこと、そして弾丸をも弾く頑丈な壁が凹ます程の力を持つ者は限られている。

ガシッ

一同が跳ね返った方を見ると斧を片腕だけでキャッチした女がいた。

早乙女 瑠花

やっばー!
この部屋超面白いじゃん!

紫のバンダナが特徴的な赤い目をした 殺人鬼。そして地下で拷問を受け、傷だらけになっていた瑠花だった。

百峰 桃音

瑠花!!

姫宮 麗

無事だったのね!

神楽 凜々愛

……ひ、酷い傷…!

教祖…

さ、”殺戮の悪魔”…!?

瑠花が投げた斧は拷問部屋で首を斬ろうとするのに使われた物だった。斧を右手に持ち上げ、左手には………

教祖…

ひっ…!そ、それは…!!

血塗れになった、 瑠花を拷問した女の死体だった。

教祖…

拷田くん…!!

神楽 凜々愛

(絶対そんな名前じゃない…)

※モブの名前つける気ゼロの作者※

早乙女 瑠花

あぁコレ〜?

早乙女 瑠花

持って来といてよかった!

瑠花は女の死体を顔と同じ高さまで持ち上げ、髪を引っ張って顔を上げさせて満面の笑みでそう言った。

百峰 桃音

いや なんちゅうもん
持ってきてんねん!?

神楽 凜々愛

(なんか、先が見えてきた気がする…)

すかさずツッコむ桃音と何かを察した凜々愛。ていうか拷問された割に元気…

早乙女 瑠花

ここ壁とか全部色々弾くんでしょ?

百峰 桃音

理解が早いな…?

早乙女 瑠花

知ってる?人の頭って4kg〜6kgで結構重いんだって!アタシには軽すぎるけど

姫宮 麗

早乙女 瑠花

だからさ…

ブチィン!!

教祖…

ひぃ…っ!!

瑠花は目の前で女の生首を素手で引きちぎった。これを見た男は顔面蒼白。

早乙女 瑠花

コレも凶器になるのよ♡

百峰 桃音

うわっ

姫宮 麗

きゃあ!?

神楽 凜々愛

……やると、思った

これには桃音たちもドン引きしてきた 瑠花の狂気さは知っていたが…うん。

ヒュン!

ゴンッ

教祖…

!!

瑠花は女の生首を教祖に向けて投げた。生首は教祖の頭に当たり、彼は両手で抱くように受け止めてしまい、女の血だらけの顔と目が合った。

教祖…

う、うわあああっ!!

百峰 桃音

(瑠花が来ると毎回ホラー映画っぽくなるんよなぁ…敵がちょっと可哀想)

百峰 桃音

………

男は恐怖で生首を手放し腰を抜かした。彼の白いスーツは赤く汚れていた。

早乙女 瑠花

んで!コイツが教祖ってやつね!

早乙女 瑠花

でも殺しちゃダメなんだよねー?

百峰 桃音

うーん…

姫宮 麗

そうなんだけど…

早乙女 瑠花

え?何?

首を傾げて悩み始める桃音と麗。瑠花はただキョトンとしているだけ。

教祖…

ま、待ってくれ!

教祖…

頼む!殺さないでくれ!!

すると男が真っ青な顔で膝まづいて命乞いをし始めた。

教祖…

警察に自主して罪も償う!

教祖…

お前たちの事も何も喋らない!

教祖…

だから…!

早乙女 瑠花

は?何言ってんの?

早乙女 瑠花

今更命乞い〜?笑わせないでよ

瑠花は男を見下して睨んでそう言った。

百峰 桃音

…なぁ?

百峰 桃音

アンタやっぱり…

「そいつは教祖じゃねぇ!」

百峰 桃音

振り向くと入口のドアに康一が壁にもたれて立っていた。片手にはスマホを持っていた。

百峰 桃音

康一!

姫宮 麗

教祖じゃないって、やっぱり!?

早乙女 瑠花

え?何?どゆこと!?

早乙女 瑠花

コイツ…

凜々愛「……影武者!」

教祖…

……っ!

凜々愛がそう言った瞬間、 辺りが静まり返った。

百峰 桃音

やっぱり…

百峰 桃音

けど康一、なんで偽物やって?

核山 康一

大輝から電話があったんだ

大輝「あぁ、そいつは偽物だ」

核山 康一

現在進行形でな!

すると康一のスマホから大輝の声がした。スピーカーにしていたようだ。

百峰 桃音

大輝!

神楽 凜々愛

……無事、だったんだね!

大輝「悪ぃ、邪魔が入った。ワイヤレスも壊されちまったからダメ元で康一に電話かけることにしたんだよ」

姫宮 麗

ていうか康一くん電話しながら来たの!?

早乙女 瑠花

んで、コイツは殺していい?

大輝「あぁ。いいぜ」

教祖…

や、やめてくれ…!

教祖は腰を抜かしたまま、怯えた表情で後ずさりした。奥の壁側にいた麗と男のすぐそばにいた凜々愛は桃音と共に康一の方へ避難した。

これから瑠花による虐殺ショーが始まるからだ。

百峰 桃音

ありゃりゃ、これは誰も止められへんやつになるわ(諦め)

百峰 桃音

へーい影武者くーん

百峰 桃音

そいつは苦痛で歪んだ表情が大好きな殺人鬼やで〜!

教祖…

ひっ…!

百峰 桃音

瑠花ぁその白いスーツ真っ赤に染めたって〜!できるだけ一瞬で仕留めんように!

桃音はいつもよりお怒りのようだからか、安全地帯から呑気に言った。 凜々愛は哀れな影武者に手を合わせて拝んだ。麗は耳を塞いで背を向けた。

教祖…

ま、待て待て待て待て!

教祖…

嫌だ!

先程まで威張っていた態度と打って変わった男は涙を流しながら怯えるだけ。

そんな男に同情も慈悲も欠片もない瑠花は、容赦なく拳を振り下ろした。

ゴキィ!!

ぎゃああああ!!

まずは手足の骨を折って相手が身動きできないようにする。瑠花のやり方だ。

キャッハハハ!!//////

教祖じゃなくてよかったー! 思いっきり殺れるじゃん!

ゴキッ!バキッ!

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ…

キャハッ♡///// イイネその表情♡/////

も、もう…

んー?何〜聞こえなーい?

やめて…くれ……

ヤダね

だってアタシ今日大して 何もしてないし

役にも立たなかったかも

百峰 桃音

核山 康一

……

だからせめてこれくらいは やらなきゃ

……っ

……ま、本当はもうちょっと やりたいだけなんだけどね!

ゴキッ!

バキッ!バキッ!

グシャア!!

虐殺が始まって5分以上経った。あまりがっつり見たら夢に出てきそうなのでほぼ全員が目を逸らしている。

飽きてきたのだろうか、少しずつ瑠花の動きが遅くなってきた。

しばらくして瑠花は動きを止め、 こちらへ歩いてきた。

百峰 桃音

気ぃ済んだん?

早乙女 瑠花

うん!

桃音の問に瑠花は明るく答えた。

百峰 桃音

そっか

神楽 凜々愛

……結構派手にやったね

百峰 桃音

ホントの意味で地獄へのカウントダウンになったな。影武者ご愁傷さま

大輝「ずっと断末魔が聞こえてたぜ」

康一の携帯から大輝の声がした。

百峰 桃音

まだ電話繋げてたんかい

核山 康一

しっかしこりゃすっげぇな

核山 康一

大輝、ビデオ通話にしてやろうか?

大輝「いや遠慮しとく」

康一が男の死体を見て言った。 大輝は即答で断った。

桃音の言った通り、白いスーツは濁った赤に染まった。そしてなんとも痛々しい見た目だ。これも瑠花のやり方だ。苦痛に満ちた表情は残すために、あえて頭を狙わない。これには処理班も苦だ。

核山 康一

やっぱり瑠花ってすげぇな!

早乙女 瑠花

っ!//////

百峰 桃音

(ありゃマジか)

神楽 凜々愛

(……瑠花、康一のこと、好きなんだ)

姫宮 麗

(きゃー!♡//////)

康一の言葉に頬を赤らめた瑠花を見て、他の女性陣が瑠花が康一に恋をしていることに気付いた。

大輝「それで…終わったのか?」

核山 康一

あぁ…終わったぜ相棒

百峰 桃音

任務完了や…

この時、疲労と達成感が同時に来た。そして、全員生きていることに安心した。

早乙女 瑠花

…なんかアタシ、今回何もできなかった気がする……

姫宮 麗

そんな事ないってば瑠花ちゃん

姫宮 麗

こんなに傷だらけになってもここまで来て、影武者も倒してくれたじゃないの

麗は落ち込んでいる瑠花の頭を撫でてそう慰めた。自分はただ拷問されて助けられただけでろくに殺していないと罪悪感があるらしい。

早乙女 瑠花

…そかな?

姫宮 麗

そうよ!偉い偉い(⸝⸝⸝ ´˘`)ノ゙

大輝「そっちに怪我人はいるか?」

核山 康一

俺と瑠花、あと桃音がヤバい

大輝「何!?」

核山 康一

その割にはすげぇ元気

核山 康一

あ、でも表情が固いな

康一は桃音の様子を伺いながら大輝と通話した。(スピーカー) 桃音は何故か遠くの方を見ていた。

大輝「そうか。ここからだと本部より不死夜の闇病院の方が近いから本部に行く前にそっちで治療しに行け」

核山 康一

おう!そうするぜ!

神楽 凜々愛

……大輝は、どうするの?

大輝「俺はまだやる事があるんだ。処理班には俺から連絡しておくから、お前らは先に行っててくれ」

神楽 凜々愛

……そっか。わかった

電話は切られた。康一はスマホをズボンのポケットに入れた。

姫宮 麗

それにしても桃音ちゃん達、よくここがわかったわね?

百峰 桃音

ん?あぁ

遠くを見つめていた桃音は麗の問いに気づき、こちらを向いた。

百峰 桃音

絵のドア開けっ放しやからわかってん

神楽 凜々愛

……変なドアだった

百峰 桃音

ホンマにな

百峰 桃音

奥からネビ●出てくるんかと思ったわ

神楽 凜々愛

……ボクも思った

核山 康一

それ何作目だっけ?

百峰 桃音

8作目や

早乙女 瑠花

あれね!

姫宮 麗

こら!作者が夏休みにハ●ー・ポ●ター全作見たからって話持ち込まないの!

※作者はフレジョ推し※

〜ビルの屋上〜

電話を切った後。大輝はパソコンを閉じ、ジャケットの懐からタバコを取り出し一本に火を付け一息吹いた。殴られ蹴られまくったせいでかタバコの箱が少し潰れていた。しかし中身は無事だった。

琉芭 大輝

ふーっ🚬

琉芭 大輝

(まだ痛ぇ…絶対割れてるなこれ)

大輝は頭の傷口をハンカチで押さえた。 そして、処理班に電話をかけた。

プルルルルッ📞

琉芭 大輝

あ、もしもし

琉芭 大輝

こちら琉芭大輝。任務完了
処理を頼む

琉芭 大輝

……あぁ、例のカルト教団だ

琉芭 大輝

”教祖”も捕らえた

琉芭 大輝

……いや、”こっち”にいる

琉芭 大輝

………あぁ、俺もそれは想定外だったぜ

琉芭 大輝

………

琉芭 大輝

………わかった

琉芭 大輝

あぁそれと…その前に医療部に行かせてくれ。コイツに殺されかけたぜ

琉芭 大輝

……あぁ、たぶん頭割れてるかもしれねぇ………なんなら走馬灯も見えたぜ

琉芭 大輝

………了解した

大輝は電話を切った後、ぐったりとしてフェンスにもたれかかった。

彼のすぐ側には、 手錠をかけておいた男が気絶していた。

この作品はいかがでしたか?

3

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚