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管野アリオ
847
#大人ロマンス
桃下結衣
320
#ロマンスファンタジー
Jasmine
1,008
浴室のドアが静かに開き、日奈子が戻ってきた。
火照った肌から湯気を纏い、まだしっとりとした髪が頬に張り付いている。
陸の目には、その化粧っけのない素顔が妙に色っぽく見えた。
そのままキッチンへと向かい、コップにミネラルウォーターを注ぎ、コクンと飲み干している。
不意に気配を感じ、日奈子は顔を上げた。
陸がすぐ隣まで歩いてくる。
水の冷たさよりも先に、心臓が凍りつくような緊張が走った。
陸
陸の視線が、日奈子の露わになった首筋へ落ちる。
タオルで雑に拭っただけの毛先から、雫が一つ、鎖骨のくぼみに吸い込まれていく。
気恥ずかしさを感じて、日奈子は手元のコップに視線を落とした。
互いに並んで立つと、身長差が余計に際立つ。
日奈子
日奈子
陸
日奈子
日奈子
日奈子
理由を付け足すと、陸の眉がわずかに動いた。
日奈子の肩に掛かるタオルを掴み、背後に回り込む。
陸
有無を言わせぬ口調だった。
タオルが優しく髪を包み、陸の大きな手が根元から丁寧に水気を取っていく。
指が毛束を挟み、絞る。
タオル越しに伝わる繊細な指の動きに、日奈子は思わず息を殺した。
陸
陸が突然切り出した。
彼はまだ髪を拭き続けている。
日奈子
日奈子
日奈子が内心焦りながら答えた。
日奈子
日奈子
陸
日奈子
日奈子
陸
日奈子
日奈子
陸
沈黙を埋めようと早口になりかける日奈子を制するように、陸の声が頭上から落ちてきた。
タオル越しに指先が後頭部を這う。
くすぐったいような、ざわりと皮膚が粟立つような感覚に襲われ、日奈子は言葉を止めた。
陸
陸
日奈子
それは、心のどこかで予想していた返答ではあったけれど、あえて日奈子が避けようとしていた展開でもあった。
断る間もなく、陸の手が日奈子の肩を掴む。
身体をくるりと反転させられ、互いに向き合う姿勢になった。
間近に迫る陸の眼差しに、呼吸すら忘れかける。
陸の人差し指と親指が、日奈子の顎を捉えた。
そっと上を向かされる。
陸
低く掠れた声が鼓膜を震わせた。
酔いと快楽の渦の中の、断片的な記憶。
羞恥で身体が熱くなる。
日奈子
口ごもる日奈子の頬を、陸の右手が優しく包み込んだ。
陸
その言葉とは裏腹に、顎を拘束する指には微塵の緩みもない。
逃げ道を塞ぎながらも、選択の余地だけを与えている狡猾さ。
陸の吐息が唇にかかり、体温が溶け合っていく。
心臓が壊れそうなほど早鐘を打ち、抵抗すべきかどうかの判断さえできない。
日奈子はただ、眼前に迫る陸の整った顔と、その奥底に潜む、焦げ付くような欲望の炎を見つめるしかなかった。
拒絶する勇気も、受け入れる覚悟も決めきれないまま。
浴室から立ち上る湯気のように、白く霞んだ空気が二人を包み込んでいる。
……日奈子が身動きできずにいると、陸の口から諦めにも似た深いため息が零れた。
日奈子の顎から指を解くと、ゆっくりと手を離す。
その動作はあっさりとしすぎていて――まるで最初から選択肢などなかったかのように。
日奈子の瞳が混乱で揺れている。
陸
予期せぬ謝罪に日奈子は言葉を失った。
リビングへと戻っていく背中が、心なしか寂しく見える。
ソファーに腰を下ろし、前足でタオルをふみふみしている麦を見つめながら、陸はぽつりと呟いた。
陸
ソファーの背もたれからブランケットを掴み取った陸は、そのままゴロンと横になった。
だが長い脚は肘掛けから大きくはみ出しており、傍から見ても窮屈そうでならない。
それを見た日奈子は堪えきれずに吹き出した。
日奈子
日奈子
陸
日奈子
くすくす笑う声に陸は応えない。
むしろその笑顔を焼き付けるかのように、細い視線をじっと固定している。
日奈子
日奈子
日奈子
日奈子の言葉を受けて、陸はのそりと起き上がった。
ブランケットを綺麗に畳み直し、ソファーを降りる。
再び日奈子に向き直った。
陸
短い命令形。
だがそこには支配欲よりも、純粋に、一緒にいたいという幼い執着が見え隠れする。
日奈子
頑なに誘いを拒む日奈子に、陸は黙って近づいた。
一歩。また一歩。 185の長身が、距離を詰めるだけで威圧感が増す。
日奈子の正面に立つと、陸は無言で両腕を伸ばし――
ひょい、と日奈子を腕に抱き上げた。
日奈子
驚きの声を上げる日奈子を無視して、陸は寝室へ歩みを進めた。
麦がソファーの上でおろおろと尻尾を振っているのを一瞥するが、足は止めない。
抵抗する間もなくベッドに下ろされた日奈子の隣に、陸も一緒に沈み込む。
陸
心配する口調だが、結局自分が隣にいたいだけだ。
日奈子
日奈子
ようやく日奈子が折れた。
間接照明だけ残し、ドアまで歩いて少しだけ開けておく。
麦の自由な出入りを見越しての配慮だ。
再びベッドに戻ると、陸はすでに壁側を向いて横になっている。
日奈子も同じく背を向けて横たわった。
陸
背中越しに聞こえる柔らかい声。
日奈子
日奈子が照明を完全に落とすと、室内は月明かりに染まった。
カーテンの隙間から零れる青白い光が、並んだ肩のラインを淡く浮かび上がらせる。
二人の距離は僅か数センチ。
お互いの体温だけは、微かに感じられる奇妙な近さにある。
コメント
1件
はぁ……もう、この2人の距離感がたまらないっすね🥀 髪拭くシーンからもう緊張がビリビリ伝わってきて、日奈子のどきどきがこっちにもうつる。陸の「ひなも来て」ってとこ、支配的だけど実はただ一緒にいたいだけってのがにじんでて、胸がぎゅってなった。 最後に背中合わせで「おやすみ」って言い合うのも、ちゃんと体温感じる距離で……好きです、この空気。次どう転ぶか気になって仕方ないです🌙