児童相談所を出発してから約二時間
日曜日で道路が渋滞していて
私はいつの間にか眠ってしまっていた
それでもいっちゃんは
私の手をずっと握ってくれて
何度も優しく頭を撫でてくれていた
郁美
もう大丈夫……
郁美
おうちに着くからね
拓郎
絶対に守るよ……
郁美
うん
気がつくと私は布団の中にいた
車の中で眠ってしまった私を
たっくんがここまで運んでくれたみたいだった
拓郎
あ、起きた
美結
たっくん……
拓郎
おはよう……
私が不安にならないように
たっくんはずっと手を握ってくれていて
目が覚めて直ぐに感じたのは
たっくんの手の温もりだった
拓郎
郁美さん
郁美
あ、起きた?
美結
いっちゃん……
郁美
お腹すいた?
拓郎
何か食べる?
美結
いっちゃんのごはん……
郁美
わかった
郁美
待っててね
いっちゃんの声に小さく頷くと
いっちゃんはキッチンへ
引き続きたっくんがそばにいてくれた
今日からここが私の家
真っ白な天井
真っ白な壁
真新しいベッド
ふかふかのお布団
お布団からはとてもいい香りがして
すごく幸せな気持ちになったけど
拓郎
お水持ってこようか?
たっくんがいなくなるのが怖くて
美結
いっちゃだめ……
たっくんの手をぎゅっと握った
拓郎
美結……
拓郎
大丈夫だよ
拓郎
怖くないよ
それでもやってくる不安な気持ち
たっくんはちゃんとわかってくれて
拓郎
一緒に取りに行こう
美結
うん……
私を抱き上げて連れていってくれた
郁美
あ、たっくん!美結!
拓郎
お水あるかな?
郁美
冷蔵庫に入れてあるよ
拓郎
ごはんできたんだ?
郁美
今、呼びに行くところだったの
拓郎
じゃあ、このままごはん食べちゃおうか
食卓に並べられたいっちゃんのごはん
できたてホカホカのごはんとお味噌汁
お弁当にはなかったコロッケ
美結
おいひい!
口の中いっぱいにコロッケを頬張って
拓郎
い、入れすぎじゃないかな……
郁美
美結~!
でも二人は怒らずに
優しく見守ってくれていた
私が一人にならないように
必ずどちらかがそばにいてくれて
手をぎゅっと握ってくれる
郁美
お風呂入るよ~
本当は三人で入りたかったけど
狭くて入れなくて
郁美
たっくんとは明日にしよう
お風呂から上がってベッドに行くと
郁美
おやすみ
拓郎
おやすみ
三人で川の字になって眠った