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みつお真
雨宮 希空
希空に呼ばれ
凪は兄姉の視線から逃げるように 廊下を歩いた。
足は震えていたけれど
胸の奥のどこかが ほんの少しだけ軽くなる。
希空の部屋の前で 立ち止まると
中からもうひとつの声がした。
雨宮 光希
光希の声だった。
扉を開けると、 部屋にはふたりが座っていた。
光希はベッドに腰掛け
希空は机の前の椅子を くるっと回して
凪の方を見ていた。
部屋の空気は
家の中でも珍しく “あたたかい”温度だった。
雨宮 希空
希空が優しく言う。
凪は、とっさに答えられなかった。
喉に言葉がひっかかる。
代わりに光希が、 凪の頭をふわっとくしゃっとした。
雨宮 光希
その声は本当に優しくて、 凪の胸の奥をチクリと刺した。
雨宮 凪
希空は凪の表情を見つめながら、 少しだけ眉を寄せた。
雨宮 希空
雨宮 希空
その優しさが胸の奥にしみる。
言葉を飲み込みすぎて、 喉の奥が苦しくなる。
凪は小さくうつむいたまま、 首をふる。
雨宮 凪
その言い方が、 いつもより弱かった。
希空と光希が、 ほんの一瞬だけ視線を交わす。
雨宮 希空
希空が膝をすこし曲げて、 凪の目の高さに合わせる。
雨宮 希空
雨宮 希空
雨宮 希空
優しい声で、
逃げ道をつぶさないように 話しかける。
雨宮 光希
雨宮 光希
と 笑った。
その“誰にも言わない”という言葉で、 凪の胸がつっと痛んだ。
雨宮 凪
雨宮 凪
雨宮 凪
ほんの少しだけ、 凪の心が揺れた。
けれど
兄姉の冷たい声が脳裏に浮かぶ。
——言わないでね?
——言ったらどうなるか 分かってんだよな?
凪は、ぎゅっと唇を噛んだ。
雨宮 凪
希空の手が止まる。
光希の笑顔も、ゆっくりと弱まる。
凪が嘘をついていることに
ふたりとも気づいている。
だけど無理に聞こうとはしなかった。
希空はそっと、 凪の背中に手を置いた。
雨宮 希空
雨宮 希空
その言葉だけで、 凪の胸がぐっと熱くなった。
雨宮 凪
その優しい響きが、 壊れそうな心にふわっと触れた。
けれど同時に、
凪の胸の奥には 別の痛みも生まれた。
——言えない。
——言ったら……また怒られる。
優しさと恐怖の間で、 凪の心は静かに揺れていた。
そして凪は、そっと俯く。
雨宮 凪
その一言だけを残し、 何も言えなかった。
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