優しげな細い瞳。
笑う度、口に手を近づける癖。
君の仕草はどれも
僕の心を癒してくれた。
3月に近付くと 外の匂いが懐かしく思えた。
目を瞑ると当たり前のように あの頃の映像が流れ出す。
1年経った今でも
君の声、君の顔、
そして君の好きだったものも、
微かに覚えていた。
特にあの日は鮮明に。
会いたい。
また心の何処かで呟いてしまう。
消しゴムが落ちた。
拾おうと手を伸ばす。
端が潰れたカバーに、
所々黒ずんだ消しゴム。
そう言えば昔、
消しゴムに、マジックペンで、 あの子の名前
書いてたな。
"好きな子の名前を書いて、 その消しゴムを使い切ると恋が叶う"
…だっけか。
そんなうまい話を信じてた昔の俺、
馬鹿だったな。ほんと。
小さく鼻で笑いながら、
ふと、 消しゴムのカバーを取る。
目を疑った。
消しゴムに書かれた、 とても薄い文字。
"だいすき"
おそいよ。
ぼやけた視界で消しゴムを握る。
ぎゅっと。
また何処かへ
消えてしまわないように__
END 「恋のおまじない」
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