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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

2年前

当時中学3年だった凛太郎は 電車に揺られなが霞北中へ通学していた

揚羽凛太郎

ん?

眞琴杏樹

・・・・・

凛太郎は横に立つ 杏樹が気になっていた

揚羽凛太郎

(なんかこの子・・・
怯えてる感じだな)

揚羽凛太郎

(何かあったのかな?)

杏樹は明らかに 何かに怯えた様子だった

体も小刻みに震えていた

揚羽凛太郎

(どうしたんだろ?)

揚羽凛太郎

(ん?)

サラリーマン

・・・・・

揚羽凛太郎

(なんだこのオヤジ)

揚羽凛太郎

(なんか鼻息荒くね?)

凛太郎は杏樹と サラリーマンを交互に見る

揚羽凛太郎

(も、もしかして・・)

凛太郎はすぐにポケット からスマホを取り出し メールの下書きに文字を入力する

そして文字を入力し終わると 杏樹の横腹をスマホでツンと触る

眞琴杏樹

え?

杏樹は不安そうに 凛太郎の顔を見上げる

揚羽凛太郎

(コレ!スマホ!見て!)

凛太郎は必死にスマホを 見るように目で訴える

杏樹にそれが伝わったのか 杏樹は凛太郎が差し出す スマホを見る

眞琴杏樹

・・・・

揚羽凛太郎

(ど、どうかな?)

スマホの画面を 確認した杏樹は

首を縦に2回振った

揚羽凛太郎

(やっぱりか・・・)

凛太郎は再びスマホに 文字を入力して 杏樹に画面を見せる

眞琴杏樹

・・・・・

それを確認した杏樹は 首を縦に2回振る

揚羽凛太郎

(よし・・・)

凛太郎は杏樹を痴漢している サラリーマンの腕を掴む

揚羽凛太郎

おじさん!さっきから
何やってるんです?

揚羽凛太郎

この手で!

凛太郎はサラリーマンの腕を 自らの顔の高さまで持ち上げる

サラリーマン

なっ!なんだ君は!

サラリーマンが 声を荒げる

その声に反応し 周りの視線が一気に集まる

揚羽凛太郎

ただの通りすがりですけど

揚羽凛太郎

さっきからずっと
その子のおしり
触ってましたよね?

眞琴杏樹

・・・・・

サラリーマン

何をバカな事を!

サラリーマン

名誉毀損で
訴えてやろうか?

揚羽凛太郎

まぁ、俺も同じ男ですから

揚羽凛太郎

気持ちが分からない
って言ったら
嘘になりますけど

揚羽凛太郎

やってしまっま物は
しょうがないんだから

揚羽凛太郎

ちゃんと自分が犯した
罪を認めましょうよ

揚羽凛太郎

おじさん大人でしょ?

サラリーマン

ぐ・・・

眞琴杏樹

この人・・痴漢です!

杏樹は味方が現れた事に安堵し サラリーマンに人差し指を突き出す

眞琴杏樹

ずっと私のお尻
触ってたんです!

サラリーマン

この小娘がぁ!

サラリーマンは 拳を高らかに突き上げる

その拳を凛太郎が掴む

揚羽凛太郎

ちょっとおじさん!

揚羽凛太郎

この拳をどうする
つもりですか?

揚羽凛太郎

まさかとは思いますけど
その子を殴るんですか?

揚羽凛太郎

また罪が増えますよ

サラリーマン

うぐ・・・

サラリーマンは 観念したのか その場にへたり込む

眞琴杏樹

お兄さん
ありがとうございます

杏樹は深々と頭を下げる

揚羽凛太郎

怖かったでしょ?
もう大丈夫だから!

眞琴杏樹

はいっ!

それからサラリーマンは 駅に着くと駅員室に連れて行かれ

警察により 警察署へと連行されて行った

眞琴杏樹

本当に・・・

眞琴杏樹

ありがとうございました

杏樹は凛太郎に深々と頭を下げる

揚羽凛太郎

いや、そんな・・

眞琴杏樹

私・・ホント怖くて

眞琴杏樹

お兄さんがメールの
画面見せてくれた時

眞琴杏樹

ホント安心したんです

眞琴杏樹

ありがとうございます

揚羽凛太郎

ちょっと辞めてよ

揚羽凛太郎

頭下げるとか・・・

眞琴杏樹

ダメです!

眞琴杏樹

お兄さんは・・・

眞琴杏樹

私の恩人です

揚羽凛太郎

あはは!大袈裟だよ

眞琴杏樹

いえ!そんな事無いです

眞琴杏樹

今日はありがとう
ございました

揚羽凛太郎

気にしなくていいよ

揚羽凛太郎

俺って昔っから
困ってる人がいると

揚羽凛太郎

放っておけない
タチでさ・・・

眞琴杏樹

それ・・素敵だと
思いますよ♫

揚羽凛太郎

え?素敵?

眞琴杏樹

はい♫素敵です♫

眞琴杏樹

困ってる人を見捨てずに
助けるって・・・

眞琴杏樹

頭で考えるよりも
ずっと難しい事ですよ

揚羽凛太郎

そ、そうかなぁ?

揚羽凛太郎

なんか照れちゃうな、あはは

揚羽凛太郎

ありがとう

揚羽凛太郎

じゃあ、俺行くね?

眞琴杏樹

は、はい・・・

揚羽凛太郎

気をつけてね

眞琴杏樹

あ、あの!!!

揚羽凛太郎

ん?どうかした?

眞琴杏樹

良かったら・・・

眞琴杏樹

LIMEの交換
してくれませんか?

揚羽凛太郎

LIME?

眞琴杏樹

ダメ・・・ですか?

揚羽凛太郎

(まぁ、LIME
くらいなら良いか)

揚羽凛太郎

迷惑なんかじゃないよ

揚羽凛太郎

交換しようか!

眞琴杏樹

良かった・・・

眞琴杏樹

ありがとうございます

こうして凛太郎と杏樹は 互いのLIMEを交換した

凛太郎は杏樹と別れ 学び舎へと歩みを進めるが

揚羽凛太郎

あっ!しまった!

揚羽凛太郎

俺が降りなきゃいけない駅は

揚羽凛太郎

もう一個先の駅じゃん!

揚羽凛太郎

なんで降りちゃったんだろ!

揚羽凛太郎

やべーなこれじゃ
完璧に遅刻じゃん!

揚羽凛太郎

急がねーと!

凛太郎は急足で 一駅先まで向かう

ガラガラ

揚羽凛太郎

すいません!
遅れました!

凛太郎は慌てた様子で教室に入る

皆川先生

揚羽!珍しいな!

皆川先生

お前が遅刻なんて

揚羽凛太郎

いや、すいません

揚羽凛太郎

寝坊しちゃいまして

皆川先生

まぁ、でもまだ
出席取る前だから

皆川先生

間に合った事に
しといてやるよ

揚羽凛太郎

あざっス!助かります

和久井龍也

良かったな!リン!

揚羽凛太郎

ああ!マジ助かった

和久井龍也

でもお前が
寝坊なんて珍しいな

揚羽凛太郎

いや実はさ──

皆川先生

揚羽!

揚羽凛太郎

は、はい・・・

皆川先生

遅刻は無かった事に
してやるとは言ったが

皆川先生

無駄話していいとは
言ってないぞ?

揚羽凛太郎

あ、すいません・・・

休み時間

和久井龍也

痴漢?

揚羽凛太郎

ああ、そうなんだよ

凛太郎は龍也に 今日の遅刻の経緯を話した

クラスメイトA

え?揚羽ってば
痴漢なんてやったの?

揚羽凛太郎

はぁ?違──

クラスメイトA

キモい!死ねよ!女の敵!

揚羽凛太郎

いや、だから──

クラスメイトA

生きる価値ねーよ!死ね

揚羽凛太郎

人の話聞けっつの!

揚羽凛太郎

俺が女の子に
痴漢したんじゃなくて

揚羽凛太郎

女の子がおっさんに
痴漢されてたんだよ!

揚羽凛太郎

それを俺が助けたの!

クラスメイトA

あっ、そーゆー話?

クラスメイトA

なんだぁ。

揚羽凛太郎

ったく・・・

ピロン

凛太郎のスマホから LIME通知音が鳴る

揚羽凛太郎

ん?LIME?

凛太郎はスマホを ポケットから取り出し LIMEを開く

ANJYU

先程助けていただいた
眞琴杏樹
(まことあんじゅ)です
早速LIMEしちゃいました❤️

和久井龍也

誰から?

揚羽凛太郎

あ、いや・・・

和久井龍也

もしかしてリンが
話してた子か?

揚羽凛太郎

まぁ、一応・・・

和久井龍也

ちょっと見せろよ

龍也が身を乗り出し 凛太郎のスマホを覗き込む

揚羽凛太郎

ちょ!見るなよ!

凛太郎はスマホを 近づく龍也から遠ざける

和久井龍也

別に良いだろ!
LIMEくらい!

揚羽凛太郎

ぜってー見せねーよ!

クラスメイトA

えー・・っと
なになに・・・

クラスメイトA

早速LIME
しちゃいました

クラスメイトA

ハート!だって!

揚羽凛太郎

勝手に見るなよ!

和久井龍也

ハートって絵文字かよ

クラスメイトA

うん♫うん♫

和久井龍也

くぅー!
やるじゃねーか!リン!

揚羽凛太郎

バ、バカか!!

揚羽凛太郎

この子は・・その

揚羽凛太郎

と、友達みてーなもんだよ

和久井龍也

でた!でた!リンの
人類皆友達理論!

クラスメイトB

さすがは
「お節介アゲハ」だな

揚羽凛太郎

なんだ?その
お節介アゲハって

クラスメイトB

ホラ!揚羽ってお節介が趣味
みてーなトコあるだろ?

クラスメイトB

だからお節介アゲハ!

和久井龍也

確かにリンらしいな!

和久井龍也

この前だって、妊娠して
先輩に捨てられた女子の
相談乗ってやってたろ?

揚羽凛太郎

いや、だからって
まんま過ぎるだろ!

和久井龍也

いいじゃんかよ!
お節介アゲハくんwww

揚羽凛太郎

笑ってんじゃねーよ!

揚羽凛太郎

そんなん蔑称だろーが!

揚羽凛太郎

不名誉極まりねーよ!

クラスメイトA

てか早く返信
してあげたら?

クラスメイトA

既読はもうついてんだし

揚羽凛太郎

あっ、そっか!

揚羽凛太郎

(うー・・・ん)

揚羽凛太郎

(なんで返そうかな?)

リン

LIMEありがとう!
てか、互いに自己紹介
してなかったよね
俺は揚羽凛太郎
(あげはりんたろう)です!

揚羽凛太郎

(こんな感じかな?)

凛太郎はスマホを 机の上に置く

和久井龍也

(隙あり!)

龍也が凛太郎の スマホを奪う

揚羽凛太郎

ちょ龍也!返せよ!

和久井龍也

どれどれ・・・

和久井龍也

なんて返信したんだ?

龍也は凛太郎の 返信を確認する

和久井龍也

なんだよ!この
公式アカ的な返信!

揚羽凛太郎

返せよっ!

凛太郎は龍也から スマホを取り替えす

和久井龍也

なんかさぁ・・
もっとあるだろ!

揚羽凛太郎

じゃあ何て送れば
いいんだよ!

揚羽凛太郎

つーかそもそも
変に余計なこと言って
勘違いさせてもアレだろ!

揚羽凛太郎

こんくらいで
丁度いいんだよ!

和久井龍也

まぁ、それもそっか

放課後

和久井龍也

リン!

揚羽凛太郎

ん?なんだ?

和久井龍也

帰りにマ○ク行かね?

揚羽凛太郎

おっ!マ○ク!いいね!

クラスメイトA

え?私も行きたい!

クラスメイトB

俺も!俺も!

揚羽凛太郎

じゃあみんなで行くか!

凛太郎が校門に 向かっている途中

和久井龍也

ん?誰だ?あの子

クラスメイトA

なに?なに?

揚羽凛太郎

どうかしたのか?

和久井龍也

ホラ!あそこだよ!校門!

和久井龍也

他校の制服着た
女の子居るだろ?

クラスメイトB

他校?

龍也が指差す校門を 皆が一斉に見る

眞琴杏樹

・・・・・

それは眞琴杏樹だった

揚羽凛太郎

あっ!?

和久井龍也

なんだ!リンの
知り合いか?

揚羽凛太郎

あの子だよ!

揚羽凛太郎

今日、痴漢に
遭ってた女の子

クラスメイトA

え?まじで?

クラスメイトB

めちゃ可愛い子じゃん!

眞琴杏樹

あっ!

杏樹は凛太郎に気付くと 笑顔で近づいてくる

眞琴杏樹

あの・・揚羽先輩?

揚羽凛太郎

ま、眞琴さんだったかな?

眞琴杏樹

はい♫

眞琴杏樹

眞琴杏樹です♫

揚羽凛太郎

な、なんで俺の学校が
ここって分かったの?

揚羽凛太郎

学校名伝えたっけ?

眞琴杏樹

あの・・コレ・・・

杏樹はポケットから 何かを取り出して 凛太郎に手渡す

揚羽凛太郎

あっ・・生徒手帳・・

それは凛太郎の 生徒手帳だった

揚羽凛太郎

あれ?俺落としてた?

揚羽凛太郎

全く気が付かなかったよ

眞琴杏樹

生徒手帳無かったら
何かと不便だと思って

揚羽凛太郎

それでわざわざ
届けに来てくれたの?

眞琴杏樹

は、はい・・・

杏樹は恥ずかしそうに 頬を赤らめる

揚羽凛太郎

ありがとう

揚羽凛太郎

助かったよ

和久井龍也

おい!リン!

和久井龍也

ちょっと来い!

龍也は凛太郎を 引っ張る

揚羽凛太郎

なんだよ!

和久井龍也

あの子ってアレ
なんだろ?

和久井龍也

痴漢されてたって
女の子!!

揚羽凛太郎

ま、まぁ・・・

和久井龍也

待ち合わせしてたのかよ!

揚羽凛太郎

いや、これは──

和久井龍也

んだよ!!

和久井龍也

あーだこーだ言いながらも

和久井龍也

やる事やってんじゃねーか!

龍也は茶化すように 凛太郎の脇腹を突っつく

揚羽凛太郎

ち、ちげぇーよ!

揚羽凛太郎

なんか俺、生徒手帳を
落としてたみたいでさ

揚羽凛太郎

それを届けに来て
くれたんだよ

和久井龍也

わざわざ学校までか?

揚羽凛太郎

見りゃわかるだろ!
そうだろーが!

和久井龍也

いやいや、その日の内に
学校まで来るか?

和久井龍也

なんつーか
脈アリなんじゃね?

揚羽凛太郎

そ、そうかなぁ?

和久井龍也

相変わらずソッチには
疎いヤツだな!お前!

揚羽凛太郎

相変わらずで
悪かったな!

眞琴杏樹

あの・・・

揚羽凛太郎

あっ、ごめん!
話の途中だったね!

眞琴杏樹

いえ・・・

揚羽凛太郎

ごめんね!わざわざ
持ってきてもらっちゃって

眞琴杏樹

私も助けて
貰いましたから

眞琴杏樹

お互い様ですよ♫

揚羽凛太郎

そっか・・・

眞琴杏樹

それで・・・

揚羽凛太郎

ん?どうかした?

眞琴杏樹

先輩ってこれから
予定とかって
あったりしますか?

揚羽凛太郎

まぁ、コレから友達と
マ○クに──

凛太郎が言い切る前に 龍也が割って入る

和久井龍也

いや、こいつ暇だぜ

揚羽凛太郎

ちょ!龍也!

和久井龍也

《いいじゃねーか》

和久井龍也

《もしかしたら
お誘いかもしんねーだろ?》

揚羽凛太郎

《いや・・・》

眞琴杏樹

あの・・・

揚羽凛太郎

ん?どうした?

眞琴杏樹

もし・・迷惑じゃないなら

眞琴杏樹

駅まで一緒に
行きませんか?

揚羽凛太郎

駅まで?

和久井龍也

《ホラ!言ったろ?》

揚羽凛太郎

《ま、まぁ・・・》

和久井龍也

《俺らの事はいいからさ》

和久井龍也

《行ってこいって!》

揚羽凛太郎

《お、おぅ・・・》

揚羽凛太郎

《わ、わかった・・・》

揚羽凛太郎

じゃ、じゃあ・・・

揚羽凛太郎

駅まで一緒に行こうか?

眞琴杏樹

いいんですか!?

揚羽凛太郎

お、おぅ!行こうよ!

眞琴杏樹

良かったぁ♫

眞琴杏樹

ありがとうございます♫

凛太郎と杏樹は しばらく二人きりで 駅までの道のりを歩いていた

揚羽凛太郎

ところで眞琴さんって
何年生なの?

眞琴杏樹

2年生です

揚羽凛太郎

あ、だからさっき
先輩って言ってたのか

眞琴杏樹

すいません・・

揚羽凛太郎

ん?なんで謝るの?

眞琴杏樹

だって生徒手帳を
勝手に見ちゃったから

揚羽凛太郎

いやいや!むしろ
謝るのはコッチだって!

揚羽凛太郎

わざわざ届けて
もらっちゃってさ

眞琴杏樹

いえ・・そんな

揚羽凛太郎

てか学校って
どこ通ってんの?

揚羽凛太郎

今朝の駅で降りたって事は
あの駅近くの学校?

眞琴杏樹

薊ヶ丘(あざみがおか)です

揚羽凛太郎

薊ヶ丘かぁ

揚羽凛太郎

薊ヶ丘って確か
女子校だったよね?

眞琴杏樹

はい

揚羽凛太郎

じゃあ今朝のオヤジは

揚羽凛太郎

眞琴さんが薊ヶ丘の
生徒だって知った上で

揚羽凛太郎

痴漢したって事なのかな

眞琴杏樹

多分そうだと思います

揚羽凛太郎

まったく・・・
卑怯なヤツだよなぁ

揚羽凛太郎

男のかざかみにも
おけないヤツだよ!

眞琴杏樹

でも先輩のおかげて
助かりました

揚羽凛太郎

いやいや、いいよ

揚羽凛太郎

まぁ、アレだよ
一応俺も男だからさ

揚羽凛太郎

やっぱ男って女の子を
護るもんじゃん?

眞琴杏樹

一応ってなんですか(笑)

眞琴杏樹

先輩面白い♫

揚羽凛太郎

え?面白い?

揚羽凛太郎

そ、そうかなぁ?

揚羽凛太郎

あはは・・・

眞琴杏樹

あの・・先輩?

揚羽凛太郎

ん?どうした?

眞琴杏樹

迷惑じゃなかったら
なんですけど

眞琴杏樹

同じ電車で
帰りませんか?

揚羽凛太郎

同じ電車で?

眞琴杏樹

あっすいません

眞琴杏樹

迷惑でしたよね・・・

揚羽凛太郎

いや、迷惑なんて
思わないけど・・・

眞琴杏樹

また痴漢に
遭ったらって考えたら

眞琴杏樹

怖くて・・・

揚羽凛太郎

ああ!そういう事か!

眞琴杏樹

ダメ・・ですか?

揚羽凛太郎

ううん!ダメ
なんて言わないよ

揚羽凛太郎

同じ電車で帰ろっか!

眞琴杏樹

ホントですか!?

揚羽凛太郎

てか、これからしばらく
同じ電車で通学しない?

眞琴杏樹

え!?

揚羽凛太郎

降りる駅だって
一駅違いだし

揚羽凛太郎

それにホラ

揚羽凛太郎

また痴漢に遭ったら
危ないでしょ?

揚羽凛太郎

なんて言うか、俺を
ボディーガードだと思ってさ

眞琴杏樹

いいんですか?

揚羽凛太郎

まぁ、眞琴さんが
迷惑じゃないなら・・・

眞琴杏樹

迷惑なんて思いませんよ

眞琴杏樹

ありがとうございます

揚羽凛太郎

いや、いいんだよ

揚羽凛太郎

俺・・眞琴さんの事
友達だって思ってるから

揚羽凛太郎

友達の力になりたいんだ

眞琴杏樹

(友達・・か・・)

眞琴杏樹

ありがとうございます

揚羽凛太郎

じゃあ行こっか!

眞琴杏樹

はい♫

それからしばらく凛太郎と杏樹は 同じ電車で通学の時間を共に過ごした

凛太郎が最寄駅から 8時発の電車に乗り込み

8時10分に次の駅から 杏樹が乗り込む

杏樹が通う薊ヶ丘女子中学校がある 薊ヶ丘駅まで約20分間電車に揺られる

その20分間は 二人が誰からも邪魔されず 会話できる唯一の時間だった

眞琴杏樹

え!?先輩って
彼女居ないんですか?

揚羽凛太郎

なんだよ!その驚き!

眞琴杏樹

いや、別にバカに
したわけじゃなくて

眞琴杏樹

意外だなぁと思って

揚羽凛太郎

意外?

眞琴杏樹

だって先輩は
こんなに優しくて
かっこいいのに

眞琴杏樹

彼女が居ないなんて

揚羽凛太郎

ううぅ・・そんな事
言ってくれるの
眞琴だけだよ・・・

眞琴杏樹

ちょっと!もう先輩!

眞琴杏樹

何泣いてるんですか(笑)

揚羽凛太郎

いやぁ、嬉しくてさ

眞琴杏樹

先輩可愛い

眞琴杏樹

昨日のテストどうでした?

眞琴杏樹

テストだったんですよね?

揚羽凛太郎

散々だったよ・・・

揚羽凛太郎

範囲を予測して
自分なりに勉強
してたんだけど

揚羽凛太郎

その予測がことごとく
外れててさ・・・

揚羽凛太郎

追試だよ・・・

眞琴杏樹

もう先輩!

眞琴杏樹

何やってるんですか

揚羽凛太郎

いや、英語とか
使わねーだろ?

揚羽凛太郎

ここジャパンだぞ!

眞琴杏樹

そう言いながら
英語使ってるじゃ無いですか

揚羽凛太郎

いや、これはあれだよ
ルー○柴的な使い方で──

眞琴杏樹

誰ですか?その人?

揚羽凛太郎

いや、知らないならいいんだ

眞琴杏樹

今はグローバルな
時代ですから

眞琴杏樹

英語くらい出来なきゃ!

眞琴杏樹

一気に置いてけぼりですよ

揚羽凛太郎

そういう眞琴は
英語できるのかよ?

眞琴杏樹

I love seniors more
than anyone else in the world

揚羽凛太郎

発音すげー!
ネイティブって感じ

揚羽凛太郎

もしかして天才ですか?

眞琴杏樹

ふんっ!まぁざっと
こんなもんですよ!

揚羽凛太郎

てか何て言ったの?

眞琴杏樹

ないしょ♫

揚羽凛太郎

なんだよ!それ!

眞琴杏樹

ふふふ

眞琴杏樹

先輩って
一人っ子なんですね

眞琴杏樹

私と一緒だ♫

揚羽凛太郎

あっ!眞琴も兄弟
居ないのか?

眞琴杏樹

そうなんですよ

眞琴杏樹

私お兄ちゃん
欲しかったなぁ

揚羽凛太郎

お兄ちゃん?

眞琴杏樹

そう♫お兄ちゃん♫

眞琴杏樹

先輩みたいに優しくて
かっこいいお兄ちゃん♫

揚羽凛太郎

え?

眞琴杏樹

ね?お兄ちゃん♫

揚羽凛太郎

っ!!!!!!

眞琴杏樹

なんてね♫

揚羽凛太郎

バ、バカ!
何を言ってんだよ!

眞琴杏樹

あは♫先輩照れてる♫

眞琴杏樹

先輩可愛い♫

揚羽凛太郎

コ、コホン!

揚羽凛太郎

まぁ、俺はアレだな

揚羽凛太郎

俺をからかったりせずに

揚羽凛太郎

後ろを走って
「お兄ちゃん」って
付いてきてくれる

揚羽凛太郎

可愛い妹が欲しいな♫

眞琴杏樹

なにそれ!ひどーい!

揚羽凛太郎

なんてな!冗談だよ

眞琴杏樹

先輩のいじわる!

眞琴杏樹

先輩って映画
とか好きですか?

揚羽凛太郎

まぁ、ホラー以外なら

眞琴杏樹

ホラー映画
苦手なんですか?

揚羽凛太郎

なんかさ、いきなり
「ドン!!」みたいなヤツ
苦手なんだよな・・

揚羽凛太郎

ホラーって大体が
いきなり驚かすじゃん

揚羽凛太郎

ああいうの昔から
ダメなんだよ

眞琴杏樹

それがホラーの
面白いとこじゃないですか

揚羽凛太郎

眞琴はホラー好きなのか?

眞琴杏樹

昔から大好きです

揚羽凛太郎

すげぇな・・・

眞琴杏樹

なら今度の休みに
一緒に観に行きません?

眞琴杏樹

ホラー映画♫

揚羽凛太郎

話聞いてたのかよ

揚羽凛太郎

苦手っつったじゃん
ホラー映画は!

眞琴杏樹

えー

眞琴杏樹

嫌なんですか?

揚羽凛太郎

まぁ、嫌とは
言わねーけどさ

眞琴杏樹

ね?ね?
行きましょうよ♫

眞琴杏樹

可愛い後輩の
為だと思って

眞琴杏樹

ね?先輩♫

揚羽凛太郎

可愛いって
自分で言うか?

眞琴杏樹

ああ!そういう事言って
後輩を傷つけるんですね

眞琴杏樹

はい!はい!わかりました

揚羽凛太郎

あ、いや
別にそういう──

眞琴杏樹

じゃあ一緒に
行ってくれます?

眞琴杏樹

ホラー映画観に!

揚羽凛太郎

はぁ〜・・・

揚羽凛太郎

分かったよ・・・

眞琴杏樹

え?ホントに!?

揚羽凛太郎

まぁ、可愛い後輩の
頼みだから無碍に
するわけにもな・・・

眞琴杏樹

やったー♫

揚羽凛太郎

コラ!電車で騒ぐなよ

眞琴杏樹

あ、すいません

眞琴杏樹

嬉しくってつい

揚羽凛太郎

ったく・・・

休日

眞琴杏樹

先輩!こっち!こっち!

おめかしした杏樹が 右手を天高く突き上げ 手招きで凛太郎に呼びかける

揚羽凛太郎

悪い、ちょっと
遅れちまった

眞琴杏樹

もう!女の子
待たせるとか!

眞琴杏樹

何考えてるんですか?

揚羽凛太郎

ごめん・・・

眞琴杏樹

まぁ、ポップコーン
奢ってくれたら
許してあげますよ♫

揚羽凛太郎

お、おぅ!
いくらでも奢るよ!

眞琴杏樹

ふふふ

映画館

揚羽凛太郎

ひぃ!!!!

揚羽凛太郎

うわぁぁぁ!!!

揚羽凛太郎

いぎゃぁぁぁ!!!

眞琴杏樹

先輩・・うるさい

揚羽凛太郎

だってコレかなり怖──

揚羽凛太郎

ぎゃぁぁぁぁ!!!

ホラー映画を観て 疲れ切った凛太郎は ベンチに腰を下ろしていた

揚羽凛太郎

はぁ〜・・・

眞琴杏樹

もう!大丈夫ですか?

杏樹が凛太郎の背中をさする

揚羽凛太郎

あぁ、悪いな・・・

眞琴杏樹

てか本当にホラー
苦手だったんだね

揚羽凛太郎

なんだよ!嘘だって
思ってたのか?

眞琴杏樹

いや、そうじゃなくて

眞琴杏樹

ここまでとは・・・

揚羽凛太郎

いや、アレは怖かったぞ

揚羽凛太郎

なんでアレで
年齢制限ねーんだよ

揚羽凛太郎

あんなのR20だろ!

眞琴杏樹

ぷっ

揚羽凛太郎

何笑ってんだよ

眞琴杏樹

だって先輩
可愛いんだもん

揚羽凛太郎

ったく・・・

揚羽凛太郎

馬鹿にしやがって!

数日後

杏樹は放課後に 霞北中の校門に来ていた

眞琴杏樹

今日はサプライズで

眞琴杏樹

学校まで来ちゃった♫

眞琴杏樹

先輩ってまだ
帰ってないよね?

眞琴杏樹

確かLIMEで
今日は遅くなる
って言ってたから

杏樹がそんな事を考えていると 凛太郎が龍也とともに 校門に向かって歩いてくる

眞琴杏樹

あ!先輩来た!

杏樹は凛太郎の姿を確認すると 物陰に隠れる

眞琴杏樹

(いきなり背後から
声かけて
脅かしちゃお♫)

眞琴杏樹

(どれだけビビるかな)

眞琴杏樹

(楽しみ♫)

凛太郎と龍也は 帰宅路を歩く

その後ろを 杏樹が気づかれないように 腰を落としながら 抜き足差し足で尾行する

和久井龍也

つーか未だに
一緒に通学してんのか?

揚羽凛太郎

え?

和久井龍也

いや、え?じゃなくて

和久井龍也

ホラ!あの子だよ!

揚羽凛太郎

ああ!眞琴か!

眞琴杏樹

(あ!先輩が
私の話をしてる♫)

和久井龍也

もうすぐ
2週間くらいだろ?

揚羽凛太郎

まぁな・・・

和久井龍也

なんか良い感じだよな

揚羽凛太郎

は?なんだよ
良い感じって

和久井龍也

いや、だって──

和久井龍也

付き合ってんだろ?
その眞琴って子と・・

揚羽凛太郎

え?

眞琴杏樹

(あっ!それ気になる)

眞琴杏樹

(先輩って私の事
どう思って
くれてるんだろ?)

眞琴杏樹

(先輩って私の前で
そういう話
全然してくんないから)

眞琴杏樹

(知りたいなぁ)

杏樹は期待に胸を膨らませ 聞き耳をたてる

しかし凛太郎の口から 発せられた言葉は 杏樹が求めていた言葉とは違った

揚羽凛太郎

いや、付き合ってねーし

眞琴杏樹

(え!?)

和久井龍也

あっ、付き合ってねーの?

和久井龍也

てっきり俺は
付き合ってるとばかり

揚羽凛太郎

まぁ、眞琴は
なんつーか

揚羽凛太郎

友達っつーか

揚羽凛太郎

可愛い後輩っつーか

揚羽凛太郎

うー・・・ん
何て言ったら良いかな

揚羽凛太郎

あ!あれだ!可愛い
妹的なヤツだな!うん!

和久井龍也

あっ!そういうヤツか!

眞琴杏樹

(何・・それ・・)

眞琴杏樹

(友達?後輩?妹?)

眞琴杏樹

(彼女じゃないの?)

眞琴杏樹

(そりゃ確かに
付き合ってるとは
言えないかもだけど)

眞琴杏樹

(少なくとも私は
先輩の事が好き)

眞琴杏樹

(先輩も私と同じ
気持ちなんだって
勝手に思ってた・・)

眞琴杏樹

(けど違ったんだ・・・)

眞琴杏樹

(私だけだったなんて・・)

眞琴杏樹

(嫌だよ・・そんなの)

揚羽凛太郎

けどもうそろそろ
いいかなって
思ってんだよな

和久井龍也

何が?

揚羽凛太郎

眞琴と同じ電車で
通学すんの

眞琴杏樹

(え!?)

眞琴杏樹

(嘘・・・)

眞琴杏樹

(先輩?何言ってんの?)

和久井龍也

もうやめるのか?

揚羽凛太郎

まぁ、もともとは
眞琴がまた痴漢にあったら
危ないかなって思って

揚羽凛太郎

一緒に登校してたわけで

揚羽凛太郎

眞琴も、もうすっかり
元気だからさ・・・

揚羽凛太郎

もう同じ電車で
通学しなくても
いいかなって・・・

眞琴杏樹

(嫌・・嫌・・嫌だよ)

眞琴杏樹

(嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!)

眞琴杏樹

(そんな事
言わないでよ先輩)

眞琴杏樹

(私・・もっと先輩と
一緒に居たいよ)

眞琴杏樹

(もっと先輩と一緒に
登校したいよ・・・)

眞琴杏樹

(離れたくない!離れたくない!)

眞琴杏樹

(一緒に居たい!)

眞琴杏樹

(居たい!居たい!居たい!)

眞琴杏樹

(見捨てないで!見捨てないで!)

眞琴杏樹

(好きだから・・好きだから
私の前から居なくならないで)

眞琴杏樹

(お願い!お願い!お願い!)

揚羽凛太郎

だからそろそろ──

杏樹は涙を流しながら 凛太郎に抱きつく

揚羽凛太郎

え!?眞琴!?

揚羽凛太郎

なんでここに居んの?

眞琴杏樹

嫌だ!嫌だ!嫌だ!

眞琴杏樹

ずっと一緒に
登校したいよ!先輩!

和久井龍也

な、なんだよ!いきなり!

和久井龍也

ど、どういう状況だよ!

突然のハプニングに 動揺を隠せない龍也

揚羽凛太郎

ど、どうしたんだよ!眞琴!

眞琴杏樹

私・・・

眞琴杏樹

先輩と離れたくないよ

揚羽凛太郎

え?離れたく?

眞琴杏樹

もう同じ電車で
登校しないなんて

眞琴杏樹

そんな事言わないでよ

揚羽凛太郎

眞琴・・・

和久井龍也

お、おい・・リン・・

和久井龍也

大丈夫かよ・・この子・・

揚羽凛太郎

わ、悪い龍也・・・

揚羽凛太郎

ちょっと先に
帰っててくんねーかな?

和久井龍也

ま、まぁ、いいけどよ・・

揚羽凛太郎

俺は大丈夫だからさ・・

和久井龍也

わ、わかった・・・

龍也はしきりに背後を振り返り 凛太郎を心配した様子で その場を立ち去る

凛太郎は泣き崩れる杏樹をなだめ

近くの公園のベンチに腰を下ろす

揚羽凛太郎

眞琴・・・・

揚羽凛太郎

どうしたの?

揚羽凛太郎

なんで泣いてんの?

眞琴杏樹

だって・・・

眞琴杏樹

先輩がもう私と
同じ電車で登校
しないって言うから・・

揚羽凛太郎

それで泣いてんの?

眞琴杏樹

私・・もっと先輩と
一緒に居たいよ・・

揚羽凛太郎

わ、わかったから!

揚羽凛太郎

ならもうちょっと
同じ電車で登校しようよ!

揚羽凛太郎

な?な?

眞琴杏樹

ホントに?

眞琴杏樹

私から離れて行かない?

揚羽凛太郎

お、おぅ!

揚羽凛太郎

友達泣かせてまで
一緒に登校したく無い
訳じゃねーから!

揚羽凛太郎

だからさ、もう
泣くなよ!な?

眞琴杏樹

うん・・・

凛太郎は杏樹の頭を 優しく撫でる

お節介アゲハと弱虫ヒナタ

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うわお、やっと分かった……

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