琴音
(ああ、今日は月曜日かぁ。学校、 行きたくないなぁ。)
琴音母
あら、琴音起きたのね。早く準備しなさい。
琴音
...はぁーい。
琴音
(でも、仕事で忙しいお母さんを困 らせるわけにいかないし、行くし かない。)
琴音母
じゃあ、行ってくるわね。琴音も、学校遅刻しないように行くのよー。
琴音
うん。分かってる。
琴音
(だから私は今日も学校へ行く)
琴音
お、おはよう、みんな。
凛
あ、おはよう琴音!
琴音
(あ、よかったぁー、今週も標的に はならなかった。凛も、大人しい タイプだから、不安だったろうな 、声が明るい。)
結衣
きゃあ!!
さくら
あはは、きゃあ、だってwマジ受けるwww
陽菜
それなーw何、女子みたいな声出してるんだよw
琴音
・・・今週は、結衣が標的みたいだね。
凛
うん・・・可哀想だけど、自分じゃなくて良かったかも。
そう、2ーAで行われている「いじめゲーム」。毎週月曜日に発表されるターゲットを、1週間いじめるというしきたり。
琴音
そうだね。でも、来週は、分からない。
さくら
キャハハハ!何こいつ、くっさぁーwww
陽菜
ねーw汚いんだよ、あっち行けよw
結衣
あ、あ、やめて。。。
凛
ああ、結衣、牛乳かぶってる、可哀想。
琴音
本当だよね。でも、仕方ない。
琴音
(クラスの女王さくらのいう事には みんな逆らえない。)
凛
うん。見て見ぬ振りかぁ。心が痛む。
琴音
言っちゃダメだよ、自分が永遠の標的にされる。
凛
分かってるって。自分からいじめられに行くようなことしないよ。
琴音
そうだよね。あ、やば、担任の相川来た。じゃあまたね。
凛
うん、また後でね。
相川
はい、こんにちは。それでは教科書115ページ出して、音読してください。えー、では・・・
そう言った相川の目が、見るからにいつもより白い結衣の頭に止まる。
琴音
(お願い、気付いて、止めて!いじ めゲームを止めて!)
しかし、そんな琴音の願いも虚しく、相川はそれを素通りして、男子生徒の名前を呼んだ。
相川
はい、では柴田さん。
柴田
あ、はい。えっと、猿滝勝子は、自分にあるものが天性のものだと信じて・・・
琴音
(はぁ。やっぱり先生は使えない。)
凛
今日1時間目の相川さぁ、
琴音
ああ、あれ、酷いよね。絶対気付いてるじゃん。
凛
だよね。気付いてるなら止めたらいいのに。
琴音
大人って厄介事が嫌いな人多いから。
凛
だから、あんまり信用できないよね。
琴音
うん。やっぱり、自力で何とかしないと。
凛
...教室で、またいじめられてるみたいだね。
琴音
ああ、結衣。そうだね。この前、標的になった美里は虫食べさせられてたね。
凛
うん。食欲なくす。
酷いいじめを受けるクラスメイトを見たくなくて、昼休みはいつも2人で中庭に行っていた。
琴音
(もし、私か凛が標的になったらど うするんだろう。)
そう考えてぶるぶると首を振る。考えてはいけないことのような気がした。
凛
...ん、どうした?なんかあった?
琴音
あ、ううん、何でもない。
凛
そっか。そろそろ時間だし、戻ろうか。
琴音
うん。
結衣
やめて、やめて!
さくら
え?何ー?声が小さくて聞こえないんですけどぉwww
陽菜
もっとしっかりいいなよぉwww
琴音
(見てはいけない。見てはいけない)
琴音
(凛も、必死に目を逸らしてる。...でも、このままで良いのだろうか?)
琴音
(私は帰宅部だから、帰るのは1人。)
琴音
(このままじゃ私もいじめられる。何かいじめられない方法はないかな?)
琴音
...ん?なんだろ、これ。
琴音
「絶対いじめられたくない!という
方、是非このアプリをダウンロー
ドしてください。詳しくはapuri
ストアから。」...なんだろこれ。
琴音
(でもちょっと家に着いたらやってみようかな。)
琴音
(あ、あった。いじめ対策アプリ。なんか怖いけど...逃げ道はこれしかないし、ダウンロードしてみよう。)
琴音
今道琴音。中学2年。
いじめは、現在あなたに対して行われている、他の人に対して行われている、誰に対しても行われていない。1つ選んでください。
琴音
他の人に対して行われている
分かりました。では、いじめられないように対策を立てます。それにはあなたにとって1番大事なものが必要ですが、よろしいですか?
琴音
(大事なもの...?なんだろう、怖い。でも、私に手はこれしかないんだから。)
琴音
はい
分かりました。では、いじめ対策は明日午前8時から行われます。
琴音
(私にとって大事なもの?なんだろう。)
琴音母
ただいまー。
琴音
おかえりお母さん。早いね!
琴音母
うん、仕事が早く終わってね。久しぶりに一緒にご飯食べようか。
琴音
うん!嬉しい!
琴音
(あ!もしかして、私にとって大事なものってお母さん?)
琴音
(お母さんを失うなんて絶対にやだ!どうしよう、あ、あのアプリ消そう!)
琴音
(あれ...消せない...何で?私、お母さんを失うの?)
琴音
(絶対やだ)
琴音
(あれ?何かさっきのアプリから)
琴音
(他の人に言うなって事?やだ...怖 い!)
琴音
(昨日は怖くて全然眠れなかった。)
琴音母
あ、おはよう琴音。今日は早く行くから。
琴音
お母さん!!!
琴音母
え?どうしたの琴音?なんかあった?
琴音
(あ、お母さんに迷惑かけちゃいけない。)
琴音
あ、ううん、何でもない。大丈夫。
琴音母
ほんと?お母さん言ってもいい?
琴音
うん、いいよ
行ってらっしゃい!
琴音
ああ、お母さん行っちゃった
大丈夫だよね?
琴音
(1:02:27!何が起こるんだろう。)
琴音
でも...学校は、行かないと。
琴音
(不安で上の空で歩いてたら、遅刻ギリギリになっちゃった。)
琴音
(後でみんなにおはようって言おう)
相川
みなさんおはよう。では、出欠とります。
相川
...石垣紗英さん。板出良さん。浦島ひかりさん。...
琴音
(あれ?私の名前が呼ばれない。)
琴音
あのぅ先生。私、呼ばれてません。
相川
え?
...ていうか、あなた誰?
琴音
え????
琴音
今道琴音ですけど。
さくら
そんな人クラスにいないよね?
陽菜
うん、全く記憶にない
柴田
誰だよ、今道ってwww
琴音
え?何で?私、みんな、え?
琴音
(なんでみんな私の事知らないの?)
琴音
(そうだ、凛!凛なら分かるはず)
凛
(誰だろ、あの子。突然。変な子。)
琴音
(ああ、凛まで不審そう。
ダメだ、誰も私のこと覚えてない)
相川
とにかく...この教室から出て行ってくれるかな?うちには今道なんてのは居ないから。
琴音
あ!
琴音
(もしかして...私にとって大事なものって私の「存在」だったのかも。私は、「存在」を失ったの?この世で誰も、私の事を知らない...)
さくら
あれーどうしたの?w
陽菜
叫んだっきり固まってるんだけどwww
柴田
www
琴音
(そしたらもう生きてる意味なんて)
琴音
別にいい。私が死んで、悲しむ人なんて誰もいない。