2021/05/26 20:47:40
紬
明かりが消え 暗闇に溶け込んだ白い校舎
校門で1人立っていた紬は 亡くなった友達や上級生との思い出を 回想していた
記憶の中の彼等は まだ笑顔のまま
紬
紬は肩掛けカバンの持ち手を強く握る
紬
暗闇の校舎の中 廊下を歩く者の姿が見えた
紬はその人間をよく知っていた
紬
なんでこんな時間に…
忘れ物?用事?居残り?
様々な要因が思い浮かんだが 紬は直ぐに校内へ走った 考えるより先に直感で察した
違和感があった
紬
結月
結月
こんな時間に。
紬
先輩はここで何を?
結月
ただ部室に置きたいものが
あったから戻っただけさ
結月は笑いながらそういった
紬
紬
結月
紬
仲良かったんですよね
結月
結月
紬
変なことは無かったですか?
結月
紬
何かを気にする様子が
あったりとか。
結月
結月
いつも通り俺と怪談話して
ただけだよ。
紬
結月
結月
ボクそろそろ帰らなきゃ。
君も用事があって
戻ったんだろ?
紬
どんな些細なことでも
構いません…だから
結月
事情に生徒が踏み込むのは
いい考えだとは思えないな
部外者が首を突っ込むべき
じゃないからね
結月
結月
無茶すると危険だよ?
狩人罠にかかるって言う
でしょう…?
結月
君も今日は墓参りで
疲れてるだろうし
紬
その話を知ってるのはあそこに 居た3人だけ…のはず
結月
紬
(行っちゃった)
結月の、あの不気味な笑いが頭から 離れなかった
結月先輩 なにか変だった
何か…何か手がかりが掴みたい
立て続けに死んだ…皆 その元凶がきっと居るはずだから
こんな事が…たまたまなハズがない
焼死、出血多量、転落 首吊り、凍死、行方不明
学生内の情報ネットワークで 発見時の状況は知れ渡っていた
それは必然 紬の耳にも入った
嫌でも知ってしまう たとえ知りたくないことでさえ
夜の校舎の廊下はしんと静まり 廊下の先は暗く覚束ない
等間隔にはられた窓から刺す月光は 不安に駆られた紬にとって唯一の 明かりだ
紬
紬
が…とても気になる)
紬
音が響くなあ)
紬
面倒、脱いでいこう)
紬は革靴を片手につまんで校内へと 入ってゆく
最上階から下へ 探して回るうちに、 暗闇の中で明かりが漏れている 扉があった
開いた扉の小さな隙間 中を覗くと、誰かが居る
紬
こんな時間に何を…?)
照は紙を持っていた なにが書いてあるかまでは 見えなかったが
紬
照は持っている紙を破り捨てる
照
クソ野郎がっ!!!
紬
がたっ
照の怒号に、思わず体が強ばり
はずみで革靴を落としてしまった
紬
照
照
紬
革靴を拾い、階段を駆け下りて 学校を離れる
紬
照先輩、あそこに…)