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お節介アゲハと弱虫ヒナタ〜アルメリア〜

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お節介アゲハと弱虫ヒナタ〜アルメリア〜

第20話 - 絵里香の清算

150

2023年04月25日

#ドラマ

#青春恋愛

#高校生

#一次創作

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後日

出社早々に杏樹は絵里香に透と付き合い始めた報告をしていた

葛城絵里香

よかったじゃん！

葛城絵里香

おめでとう！杏樹！

絵里香は杏樹を手を包み込む様に握る

眞琴杏樹

ありがとう

葛城絵里香

マジで！自分の事
みたいに嬉しいよ！

眞琴杏樹

えへへ、なんか照れちゃう

浅葱彩芽

なんの話ですか？

眞琴杏樹

彩芽ちゃん！お疲れ様！

浅葱彩芽

お疲れ様です！

葛城絵里香

アレだよ！アレ！

葛城絵里香

この前話したでしょ？
鮎原さんの話

浅葱彩芽

あ！杏樹先輩がずっと
片想いしてるって人ですか？

眞琴杏樹

あれ？私って
彩芽ちゃんに

眞琴杏樹

鮎原さんの話って
した事あったっけ？

杏樹は絵里香の方に視線をやる

葛城絵里香

・・・・・

絵里香は静かに視線を逸らす

眞琴杏樹

絵里香ちゃん！！！

葛城絵里香

ごめんってば！

眞琴杏樹

もうっ！！

浅葱彩芽

でもその鮎原さんが
どうかしたんですか？

葛城絵里香

付き合う事に
なったんだって！

浅葱彩芽

えーー！？

浅葱彩芽

本当ですか？杏樹先輩！

眞琴杏樹

ま、まぁ・・・

浅葱彩芽

おめでとうございます
杏樹先輩！！！

彩芽は杏樹に抱きつく

眞琴杏樹

ちょ、彩芽ちゃん

浅葱彩芽

私、めちゃ嬉しいです！

眞琴杏樹

ありがとう彩芽ちゃん

鮎原透

なんか賑やかだな

眞琴杏樹

もう社長さんとの
話は終わったんですか？

鮎原透

ああ、まぁな

浅葱彩芽

わぁお！イケメン！

彩芽は透に近づく

葛城絵里香

コラ！コラ！コラ！

葛城絵里香

人の男にちょっかい
かけちゃダメでしょ！

絵里香が彩芽を引き止める

浅葱彩芽

え？人の男って？

葛城絵里香

この人が鮎原さんよ！

浅葱彩芽

えーーー！？

浅葱彩芽

杏樹先輩！こんな
イケメン捕まえたの？

眞琴杏樹

捕まえたって・・

眞琴杏樹

言いを考えてよね！

鮎原透

あはは！面白い子だな

眞琴杏樹

この子が彩芽ちゃんですよ

鮎原透

ああ！凡ミス後輩！

浅葱彩芽

ちょっと！杏樹先輩？

眞琴杏樹

なに？

浅葱彩芽

変な風に教えないで
下さいよ！

眞琴杏樹

いや本当の事じゃん

浅葱彩芽

いいや違います！
事実無根ですっ！

浅葱彩芽

目に入れても痛くない
可愛い可愛い後輩！

浅葱彩芽

って本当の事
言ってくれなきゃ！

眞琴杏樹

それを自分で言うの？

浅葱彩芽

杏樹先輩のいじわる！

数十分前

社長室

鮎原拓郎

よく戻ったな！透！

鮎原透

お久しぶりです

鮎原透

ご迷惑をおかけしました

鮎原拓郎

眞琴さんから聞いたが

鮎原拓郎

付き合う事に
なったそうだな？

鮎原透

え、えぇ・・・

鮎原透

お、おかげさまで・・・

鮎原拓郎

分かっているとは思うが

鮎原拓郎

眞琴さんを悲しませる
様な事があったら

鮎原透

ゴクリ・・・

鮎原拓郎

殺すからな？

鮎原透

う・・・

鮎原拓郎

まぁ、それは冗談だが

鮎原拓郎

お前はこれから
どうするつもりだ？

鮎原透

一応は今働いてる会社に
しばらくの間は

鮎原透

世話になろうって思ってます

鮎原拓郎

そうか・・・

鮎原拓郎

お前にその気があるなら

鮎原拓郎

ウチで働いても
構わないんだぞ？

鮎原透

ありがとうございます

鮎原透

けど今はまだ──

鮎原拓郎

分かった・・・

鮎原拓郎

お前の気持ちを尊重しよう

鮎原透

自分勝手ですいません

鮎原拓郎

いや構わんよ

鮎原透

では店舗での引き継ぎが
残ってますので

鮎原透

一旦失礼します

鮎原拓郎

確か再来月から
長野の店舗に
転勤だったな？

鮎原透

ええ・・・

鮎原透

無理言って転勤願い
出したんです

鮎原透

もう・・・

鮎原透

杏樹ちゃんをひとりに
させたくありませんから

鮎原拓郎

そうか・・・

鮎原透

では、失礼します

透が頭を下げ社長室を後にする

鮎原拓郎

透！

鮎原透

はい？

鮎原拓郎

一応言っておくが

鮎原拓郎

勘当は取り消してやる

鮎原透

！！！！！！

鮎原透

い、いいんですか？

鮎原透

俺は約束を──

鮎原拓郎

構わん・・・

鮎原透

ありがとうございます

透は目にうっすらと涙を浮かべて頭を下げる

鮎原透

じゃあ俺は
そろそろ行くよ

眞琴杏樹

え？もう行っちゃ
うんですか？

杏樹は透に不安な眼差しを向ける

鮎原透

後任の店長に引き継ぎ
しなきゃだからな

眞琴杏樹

もっと一緒に
居たかったなぁ・・・

鮎原透

そんな顔すんなって！

鮎原透

なぁに、すぐに
戻ってくるから！

透は杏樹の頭を優しく撫でる

眞琴杏樹

う、うん・・・

鮎原透

心配すんな！

鮎原透

もう、一人には
させねぇからさ！な？

眞琴杏樹

う、うん・・・

眞琴杏樹

けど・・早めに
帰ってきて下さいね？

鮎原透

分かってる・・・

透は杏樹の体を抱き寄せる

葛城絵里香

あのー・・お二人さん？

葛城絵里香

一応言っときますけど

葛城絵里香

ここ事務所なんですけど？

眞琴杏樹

あっ・・・

鮎原透

お、おぅ・・・

二人は恥ずかしそうに頬を赤く染める

浅葱彩芽

杏樹先輩可愛い♫

眞琴杏樹

茶化さないの！

葛城絵里香

アンタ杏樹の事
先輩って思ってる？

浅葱彩芽

失礼ですね！
思ってますよ！

浅葱彩芽

ウブで可愛い先輩
って思ってます！

眞琴杏樹

絶対バカにしてるでしょ！！

浅葱彩芽

何言ってるんですか！

浅葱彩芽

きちんと敬意の気持ちで
可愛いって思ってますよ！

眞琴杏樹

それがバカにしてる
って言ってるの！もぅ！

それから数日後

杏樹は拓郎に呼ばれて社長室へ来ていた

眞琴杏樹

失礼します

鮎原拓郎

眞琴さん！悪いね
仕事終わりに

眞琴杏樹

いえ、それは
大丈夫なんですけど

葛城絵里香

杏樹！お疲れ様

眞琴杏樹

なんで絵里香ちゃんが？

葛城絵里香

杏樹にも話を
聞いてほしくてね

眞琴杏樹

話って？

葛城絵里香

社長さんにはさっき
話したんだけど

葛城絵里香

私──

葛城絵里香

お父さんに
会ってきたんだ

眞琴杏樹

え？お父さんに？

葛城絵里香

うん・・・

眞琴杏樹

確かお父さんって
絵里香ちゃんと──

葛城絵里香

この前久しぶりに
連絡があったの・・

数日前

葛城黒江

絵里香？

葛城黒江

ちょっといい？

葛城絵里香

なに？どうかした？

葛城黒江

実はね──

葛城黒江

お父さんが絵里香に
会いたがってる
みたいなのよ・・・

葛城絵里香

え！？お父さんが？

葛城黒江

絵里香は嫌かも
しれないけど

葛城黒江

その・・謝りたいんだって

葛城絵里香

何よ・・今更・・・

葛城黒江

一昨日・・・
電話があってね

葛城絵里香

・・・・・

葛城黒江

もしもし？

楓咲乙彦

久しぶりだな・・黒江

葛城黒江

何？

楓咲乙彦

いや・・その

楓咲乙彦

絵里香は元気かな？
と思って・・・

葛城黒江

何が元気かな？よ！

葛城黒江

あんな風に絵里香を
突き放しておいて！

葛城黒江

どの口が言ってんの？

楓咲乙彦

いや・・それは・・

葛城黒江

あの後いろいろ
大変だったのよ？

葛城黒江

アンタは知らない
だろうけどね！

楓咲乙彦

・・・・・

葛城黒江

絵里香と私は
前に進もうとしてるの

葛城黒江

あんな事・・・
思い出したくもないの

楓咲乙彦

・・・・・

葛城黒江

だいたいあのお金は何？

楓咲乙彦

いや・・・

葛城黒江

毎月毎月・・・

葛城黒江

あんなお金いらない
って言わなかった？

楓咲乙彦

いや・・せめてもの
罪滅ぼしと思って

葛城黒江

アンタにとって
お金を渡せば

葛城黒江

それが罪滅ぼしになるの？

楓咲乙彦

そ、そうは思ってない

楓咲乙彦

ただ・・・

葛城黒江

ただ？

楓咲乙彦

ただ・・謝りたかった

葛城黒江

・・・・・

楓咲乙彦

絵里香の人生を
めちゃくちゃにして

楓咲乙彦

自分の保身ばかりを
第一に考えて

楓咲乙彦

絵里香の気持ちを
蔑ろにして

楓咲乙彦

自分だけがのうのうと
生きている事が

楓咲乙彦

ただただ申し訳なかった

葛城黒江

・・・・・

楓咲乙彦

絵里香の目を見て

楓咲乙彦

自分の声で、言葉で

楓咲乙彦

心から謝罪したい！

葛城黒江

・・・・・

楓咲乙彦

だから・・どうか

楓咲乙彦

絵里香に会わせてほしい

楓咲乙彦

会って謝らせてほしい

葛城黒江

勝手ね・・・

葛城黒江

それってようは
自分がスッキリしたい
だけじゃない！

楓咲乙彦

自分勝手なのは
百も承知だ！

楓咲乙彦

けど・・・

葛城黒江

はぁ〜・・・

葛城黒江

わかったわ・・・

楓咲乙彦

黒江・・・

葛城黒江

ただ私の判断で
会わせるわけにはいかない

葛城黒江

絵里香に話を聞いてみる

楓咲乙彦

ああ・・・

葛城黒江

絵里香が会いたくない
って言うんなら

葛城黒江

悪いけど会わせる
訳にはいかないわ

楓咲乙彦

わかってる・・・

葛城黒江

とりあえず
話だけしてみるわ

葛城黒江

また電話するわ・・・

楓咲乙彦

ああ・・頼む

葛城黒江

なら、またね

楓咲乙彦

ああ・・・

葛城絵里香

・・・・・

葛城黒江

アイツはこう
言ってるんだけど

葛城黒江

どうする？

葛城絵里香

どうするって・・・

葛城絵里香

今更謝られたって・・

葛城黒江

なら断る？

葛城黒江

絵里香が会いたくないんなら

葛城黒江

そう伝えるわ・・・

そう言うと黒江はスマホを取り出し

乙彦に連絡を取ろうとする

葛城絵里香

・・・・・

葛城絵里香

いや、待って！

それを絵里香が止める

葛城黒江

ん？どうかした？

葛城絵里香

やっぱり──

葛城絵里香

会う・・・

葛城黒江

え！？

葛城絵里香

私・・お父さんに
会ってみる・・・

絵里香の予想外の返答に驚きを隠せない黒江

葛城黒江

でも・・大丈夫なの？

葛城黒江

別に気を使う必要
なんて無いのよ？

葛城絵里香

ううん・・そんなんじゃない

葛城絵里香

でもやっぱり自分で
ケリつけたいから

葛城黒江

ケリ？

葛城絵里香

今の私があるのは色んな人に
支えてもらってるから

葛城黒江

・・・・・

葛城絵里香

杏樹や愛莉──

葛城絵里香

鮎原さんや社長さん──

葛城絵里香

そしてお母さん

葛城黒江

・・・・・

葛城絵里香

私・・今幸せ

葛城絵里香

お母さんとも
仲直りできたし

葛城絵里香

一生物の親友もできた

葛城黒江

・・・・・

葛城絵里香

けどこの幸せは
周りの人に与えて
もらったに過ぎない

葛城絵里香

みんなに
おんぶにだっこじゃ

葛城絵里香

虫が良すぎると思うの

葛城黒江

絵里香・・・

葛城絵里香

だから直接会って
話したい！！

葛城絵里香

それが・・みんなに
助けてもらった

葛城絵里香

私がやるべき事だと思うの！

葛城黒江

・・・・・

葛城絵里香

だからお父さんと
直接会ってケリ着けたい

葛城黒江

分かった・・・

葛城黒江

そう伝えるわ

葛城絵里香

うん・・・

数日後

絵里香は黒江に連れられ父親と再会するべく近所のファミレスに来ていた

葛城絵里香

久しぶりだね・・お父さん

楓咲乙彦

あ、ああ・・・

楓咲乙彦

ひ、久しぶりだな・・

この時、絵里香は父親と再は約９年ぶりとなる

葛城絵里香

なんか・・痩せたね

久しぶりに会った乙彦は見るからにやつれていた

楓咲乙彦

あ、ああ・・・

葛城絵里香

・・・・・

葛城黒江

・・・・・

葛城絵里香

それからお母さん

葛城黒江

なに？

葛城絵里香

ちょっとの間だけ
お父さんと2人に
してくれないかな？

葛城黒江

え？

葛城絵里香

席を外してほしいの

葛城黒江

・・・・・

葛城絵里香

お願い・・・

葛城黒江

・・・・・

葛城黒江

分かったわ・・・

葛城絵里香

ごめんね・・・

葛城黒江

いいわよ！謝らなくて

葛城黒江

なら私は近所の
スーパーで夕飯の
買い出しでもしてるわ

葛城黒江

話が終わったら
連絡ちょうだい

葛城絵里香

分かった・・・

そう言うと黒江はファミレスに絵里香と乙彦を残して姿を消した

楓咲乙彦

さ、最近はどうなんだ？

葛城絵里香

今ね・・・

葛城絵里香

鮎屋のレストランに
就職したんだ

楓咲乙彦

あ、鮎屋の！？

葛城絵里香

実はあの話──

葛城絵里香

全部素直に話したんだ

楓咲乙彦

そ、そうか・・・

葛城絵里香

鮎原さん・・許してくれたの

葛城絵里香

全てを知っても
私を雇ってくれたんだ

楓咲乙彦

・・・・・

葛城絵里香

そういうお父さんは
最近はどうなの？

楓咲乙彦

ま、まぁ・・・

楓咲乙彦

ほどほどって感じかな

葛城絵里香

そっか・・・

楓咲乙彦

・・・・・

楓咲乙彦

何で今日は
会ってくれたんだ？

葛城絵里香

え？

楓咲乙彦

絵里香は絶対に
会ってくれないと思ってた

葛城絵里香

・・・・・

楓咲乙彦

恨まれて当然な事を
俺はしてしまったからな

葛城絵里香

・・・・・

楓咲乙彦

恨んでないのか？

葛城絵里香

正直言って恨んでる

葛城絵里香

まだ完璧に許しきれて
無い自分がいる

楓咲乙彦

・・・・・

葛城絵里香

でも・・私も
最低な事をしちゃった

葛城絵里香

鮎原さんを騙した

楓咲乙彦

・・・・・

葛城絵里香

だから私は
お父さんばかりを
責めれないんだよ

楓咲乙彦

絵里香・・・

葛城絵里香

それに私──

葛城絵里香

今とっても幸せなの

楓咲乙彦

し、幸せ！？

葛城絵里香

職場の雰囲気もいいし

葛城絵里香

それに、私の全てを
知っても・・それでも

葛城絵里香

親友だって言って
くれる友達も出来たんだ

楓咲乙彦

そっか・・・

乙彦の目に涙が浮かぶ

葛城絵里香

だからお父さんは
何も気にしないで

楓咲乙彦

絵里香・・・

葛城絵里香

再婚とかすれば？

楓咲乙彦

あはは・・再婚か・・

楓咲乙彦

考えたこともなかったよ

楓咲乙彦

それに・・・

楓咲乙彦

絵里香にそんな事
言ってもらえるなんて・・

乙彦は声を殺して泣く

葛城絵里香

もう、泣かないでよ

楓咲乙彦

本当に申し訳なかった

葛城絵里香

お父さん・・・

葛城絵里香

あと・・これ返すよ

絵里香はテーブルの上に封筒を置く

楓咲乙彦

これは？

葛城絵里香

お父さんが今で
私たちに送ってくれたお金

楓咲乙彦

つ、使ってなかったのか？

葛城絵里香

うん・・・

楓咲乙彦

な、なんで！？

楓咲乙彦

た、確かにこんなお金を
渡したくらいじゃ

楓咲乙彦

謝罪にはならないかも──

葛城絵里香

ううん、そんなんじゃない

楓咲乙彦

え・・・

葛城絵里香

今のお父さん見れば分かる

楓咲乙彦

・・・・・

葛城絵里香

そんなに痩せて・・・

葛城絵里香

ずっと思い詰めながら
このお金稼いでたんだよね

楓咲乙彦

絵里香・・・

葛城絵里香

今日お父さんに会って

葛城絵里香

あの頃の、私を裏切った
頃のお父さんのままだったら

葛城絵里香

こんなお金・・・

葛城絵里香

目の前で燃やしてやろうって
そう・・思ってた・・・

葛城絵里香

それを復讐にしてやろうって

楓咲乙彦

絵里香・・・

葛城絵里香

でもお父さん・・・

葛城絵里香

辛かったよね

楓咲乙彦

う・・うぅ・・・

楓咲乙彦

絵里香・・・

葛城絵里香

月に８万なんてお金を
何年も送り続けるなんて

葛城絵里香

決して楽じゃなかったと思う

楓咲乙彦

・・・・・

葛城絵里香

だからさ！お父さん

葛城絵里香

自分のために使いなよ

葛城絵里香

まぁ、訳あって
30万だけこのお金から
使っちゃったけど

葛城絵里香

それも足しといたから

葛城絵里香

だからお父さん・・・

葛城絵里香

もう・・私たちの事は忘れて

葛城絵里香

自分のために生きてよ！ね？

楓咲乙彦

絵里香・・・

楓咲乙彦

ありがとう絵里香！

楓咲乙彦

本当にありがとう

楓咲乙彦

本当に・・・

乙彦何度も頭を下げる

葛城絵里香

もう・・やめてよ

葛城絵里香

他のお客さんも居るんだから

楓咲乙彦

あ、す、すまない・・・

葛城絵里香

私も彼氏でも見つけて
幸せになるからさ！

葛城絵里香

お父さんに少しでも
償いたいって気持ちが
あるんだったら

葛城絵里香

お父さんも誰か
いい人でも見つけて

葛城絵里香

幸せになってよ

葛城絵里香

それを償いにしなよ！

楓咲乙彦

ありがとう絵里香・・・

楓咲乙彦

じゃあ絵里香・・

楓咲乙彦

気をつけてな

葛城絵里香

うん・・・

葛城絵里香

お父さんもね

楓咲乙彦

今日は会ってくれて
ありがとう

葛城絵里香

ううん・・・

葛城絵里香

私も自分の口から
気持ちを伝えられて
良かった・・・

楓咲乙彦

じゃ、じゃあ・・・

葛城絵里香

うん・・行くね

楓咲乙彦

あ、ああ・・・

2人は別々の方向へ歩き出す

葛城黒江

うー・・・ん

葛城黒江

何作ろうかしら

葛城黒江

悩むわね・・・

葛城絵里香

お母さん！

葛城黒江

あれ？絵里香？

葛城黒江

話はもう終わったの？

葛城絵里香

うん・・終わった

葛城黒江

もう大丈夫？

葛城絵里香

うん♫大丈夫♫

葛城黒江

そ♫ならよかった♫

葛城黒江

今日は何食べたい？

葛城絵里香

今日は私が作るよ

葛城黒江

え？絵里香が？

葛城黒江

どうしたの？急に

葛城絵里香

まぁ、たまにはね♫

葛城黒江

ふふふ

葛城黒江

ならお願いしようかしらね

葛城絵里香

任せてよ♫

眞琴杏樹

そうだったんだ・・

葛城絵里香

杏樹にも迷惑かけたし

葛城絵里香

杏樹には知っといて
欲しかったから・・

眞琴杏樹

でも、解決したんだよね？

葛城絵里香

まぁ、お父さんの件はね

眞琴杏樹

お父さんの件は？

葛城絵里香

私には、まだ
解決してない事──

葛城絵里香

いや──

葛城絵里香

自分自身で解決
してない事があるの

眞琴杏樹

なんの事？

葛城絵里香

私がお金を払って
杏樹を襲わせた
男の人の件・・・

眞琴杏樹

え？でもあれは──

葛城絵里香

確かに！鮎原さんが
お金払って
収めてくれたけど

葛城絵里香

自分では解決してない

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

だから社長さんに
お願いしてるとこなの

眞琴杏樹

お願い？

葛城絵里香

社長さんなら
あの人たちの居場所

葛城絵里香

知ってるんじゃ無いかって

葛城絵里香

だから居場所を聞いてるの

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原拓郎

本当に会いに行くつもりか？

葛城絵里香

はい！

葛城絵里香

出なきゃ私は
前に進めないんです

葛城絵里香

前に進む資格が無いんです

鮎原拓郎

・・・・・

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

ですから社長室さん！

葛城絵里香

知っていたら──

葛城絵里香

あの人たちの居場所

葛城絵里香

私に教えて下さい！

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原拓郎

本当にいいのか？

葛城絵里香

て事は知ってる
って事ですか？

鮎原拓郎

葛城さんは「碧江涼太」
という人物を
知っているかな？

葛城絵里香

碧江・・涼太？

眞琴杏樹

あっ！その人──

葛城絵里香

え？杏樹知ってるの？

眞琴杏樹

鮎原さんの高校時代の
クラスメイト・・

眞琴杏樹

一緒に伊豆の海に
行った人なんだ・・

葛城絵里香

そうなんだ・・・

葛城絵里香

でも何でその人の名前が？

眞琴杏樹

た、確かに・・・

眞琴杏樹

何でなんですか？
社長さん・・・

鮎原拓郎

実は彼は今
愛知県の名古屋で

鮎原拓郎

バーの経営をしていてね

眞琴杏樹

バー？

鮎原拓郎

ああ・・・

鮎原拓郎

透の話では、恋人とふたりで
に切り盛りしているらしい

眞琴杏樹

そうだったんだ・・・

鮎原拓郎

透のススメで
そこで彼らには
働いてもらってるんだ

葛城絵里香

名古屋・・・

鮎原拓郎

どうしてもと言うなら

鮎原拓郎

場所を教えよう・・

鮎原拓郎

どうする？葛城さん

葛城絵里香

お願いします！
教えてください！

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原拓郎

分かった・・・

鮎原拓郎

なら来週なら私も
予定が空いているから
一緒に──

葛城絵里香

いえ──

葛城絵里香

1人で行かせてください！

鮎原拓郎

なっ！！！

眞琴杏樹

ちょっとそれって
危なく無い？大丈夫？

鮎原拓郎

眞琴さんの言うとおりだ

鮎原拓郎

せめて誰かと──

葛城絵里香

それじゃダメなんです！

葛城絵里香

自分だけで解決しなきゃ！

鮎原拓郎

・・・・・

葛城絵里香

誰かに頼ってばっかりは
ダメなんです！！

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

みんな優しいからって

葛城絵里香

それに甘えちゃダメなんです

眞琴杏樹

・・・・・

葛城絵里香

ですからお願いします！

絵里香は頭を深々と下げる

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原拓郎

わかった・・・

眞琴杏樹

いいんですか？
社長さん・・・

鮎原拓郎

まぁ、彼らも
透の知り合いの店に
勤めているからね

鮎原拓郎

あまり派手な事は
やらないはずだ

葛城絵里香

ありがとうございます・・

鮎原拓郎

住所は今日中に
葛城さんのスマホに
送らせてもらう

鮎原拓郎

今日のところは
帰ってもらっていい

葛城絵里香

わかりました・・・

葛城絵里香

よろしくお願いします

絵里香は頭を下げ社長室を後にする

眞琴杏樹

じゃ、じゃあ私も・・

鮎原拓郎

ああ・・眞琴さんも
時間をとらせてすまないね

眞琴杏樹

いえ・・・

眞琴杏樹

とんでもなです

眞琴杏樹

では、お疲れ様でした

鮎原拓郎

ああ・・お疲れ様

絵里香に続いて杏樹も社長を後にする

眞琴杏樹

本当に大丈夫？

葛城絵里香

大丈夫だって

葛城絵里香

キチンと自分で
解決しなきゃ

葛城絵里香

私のことを許してくれた
みんなに申し訳ないし

眞琴杏樹

でも・・もしもの事が

葛城絵里香

そうなったら全部
自分の責任だよ

葛城絵里香

自分が蒔いた種だしね

眞琴杏樹

でも・・・

葛城絵里香

大丈夫！

葛城絵里香

私を信じて！

眞琴杏樹

・・・・・

眞琴杏樹

分かった・・・

眞琴杏樹

気をつけてね

葛城絵里香

うん・・・

拓郎は社長の椅子に座り頭を悩ませていた

鮎原拓郎

（本当にひとりで行かせて
大丈夫なのだろうか）

鮎原拓郎

（葛城さんの身に
もしもの事があってはならない）

鮎原拓郎

（・・・・・）

鮎原拓郎

（一応念のために
透に連絡を取るか）

拓郎はスマホを取り出し九州へ行っている透に電話をかける

鮎原透

はいもしもし

鮎原拓郎

悪いな透・・・

鮎原拓郎

今、電話大丈夫か？

鮎原透

はい、大丈夫ですけど
どうかしましたか？

鮎原拓郎

もう店舗での引き継ぎは
終わったのか？

鮎原透

え、ええ・・・

鮎原透

昨日終わりました

鮎原透

今から長野に戻るところです

鮎原拓郎

急で悪いんだがな

鮎原拓郎

今から長野に戻らずに
名古屋に向かってくれないか？

鮎原透

な、名古屋！？

鮎原透

どうしてまた・・・

鮎原拓郎

実はな・・・

拓郎は透に絵里香の話を全て伝える

鮎原透

葛城が涼太の店に・・

鮎原拓郎

葛城さん本人は大丈夫
だと言っているんだがな

鮎原拓郎

いささか不安でな・・・

鮎原透

た、確かに不安ですね

鮎原拓郎

だから一応透も名古屋に
向かってほしいんだ

鮎原拓郎

何も無ければ
それで構わないんだ

鮎原拓郎

私の取り越し苦労で
済むに越した事は
ないからな・・

鮎原透

分かりました・・

鮎原透

では長野に帰る前に
名古屋によってみます

鮎原拓郎

ああ・・頼んだ・・・

数日後

拓郎から涼太の店の住所を知らされた絵里香は

名古屋駅にいた

葛城絵里香

確か・・・

絵里香はスマホに記された住所を確認する

葛城絵里香

名古屋の栄ってとこみたいね

葛城絵里香

とりあえずタクシーで行くか

絵里香はタクシーを捕まえ涼太が経営するバーへ向かう

それと同時に透も名古屋駅に降り立った

鮎原透

葛城はタクシーで
向かうみてーだな

透の視線の先にはタクシーに乗り込む絵里香の姿があった

鮎原透

俺も向かうか・・・

葛城絵里香

ここか・・・

絵里香はバーの前に立つ

葛城絵里香

とりあえず
入ってみよう

絵里香はドアノブに手をかけドアを開けて店内へ入る

お洒落なバーの店内にドアに取り付けられたドアベルのカランコロンという甲高い音色が響き渡る

葛城絵里香

あの・・すいません

碧江涼太

あっ、すいません

碧江涼太

まだ営業前なんですよ

碧江涼太　24歳

数年前からコツコツとバーテンダー資格取得のために通信教育を受け

2年前にN.B.A認定バーテンダー資格証書を取得して

恋人のひとみと共同でオーセンティックバーを開業した

透からの要望により絵里香の依頼で杏樹を襲った男たちを雇っている

葛城絵里香

あの・・私・・

葛城絵里香

鮎原拓郎さんの
紹介で来たんですけど

碧江涼太

ああ！君があの
葛城絵里香ちゃん？

葛城絵里香

は、はい・・・

碧江涼太

なら、とりあえず座って
待っててくれる？

碧江涼太

多分もう直ぐ出勤
してくると思うから

葛城絵里香

は、はい・・・

バーのカウンター席に座り男が出勤して来るのを待つ絵里香

碧江涼太

そういえば
杏樹ちゃんは元気？

葛城絵里香

え？

碧江涼太

確か杏樹ちゃんの
友達なんだよね？

葛城絵里香

あ、は、はい・・・

碧江涼太

杏樹ちゃんと全然
会えてないからさ

碧江涼太

どう？元気にしてる？

葛城絵里香

は、はい、元気ですよ

葛城絵里香

それに最近鮎原さんと
付き合い始めましたよ

碧江涼太

うっそ！？まじで！？

碧江涼太

ついに付き合ったのか！！

葛城絵里香

はい！お似合いですよ

碧江涼太

そっか！そっか！

碧江涼太

なら今度顔見せに
行かねーとな！

涼太と絵里香が楽しげに話していると

カランコロン

ドアベルの音色が鳴り響く

男

お疲れーっス

碧江涼太

よう！お疲れ様！

碧江涼太

お前に客が来てんぜ！

男

はぁ？客？

男

誰だよ客って・・・

碧江涼太

その子だよ

涼太はカウンター席を指差す

葛城絵里香

あ、あのっ！！

絵里香は椅子から立ち上がる

男

え？お前・・・

葛城絵里香

その・・お久しぶりです

男

何でお前が・・・

男は予想外の来客に驚きを隠せない

葛城絵里香

一言・・謝りたくて

男

・・・・・

碧江涼太

俺は裏で仕込み
してくるからよ

碧江涼太

まぁ、ゆっくり話してろ

そう言うと涼太はバックルームへと消えていく

男

はぁ・・・

葛城絵里香

・・・・・

葛城絵里香

あの・・他の2人は？

男

今日の出勤は俺だけだ

男

アイツらは休み！

葛城絵里香

そう・・ですか・・

男

つーか何で来たんだ？

男

謝りたくてって・・・

葛城絵里香

どうしてもアナタ達に
自分の口から謝罪を・・

男

・・・・・

葛城絵里香

本当に・・・

葛城絵里香

すいませんでした！！

絵里香は男に深々と頭を下げる

男

お、おい！頭
下げるとか辞めろよ！

葛城絵里香

いえ・・ダメです！

葛城絵里香

私はアナタ達を警察に・・・

男

詳しくは鮎原に聞いたよ

葛城絵里香

え？鮎原さんから？

男

俺らがまだ刑務所に居た頃

男

鮎原が金持って来た
って話はお前は知ってんのか？

葛城絵里香

は、はい・・・

男

まぁ、そのおかげで俺らは
釈放されたんだけどな？

男

それから鮎原とはちょくちょく
電話で話してんだよ

葛城絵里香

電話で？

男

月いちペースでな！

男

まぁ、話してるっつっても
俺らが鮎原との約束破って

男

お前にちょっかい出して
ねーかの確認の電話だからよ

男

通話時間なんて
１分もねーんだけどな

葛城絵里香

そう・・だったんですか

葛城絵里香

知らなかった・・・

男

けどある時さ・・・

男

気になって聞いてみたんだ

葛城絵里香

何をですか？

男

鮎原とお前の
関係性について

葛城絵里香

私と鮎原さんの？

男

鮎原は、お前が
知り合いだって
言ってたからさ

男

興味があったから
聞いてみたんだ

葛城絵里香

・・・・・

男

話を聞いて驚いたよ

男

お前・・辛かったんだな

葛城絵里香

ぐすっ・・・

男

親父の間にガキが出来て

男

おまけに親父から
突き放されるとか

男

地獄だったよな・・・

葛城絵里香

・・・・・

男

まぁ、確かに俺らが
捕まったのは

男

お前が通報した事が
原因なんだけどさ

葛城絵里香

・・・・・

男

まぁ、つっても俺ら
何度も警察の世話に
なってっからさ！

男

今さら前科（まえ）が
増えようが

男

大した事じゃねーんだよ

葛城絵里香

ぐすっ・・・

男

泣くなよ・・ホラ

男は絵里香にハンカチを手渡す

葛城絵里香

あ、ありがとうございます

男

まぁ、捕まった直後は

男

お前をどうにかしてやろう！

男

って思ってたけどさ

男

お前の過去を知っちまったら

男

なんつーか、そんな
気分にならなかったんだよな

葛城絵里香

・・・・・

男

そもそも、鮎原から
金受け取っちまったしな

男

だから謝るとか
そういうの良いから

葛城絵里香

あ、ありがとうございます

男

他の奴らも俺と同じ
気持ちだからよ

男

心配すんな！

男

まぁ、そう思ってんなら
金返せって話だろーけど

男

悪いな！もう全額
使っちまったわ

葛城絵里香

ふふふ、そんな事
言いませんよ

男

あはは、そっか

碧江涼太

話はもう終わったかな？

葛城絵里香

あ、碧江さん・・・

男

ああ！もう終わったよ

碧江涼太

そっか、なら良かった

葛城絵里香

今日はありがとう
ございました

碧江涼太

いいや、礼なんていいよ

碧江涼太

てか、今日はどうすんの？

碧江涼太

どっかに泊まって
帰るの？

葛城絵里香

そう・・ですね

葛城絵里香

一応ホテルは予約してるので

碧江涼太

じゃあ一杯だけ
飲んで行く？

碧江涼太

ご馳走するぜ

葛城絵里香

あ、そうですね・・

葛城絵里香

なら・・お言葉に甘えて

葛城絵里香

今日はありがとう
ございました

男

もう俺らの事は
心配しなくていいからな

葛城絵里香

はい・・・

男

俺らは俺らで
好き勝手やってるから

男

まぁ、元気にやれよ

葛城絵里香

はい・・・

葛城絵里香

では失礼します

碧江涼太

また遊びに来てくれ

葛城絵里香

はい！杏樹連れて来ます

碧江涼太

おう！待ってるよ！

葛城絵里香

それでは失礼します

絵里香は丁寧に頭を下げるとホテルに向かって歩いていく

碧江涼太

さぁ！オープン準備だ

碧江涼太

ひとみが買い出しから
帰って来る前に

碧江涼太

ちゃっちゃと
終わらせようぜ

碧江涼太

じゃねーと、ひとみが
後からグチグチうるせーから

男

ああ、そうっスね

涼太がオープン準備に取りかかろうとした時

店のドアが開く

碧江涼太

（またかよ・・・）

碧江涼太

（オープン前だってのに）

碧江涼太

申し訳ありません

碧江涼太

まだ営業前──

鮎原透

久しぶりだな！涼太！

碧江涼太

え？透！？

碧江涼太

透じゃねーか！おい！

鮎原透

お前のバーテン姿
様になって来たな！

碧江涼太

今日はどうしたんだ？

碧江涼太

わざわざ名古屋まで

鮎原透

親父に言われて葛城の
様子を見に来たんだよ

碧江涼太

ああ、そういう事ね！

鮎原透

まぁ、親父の取り越し苦労
だったみてーだけどな

男

よ、よぅ！鮎原！

鮎原透

久しぶりだな！

鮎原透

元気だったか？

男

まぁ、ボチボチだな

鮎原透

そっか・・・

碧江涼太

せっかくだし
一杯飲んでけよ

碧江涼太

奢るぜ！

鮎原透

なら山崎55年の
ロックを頼むわ！

碧江涼太

そんな高いやつ
置いてるわきゃ
ねーだろ！

碧江涼太

むしろ俺が飲みてーわ！

鮎原透

冗談だよ！冗漫！

碧江涼太

ったく

鮎原透

まぁ、そうだな
なら、山崎ノンエイジの
ロックを一杯頼むわ！

碧江涼太

おぅ！分かった

涼太は透の注文を聞くと小慣れた手つきで準備する

碧江涼太

ほらよ！山崎のロック

鮎原透

サンキュー

碧江涼太

そういやお前

碧江涼太

杏樹ちゃんと、ついに
付き合ったんだってな

鮎原透

ああ、葛城から
聞いたのか

碧江涼太

ついにお前も落ち着くトコに
落ち着いたって感じだな

鮎原透

まぁ、な・・・

碧江涼太

あっ！ちなみにこの店
タバコOKだからよ！

涼太はテーブルに灰皿を置く

鮎原透

え？そうだったっけ？

鮎原透

サンキュー！

透は懐からタバコを取り出しデュポンライターで火をつける

鮎原透

ふぅー・・・

碧江涼太

やっぱ酒とタバコは
ワンセットだろ

鮎原透

違いねー！

透と涼太が久しぶり再会という事で昔話に花を咲かせていると

ドアが開いて 1人の女性が入って来る

柳ひとみ

ちょっと涼太？

柳ひとみ

何、営業前に
お客入れてんのよ！

柳ひとみ　24歳

恋人の涼太と共同でオーセンティックバーを開業した

バーテンダーとして店に立つ涼太に代わって仕入れや経理を担当している

また、近いうちに涼太と結婚する事が決まっている

碧江涼太

バーカ！透だよ！透！

柳ひとみ

え！？透くん？

鮎原透

久しぶりだな！ひとみ！

柳ひとみ

きゃー！久しぶり！

柳ひとみ

元気だった？

ひとみは透の背中に抱きつく

鮎原透

まぁ、な

鮎原透

お前らもいい
感じみてーだな

柳ひとみ

まぁね♫

柳ひとみ

お店も軌道に乗って来たし

柳ひとみ

この前なんて情報誌に
お店も載せてもらえたんだ

鮎原透

へー！

碧江涼太

開業当時はあんまし
上手く行かなかった
んだけどな

碧江涼太

2人で協力して
なんとか！って感じだよ

鮎原透

確か近々結婚すん
だったよな？

柳ひとみ

まぁね！

碧江涼太

まぁ、今の時点でもう
夫婦みてーなもんだからな

柳ひとみ

てか透くんはあれから
杏樹ちゃんとは
どんな感じなの？

柳ひとみ

上手く行ってる？

碧江涼太

付き合い始めたんだと！

柳ひとみ

え！？ホントに！？

鮎原透

まぁな・・・

柳ひとみ

よかったじゃん！

柳ひとみ

透くんと杏樹ちゃん
お似合いだったもんね

鮎原透

はは、サンキュー！

それから透と涼太、ひとみの３名は

グラスを片手に昔話に花を咲かせていた

碧江涼太

へー！ついに勘当
取り消してもらえたのか

鮎原透

ああ・・・

鮎原透

まぁ、こっから
スタートって感じだなぁ

柳ひとみ

なら今度涼太と二人で
遊びに行くよ！

柳ひとみ

ね？涼太！

碧江涼太

ああ！そうだな！
久しぶりに杏樹ちゃんにも
会いてーからな！

鮎原透

てか、お前らは結婚は
いつの予定なんだ？

碧江涼太

まぁ、今年中にはしてーな

鮎原透

そん時は祝儀たんまり
持って来るよ！

碧江涼太

おお！！

碧江涼太

期待してるぜ！透くん！

柳ひとみ

露骨に喜んでん
じゃないわよ！

ひとみが涼太の耳をつねる

碧江涼太

イダダダダダ

鮎原透

あはははは

鮎原透

まぁ、期待しといてくれよ

鮎原透

じゃあそろそろ行くわ！

碧江涼太

おう！

碧江涼太

いつでも遊びに
来てくれよ

碧江涼太

つっても長野と名古屋じゃ

碧江涼太

そんな気軽に
来れねーと思うけどな

鮎原透

ああ、そうだな

鮎原透

まぁ、時間があったら
また飲みに来るわ

柳ひとみ

じゃあ！透くん！
元気でね！

鮎原透

ああ！お前らもな！

透は手を振りながらホテルに向かって歩いていく