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〜廊下〜

一方その頃、桃音は敵に捕まった瑠花と悲鳴をあげてから応答しなくなった大輝の心配をしながら敵を撃ち殺していた。

百峰 桃音

(なんや一体どないなってんねん?)

百峰 桃音

(瑠花は捕まるわ、大輝はなんか応答せーへんし!)

百峰 桃音

(まさか…大輝がおる
屋上に敵が!?)

本当はものすごく2人を助けに行きたいところだがそっちまで手が回らない。

それも無理はない。 なにせ……

信者(男)

怯むな!
あの女を始末しろ!!

信者(剣)

魔女を殺せ!!

百峰 桃音

(敵多すぎやる!!なんかさっきより人数増えた気いするねんけど!?)

桃音の目の前には20人前後の敵が立ちはだかっていた。しかも桃音は既に敵の攻撃が掠って身体中傷だらけだ。どこのタイミングでやられたのだろうか、頭から血が流れている。

百峰 桃音

くっ…!

パスッ パスッ!

パスッ パスッ!

撃っても撃っても敵が減った気がしない。かと言って増えている訳でもない。 無駄に多い。ノールックで敵の脳天を撃ち抜く前代未聞の射的の天才である桃音を相手にしているとはいえど、ここまでの勢力は流石に必要ないぐらいだ。

百峰 桃音

(おかしい!
絶対おかしいやろ!)

百峰 桃音

(情報部からもらった資料で見た人数のほとんどの人数やでコレ!?)

ここで1つおさらいしよう。 任務に行く者は組織の人数などの標的に関する資料を情報部から受け取り、 彼らはそれらに目を通した上で任務を遂行するのだ。

百峰 桃音

(まさかやと思うけど……)

百峰 桃音

(ウチ1人狙いされてる!?)

百峰 桃音

(いや…見た感じ下っ端ばかりやからそうでもないか。幹部らしき人はおらん…?)

百峰 桃音

(となると幹部は他を当たってるんか?)

百峰 桃音

(この組織一体何がしたいんや…?)

そう桃音は考えながら敵を撃ち殺していった。考えれば考えるほど疑問が深まるばかりだ。

百峰 桃音

(ハッ…!後ろ!?)

ブンッ!

ブンッ!

背後から殺気を感じ取った。とっさに桃音は自分を目掛けて振り落とされた斧を躱した。そしてそのまま撃ち殺した。

百峰 桃音

あっぶな!

信者(剣)

覚悟!!

百峰 桃音

!!

ザシュッ!

女の声と殺気に反応し、とっさに銃を向けようとしたが遅かった。その時に空いた胴体を女に剣で切りつけられた。

百峰 桃音

ガハッ…!

桃音は傷口を押さえながらその場で崩れ うずくまった。口の中に血の味が染み渡り、痛みで立てない。

信者(剣)

とうとう追い詰めたぞ…この魔女め!

シャキッ!

1人の女が言うと他の信者たちは桃音を取り囲み各々の武器を向けた。もう逃げ道は無い。ここで終わりだと敵の視線と向けられた刃が告げられている。

百峰 桃音

(やばっ…!)

桃音は痛みに耐えながら落とした銃に手を伸ばした。

ダンッ!

百峰 桃音

ぐあっ!

しかし剣を持った女が桃音のその手を強く踏みつけて阻止した。

信者(剣)

お前さっき「殺しに情けは無用」って言ったよな

信者(剣)

では冥土ノ土産…とまでは言わないかもしれないが、お前に私たちが教祖様からの教えを教えてやろう

信者(剣)

これが神が下したお前への罰だ

百峰 桃音

…?

ジャキッ!

女が桃音が落とした銃を拾い、後頭部に銃を突きつけた。桃音の視界には吐いた血と傷口から垂れた血が付いた床のみ。

「”粛清は自らの物で命を絶つこと”だと」

信者(剣)

それが教祖様からの教えだ。お前の場合はこの銃で死ぬこと

信者(剣)

滑稽ね。自分の愛用している武器に殺される様はな…笑

信者(剣)

これで終わりだ!
”人間兵器”め!!

女はそう嘲笑って引き金に指をかけた。

百峰 桃音

……アンタに、やれんのか?

信者(剣)

は…?

百峰 桃音

アンタ…大して銃も握ったこと、無いやろ?

桃音は俯いたまま言った。その問に一瞬動揺した女は図星のようだった。

百峰 桃音

やっぱな…見たら分かるわ

百峰 桃音

ウチは今まで…何人ものの悪党を殺してきた……

百峰 桃音

もちろん…今のこんな状態も、初めてじゃない………何度も殺されそうになった

百峰 桃音

そいつらはみんな…真正面からウチの脳天を…ぶち抜こうとした……

信者(剣)

なっ…何が言いたい?

桃音は息を切らしながら顔を上げた。

百峰 桃音

本気で…仕留めるなら……

百峰 桃音

真正面から目ェ見て殺れ!!

「この根性無しが!!」

桃音は女の目を真っ直ぐ睨みつけて言った。殺気立っていた女や他の信者たちも武器を握っていた手が緩みかけた。

信者(剣)

なっ…!

信者(剣)

黙れ!良いだろう!お望みどおり真正面から殺してやる!!

ヤケクソになった女は桃音の髪を乱暴に掴んで額に銃を突きつけた。

パスッ!

信者(男)

えっ…?

サイレンサー越しの銃声が鳴ったが、脳天を撃ち抜かれのは信者の女の方だった。女は頭から血を飛び散らしながら重力に引かれるように倒れた。

百峰 桃音

…アンタ、ウチが二丁持ちってこと忘れてたやろ(ウチも一瞬だけ忘れかけたけど)

そう言う桃音の手には銃が握られていた。女が引き金を引く直前に、今ある力を振り絞ってお得意の早撃ちで殺られる前に殺ったのだった。

信者(男)

あ、あんな至近距離で…あの早撃ち……

信者(男)

嘘だろ!?

信者(男)

まさに”人間兵器”だ…!

周囲にいた信者たちは青ざめていた。

信者(男)

け、けど!その傷じゃもう動けないだろう!

信者(女)

覚悟しなさい!極悪人が!

残党は先程殺された仲間の事は気にせず、各々の武器を桃音に向けた。

百峰 桃音

…っ!!

百峰 桃音

(ヤバい…さすがにこの傷でこの人数は…!殺られる…!今度こそ殺られる!)

この時桃音は、死を覚悟した。

ドクン!!

バチィィィ!!!

百峰 桃音

っ!!

次の瞬間、目の前が真っ暗になり、 脳から全身に電気ショックのような 衝撃が一瞬だけ走った。

百峰 桃音

(…来た!)

信者(男)

死ねぇ!!
”人間兵器”ぃぃ!!

取り囲む信者たちは桃音を目掛けて武器を振りかぶった。

ゴッ!!

信者(男)

ガッ!?

すると桃音は立ち上がると同時に手前にいた男の顔面を思いっきり頭突きした。

パスパスパスッ!

信者(男)

はっ…?

そしてそのまま武器を振りかぶった敵たちを見向きもせず撃ち殺した。

信者(女)

お、おのれぇ!!

パスッ!パスッ!

桃音は傷の痛みなんて気にせず、ここへ来た、傷を負う前の時のような動きで敵を撃ち殺していった。

信者(男)

(なんだ…?気配が変わった?)

敵陣の中、少し離れたところで信者の1人の男が目を見開いていた。

信者(男)

(いや…それよりどういう事だ!?)

信者(男)

(あんな傷だらけで胴体ザックリ斬られてんのに…なんであんなに動けるんだ!?てかさっきまで蹲ってたよな!?)

信者(男)

(それに目が…)

桃音のピンク色の目は少し薄くなっていた。そして先程よりも素早く、圧倒的な戦闘能力を発揮した。その姿は長年この仕事を成し遂げてきたプロの殺し屋特有のオーラを放っていた。

信者(男)

な、何なんだお前!?
痛みを感じないのか!?

パスッ!

その男は混乱してそう言って桃音に武器を向けたが、あっさりと撃ち殺された。

実はその男の言う通りである。 今の桃音は痛覚が麻痺していた。

なぜ突如桃音の痛覚が麻痺しだしたのか、それを説明する為には まず彼女の少女時代まで遡ろう。

それは11年前のある日。 桃音がまだ両親が生きており、 ”大阪に引っ越す前”の時の事だ。

〜11年前〜

バン!バン!

マフィア

なんだよコイツ…!
こんなガキが…嘘だろ!?

桃音・少女時代

(……このバイト終わったら駅前のクレープ食べに行こ)

桃音・少女時代

(あれ?数学の課題、学校に忘れたかも)

敵を葬りながら全く関係ないことを考えている桃音は当時14で殺し屋歴2年。殺し屋一族生まれの彼女は幼い頃から訓練されており、その実力は現役の殺し屋も顔負けの射的の天才であった。

この日は”暗黒街”の町外れにある廃工場を本拠地とするマフィアを標的とした仕事だった。

マフィア

このクソガキが!!

ヒュン!

桃音・少女時代

おっとぉ危なっ!

マフィア

(!確かこの先に大量の硫酸が入ったタンクがあったはず………)

マフィア

(あのクソガキを突き落としてやるか!)

その男は桃音を誘導するように追い込んだ。そして…………

ダンッ!

桃音・少女時代

ガッ…!

ふわっとした浮遊感を感じた。

桃音・少女時代

やばっ…!!

ダボーン!!

桃音は硫酸の海に突き落とされた。

マフィア

…やったか。ざまぁみろ

ザバァ!!

するとタンクから真っ白な手が出てきた。まるでホラー映画で墓場の地面からゾンビが手を突き出したかのようだ。

マフィア

ぎゃあああ!!?

そのままタンクの淵を掴み、辛うじて這い上がって桃音はタンクから出て来た。

マフィア

お、おい…嘘だろ!?

マフィア

なんで生きてんだよ!?

バン!

パニックになった男を何も言わず黙って撃ちころした。

桃音・少女時代

全く…びっくりしたわ

桃音は濡れた髪をかきあげてそう呟いた。そして、自分の手がふと目に写った

桃音・少女時代

え!?何コレ!?

桃音・少女時代

なんか白くなった!??

そう。硫酸ではない謎の液体の海に落ちたから異変が起きた。桃音の肌は色素が薄くなり、髪は真っ白になっていた。

桃音・少女時代

う〜〜〜ん……

桃音・少女時代

帰ってお風呂入ったら戻るかな?

あまり細かい事は気にしない呑気な性格をしていた彼女は仕事が終わった連絡をして、家へ帰った。

しかし家に帰った後、風呂で何度も洗ってみたが戻ることはなかった。 桃音はタンクにあった謎の液体によって全身白く染められてしまったのだった。

〜6年後〜

かれこれあれから6年経った。相変わらず全体的に白い姿の桃音は訳あって元の姿に戻らなければならなくなり、例の液体について調べるために、かつて自分をこんな姿に変えた廃工場へ足を運んだ。

桃音(20)

(あの時の液体…結局何だったんだろ?)

桃音(20)

(ネットで調べて見てもなんの情報もなかったから、とりあえず現地に来たらなんかわかるかと思ったんだけどなぁ?)

桃音(20)

!?

すると桃音は背後から人の気配を感じ、咄嗟に銃を向けた。

白衣の男

…!まだ声もかけてないのに気がついたのか……君は只者ではないな

そこには白衣を着た男が立っていた。

白衣の男

あぁ、銃を向けないでくれよ

桃音(20)

…誰?

白衣の男

うーん…そうだなぁ

「かつて廃工場(ここ)の化学者だった……とでも言っておこうか。」

桃音(20)

!??

白衣の男

君、殺し屋だろう?それであのタンクに落ちたんだろ?見たら分かるよ

ギクッ!

桃音(20)

…あの液体の事、知ってるのか?

白衣の男

そりゃココの者だしね

白衣の男

で、君は恐らく……なぜ自分が真っ白になったのかが気になってココへ来たんだろ?

白衣の男には全てがお見通しのようだった。桃音は警戒心が高まった。

桃音(20)

………何が言いたい?

白衣の男

元の姿に戻るにはこの薬品をぶち込まなきゃなんないんだよ

そう言って男は無駄にデカい注射器を見せた。中には紫の液体が入っている。

桃音(20)

…何そのあからさまにヤバそうなやつ

白衣の男

コレで君を元の姿に戻してやってもいいよ

桃音(20)

なっ!マジで!?

白衣の男

ただ……その代わり代償が少し大きいがな、それでも良いんだったら

桃音(20)

代償…?

白衣の男

うん。それは………

白衣の男はその”代償”について 説明した。

桃音(20)

それでもいい!!

白衣の男

…いいのか?

桃音(20)

当たり前でしょ

今の桃音にはその薬品にしか目がなかった。とにかく今は元に戻らなければならない。生き抜く為にはこの特徴的な容姿から変えなければならないのだ。その為なら代償はなんだって良い。

白衣の男

……わかった。
しかし1つ条件がある

桃音(20)

条件?

白衣の男

君の殺し屋の腕を見込んでこの男を始末してほしいんだ。

男はその標的の顔写真を渡して言った。

桃音(20)

殺しの依頼…?

白衣の男

そうだ。君殺し屋なんだろ?

白衣の男

殺し屋だったら引き受けてくれるよね?

なんだか上から目線で腹立つが今はそんな事を気にしている場合ではない。

桃音(20)

わかった

白衣の男

あぁ、そうだ。殺った証拠としてコイツの首を持ってきてくれ

桃音(20)

マジか…わかった

生首持ってこいっていうのは さすがに引いた……

〜2時間後〜

桃音(20)

持ってきたよ

桃音は廃工場に戻った。

白衣の男

早っ

桃音(20)

はいコレ。例のブツ

そう言って桃音は黒いビニール袋を渡した。中には標的の生首が入っていた。

白衣の男

あぁ…コイツだ!この裏切り者…!

男は生首を掴み、標的の死に顔を見て不敵な笑みを浮かべた。どうやらこの廃工場の裏切り者のようだ。なるほど、それで生首を持ってこいと言ったのか……

白衣の男

OKだ。さすが殺し屋だ

桃音(20)

当たり前よ

桃音(20)

それじゃあ約束通り、薬品貰うよ

桃音は手を出して言った。

白衣の男

まぁ待て。準備はできてる

桃音(20)

?準備?

白衣の男

こっちだ

そう言って背を向けた男の後を着いた。

桃音(20)

ここって…

ここはかつて桃音がタンクに突き落とされた場所。下には以前と同じようにタンクに入った液体の海がある。

白衣の男

既に投入しておいたよ

桃音(20)

え?

白衣の男

じゃあ…

白衣の男

行ってこい!

ドン!

桃音(20)

はっ!?ちょっ…

桃音(20)

あああああ!!

ダボーン!!

桃音は男に背中を押され、 液体の海にまた落ちた。

全身が焼け付くような激痛がはしる。

四方八方から無数の針で刺されているような感覚だ。

桃音には全く現状が把握できない。

しばらくして痛みが和らいだ。

苦しい!窒息しそう!

桃音は慌てて水面から顔を出した。

ザバァ!

桃音(20)

プハァ…!!

桃音(20)

何すんねんテメェ!!

桃音はタンクの淵にしがみつき、 白衣の男を睨んで言った。

白衣の男

お、成功だ

男はタンクの側まで来て桃音の手を引いた。そして、どこからか持ってきた鏡を見せた。

桃音(20)

…え、嘘!?戻ってる!?

鏡に写る自分を見た桃音は驚きのあまり、心臓が止まりかけた気がした。

白衣の男

へ〜、黒髪かと思ったら薄い茶髪だったのか。え?それ地毛なの?ハーフ?

桃音(20)

いやハーフじゃないけど…

桃音(20)

てか!先に言えよコレ!!

桃音はタンクに指をさして言った。

白衣の男

投入するって言ったじゃん

桃音(20)

そっちかい!てっきり薬品ぶっ刺すんかと思ったわ!!

桃音(20)

ていうか!なんでまた突き落とされなあかんねん!!トラウマなるわ!!

白衣の男

だって1回目で液体の海に落ちたんだったらもう1回ドボンしなきゃ

桃音(20)

何その理論…

パスッ!

そして現在に戻る。 桃音はここにいる敵全てを始末した。

百峰 桃音

(あの時の”副作用”で助かったな…)

あの白衣の男が言う元の姿に戻す際の”少し大きい”代償、それがこの薬品の副作用なのであった。

その副作用とは、不定期に脳に電気ショックのような衝撃し一時的に痛覚が麻痺し、その麻痺が切れるとまた電気ショックのような衝撃が訪れ、麻痺時に受けた分のダメージに襲われることだ。

そしてそれが繰り返すことにより、寿命がじわじわと削られているのだ。

百峰 桃音

(この”副作用”でウチは生き延びてるけど、いつ死ぬか分からん短命や…)

百峰 桃音

(でも…)

「あんな地獄で死なずに済むんやったら…… 安いもんや…!!」

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