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太田豊太郎

部屋に入って面と向かえば、

太田豊太郎

姿こそ昔に比べれば太ってたくましくなったが、

太田豊太郎

昔通りの快活な気象で、

太田豊太郎

俺の過ちをそれほど気にしていないように見えた。

太田豊太郎

別れて以後のことを詳しく話す暇もなく、

太田豊太郎

連れられて大臣に閲覧し、

相沢謙吉

大臣、こちらが太田豊太郎です

天方伯

うむ

太田豊太郎

委託されたのはドイツ語で書かれた文章の、

太田豊太郎

急ぐ必要があるものを翻訳しろということであった。

太田豊太郎

俺が文章を受け取って大臣の部屋を出たとき、

相沢謙吉

豊太郎!

太田豊太郎

相沢は後から来て俺といっしょに食事でもとろうと言った。

太田豊太郎

食事の席で彼は多くのことをたずね、

太田豊太郎

俺は多くのことを答えた。

太田豊太郎

彼の人生はおおむね順調で、

太田豊太郎

俺の身の上は不運不幸なものだったからだ。

太田豊太郎

俺が胸をひらいて語った不幸な経過を聞いて、

相沢謙吉

そんなことがあったのか……!

太田豊太郎

彼はしばしば驚いたが、

太田豊太郎

俺を責めようとはせず、

太田豊太郎

かえって他の凡庸な先輩たちをののしった。

相沢謙吉

あのボンクラどもめ!

太田豊太郎

しかし語り終ったとき、

太田豊太郎

彼は俺の問題点を注意して言うには、

相沢謙吉

今回のことはお前の生れながら弱い心から起こったことだから、

相沢謙吉

今さら言ってもしかたない。

相沢謙吉

とはいえ、

相沢謙吉

学識もあり、才能があるものが、

相沢謙吉

いつまでも一少女との関係にこだわって、目的のない生活を続けるつもりか。

相沢謙吉

今は天方伯爵も、ただお前のドイツ語の能力を使用しようというつもりしかない。

相沢謙吉

俺も、天方伯爵が免官された当時の理由を知っているから、

相沢謙吉

しいて説得しようとはしない。

相沢謙吉

伯爵が心の中で、事実を曲げてかばっているのだろうと思われてしまったら、

相沢謙吉

お前に利益はなく、俺が損するばかりだからだ。

相沢謙吉

人を推薦するには、まずその能力を示すに限る。

相沢謙吉

能力を見せて伯爵の信用を得るんだ。

相沢謙吉

またその少女との関係は、

相沢謙吉

たとえ彼女に誠意があったとしても、

相沢謙吉

また例え情が深かったとしても、

相沢謙吉

人の才能を知っての恋ではなく、

相沢謙吉

慣習という一種の惰性から生じた交わりだ。

相沢謙吉

意を決してこれを断て!

太田豊太郎

……これは相沢の言葉の大意である。

エリスとの別れをすすめる相沢。どうなってしまうのか、続く。

日本の名作シリーズ 舞姫(完結)

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