コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
地下室に侵入するため
じいちゃんの家に行く口実を探していた
特殊過ぎるあの鍵を持ってくることができず
それでも諦めきれなかった俺は
何としてももう一度じいちゃんの家の居間に行って
引き出しから鍵を持ち出したかった
そんな時おばあちゃんからの電話で
アップルパイを焼くから来ないか?と誘われ
驚きと嬉しさで全身が震えた
これで母ちゃんを助けに行けると思うと嬉しくてたまらない
これがいけないことだとわかっている
でも何度も過去に飛んで
何度も過去の母ちゃんと話をして
母ちゃんを守りたいと思った
過去のトラウマを乗り越えてやっと掴んだ母ちゃんの幸せを
絶対に失ってほしくなかった
母ちゃんの病室で父ちゃんはいつも悲しそうにしていた
あんな思いをしてほしくない
とにかく二人には幸せでいてほしい
だから俺は……
明日夢
心臓がドキドキしてくる
"あの引き出し"には大量の鍵が入っていて
その中から瞬時にあの鍵を探し当てなければいけない
三十分以上かけて何となくそれらしいポイントを見つけたけど
もし発見できなかったら……
おばあちゃんが台所から戻るまでに見つけられなかったら……
そんな不安も入り交じる
それでも行かなければ
母ちゃんを助けることはできない
明日夢
この日は凄く天気がよかった
病院に行く時はいつも曇るのに
タイムマシーンを使う日はいつも晴れていた気がする
何度も深呼吸をしてポケットから鍵を出した
俺のお気に入りのホテルキー
俺はずっと母ちゃんのホテルキーが好きだった
小さい頃から居間に置いてあって
勝手に持ち出したら怒られるから我慢していたけど
父ちゃんにお願いをしたら新しいのを買ってくれた
もちろんデザインは母ちゃんとお揃いで
数字を俺の誕生日にしてもらった
明日夢
明日夢
過去で鍵を使うことがなかったから忘れていた
母ちゃんに見せたら
愛紗
愛紗
嬉しそうに笑う母ちゃんの顔が頭に浮かぶ
インターホンを押して中に入ると
明日夢
明日夢
俺の声に気づいたおばあちゃんが
居間の方からバタバタと歩いてくる
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃん
明日夢
地下室への扉を横目に居間へと進む
じいちゃんの姿はどこにもない
きっと今も地下室で
タイムマシーンの改良作業をしているのだろう
おばあちゃん
おばあちゃんが焼きたてのパイを持ってきた
明日夢
明日夢
おばあちゃん
明日夢
そう言っておばあちゃんが台所へ向かった瞬間
俺は直ぐに引き出しに手を掛けそっと開けると
大量の鍵の中に手を入れて
指先の感覚を頼りに音を立てないように慎重に鍵を探した
おばあちゃん
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃんがこっちに来る前に……
鍵を……
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
明日夢
明日夢
間一髪だった
俺はやっと
地下室の鍵を手に入れた
後は隙を見計らって侵入するだけ
おばあちゃん
明日夢
おばあちゃん
おばあちゃん
明日夢
アップルパイを片手に玄関に移動する
明日夢
そう伝えたらおばあちゃんはついてこなかった
明日夢
明日夢
おばあちゃん
遠くから聞こえるおばあちゃんの声
俺は靴を履くふりをして玄関の扉を開いた
そしてそのまま扉を閉める
おばあちゃんは俺が出ていったと思っただろう
でも俺まだ扉の内側にいた
音を立てずにそっと上がると
予め用意しておいたエコバッグに靴を入れ
玄関を背にして右にある階段を上った
地下室への扉のちょうど正面にある二階へと続く階段
昔はここにじいちゃんの息子さんの部屋があった
父ちゃんの話では
父ちゃん達が越してきた後に出ていってしまったらしい
今は誰も使っていない二階の部屋も
おばあちゃんは毎日きれいに掃除をしていて
いつ誰が泊まりに来てもいいようにしていると言っていた
綺麗に掃除された階段に座り
俺はその時が来るのを待った