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去華就実の風

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去華就実の風

30 - 記憶・咲いて枯れて、青薔薇

♥

280

2024年10月01日

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気がつけば、こんな仄暗い場所にいた

というのも、実は情けない話

大陸の者に捕まってしまい

こんな状態である

拷問にでもかけられるのか

そんなことを考え

風魔

……神の使い、失格だ

なんて柄にもなく声に出る弱音

…このまま、ここで死ぬのかな

……そもそも、大陸の者に捕まるなんて最低だ

……裏切られたのだ、愛する民に

……なんだか、思考を回せば回すほど

嫌な現実に気づいて嫌になる

もうこのままいっそ…

なんて思っていたら、部屋に入ってくる大陸の人

見覚えのある、顔だった

まぁ、そこからは予想通り

拷問まがいなものをされた

まぁ、痛いのなんのって

ただ、不思議と何も考えられなくて

都合がいいな、なんて思っていたら

桃香

……展開術・薔薇の喰霊

辺り一面に、薔薇が咲いた

次の瞬間、大陸の者はそそくさと帰って行った

……どうしてここに、2代目様が?

と言うか、他の人が居ない

2代目様、1人で?

こんな、危険な場所に??

というか、どうして俺なんかを助けに…?

桃香

……風魔、大丈夫?

風魔

2代目様……?

風魔

どうして……

風魔

どうしてこんな危ない場所に!?

桃香

……え

風魔

こんな所に来なくても、俺はどうにでもなりましたよ!?

風魔

どうしてこんな危険な場所に、誰も連れないでおひとりで来たんですか!!

風魔

俺の事なんて……

風魔

俺の事なんて放っておけば良かったじゃないですか!!

……まずい、やらかした

言いすぎた

つい当たってしまった

終わった、終わったんだ俺

すぐに謝ろうとすると、2代目様の言葉に遮られた

桃香

大事な仲間を助けに来るのに

桃香

理由なんて必要なの?

冷たい、けど炎のような視線で俺を見つめる2代目様

確実に怒ってる、ということしか分からない

終わったんだ……本当に……

風魔

……失礼しました

風魔

そんなことはありません

風魔

ただ、俺は少なくとも神の使いです

風魔

あれで死ぬことなど無かったでしょうし

風魔

わざわざ2代目様が来られる理由が分からなかっただけです

桃香

死ぬ事がないからって

桃香

仲間が痛めつけられているのを

桃香

黙って見てろと?

あ、本当に終わったんだ

と、全てを諦めた

2代目様、こんな表情出来たのか

なんて訳の分からない思考が回った

……もう、諦めて全部言ってしまおうか

風魔

……今から言うこと、聞かなかったことにして欲しいんですけど

風魔

俺達神の使いは、本当に必要ですか?

風魔

四人神様が居れば、2代目様の安全は確保されてます

風魔

それなら、俺達の価値など無いに等しい

風魔

俺は母から、この身を捧げて2代目様を守るように言われて育ったのです

風魔

ですが

風魔

その役目は、四人神様だけでいいでしょう?

風魔

なら……

風魔

なら、俺達が居る意味ってなんですか?

風魔

俺達神の使いがいる意味って……

風魔

そんなの……存在するんですか?

風魔

俺の生きてる理由は

風魔

2代目様を守る為なんですよ!!

風魔

それを

風魔

それを否定されたら、もう……

……ただ、黙って聞いている2代目様

何を、考えているのだろう?

ただ、黙って聞くことしか出来なかった

それは、かつての少女によく似ていた

かつて、私も同じだったから

あの時も、きっと私は似ていた

死んだような、なんで生きてるのか分からない表情と雰囲気

私は、ある人に助けられたから

桃香

(だったら)

桃香

(だったら今度は)

桃香

(私が、君の生きる理由になるよ)

長い沈黙のあと、2代目様は口を開いた

桃香

そこまで話されると、少し困るね

やっぱり人の心なんて迷惑じゃないか

予想通りの言葉に、絶望する

どうせこのまま置いていかれるんだろ

そんなことを思っていたら

目の前まで来て、目線を合わせる2代目様

……なにがしたいんだ?

桃香

私は尚更、風魔と一緒に居たいな

風魔

は……?

尊厳とか、もうどうでもいい

なんて言った?この人

なんか笑ってるし……

桃香

私は確かに風の神の使いも欲しかったけど

桃香

風魔と友達になりたかったんだよ

風魔

え……?

桃香

よく風魔は選ばれたセンスを持つ天才だって言われるけど

桃香

才能を努力で開花させて、天才と呼ばれてるってよく分かるから

いきなり褒められてなんか不気味だ

今まで誰も見てくれなかった、風魔そのものを見てくれたことが

なにか、くすぐったい

なんで、この人は気がついたのだろう

自分の、努力に

桃香

嫌なら辞めてもいいよ、神の使い

桃香

その時は私の名前でどうにかするし

桃香

沙羅にはその権利があるし

桃香

何より

桃香

風魔自身が嫌なら無理強いなんてしたくない

風魔

……なんですか?

風魔

辞めるなら今のうちって話ですか?

桃香

いや?そんなことないよ

桃香

ただ本当に風魔が嫌なら

桃香

辞めるっていう選択肢もあるよってこと

桃香

私としては……そうだね

桃香

沙羅桃香として

桃香

今後とも仲良くして欲しいかな

風魔

……神の使いとして、ではなく?

桃香

そう、私は風魔のことを気に入ってるし

今更でごめんね?と言ってから

俺の傷を治していく2代目様

それが、ただ、綺麗で

思わず、見蕩れた

そもそもの話、術なんて綺麗じゃなくてもいいのだ

それを綺麗に見せようと、ただひたすらに努力するのだ

つまり、これほど綺麗に見えるまで

風魔

(……そっ……か……)

風魔

(この人も……この人も)

風魔

(ただ、努力で生き抜いてきたんだ)

勝手に四人神様は

俺とは違い本物の才能を持っていて

努力を知らない人だと思っていたけど

そんなことなんて、無かったんだ

全ての常識が、ぶち壊れた感覚がした

桃香

私は風魔と一緒にいるの、楽しくて好きだよ

そう言って、こっちを見て笑った2代目様に

全ての努力が、認められた気がした

今まで影で行っていた、全ての努力

それが、認められた気がして

こんなに綺麗な術を使える人が

他の誰でもない、自分を欲してくれている

その真実が、何よりも嬉しくて

勝手に、救われてた

なんて、自分勝手だ

でも、ただ本当に

心の底が、軽くなった感覚がした

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

確かに大陸の民に捕まっていたところ沙羅の巫女が一人で自分を助けに来た、なんて驚くと同時に何で危険な場所に一人で来たのか!?と聞きたくなるよね……💦 逆に桃香さんの風魔さんからいろいろ言われても凛とした姿で話を聞いて最後は「一緒にいて楽しい」と伝えるところが桃香さんらしいな、って思った😌💭 「風の神の使い」というではなく「風魔」という人間して見てくれた桃香さんに心を救われて

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