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去華就実の風

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去華就実の風

31 - 記憶・全てを捧げる青薔薇

♥

301

2024年10月03日

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あの日、あの時、あの瞬間

俺は、2代目様に落ちた

勝手に、救われたような

そんな、感覚がして

ただ、見つめてくれる感じが

道端に咲く、花に見えた

美しく、凛々しく、ただひたすらに人を魅了する花

無理強いなんて、してくれないであろう

そんな、2代目様に

心の底から、救われて

落ちた

この時

この時だけは

2代目様が、本物の神様に見えたんだ

…いや

少なくとも、あの瞬間だけは

風魔

(…俺だけの、神様)

自分だけを見つめてくれる、神様だった

風魔

(…この人の、役に立ちたい)

風魔

(他の誰でもない、風魔を見てくれた人の)

風魔

(…この人に、一生を捧げてもいい)

……狂ってる?

当時の風魔にとって

これは、当然の思考だったのだ

目の前の神様に

全てを、捧げてしまいたくなった

それくらい、救われたのだ

風魔

…やっぱり、2代目様の事を巫女様とお呼びしてもいいですか?

初代様は、ずっと初代様と呼んでいた

そして、その延長線で2代目様と呼んでいただけだった

それすら、今となっては必要ない

この方は、沙羅の巫女だ

最大限の敬意を持って、巫女様とお呼びするべきだ

桃香

え?そんなの別にいいけど……

風魔

…俺を捨てないでくれて、ありがとうございます

風魔

……風魔を、見つけてくれてありがとうございます

心の底からの感謝だった

言葉にしないと、溢れ出そうだった

それくらい、風魔は幸せに満ちていた

桃香

何言ってるの

桃香

風魔は私の大切な仲間だよ

そう言って、笑う巫女様に

俺は、確実に救われていた

そして、その数日後

沙羅家初代巫女様が、亡くなられた

その後、流れるように巫女様が正式に2代目巫女となり

神の使いも、その全てが2代目へと変わった

……なお、初代様が亡くなられてから

初代様に仕えた神の使いも後を追うように亡くなっていた

故に

大陸の主も、同時に全てが引き継がれた

その後は、ただひたすらに忙しい日々が続いた

巫女様の小さい身体に、重いものだけが乗ってくる

……何も出来ない、自分が嫌だった

それ以上に

神の使い全員も、疲れ果てていて

……本当に、ただ苦しかった

そんなある日

大地の大陸の視察が終わり

帰ろうと歩いていると

案の定、とでも言うべきか

巫女様は倒れそうになった

風魔

(やっぱりまた無茶を……)

なんて思ったのも束の間

支えようと前に出た瞬間

辺り一面に、花々が咲き誇った

巫女様の、自然の神の使いの力が暴発したのだ

瞬時に悟るが、理解は出来ない

ただ、綺麗で

一瞬見とれて

巫女様は、そのまま倒れてしまう

一瞬でこんなに沢山の花を咲かせられる能力に

改めて、人間の力では無いと思った

そして、巫女様に視線を落とした瞬間

俺は多分、この世界を疑った

目の前で、ただ苦しそうな巫女様

風魔

(……こんなのが、神の使い?)

風魔

(こんなものが、選ばれた力?)

風魔

(……こんな風になるまで、修行しないといけないのが)

風魔

(……世界からの、祝福…………?)

この現象を

気持ち悪いと思って、嫌いになれるならなった方が楽だった

そうじゃないと、この人は一生仲間の為に頑張る

でも

もう、嫌いになんて、なれなかった

なれる訳が、無かった

自分を救ってくれた人だ

嫌いになんてなれる訳ない

きっと、どれだけ酷い罵詈雑言を浴びせられたとしても

心の底では、貴女様を信じてしまっているから

きっと一生、嫌いになれない

……でも、こんなに巫女様を苦しめているのは自分だ

それを分かっていても、無理だ

嫌いになれない

今でも、この花の綺麗さに魅せられてる

風魔

……

風魔

(……あぁ、惨めだ)

この時、ただ自分が

堪らなく、惨めに見えた

その後は、皆が自分の大陸に戻り

巫女様の負担を少しでも減らそうと尽力した

故に、神の使いは全員1度、バラバラになった

その後はまぁ……言わずもがなである

20歳を超え、神の使いの力が存分に使えるようになった時

巫女様は、神の使いを集めた

全ては、サラナ討伐の為に

数年ぶりに会う巫女様は、変わらずお綺麗だった

隣にいる未門様も、幼げではあるが

凛とした表情が変わらず

そして、何よりも仲間を信じている所が変わってなくて

なんだか、安心した

神の使いを集めるのも終わりに近づいた時

未門様と沙樹様が敵に操られ、襲撃してくる事件があった

その後、未門様が目覚めるまでの間

俺は個別で巫女様に呼ばれていた

風魔

……大丈夫なのですか?

風魔

未門様の近くに居なくても…

桃香

うーん…

桃香

大丈夫だと、信じてるから

風魔

……なら、いいのですが…

風魔

それよりも、ご要件とはなんでしょう?

桃香

……実は、ある事をお願いしたい

桃香

…包み隠さずに言うのなら

桃香

私から、ある呪いを受けて欲しい

風魔

……?

風魔

呪い、ですか?

桃香

……まぁ、そんなもの

桃香

これは直感なんだけどさ

桃香

……サラナには、負けると思うの

風魔

……

薄々、感じていた事ではあった

なんとなく、そんな気がした

多分、未門様も感じていた

「負けそう」、という感覚

桃香

まぁ、クルトはなんとなく生き残りそうだけど

風魔

……それはそうですね

クルト

神の使い集めの途中で巫女様が拾った吸血姫だ

……正直、最初は本当に嫌いだったけど

巫女様にとって可愛げのあるペットのような感覚だったのだろうなと思い

仕方なく、本当に仕方なく

受け入れることにしたのだ

……なんとなく、不気味な感じは今でも苦手だけど

桃香

それで、もし本当に負けた時に

桃香

全滅は、避けたい

風魔

それは同感です

風魔

ですがそれなら俺より巫女様の方が…

ただの、我儘だ

巫女様に、生きて欲しいだけ

桃香

……それはそうなんだけどね

桃香

…私、死ぬなら未門と一緒に死にたいなって

桃香

それに、未門だけ死んで

桃香

私だけが生き残るなんて

桃香

私、寂しくて泣いちゃうからさ

……多分、本心だ

…なら、それを叶えてやらなくて

風魔

(何が、従者だ)

風魔

……分かりました

風魔

巫女様が、信じて俺にかけて下さるのなら

風魔

それに全力でお答えしましょう

桃香

……ごめんね、風魔

桃香

私のわがままに付き合わせて

風魔

何を言っているんですか

風魔

貴女様の我儘なんて、珍しすぎです

風魔

全て叶えたくなるくらいには

桃香

……過保護だなぁ…

風魔

それで、呪いというのは…

桃香

……私が独自で生み出した、不安定過ぎる技なの

桃香

要は言ってしまえば

桃香

不老不死にするものなの

風魔

……なるほど

風魔

確かに、捉えようによっては呪いですね

桃香

……やっぱり辞める?

風魔

いえ、そんなわけないじゃないですか

むしろ、巫女様から貰えるものなら

それは、ただの祝福だ

桃香

……強いね、風魔は

風魔

……そうですか?

風魔

俺よりも巫女様の方が強いですよ

桃香

……そういうことにしておくね

風魔

そういうことにしておいて下さい

そう言って、2人でクスッと笑う

風魔

……では、いつでもどうぞ

そう言って、跪く

この身を、巫女様の命令に使えるのなら

それは、無意味から有意義に変化する

俺を見てくれたのは、巫女様だった

俺の、神様

桃香

……信じてくれて、ありがとう

桃香

風魔

そう言って、巫女様はぼそっと何かを言った

次の瞬間、体が少し軽くなったような気がした

……が、たぶん気のせいだ

桃香

……どう?体調とか大丈夫?

風魔

今のところ、特に変化は無いですね

桃香

……やっぱり死んでみないと分からないかな…

風魔

……いっそ

風魔

今ここで、殺してもらってもいいですよ

それもまた、魅力的だと思った

が、巫女様は不服だったらしく

桃香

仲間を殺すなんて死んでも嫌

と、一言申されてから皆の所へ一緒に戻った

巫女様の勘が、今まで外れたことは無かった

故に、今回も信じていた

多分、負けるんだって

そして、それは予想通りに

俺達神の使いは、たった数時間で

俺とクルトを除き、全滅した

この作品はいかがでしたか?

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