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星崎探偵事務所の日常

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星崎探偵事務所の日常

5 - 『身辺調査』#1

♥

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2025年09月15日

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風都(かざと)

ボス!ボス!

風都(かざと)

死体見たくないっすか!?

星崎が外から戻って来ると、

風都が引き攣った笑みを浮かべ

そう聞いてきた。

星崎(ほしざき)

……風都くんがそう言うときは

星崎(ほしざき)

八割、人の死体ではない

星崎は薄手のコートを脱ぎながら答えた。

風都(かざと)

え〜!?

風都(かざと)

残りの二割にかけてくださいよぉ

星崎(ほしざき)

では聞くが

星崎(ほしざき)

何の死体だ?

聞かれて一瞬、

風都の目が泳ぐ。

風都(かざと)

……正確には

風都(かざと)

今から死体になるっす

星崎(ほしざき)

……

風都(かざと)

……

星崎(ほしざき)

死体になるのは…

星崎(ほしざき)

足元のソレか?

星崎が足元を指差したので、

恐る恐る視線をむけると、

黒い虫が横切って行った。

風都(かざと)

うぎゃぁぁああああ!!!

風都は物凄い勢いで

星崎の後ろに回る。

星崎(ほしざき)

風都くん

星崎(ほしざき)

そう言って毎回毎回私に虫を殺させて…

星崎(ほしざき)

たまには自分で対処したらどうだ?

やれやれとため息をつく星崎。

風都(かざと)

無理!絶対無理っす!!

風都(かざと)

ボス、なんとかしてくださいよぉ

風都は追い縋るように

星崎のシャツをギュッと握り締めた。

星崎(ほしざき)

…風都くん

風都(かざと)

はい

星崎(ほしざき)

あれを殺したら3万円あげよう

そう言った瞬間、

風都の目の色が変わる。

風都(かざと)

マジっすか!!?

星崎(ほしざき)

私が嘘をついたことがあったか?

風都(かざと)

無いっす!

風都は嬉々として

秒で虫を殺し、

無事3万円をゲットした。

一騒動が終わった昼過ぎ。

風都がソファーの上で

うたた寝しかけていると

事務所の扉が開き

若い女性が顔を覗かせた。

栄田(さかえだ)

あの…

栄田(さかえだ)

失礼します

風都(かざと)

わっ!いらっしゃいませ!

風都は飛び起きて、

すぐに女性を招き入れた。

栄田(さかえだ)

ここって、その…

風都(かざと)

星崎探偵事務所です♪

風都(かざと)

依頼っすか?

栄田(さかえだ)

は、はい

風都(かざと)

んじゃ

風都(かざと)

こちらへどうぞ

風都は人懐っこい笑みを浮かべ、

先程まで自分が寝そべっていた

ソファーに女性を座らせた。

女性は座る前、

一瞬窓際にいる星崎の方を見たが、

彼は素知らぬ顔で本を読んでいた。

風都(かざと)

コーヒーと紅茶

風都(かざと)

どっちがいいですか?

星崎(ほしざき)

コーヒーを

風都(かざと)

ボスには聞いてないっす

星崎(ほしざき)

……

風都(かざと)

あったかいのでも

風都(かざと)

冷たいのでも

風都(かざと)

どっちも出せますよ

再び聞かれて女性は

おずおずと

栄田(さかえだ)

じゃ…コーヒーを…

と答えた。

風都(かざと)

かしこまりました

風都(かざと)

待ってる間に

風都(かざと)

このタブレットに

風都(かざと)

依頼内容を入力してもらっていいっすか?

栄田(さかえだ)

わかりました

手渡されたタブレットには、

依頼人の名前や住所、

依頼内容の記入欄があり、

最後に報酬について記載されていた。

女性が入力し始めると、

事務所の中に

ふわりとコーヒーの良い香りが漂ってきた。

栄田(さかえだ)

(いい匂い…)

そして、

入力が終わると同時に、

風都がコーヒーを持ってきた。

風都(かざと)

はい、どうぞ

栄田(さかえだ)

ありがとうございます

風都(かざと)

ボスの分もついでにいれてきたっすよ

星崎(ほしざき)

ああ…

風都(かざと)

よいしょっと

風都は女性の前に腰を下ろした。

風都(かざと)

入力終わりました?

栄田(さかえだ)

はい

女性はタブレットを風都に返す。

風都(かざと)

あ、自己紹介がまだっすね

風都(かざと)

自分は助手の風都燐(かざと りん)

風都(かざと)

んで

風都(かざと)

あっちにいるのが

風都(かざと)

所長の星崎水織(ほしざき みおり)です

栄田(さかえだ)

…栄田鞠子(さかえだ まりこ)と言います

女性─栄田はペコリと頭を下げた。

風都(かざと)

依頼内容は…

風都(かざと)

マッチングアプリで知り合った男性の

風都(かざと)

素行調査っすか

風都は手元のタブレットに視線を落とす。

栄田(さかえだ)

はい

栄田(さかえだ)

私としては

栄田(さかえだ)

彼との結婚を真剣に考えているんですけど…

風都(かざと)

怪しいところがある、と?

栄田(さかえだ)

怪しい…と言いますか…

栄田(さかえだ)

何と言いますか…

しどろもどろする栄田を見て、

風都はニッと笑みをこぼした。

風都(かざと)

女の勘ってやつっすね

栄田(さかえだ)

そ、そんな大層なものじゃ…

そう言って語尾を濁す。

風都(かざと)

でも

風都(かざと)

そういうの重要っすよ

風都(かざと)

調査して欲しい内容は…

風都(かざと)

経歴、借金の有無

風都(かざと)

それと女の影ですね

栄田(さかえだ)

はい

風都(かざと)

名前と勤め先もわかってるんですね

栄田(さかえだ)

ただ住所はざっくりとしか聞いていなくて

風都(かざと)

それで十分ですよ

風都(かざと)

あと写真もありますか?

栄田(さかえだ)

あります

栄田(さかえだ)

先日お会いしたときに撮ったものが

風都(かざと)

じゃ

風都(かざと)

このメールアドレスに写真を添付して送ってください

栄田(さかえだ)

わかりました

二人がやり取りしている間、

星崎は相変わらずのんびりと

コーヒーを飲みながら

本を読んでいる。

風都(かざと)

なかなかの男前っすね

栄田(さかえだ)

あ、はい…

その言葉が聞こえたかどうか

定かではないが。

星崎は不意に顔を上げ、

パソコンの画面を見る。

そこには、

栄田が送ってきた

捜査対象の写真が表示されていた。

その優しそうな雰囲気をまとった

爽やかな男性を見て、

何故か星崎は

眉間に皺を寄せた。

星崎(ほしざき)

風都くん

風都(かざと)

なんっすか、ボス

風都(かざと)

コーヒーのおかわりなら自分で

星崎(ほしざき)

この依頼受けるように

栄田(さかえだ)

風都(かざと)

言われなくても

風都(かざと)

最初からそのつもりっすよ

星崎(ほしざき)

ならいい

そして、

再び視線を本に落とした。

風都(かざと)

で、えーっと…

風都(かざと)

ボスが妙にやる気になったみたいなんで

風都(かざと)

報酬の話に移ってもいいですか?

栄田(さかえだ)

は、はい

栄田は困惑の表情を浮かべながらも、

小さく頷いた。

星崎は依頼人の栄田が帰ってから

ずっとパソコンを操作していた。

風都(かざと)

ボス

風都(かざと)

なんかやること無いっすか?

星崎(ほしざき)

そうだな…

星崎はパソコンから目を離すことなく、

しばし考える。

星崎(ほしざき)

調査対象者の人となりを調べてきてくれ

風都(かざと)

了解っす!

星崎(ほしざき)

それとあとでリストを送るから

星崎(ほしざき)

”彼女たち”についても宜しく頼む

風都(かざと)

”彼女たち”?

風都は首を傾げる。

星崎(ほしざき)

過去に調査対象者が関わった女性だ

風都(かざと)

元カノってことっすね

星崎(ほしざき)

……どちらかと言えば被害者…

星崎(ほしざき)

そう言った方が正しいだろうな

風都(かざと)

あ〜…

風都は何か察したらしく、

やれやれとため息をこぼした。

風都(かざと)

(だから、珍しくやる気になったのか…)

風都(かざと)

(でも、こういう場合ろくなことないんだよなぁ)

風都の不安をよそに、

星崎は珍しく上機嫌で

パソコンの画面を見つめていた。

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