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#恋愛
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ロゼリア
十歳の誕生日の夜。
ロゼリアは、心の中だけでつぶやいた。
戴冠の間・夜
白い石の広間には、祝儀の赤薔薇があふれていた。
イリス
侍女のイリスが、裾を整えて小さく促す。
ロゼリア
ロゼリアは一歩進み出る。
だが、視線は白い石床に落ちたままだ。
司祭
司祭
ロゼリア
ロゼリアは、ゆっくり顔を上げる。
広間の左右から、無数の視線がいっせいに集まった。
司祭
司祭
司祭
司祭
金の冠が、ゆっくり下りてくる。
ロゼリア
首が、わずかに沈む。
司祭
ロゼリア
司祭
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
臣下たち
臣下たち
歓声が揺れる。
十歳の女帝には、大きすぎる声だった。
ロゼリア
冠の重みだけが、頭に深く残る。
司祭
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
この日を境に、“わたし”は消えた。
そしてかわりに、“女帝”が生まれた。
宮殿の回廊・夜
ロゼリア
祝宴のざわめきが遠い、宮殿の回廊。
壁に手をついた途端、肩から力が抜ける。
ロゼリア
ロゼリア
金色の冠の重さが、頭の上からのしかかる。
ロゼリア
本来なら、まだ冠を載せる歳ではない。
それでも宮殿は、今夜の即位を先延ばしにできなかった。
先代の皇帝が、急死したからだ。
ロゼリア
ロゼリア
赤薔薇はこのグランヴェール帝国の象徴である。
だから深紅の外套が、小さな肩にかけられたし。
幼い新女帝は「赤薔薇の女帝」と呼ばれた。
ロゼリア
ロゼリア
今夜ずっと作っていた笑顔が、ようやくほどける。
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
――カサッ
背後で、布の擦れる音がした。
ロゼリア
ロゼリア
返事はない。
ロゼリア
影
柱の陰で、黒い影が揺れる。
次の瞬間。
ロゼリア
“何か”が、腹に入ってきた。
そう気づくまで、一瞬遅れた。
熱い。
そして急に冷たくなった。
刃が、お腹に刺さっている。
ロゼリア
足元へ、血が落ちる。
ロゼリア
ロゼリア
一歩下がって、壁にぶつかる。
影
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
崩れた拍子に、頭の冠が落ちる。
軽い音がした。
さっきまで、あんなに重かったのに。
視界が、真っ黒に落ちる。
祝宴の音だけが鳴り響き──
──そして、だんだん遠くなった。
古い油の匂い。
ロゼリア
ロゼリアが目を覚ました。
ロゼリア
低い天井、石壁、作業台。
見たことのない瓶や道具の数々。
ロゼリア
起き上がろうとして、“自分の手”が目に入る。
ロゼリア
ロゼリア
──人形の手。
陶器のように真っ白で、人間とはまったく別物。
白い指先に、細いひびが走っていた。
ノエル
暗がりの作業台の向こうに、少年が立っていた。
ロゼリア
ノエル
ノエル
ノエル
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
その少年は、ロゼリアの記憶にはない顔だった。
ノエル
ノエルは少しだけ不服そうな顔をした。
ロゼリア
ノエル
ノエル
ノエル
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
唐突な答えに、呆気にとられるロゼリア。
ノエル
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
ノエル
ノエル
ロゼリア
ノエル
ノエル
ノエル
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
真面目なノエルの顔に、ロゼリアが戸惑う。
ロゼリア
ノエル
ノエル
ロゼリア
ノエル
ノエル
ロゼリア
ノエル
ノエルは地上口の扉へ向かう。
ロゼリアは一瞬ためらって、その背を追った。
聞こえてきたのは──
──大きな歓声。
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
ノエルは、なぜか気まずそうに笑って答えた。
ノエル
帝都の大通り・昼
旗と赤い花で埋まった大通り。
白い馬車が進み、両脇の人波が歓声を上げている。
その中心で、笑顔の女帝が民に手を振っていた。
??
ロゼリア
それは、見慣れた“横顔”だった。
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
ノエル
ロゼリア
ロゼリア
ノエル
ノエルは答えない。
祝賀の馬車から、女帝が笑顔でこちらを見た。
女帝ロゼリア
遠いはずなのに、目が合った気がした。
それは、“わたし”の顔をした“女帝”だった。