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リミット

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リミット

第1話 - リミット

102

2019年10月10日

#短編

わんだふるお

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102

わんだふるお

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端野亮

近所の○○さんとこも

端野亮

名乗り出たらしい

サラ

そう…

サラ

いいお歳だったものね…

サラ

挨拶にいった方がいいのかしら…

端野亮

…ああ

端野亮

そうだな

端野亮

本人が家族の為に決断したことだ

端野亮

きっと後ろ向きな気持ちではないはず…

端野亮

ちゃんと会って

端野亮

こっちも笑顔でサヨナラしよう

サラ

…うん

サラ

……

サラ

何でこんな事になったのかしらね

端野亮

……

端野亮

そうだな…

端野亮

人間が100億人を越えると

端野亮

滅ぶと言われればな…

端野亮

もう90億は越えてるんだ

端野亮

いや…

端野亮

混乱を恐れて

端野亮

数字を誤魔化して発表してるかもしれないから

端野亮

もっといるかも…

端野亮

だから

端野亮

何とかしなきゃと思うとは

端野亮

思うんだけどな…

サラ

それでも異常よ

サラ

高齢者の安楽死を募るなんて…

端野亮

それも政府公認でな。

サラ

数年前までは

サラ

増えすぎた高齢者の為になんちゃらとかやってたくせに…

端野亮

ああ

端野亮

いまだにこの現実が信じられないよ

端野亮

だけど効果はあるようだ

端野亮

けっこう志願者がいるってさ

サラ

らしいわね…

端野亮

世界が滅ぶと

端野亮

自分の孫達が可哀想な上に

端野亮

莫大な謝礼金を

端野亮

残った家族に遺せるからな…

サラ

うん…

サラ

……

サラ

私だったらどうしただろう…

端野亮

俺は君には死んでほしくない

サラ

私だってそうよ

サラ

あなたには死んでほしくない

サラ

だからこそ

サラ

今のこの世界は間違ってると思う

それは

ある数学者の一言から始まった

数学者

人類は100億人に到達すると絶滅の道を辿る

今までの絶滅した生物の

生態や知能などを踏まえ

それを人間に置き換えたそうだ

数学者

これは絶滅した種の

数学者

存続した年月ではなく

数学者

その種の数がピークに達したものを元に

数学者

割り出した数値だ

もちろん皆

机上の空論として

とりあわなかったのだが

それを

ひとりの生物学者が

実証してしまった

生物学者

彼の計算した数値を元に

生物学者

縮小した仮の世界を創り

生物学者

その中で

生物学者

あらゆる生物で試したところ

生物学者

彼の計算通りの結果となりました

生物学者

おそらくは

生物学者

人類は100億人で

生物学者

絶滅の道へと辿るでしょう

こうして人類は

同じ種である人を

間引く事を考えはじめた

『リミット』

仲本つとむ

先輩またテロですってよ！

花田敬二

はぁ…

花田敬二

もうなんか

花田敬二

どうでもよくなってきたわ…

仲本つとむ

何言ってんスか！

仲本つとむ

僕ら警察がそんな事言っちゃ駄目でしょ！

花田敬二

だってお前あれだぜ？

花田敬二

殺人を犯した者は即死刑

花田敬二

その他の凶悪な犯罪

花田敬二

強姦、強盗、傷害とかも

花田敬二

死刑適用の範囲になっちゃってよ

花田敬二

人を減らそうとして

花田敬二

犯罪者から選んでいくわけじゃん

花田敬二

俺が捕まえた奴らも

花田敬二

死刑になるかもしれねぇんだろ？

花田敬二

もう

花田敬二

どっちが人殺しだよって話だよ

仲本つとむ

それはそうっスけど…

花田敬二

そんで結果

花田敬二

すぐ死刑になるイメージがついて

花田敬二

犯罪が激減するんだから

花田敬二

皮肉なもんだよな

仲本つとむ

そのぶん

仲本つとむ

テロ組織が増えちゃいましたけどね

花田敬二

しょうがねぇだろ

花田敬二

死刑の適用範囲の拡大や

花田敬二

高齢者の安楽死の募集を

花田敬二

皆に認めてもらうために

花田敬二

人類は100億人で滅亡すると公表しちゃったんだから

花田敬二

そりゃ

花田敬二

人をホイホイ殺すこの世の中を

花田敬二

非人道的だという組織も

花田敬二

自分達が滅ぶのは御免だと

花田敬二

その組織に反発する組織も出てくるだろ

仲本つとむ

まぁそうっスよね…

花田敬二

どっちも国の枠を越えて

花田敬二

大義名分をたてて争うから

花田敬二

多分

花田敬二

宗教戦争に近くなっていくぜ？

花田敬二

そんな厄介なもん

花田敬二

俺らがどうにか出来るわけないだろーがよ

花田敬二

テロが増えたのだって

花田敬二

お国のお偉いさん方が

花田敬二

自分で自分の首を絞めたんだよ！

花田敬二

あんなもん公表せずに

花田敬二

そっと滅べばよかったんだよ！

仲本つとむ

……

仲本つとむ

俺は嫌っスけどね

花田敬二

はあ？

花田敬二

100億になったからって

花田敬二

世界中の人が一気に死ぬわけじゃないだろ！

花田敬二

徐々に滅亡していくんなら

花田敬二

変なことせずにそれに任せときゃいいじゃねーか！

仲本つとむ

嫌っスよ

仲本つとむ

死刑の範囲拡大だって

仲本つとむ

特に凶悪だと判断した場合のみだし

仲本つとむ

高齢者のやつだって

仲本つとむ

自ら志願した場合のみでしょ？

仲本つとむ

じゃあ別にいいじゃないっスか！

仲本つとむ

そんな無茶苦茶なことやってる訳じゃないでしょ！

花田敬二

お前…

花田敬二

……

花田敬二

ああ…そうか…

花田敬二

お前んとこ

花田敬二

こないだ子供産まれたばっかだったか……

仲本つとむ

……

端野亮

先生はこの世界がおかしいとは思いませんか？

嵯峨野博士

ん？

嵯峨野博士

何について言ってるのかね？

端野亮

だから

端野亮

人間が人間の数を管理する世界ですよ！

端野亮

何かおかしくないですか！？

嵯峨野博士

君は

嵯峨野博士

どこから見た答えが欲しいのかね？

端野亮

え？

嵯峨野博士

倫理的な話なら

嵯峨野博士

現状のこの世界は狂ってるよ

嵯峨野博士

でも

嵯峨野博士

種の存続の為に

嵯峨野博士

同じ種を間引くのは

嵯峨野博士

生物全体から見たら

嵯峨野博士

不思議なことではないけどね

端野亮

でも僕達は人間です

端野亮

他の生物とは違い理性がある

端野亮

それなのに…こんな…

嵯峨野博士

本当にそうかね？

端野亮

え？

嵯峨野博士

本当に我々は他の生物と違うのかね？

端野亮

そりゃそうでしょ！

端野亮

僕らは他の生きもののように

端野亮

本能のまま生きてる訳じゃないじゃないですか！

嵯峨野博士

どうだろうかね

嵯峨野博士

人間は本能が多様化してるだけ

嵯峨野博士

ではないのかね？

端野亮

本能が多様化？

嵯峨野博士

そうだよ

嵯峨野博士

食欲、性欲、睡眠欲、独占欲などの分かりやすい欲求は勿論

嵯峨野博士

他の感情なども全て欲求

嵯峨野博士

つまりは本能ではないのかね？

端野亮

そんな事はない！

端野亮

俺は自分が助かりたいがために

端野亮

愛する人を差し出したりはしない！

嵯峨野博士

うん、だから

嵯峨野博士

「助けたい」んだよね？

嵯峨野博士

他にも

嵯峨野博士

「愛されたい」

嵯峨野博士

「乏しめたい」

嵯峨野博士

「好かれたい」

嵯峨野博士

「慰めたい」

嵯峨野博士

「偉ぶりたい」

嵯峨野博士

「殺したい」

嵯峨野博士

全て欲求だ

嵯峨野博士

人間は思考が複雑だから

嵯峨野博士

その分欲求も複雑化してるんだよ

嵯峨野博士

これが本能の多様化だ

嵯峨野博士

他の生物の例に漏れず

嵯峨野博士

人間も本能のまま生きてるんだよ

端野亮

そんな…

端野亮

じゃ、じゃあ先生も

端野亮

今のこの狂った世界が正常な姿だと言うんですか！

嵯峨野博士

ん？ああ

嵯峨野博士

誤解させてしまったようだけど

嵯峨野博士

この人間も本能のまま生きてるって説は

嵯峨野博士

100億で人類は滅ぶと言った生物学者の考えなんだよ

嵯峨野博士

この説があるから

嵯峨野博士

この生物学者は

嵯峨野博士

人間も他の生物と変わらない

嵯峨野博士

つまりは他の絶滅した種と同様に

嵯峨野博士

人間も滅ぶと言ったんだ

端野亮

じゃあ先生もやっぱり

端野亮

この世界はおかしいと？

嵯峨野博士

うーん…

嵯峨野博士

私はそこら辺には興味がなくてね…

嵯峨野博士

この世界がどうなろうと別に構わないんだよ

嵯峨野博士

それよりも気になる事があってね

端野亮

気になる事？

嵯峨野博士

君は人類が100億に達すると

嵯峨野博士

どのように滅ぶか聞いたかね？

端野亮

どんな滅び方をするかですか？

嵯峨野博士

そうだよ

嵯峨野博士

おそらくは君も

嵯峨野博士

環境破壊や大気汚染

嵯峨野博士

資源の不足や食料などが

嵯峨野博士

確保出来なくなり

嵯峨野博士

徐々に人類は衰退していく

嵯峨野博士

そこから人類の数が減ろうとも

嵯峨野博士

もう修復など不可能な数

嵯峨野博士

それが100億と聞いてたはずだよね？

端野亮

はい

端野亮

そんな感じです

嵯峨野博士

私はここが腑に落ちないんだよ

端野亮

何がですか？

嵯峨野博士

昔から言われてる

嵯峨野博士

もっともらしい理由ばかり並べられてるけど

嵯峨野博士

これでも人類はそれなりに発展してきた

嵯峨野博士

その人類が修復不可能なほど

嵯峨野博士

環境破壊や大気汚染が進んだとしたら

嵯峨野博士

他の生物も絶滅するんじゃないのかね？

端野亮

それはそうかも知れませんね

嵯峨野博士

勿論生き残る種もあるだろうけど

嵯峨野博士

かなりの生物が衰退していくと思うんだよ

端野亮

はい

嵯峨野博士

不思議に思わないかい？

端野亮

何がですか？

嵯峨野博士

あの生物学者は

嵯峨野博士

あらゆる生物で試して

嵯峨野博士

人類は100億で滅ぶと言った

嵯峨野博士

ならばこの絶滅する数値は

嵯峨野博士

他の種にも必ず当てはまると言うことだ

嵯峨野博士

その数が多かれ少なかれね

嵯峨野博士

ならば

嵯峨野博士

人類が100億に達した時と同時に

嵯峨野博士

他の滅ぶ生き物も

嵯峨野博士

その種のリミット数に達したということになる

嵯峨野博士

そんな事あり得るのかね？

嵯峨野博士

環境破壊や大気汚染で

嵯峨野博士

地球上の生物が8割死滅するとしよう

嵯峨野博士

その時に

嵯峨野博士

絶滅するリミット数に

嵯峨野博士

偶然同時期に

嵯峨野博士

地球上の8割の生物が達するものなのかね？

嵯峨野博士

そんな事あり得るのかね？

端野亮

……

嵯峨野博士

だから

嵯峨野博士

もしかしたら

嵯峨野博士

人類の絶滅する理由は

嵯峨野博士

そんなありふれた

嵯峨野博士

自然がどうのとかオゾン層がどうのとかではなく

嵯峨野博士

他の種には当てはまらない

嵯峨野博士

人類だけが絶滅する理由があるんじゃないのかね？

世界中のあらゆる派閥が

勢力を拡大していった

以前は

テロリストと呼ばれていたものだ

滅亡を拒む組織は

人の死は

人類の救済だと言い

容赦のない

武力介入をはじめた

それはそうだ

人が死ねば間引かれるのだから

彼等からすれば

争いは望むところだ

それに反発する組織

自然の成り行きに委ねる派や

非人道的な行為反対派も

暴力に対抗すべく

暴力に頼る

世界中の軍や警察も

それらを表向きでは

否定をしているが

本気で止めようとしている

気配はない

そんな争いが激化する中

更に

世界中で

産まれてくる子供に

制限をかけられた

種の存続の為に

種を存続させる為の行為を

禁止したのだ

端野亮

先生が言っていた

端野亮

人類滅亡の理由は

端野亮

今のこの現状じゃないのか…

端野亮

人間を間引く為の争いが

端野亮

正義ともとれる

端野亮

人が人を誕生させることを

端野亮

禁止してしまう

端野亮

今のこの世界そのものが

端野亮

人の滅び方ではないのか？

端野亮

……

端野亮

もしかしたら

端野亮

とっくに人類は

端野亮

100億人に到達していたのかも知れない…

端野亮

だって僕達は

端野亮

人類の正確な人数なんて

端野亮

測りようがないんだから…

世界は

加速度的に

おかしくなっていく

そして

この

狂って行く世界で

僕の愛する人は

姿を消した

端野亮

何で……

端野亮

何でだよ…

端野亮

どこに行ったんだよ…

端野亮

サラ……

端野亮

……

コンコンッ

端野亮

……

花田敬二

お邪魔するぜ

端野亮

…お前誰だ

端野亮

何を人ん家に

端野亮

勝手に入ってきてんだ

花田敬二

いやー

花田敬二

外のピンポン壊れてるし

花田敬二

玄関ノックしても出てこないから

花田敬二

勝手に上がらせて貰ったよ

端野亮

……

端野亮

そうか…

端野亮

じゃ、今すぐ出ていけ

花田敬二

つれないね～

花田敬二

預かりもん届けに来たのに

端野亮

……

花田敬二

サラって娘から

端野亮

！！

端野亮

お前！！

端野亮

サラが何処にいるのか知ってるのか！？

花田敬二

ん？

花田敬二

いや、まぁ…

花田敬二

知ってるっちゃ知ってるんだが…

端野亮

何処だ！

端野亮

サラは今何処にいるんだ！！

花田敬二

ちょっ…！

花田敬二

お、落ち着けって！

端野亮

いいから言え！

端野亮

今サラは何処にいるんだ！

花田敬二

あー…

花田敬二

……

花田敬二

お前がもうちょい

花田敬二

落ち着いたら話すわ

端野亮

くっ…

端野亮

……

端野亮

大体お前は何者なんだ

花田敬二

俺か？

花田敬二

俺は警察のもんだよ

花田敬二

一応な

端野亮

警察？

端野亮

……

端野亮

警察…か…

端野亮

お前ら…

端野亮

サラの捜索願いも

端野亮

録に取り次がなかったクセに

端野亮

今更何のようだよ！

花田敬二

だ、だから

花田敬二

落ち着けって

端野亮

そりゃそうだよな！

端野亮

捜索して無事見つかるよりも

端野亮

そのままくたばった方が

端野亮

人類の救済になるもんな！

端野亮

そりゃ捜索なんかしねーわな！

花田敬二

ふー…

花田敬二

……

花田敬二

あんた宛に

花田敬二

手紙を預かってきた

花田敬二

まずは

花田敬二

そいつを読んでくれ

亮へ

私はやっぱりこの世界が間違ってると思います。

こんな人を人とも思わない世界にどうしても納得出来ません。

だから行きます。

人類を守る為と言いながら

人を殺す奴等と戦います。

人としての尊厳を守る為に戦います。

勝手な事を言ってゴメンね。

黙っていなくなってゴメンね。

貴方のいるこの世界が好き。

だからこそ

この世界に失望したくない。

ずっと愛してます。

サラ

端野亮

サラ…

端野亮

何で…

端野亮

何で言ってくれなかったんだ…

花田敬二

……

端野亮

おい！

端野亮

あんた！

端野亮

サラの居場所を知ってるんだろ！

端野亮

何処だ！

端野亮

何処にいるんだ！

花田敬二

……

花田敬二

……

花田敬二

死んだよ…

端野亮

は？

花田敬二

そのサラって娘は

花田敬二

死んだんだ…

端野亮

な

端野亮

何を言ってるんだ…

花田敬二

その手紙はな

花田敬二

死んだその娘が持ってたもんを

端野亮

おい…

花田敬二

住所が書いてあったんで

花田敬二

持ってきたんだ

端野亮

お前は何を言ってるんだ…？

端野亮

ハ…ハハッ…

端野亮

冗談だろ…？

花田敬二

……

端野亮

おい…

端野亮

おい！

花田敬二

……

端野亮

なぁ！

端野亮

嘘なんだろ！！

花田敬二

……事実だ。

花田敬二

その娘は死んだんだ

端野亮

…うあ

端野亮

ああぁぁあ……

花田敬二

……

端野亮

うあああぁあぁあぁっ…

端野亮

うわああぁあぁあぁあああぁあぁぁぁぁあああぁあっっ……！！

端野亮

何でだよーっ！！

端野亮

あああぁあっあああぁあああぁあああぁあああああああああああああああああああああぁっあああああぁぁぁあああああぁっっ！！！！

花田敬二

……

端野亮

何でだ！！

端野亮

何でしんだっ…

端野亮

うああああぁあああ…

花田敬二

……

花田敬二

さっき手紙読んだだろ？

花田敬二

戦いに行って

花田敬二

その戦いの中で死んだんだよ

端野亮

……あああっ

花田敬二

変な世の中になっちまったよな…

端野亮

うああああっ…

花田敬二

俺の後輩もな

花田敬二

その争いの中で死んでたんだ…

端野亮

あぁ…っ

花田敬二

そのサラって娘とは違う

花田敬二

人類を間引いてでも

花田敬二

存続させる側でな……

端野亮

……

端野亮

……んだとっ？

端野亮

…テメェか？

端野亮

テメーらがサラを…？

端野亮

…ああああっ！！

端野亮

殺してやるっ！！

端野亮

テメェ殺してやるっっ！！

花田敬二

……

花田敬二

ふざけんなよ？

花田敬二

お前だけが辛いと思ってんのか？

花田敬二

ふざけんじゃねー！！

花田敬二

俺の後輩だってなぁ！

花田敬二

もう子供なんかそうそうつくれないこんな世の中でなぁ…

花田敬二

まだ小さい自分の子供を…っ

花田敬二

子供の未来を守る為にっ…

花田敬二

この世界を無くすまいと必至に！

花田敬二

必至にっ…

花田敬二

…くそっ！

花田敬二

誰が好き好んで殺し合いなんかに

花田敬二

参加するかよっ！！

端野亮

……うあああああああぁっっ！

端野亮

チクショーっ！！

端野亮

チクショーーっ！！

端野亮

うわあああああああああぁぁぁぁっっ…

花田敬二

……

花田敬二

ちっとは落ち着いたかよ？

端野亮

……

花田敬二

今のこの世界は

花田敬二

ホント異常だぜ…

花田敬二

おかげで

花田敬二

こんな物まで簡単に手に入りやがる

端野亮

……

端野亮

何だそれ…？

端野亮

爆弾…か…？

花田敬二

そーだよ

花田敬二

もういっそのこと

花田敬二

これで一瞬でいっちまおうかと思ってな

花田敬二

くすねてきたんだよ

端野亮

……

端野亮

…フフ…フ

端野亮

いいなそれ…

端野亮

俺も一緒にやってくれよ…

花田敬二

ハハハッ

花田敬二

いいぜいいぜ

花田敬二

ド派手にいくとするか！！

端野亮

…そうだな

端野亮

もう何の未練もないしな…

端野亮

どうせ死ぬなら

端野亮

派手に死ぬか…

プルルルルッ…プルルルルッ…

端野亮

！？

端野亮

ちょっと待て電話に出るから

端野亮

この人とは話しておきたいんだ

花田敬二

どうぞどうぞ

花田敬二

時間ならたっぷりあるから

花田敬二

ごゆっくりどーぞ

嵯峨野博士

もしもし？

端野亮

はい

端野亮

どうしたんですか先生？

嵯峨野博士

君に話しておきたいことがある

端野亮

自分もちょうど

端野亮

先生に話したい事があるんです

嵯峨野博士

ん？

嵯峨野博士

何かね？

端野亮

サラが…

端野亮

……

端野亮

サラが死にました

端野亮

派閥同士の争いに

端野亮

自ら参加して…

嵯峨野博士

……

嵯峨野博士

……そうか

嵯峨野博士

それは残念だよ…

端野亮

……

端野亮

……で、

端野亮

先生の方の要件は？

嵯峨野博士

それなんだか

嵯峨野博士

やはり

嵯峨野博士

この世界は異常だよ！

嵯峨野博士

異常だったんだよ！

端野亮

？

端野亮

だから初めから

端野亮

そう言ってるじゃないですか？

嵯峨野博士

んあ？

嵯峨野博士

ああ！

嵯峨野博士

いや、違う！

嵯峨野博士

そうじゃないんだよ！！

端野亮

？？

嵯峨野博士

だから

嵯峨野博士

私はね

嵯峨野博士

君の言う

嵯峨野博士

人が人を間引く世界が

嵯峨野博士

異常って言ってる訳ではないんだよ！

端野亮

んん？

端野亮

なら先生はこの世界の

端野亮

何が異常って言ってるんですか？

嵯峨野博士

私の中の異常は

嵯峨野博士

世界中の全ての人が

嵯峨野博士

「人類が100億人に到達すると滅亡する」

嵯峨野博士

これを信じきってる事なんだよ！

端野亮

？

端野亮

だって当り前じゃないですか

端野亮

そうなんですもん

嵯峨野博士

そこだ！

嵯峨野博士

そこだよ！

嵯峨野博士

何で皆

嵯峨野博士

100億人で滅亡するを

嵯峨野博士

当り前だと思ってるのかね？

端野亮

それは

端野亮

生物学者が実証したからじゃないですか？

嵯峨野博士

おかしいだろ！

嵯峨野博士

どんな高名な学者だろうが

嵯峨野博士

どんな英雄的なカリスマだろうが

嵯峨野博士

たかが１人の人間が発した言葉だけで

嵯峨野博士

人が人を間引くところまで

嵯峨野博士

持っていけるわけがない！

嵯峨野博士

そこまでの影響力はあるわけがない！

嵯峨野博士

それを

嵯峨野博士

何故かそんな事はないと否定する者が

嵯峨野博士

世界中に１人もいないんだよ？

端野亮

言われてみれば…

端野亮

100億で滅亡するから

端野亮

何とかしようとする人は沢山いるけど

端野亮

100億で滅亡なんてするわけないと

端野亮

言ったひとはいないかも…

嵯峨野博士

そうなんだよ！

嵯峨野博士

只の１人もいないんだよ！

端野亮

でもそれが

端野亮

何故か不思議じゃない…

嵯峨野博士

そこだ！

嵯峨野博士

私も冷静に考えると異常だとはおもうんだが

嵯峨野博士

それなのに

嵯峨野博士

今も尚100億人で滅亡すると実際思ってるんだよ！

嵯峨野博士

正確には

嵯峨野博士

100億人で滅亡すると確信している…

嵯峨野博士

かな…

端野亮

どうゆう事なんですか？

端野亮

何か気持ち悪いんですけど…

嵯峨野博士

だから

嵯峨野博士

これは

嵯峨野博士

もうそうなるように

嵯峨野博士

運命づけられてしまったんじゃないかと思うんだよ！

端野亮

運命…ですか…？

嵯峨野博士

だってこれは産まれた時からあった情報ではないはずだ！

嵯峨野博士

生きている途中で

嵯峨野博士

入ってきた情報だ

嵯峨野博士

なのに何で

嵯峨野博士

水が上から下へと流れるように

嵯峨野博士

100億人で人類は滅ぶと

嵯峨野博士

皆、当り前のようにわかってるんだ？

端野亮

せ、先生

端野亮

ちょっと待って下さい…

端野亮

100億人で滅ぶのは当然なのに

端野亮

言われてみれば確かにおかしい…

端野亮

ああ…

端野亮

頭がおかしくなりそうだ…

嵯峨野博士

だから多分

嵯峨野博士

この情報が広まった時から

嵯峨野博士

100億人で人類は滅ぶと

嵯峨野博士

運命が確定されて

嵯峨野博士

更にそれが常識化した

端野亮

そんな事あり得ないでしょ？

端野亮

いや、でも

端野亮

そのあり得ない事が

端野亮

確かに起こっている…

端野亮

今、先生に言われて

端野亮

おかしいと思いながらも

端野亮

100億で人類は滅ぶ事には

端野亮

確信がある…

端野亮

何だこれ…

端野亮

何なんですか！先生！！

嵯峨野博士

私も色々と考えたんだよ

嵯峨野博士

だけどね

嵯峨野博士

こんな事が出来る者なんていやしないんだよ

嵯峨野博士

人間ではね

端野亮

人間ではない？

端野亮

人間ではないなら

端野亮

そんな事出来るのなんて

端野亮

神ぐらいしか…

嵯峨野博士

そうだよね

嵯峨野博士

そこに行き着くよね

嵯峨野博士

だから

嵯峨野博士

私はこの事象を考えるのに

嵯峨野博士

神とは何なのかから考えた

端野亮

神が何か？

嵯峨野博士

うん、

嵯峨野博士

神とは人間より高位な存在

嵯峨野博士

つまりね

嵯峨野博士

次元が人間より上の存在

嵯峨野博士

だと考えてみたんだよ

数学者

我々の存在に

数学者

勘づいた者がいるみたいだぞ

生物学者

ほほう

生物学者

それは面白い

生物学者

疑問を感じる者すら

生物学者

いないと思ってたのだがね

数学者

どうする？

生物学者

ふむ…

生物学者

少し探ってみるか

数学者

そうだな

数学者

この面白くもない

数学者

ひとつの世界に

数学者

興味が出てきた

生物学者

そうゆうことだ

端野亮

……

端野亮

何だここは…？

数学者

こいつがそうか？

生物学者

そのようだな

端野亮

…そうか

端野亮

お前らが……

嵯峨野博士

1次元は点

嵯峨野博士

2次元は平面

嵯峨野博士

3次元は立体

嵯峨野博士

これに時間の概念を加えた

嵯峨野博士

4次元が我々の存在している世界だ

嵯峨野博士

そして我々4次元の者は

嵯峨野博士

自分達より下位の次元のものを

嵯峨野博士

コピー

嵯峨野博士

つまり複製出来る

嵯峨野博士

2次元のもの

嵯峨野博士

紙に書かれた絵や文字も

嵯峨野博士

コピー機に掛ければ

嵯峨野博士

いくらでも複製出来るし

嵯峨野博士

型さえとってしまえば

嵯峨野博士

3次元の彫刻だって

嵯峨野博士

同じものを複製出来る

嵯峨野博士

4次元で存在している我々は

嵯峨野博士

下位の2次元や3次元のものを

嵯峨野博士

複製出来るんだ

…と言うことは

嵯峨野博士

うん、

嵯峨野博士

この世界も複製された世界のひとつ

嵯峨野博士

そしてそれが可能なのは

嵯峨野博士

4次元に存在してる我々より

嵯峨野博士

高位の次元

嵯峨野博士

5次元か6次元かの者の

嵯峨野博士

それが

嵯峨野博士

神と呼ばれる者だ

……先生

奴等を殺す事は可能ですか？

嵯峨野博士

なに？

嵯峨野博士

殺す？

嵯峨野博士

そんな事不可能だよ！

嵯峨野博士

次元が違うと言うことは

嵯峨野博士

こっちからは全知全能の

嵯峨野博士

神とまで考えられる存在

嵯峨野博士

こちらからはその存在を

嵯峨野博士

感じる事すら無理なんだよ！

嵯峨野博士

……

嵯峨野博士

……

嵯峨野博士

……いや

嵯峨野博士

奴らからなら接触出来るかも…

どうゆう事ですか？

嵯峨野博士

いや、こちらからは無理でも

嵯峨野博士

奴らから接触してくるよう

嵯峨野博士

仕向けられれば

嵯峨野博士

あるいは……

こっちも奴等を認識でき…る

数学者

お前が我々を

数学者

消すことが出来るのは本当か？

端野亮

……

生物学者

我々の作ったあの世界で

生物学者

唯一の特異点である

生物学者

あの男がそう言っていたぞ

端野亮

……

端野亮

消せるかもな…

数学者

フハハ…

数学者

フハハハハハッ

生物学者

無理だろう？

生物学者

こうして我々が操作しなければ

生物学者

お前たちは

生物学者

我々を

生物学者

認識することすら出来ないんだぞ

端野亮

……

嵯峨野博士

いいかい？

嵯峨野博士

これは賭けだ

嵯峨野博士

しかし

嵯峨野博士

向こうの奴らが

嵯峨野博士

君を呼び出せば

嵯峨野博士

可能性はある

どうやって

俺を呼び出させるんですか？

嵯峨野博士

……うん

嵯峨野博士

脅してみるよ

お、脅す？？

嵯峨野博士

そうそう

嵯峨野博士

安い挑発さ

嵯峨野博士

お前たちを消すことが

嵯峨野博士

可能な人間がいると

嵯峨野博士

脅すんだ

嵯峨野博士

もちろん脅しがきくわけはないだろうけど

嵯峨野博士

興味は引くかもしれない

嵯峨野博士

その存在に気づき

嵯峨野博士

この世界のカラクリに気づき

嵯峨野博士

更には存在を認識すら出来ないのに

嵯峨野博士

消すことが出来るなんてって

嵯峨野博士

興味本意で接触を計るかもしれない

どうやってそれを伝えるんですか？

嵯峨野博士

紙に書いておくよ

へ？

嵯峨野博士

だから紙に何度も書いておくよ

そ、そんなんで？？

嵯峨野博士

逆に

嵯峨野博士

これで呼び出さなかったら

嵯峨野博士

もうどうやったって無理だ

嵯峨野博士

奴等は私の存在など

嵯峨野博士

気にも止めていない

嵯峨野博士

だけど

嵯峨野博士

もし

嵯峨野博士

こんなものでも

嵯峨野博士

君を呼び出すなら

嵯峨野博士

私は奴等にマークされてるって事だ

嵯峨野博士

我々が

嵯峨野博士

ゲームのバグを気にするように

嵯峨野博士

奴等も私をバグだと思っていれば…

嵯峨野博士

更にそのバグの方から

嵯峨野博士

お前らを殺す事が出来るものがいると言われれば

嵯峨野博士

もしかしたら

嵯峨野博士

興味で

嵯峨野博士

その自分達を殺すもの

嵯峨野博士

つまり君を呼び出すかもしれない

なるほど…

でも

奴等を殺す術はあるんですかね？

嵯峨野博士

……

嵯峨野博士

私の考える

嵯峨野博士

奴等の能力は

嵯峨野博士

「確率を操作して発現出来る」だ

確率を操作して発現する？

嵯峨野博士

あー

嵯峨野博士

分かりやすく言うとね

嵯峨野博士

サイコロで1の目を出そうと思って

嵯峨野博士

永遠に1を出せるって事だ

そ、そんな事が…

嵯峨野博士

うん、信じがたいけど

嵯峨野博士

それならこの世界を複製出来る

嵯峨野博士

まず

嵯峨野博士

この宇宙で

嵯峨野博士

地球が出来る確率を操作する

嵯峨野博士

これで同じ地球がいくらでも創れる

嵯峨野博士

そして

嵯峨野博士

その地球で生物が

嵯峨野博士

同じ進化を辿るように確率を操作する

嵯峨野博士

これを繰り返せば

嵯峨野博士

何回だって

嵯峨野博士

我々の存在する地球を

嵯峨野博士

コピー出来ちゃうんだ

目茶苦茶じゃないですか…

嵯峨野博士

そうだね

嵯峨野博士

そして今回創ったこの世界

嵯峨野博士

つまり今私達のいる世界では

嵯峨野博士

100億人で人類が絶滅するように確率を操作して

嵯峨野博士

決定事項となった

嵯峨野博士

だから

嵯峨野博士

皆それが常識として

嵯峨野博士

頭に埋め込まれたんだ

そんな奴等どうやって殺せば…

嵯峨野博士

奴等は確率を操作してくる

嵯峨野博士

おそらくと言うかほぼ間違いなく

嵯峨野博士

銃とかでは無理だ

嵯峨野博士

暴発や不発する確率をあげられるともうお手上げだからね

嵯峨野博士

だから

嵯峨野博士

もし殺せるとしたら

嵯峨野博士

奴等に認識をさせず

嵯峨野博士

確率を操作するなんて考えもさせず

嵯峨野博士

一瞬で

嵯峨野博士

消し飛ばす…かな

一瞬で消し飛ばす……

一瞬で…

……

……あ！

端野亮

お前たちに

端野亮

聞きたい事がある

数学者

何故我々が

数学者

お前の問いに答えねばならんのだ？

生物学者

まぁ

生物学者

良いではないか

生物学者

こんな機会などまずないぞ

数学者

……確かにな

数学者

いいだろう戯れに

数学者

付き合ってやる

数学者

何だ？

端野亮

……

端野亮

お前達の創った俺の世界を

端野亮

人が100億人で絶滅する世界を

端野亮

変えることは可能なのか？

生物学者

……

生物学者

無理だな

生物学者

我々は時間には関与出来ない

生物学者

時間というものは

生物学者

ただ進んでいくのみ

生物学者

現在がただただ続いていくのみ

生物学者

だから

生物学者

すでに終わった過去は書き換えられない

生物学者

もはやお前達の世界はほとんど破滅している

生物学者

もう手遅れなのだ

数学者

出来るとすれば

数学者

同じ世界をまた1から創る事だけだ

端野亮

何で俺達の世界を

端野亮

こんな事にした？

端野亮

実験台にしたのか？

数学者

理由などない

数学者

ただそうゆう世界を創っただけだ

数学者

そして

数学者

我々には実験など必要ない

数学者

どうなるか結果などわかっているのだから

生物学者

ただ今回は

生物学者

少し楽しませて貰ったよ

生物学者

まさか特異点が出てくるとはね

端野亮

……

嵯峨野博士

何で君は

嵯峨野博士

奴等を殺そうと思ったのかね？

嵯峨野博士

こんな世界にした

嵯峨野博士

奴等が許せないのかね？

そんなんじゃないです

僕は世界なんて

本当は

どうでも良かった

ただサラが居てくれれば

それで良かった…

嵯峨野博士

……

でも

サラは死んだ

やり方がどうであれ

サラは

この世界を正そうとして

戦って死んだ

だから僕も

この世界の為ではなく

サラの想いの為に

戦おうと思っただけです

嵯峨野博士

そうかい…

嵯峨野博士

君らしいのかもしれないね…

先生は？

先生は何で

僕に協力してくれるんですか？

嵯峨野博士

……

嵯峨野博士

私もね

嵯峨野博士

一応科学者の端くれだからね

嵯峨野博士

過程を無視して

嵯峨野博士

結果を出せる存在が

嵯峨野博士

不愉快なんだよ

嵯峨野博士

そんな奴等が存在しているのなら

嵯峨野博士

一泡ふかせてやりたくってね！

ハハハッ！

それこそ先生らしい！

数学者

問答は終わりだ！

生物学者

我々を消せるというなら

生物学者

みせてみたまえ

数学者

どうやったって

数学者

無理だろうがな！

生物学者

ハハハハハハッ！

数学者

ハハハハハハッ！

端野亮

……

端野亮

あの警察の野郎に

端野亮

感謝しなきゃな…

数学者

？

生物学者

何を言っている？

端野亮

いや…

端野亮

何でもないさ…

端野亮

じゃーな

カッ…！

嵯峨野博士

君に

嵯峨野博士

先に礼を言っておくよ

嵯峨野博士

君が奴等に会うことで

嵯峨野博士

私のこの考えは

嵯峨野博士

立証される

嵯峨野博士

ありがとう…

嵯峨野博士

そして

嵯峨野博士

今度は君の番だ

嵯峨野博士

君が証明する番だ

嵯峨野博士

君が以前言っていた

嵯峨野博士

人は他の生物とは違うということ

嵯峨野博士

本能だけで生きているわけではないことを

嵯峨野博士

神とも言える

嵯峨野博士

絶対的な存在に立ち向かうことで

嵯峨野博士

君が証明するんだ！

嵯峨野博士

奴等に

嵯峨野博士

勇気というものを見せることで！