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桜城
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江藤ルミエール
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コメント
7件
うわ、重い…でもすごく引き込まれた。 古賀勲の壮絶な過去がこれでもかってくらい詰まってて、読んでて胸が締め付けられたわ。特にタローのシーンはマジで辛かった…。あんな環境で育ったら、そりゃ周りに牙を向くよなって納得した。 そんな中で慎一が「なんだ?寂しいのか?」ってズバッと言い当てるところ、めっちゃ良かった。手を繋ぐシーンも含めて、二人の距離感が丁寧に描かれてて、この先どうなるか気になる。転校生が何をしでかすのか…続き待ってる🔥
前日譚
「孤高の暴君」古賀勲の物語
俺の父ちゃんは炭鉱事故で死んで、 母ちゃんは男を取っ替え引っ替えしている
息子の俺は、 母ちゃんからは邪魔者扱いされてきた
今日も母ちゃんは、 新しい男を家に連れてきた
鬼塚剛三
大柄な体格で、 腕に刺青がある乱暴な男
「鬼塚剛三」 こいつが、 俺の体と心に一生癒えない傷をつけた男だ
母親
母ちゃんは俺の姿を見るなり、 深いため息を吐いてくる
母ちゃんの 俺を面倒くさがるような瞳が、 大嫌いだった
古賀勲
鬼塚剛三
俺が剛三と母ちゃんを激しく睨むと、 俺の目の前に大きな拳が振り下ろされ、 俺の顔面に強い衝撃が走った
俺にはやり返すこともできず、 痛みのある頬を抑えることしかできなかった
鬼塚剛三
剛三は俺の胸ぐらを掴むと、 俺を思い切り、 床に投げ飛ばした
古賀勲
俺は、 なんの温かみもない、 冷たい床に転がった
この通り、 剛三という荒くれ者に、 日常的に暴力を振るわれていた
この家には俺を助ける人間は誰もいない
母ちゃんは助けるどころか、 ただ見ているだけで、 完全に俺を見捨てていた
俺の家は、 まるで地獄のような場所だった
剛三からの日常的な暴力、 母ちゃんからの邪魔者扱い、 目の前で殺された愛犬のタロー
俺の心はズタボロになり、 頬には瓶で殴られた大きな傷が残っていた
古賀勲
生徒
俺は学校でも、 周囲の生徒や大人たちを激しく睨みつけ、 怒鳴ったり、 暴力を振るっていた
恐怖によって自分を大きく見せ、 その結果、 俺は「問題児」として孤立していた
学校の誰もが、 俺と関わろうとしなかった
そんな俺にも、 たった一つの心の拠り所があった
古賀勲
タロー
そう、 大事に育てていた愛犬「タロー」だ
こいつだけは、 俺のことを邪魔者扱いをせず、 ただ純粋に懐いてくれる
そんなタローに、 段々と愛着が湧いていた
母ちゃんはタローを飼うことを許してくれていたが、 タローの面倒は俺だけが見ている
だけど、 母ちゃんが連れてくる男に、 何されるかはわからない
古賀勲
タロー
古賀勲
俺はそれだけを言うと、 その場を後にした
だけど、 後に残酷な出来事が待ち受けていた
鬼塚剛三
剛三の野太い声が聞こえるだけで、 俺は体を強張らせる
背後から聞こえる声に怯えながら、 恐る恐る後ろを振り向くと、
タロー
古賀勲
そこには、 剛三に首根っこを掴まれていたタローがいた
鬼塚剛三
鬼塚剛三
剛三はバットを片手に持ち、 それをタローに向かって振り回す
古賀勲
タロー
しかし、 時はもうすでに遅し
タローは剛三にバットで叩かれていた
一回だけではなく、 何度も、 何度も、 床が赤く染まるまで、 何度も
タローの痛々しい鳴き声が響く中、 俺は助けたくても一歩踏み出せなかった
古賀勲
そして、 剛三が何度バットを振ったかわからなくなった後、 タローはもう二度と、 かつてのように動くことはなかった
鬼塚剛三
剛三は自分で殴ったタローをゴミのように床に投げ捨て、 そのまま別の部屋へ行った
残された俺は、 あまりのショックで、 タローが死んだという実感がすぐには出なかった
しかし、 悲しいことに段々と実感が湧いてきて、 気がつく頃には涙が溢れ出てきた
古賀勲
ボロボロになった愛犬を抱きながら、 俺はその場で激しく大泣きした
そして、 目の前にいたのに助けられなかった自分が、 とても情けなかった
ある日のことだった
古賀勲
理不尽な理由で暴力を振るわれる母ちゃんを目撃して、 俺は咄嗟に体が動き、 母ちゃんを庇っていた
すると、 さっきまで母ちゃんを殴っていた剛三が、 怒りで眉を顰め、 歯を食いしばっていた
鬼塚剛三
剛三は近くにあった酒瓶を片手に持ち、 酒瓶を俺の頬にぶつけた
強い衝撃で、 瓶のガラスの破片が、 床中に転がった
そして、 俺の右頬には傷が深く入っており、 今もついている傷跡は、 この時にできたものだった
古賀勲
鬼塚剛三
母ちゃんは、 瓶で殴られている俺を見るだけで、 助けようとする姿勢すら見せなかった
「弱ければ誰からも見てもらえない」
「力を示さなければ生き残れない」
今までずっと、 そう思い込みながら、 生きてきた
そんな学校の廊下で、 俺は一人の少年と出会う
キノコのような坊ちゃん刈り、 決して豊かとは言えないムスッとした表情、 全てを見透かしたような瞳
彼の名は「都築慎一」
都築慎一
何を考えているかわからないからと、 周囲の生徒には不気味だと避けられていた
慎一は孤立している俺を、 何も言わずに見つめていた
俺はいつも通り、 自分を大きく見せるために、 慎一を激しく怒鳴りつけて威嚇した
古賀勲
俺は黙る慎一を、 激しく睨みつけた
今までの奴なら、 怯えて逃げ出すか、泣いて謝るはず
しかし、 慎一だけは違った
都築慎一
古賀勲
俺は呆然として、立ち尽くすしかなかった
俺がどれだけ大声を出して、 頭ごなしに荒れても、 慎一は全く怯えることはなかった
それどころか、 俺の本心を見ているかのような発言をしてくる
こんなちっこい奴にナメられたらおしまいだ 俺はそう思い、 いつもの乱暴な口調で否定をした
古賀勲
俺の心には、 怒りではない別の感情があった
強烈な戸惑いと、 見透かされた気恥ずかしさが、 溢れていた
都築慎一
乱暴に強がる俺に対して、 慎一は鼻で笑いながらそう言った
古賀勲
俺は顔を真っ赤にして叫ぶも、 慎一の反応は相変わらずだ
自分の本当の気持ちに気づいてくれて、 本当は嬉しいはずなのに、 どうしていいのかわからず、 気恥ずかしかった
そして、 俺は今日喋ったばかりなはずの慎一に、 名前のわからない安心感を抱いた
だけど、 ぶっきらぼうな自分では、 それを認めれずにいた
慎一と出会ってから、 慎一のことが気になって気になって仕方ない
他の奴にはこんな感情を抱いたことすらないのに、 下校中でも家でも、 慎一のことを考えてしまう
俺はもっと、 慎一と距離を縮めたかった
時計の針が12時を指すと、 周囲の生徒たちが、 風呂敷に教科書を詰めて、 教室から出て行く
古賀勲
古賀勲
都築慎一
慎一は一瞬黙った しかし、
都築慎一
古賀勲
思っていたより、 慎一はすんなり俺の誘いに乗ってくれた
都築慎一
古賀勲
俺と慎一は夕凪村の帰り道を一緒に歩いていた
そんな下校途中に、 俺は歩く足を止めて、 慎一に手を差し出した
古賀勲
俺の人生において、 初めて人に甘えた瞬間だろう
慎一はその場に立ち止まり、 きょとんとしていた
古賀勲
俺は顔を真っ赤にして、 必死に手を突き出した
俺の必死さを前に、 慎一は「仕方ないな」と言わんばかりに口元を緩め、 俺の手を握り返してくれた
この時の慎一の手の温もりは、 俺の冷え切っていた心を温めてくれた
都築慎一
古賀勲
揶揄う慎一に対して、 俺はそっぽを向いて強がった
しかし、 その手はしっかりと慎一に握られている
言葉ではどれだけ乱暴に強がって見せても、 「もっと一緒にいたい」という気持ちは、 慎一にはお見通しだったようだ
慎一と手を繋げた喜びの後に湧き出てきたのは、 世間への恐怖と不安だった
古賀勲
古賀勲
俺たちの時代は、 現代ほど寛容ではなかった
もし誰かに見られたら、 また誰かに邪魔者扱いされたり、 この時間が壊されてしまうのではないかと、 強い警戒心と怯えが表れていた
俺が口に出さず、 心の中で思っただけの不安
都築慎一
しかし、 慎一には俺の本心が見抜かれていたようだった
能力者みたいで怖いはずなのに、 不思議と怖くなくて、 それどころか安心した
都築慎一
古賀勲
都築慎一
古賀勲
この日常がずっと続けばいいなと、 思っていた
だけど、 俺と慎一の日常は、 ある転校生の襲来によって、 崩れ落ちていくことになる