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春休みに入る前日の夜のこと
リビングから、 母の電話の声が聞こえてきた
母
母
母
母
母
母
花
母
母
花
私は一瞬、言葉に詰まる
懐かしいはずの「地元」という 言葉が、少しだけ胸を重くする
嫌な思い出だけではない
でもほとんどは…… 苦しかった記憶ばかり
だけどおばあちゃんの顔が、 頭に浮かんだ
花
私が言うと、 母はほっとしたように笑う
その後 父と母も一緒に行こうかという話になったけど
二人とも仕事や家事で 立て込んでいて難しいらしい
結局私は、 一人で帰省することになった
出発の朝
春休み初日
私はバッグ一つを持って、 駅前行きのバスに乗る
平日の昼前、 車内は思ったより空いていた
花
席に座り、窓の外を 眺めていると、途中の停留所で 数人が乗ってくる
その時
聞き覚えのある声が 耳に入ってきた
「……あれ、花じゃん?」
花
顔を上げると、 蓮君と瀬戸君、そして鬼塚君が 立っていた
そして3人は後部席の 私の隣に座る
蓮
陽斗
私は少し驚きつつも答える
花
その言葉に、瀬戸君が 目を輝かせる
陽斗
陽斗
瀬戸君に質問責めされる
だけど今の私は、もう平気だ
花
陽斗
龍次郎
陽斗
蓮
花
陽斗
花
花
陽斗
蓮
花
花
陽斗
蓮
花
花
龍次郎
蓮
花
駅に着いて 私達はまず電車に乗った
3人にお金があるのか 尋ねてみる
泊まりで出かける 予定だったらしく お金はたくさんあるらしい
電車は一定のリズムで 線路を刻み、窓の外の景色を 後ろへ流していく
私は吊り革を握りながら、 目的地までの道のりを 頭の中でなぞっていた
電車を降り、バスターミナル へ向かった
券売機の前で、私は慣れた手つきで操作する
花
蓮
隣で蓮君が 感心したように言う
花
蓮
チケットを買い、 バスに乗り込む。 後方の四人席だ
窓側に瀬戸君が座り、 無言で外を眺め始める
遠ざかる街並みを、 少し眩しそうに 見つめていた
陽斗
陽斗
一方、鬼塚君は座った瞬間だった
シートに深く身を沈め、 数秒後には規則正しい寝息
花
蓮
蓮
花
高速道路に入ると、 会話は自然と小さくなる
エンジン音と振動に 包まれながら、私と蓮君は 並んで座っていた
蓮
花
花
花
花
蓮君は頷いた
蓮
花
東京に着き、再び移動。 今度は新幹線
切符を買い、改札を抜け、 ホームに立つ
新幹線が滑り込んでくる音が、 空気を震わせた
車内は一気に静まり、 窓の外が加速する
陽斗
蓮
瀬戸君は相変わらず 外を見つめている
鬼塚君は…… 全然起きない
私は座席に身を預けながら思う
乗り換えの先にあるのは、 懐かしくて、少し怖い街
でも今は── 隣に蓮君がいて、後ろに瀬戸君と鬼塚君がいる
その事実だけで、 新横浜へ向かう車窓は、少しだけ柔らかく見えた
新横浜駅に降り立った瞬間、 空気が変わった
見渡せば大勢の人。 アナウンスの声、改札の音、 足音が重なり合う
蓮
蓮君がきょろきょろと見回す
龍次郎
鬼塚君は感心している
瀬戸君は目を輝かせていた
陽斗
陽斗
花は少しだけ肩をすくめる
たとえ有名な場所でも、 私にとっては「地元」だ
花
花
その言葉に、 三人は顔を見合わせた
駅を出て、さらにバスへ
市街地を抜け、 住宅街へと入っていく
バスの揺れは心地よく、 移動続きだった三人は、気づけば静かになっていた
蓮君は窓にもたれ、 規則正しい呼吸
瀬戸君は腕を組んだまま、 うとうと
鬼塚君は言うまでもなく、 深い眠り
私は一人、起きていた
花
窓の外を見つめながら、 停留所の名前を一つ一つ確認する
見覚えのある風景が 増えていくたび、 胸の奥が少しざわついた
やがて──
花
花
花
蓮
陽斗
龍次郎
私は降車ボタンを押す
バスを降りると、空気が違った
駅前のざわめきはなく、 夕方の住宅街は静かだった
蓮
花
しばらく歩き、角を曲がる。 低い塀と、少し年季の入った門
私は足を止める
花
懐かしい匂いと、 変わらない佇まい
祖母の家だ
陽斗
私は、ほんの一瞬だけ 深呼吸をしてから
インターホンに手を伸ばした
インターホンを鳴らすと 祖母が出てきた
おばあちゃん
おばあちゃん
祖母は四人の姿を見るなり、 目を丸くした
そしてふっと笑った
おばあちゃん
おばあちゃん
「お邪魔しまーす」
玄関に入った瞬間、 木の匂いと、どこか懐かしい空気が鼻をくすぐる
廊下は少しきしみ、 柱には年季が入っている
古風な造りの家なのに、 不思議と落ち着いた
花
花は胸の奥がじんわり 温かくなるのを感じた
夕飯はカレーだった
鍋いっぱいに作られたそれは、 どこか素朴で、優しい味がした
蓮
陽斗
龍次郎
蓮君も瀬戸君も鬼塚君も、 遠慮という言葉を知らない勢いで食べる
祖母はそれを見て、ニコッと笑う
おばあちゃん
花はその光景を、 少し離れたところから眺めていた
花
昔はよく祖母の家に来て遊んでた
でも友達は誰もいなかったから
いつも1人遊びをしていた
だけど今
こうして祖母の家で 友達と一緒にご飯を食べている
新鮮な気持ちになった
お風呂を済ませ、 夜も更けてきた頃
四人は一部屋に集まり、 押し入れから布団を引っ張り出す
蓮
陽斗
龍次郎
畳の上に並べて敷くと、 修学旅行の夜みたいな 空気になった
三人は、あっという間に 布団に潜り込む
花
花
花
午後11時過ぎ
花も横になり、 いつの間にか深い眠りに 落ちていた
外では風が木を揺らす音だけが 聞こえる
瀬戸は目を覚ましていた
隣の布団で眠る花を、そっと見る
無防備な寝顔。 規則正しい寝息
陽斗
陽斗
思わず手が伸びかけた、その瞬間
(バシッ!!)
陽斗
蓮
白崎が瀬戸の手を叩いた
陽斗
陽斗
蓮
低い声で言い切る
そのやり取りを聞いていた 鬼塚が、寝返りを打ちながら言う
龍次郎
蓮
龍次郎
蓮
声を荒げかけた、その時
花
花がもぞりと寝返りを打った
3人は一瞬で息を止める
そして布団の中に、 慌てて潜り込む
花は何も知らず、 そのまま静かな寝息を 立て続けていた
暗闇の中、 3人はそれぞれ、 違うことを考えていた
触れてはいけない。 守るべき距離がある。
それを、誰よりも 分かっているのは──
たぶん、白崎だった