桜が咲く、遥か遠い明日まで―守りたいもの―

体育祭から1週間後。

7月中旬。

世間は夏休みだ。

そして、10月には 文化祭を控えている。

いつも通りの道でみんなと別れて、 今は遥と2人で歩いている。

今、遥が言ってるのは 借りてるアパートのことではなく、 ”実家“のことだ。

こうして私は久しぶりに 遥の両親に会いに 行くことになった。

そして次の日。

リビングへ行くと、 黒髪ロングヘアの女性が 出迎えてくれる。

そう、この人は遥の お母さんであり、彼の“右側“だ。

すると、玄関の鍵が開く音がする。

誠良というのは 私のお父さんの名前だ。

遥のお父さんの秀日くんと 私のお父さんの誠良は 私と遥と同じく幼馴染同士だ。

その後話を聞いてわかったけれど、 2人は防風鈴のように 悪い組織を取り締まる、 GCEという団体に 所属しているらしい。

Gがグレイス…慈愛、 Cがコンシェンス…良心、 Eがエデン…楽園 という意味だ。

けれど、警察とは少し違って たとえ罪を犯した者だとしても、 家庭環境やその他諸々の 事情があったり、 助けを必要としている場合は 迷わず手を差し伸べる その名の通り、 慈善的な団体でもある。

秀日くんも、お父さんも 忙しいらしく、 帰ってくるのは珍しい。

そういえば両親が風鈴に行くことを 許してくれたのかどうか、 気になってる人は多いだろう。

通ってる私が言うのもなんだけど、 昔の風鈴しか知らない人達には 止められる確率の方が高い。

けれど、桜家と日々希家は違った。

どちらも“好きなようにすればいい”と、好意的だった。

その理由はまだわからない。

けれどきっと、 そのうちわかるだろうと思って、 そんなに深く考えたことはない。

これでわかっただろう。

桜家は皆さんが思う程、 暗くない。

ごく一般的な3人家族だ。

そして、あっという間に夜が来た。

悠夜ちゃんの気遣いで 私も遥の部屋で 2人で寝ることになった。

そう言い残して、遥の部屋から 出て行く悠夜ちゃん。

ｷﾞｭｰｯ

それから遥はため息をついてから 言った。

上目遣いで私を見ながら、 そう訊く。

ﾁｭｯ…

私の肩を優しく掴みながら、 唇を重ねる。

そして遥は黙り込む。

今度は真っ赤な顔ではなく、 真剣な顔で言った。

そう、初めての夜を過ごしたのだ。

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