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冬休み前、最後の登校日
廊下の掲示板の前に、 人だかりができていた
「期末テストの順位出たぞー!」
誰かの声に、ざわりと空気が動く
私は人混みの後ろから、 そっと掲示板を見上げた
正直、あまり期待は していなかった
中学時代、 勉強が特別できたわけでも、 苦手だったわけでもない
順位はいつも真ん中あたり。 良くも悪くも、“普通”だった
高校に入っても、きっと同じ……
そう思っていた
──なのに
花
一番上に書かれていた 名前を見て、思わず目を丸くする
1位 花園 花
しばらく、 意味が理解できなかった
何度も目をこすり、 もう一度見る。 でも結果は変わらない
胸の奥が、じわりとざわついた
思い返してみると
確かにテストは そこまで難しくなかった
でも……
花
この学校では、 20位以内の生徒だけが、 点数つきで掲示される
私の名前の横には、 はっきりと数字が書かれていた
花
花
すぐ下の順位に、 見覚えのある名前を見つける
2位 伊集院 瑛二 2組
花
同じクラスの、あの伊集院君だ
485点でも私の中では高いが
すぐ横で伊集院君は……
伊集院瑛二
伊集院瑛二
伊集院瑛二
完全に泣き崩れている
掲示板の前を離れたあと、 私は蓮君の姿を探した
人混みの少し外れ、 壁にもたれるように立つ蓮君を 見つけた
花
花
蓮君の顔は……
真っ青だった
花
声をかけると、 ゆっくりこちらを向く
蓮
蓮
力のない声
嫌な予感がして、 私はもう一度順位表の方へ戻った
視線を下へ、下へ
そして100位
その横に、蓮君の名前があった
花
私はまさに今、 (°Д°)←この顔だろう…
声が出なかった
120人中100位
自分の順位より 蓮君の順位の方が衝撃を受けた
さらに目を走らせて、気づく
同じクラスの名前が、 やたらと多い
そのほとんどが、 赤字で囲われていた
赤字……ってことは
追試対象者だ
数えてみて、息をのむ
私のクラス、 私と伊集院君以外、 ほぼ全員が対象者だ
視線を横にずらすと
2組のほとんどの人が 顔を真っ青にして 俯いていた
その日のホームルーム
担任の先生は、 順位表を前に深いため息をついた
先生
クラスの全員が息を呑む
先生
先生
先生
「進級はないと思え」
一斉に、顔色が変わった
クラスメイトA
クラスメイトB
クラスメイトC
クラスメイトD
そんな中── 視線が、ゆっくりと 私に集まってくる
「花……」
蓮
陽斗
丸山元
私は一瞬、言葉に詰まった
今まで“一人だった”私が、 今は“頼られる側”になっている
少しだけ、胸の奥がざわつく
花
蓮
陽斗
その放課後、 私は担任の先生を訪ねた
花
先生
先生
私はクラスのみんなのことを 相談した
このままじゃ留年……
一緒に進級できなくなる
そしたら私の生活も……
先生は少し考え込み、 やがて頷いた
先生
花
先生
先生
先生
花
花
先生
先生
花
花
こうして決まった
追試対策・勉強合宿
私は教室に帰って説明
クラスは一瞬静まると──
クラスメイトA
クラスメイトB
クラスメイトC
一気にざわめいた
ただ一人……
伊集院瑛二
そう言って、 さっと教室を出ていく影
伊集院君だった
花
めんどくさい……とでも 思ったのだろう
私は苦笑いをした
こうして、 冬休み直前にして、 前代未聞の勉強合宿が 始まることになった
翌日から始まる勉強合宿 に向けて、クラスのみんなは それぞれ準備を始めた
その日の夜私は 母に事情を話して 合宿の準備をした
教科書、ノート、筆記用具、 着替えに、洗面用具
私は最低限の荷物を カバンに詰める
花
不思議な気持ちだった。
誰かと“泊まり込み”なんて、 今までなかったから
家で準備をした後
私は、蓮君と瀬戸君、 そして鬼塚君と一緒に近くの スーパーへ行くことになった
蓮
蓮君はメモを見ながら、 真面目に買い物かごを持つ
花
一方──
龍次郎
龍次郎
陽斗
瀬戸君と鬼塚君は、 すでにお菓子コーナーに
カゴに、ポテチ、チョコ、グミ、 そしてカップ麺
遠慮という言葉を知らない勢いで 放り込んでいく
花
思わず言うと、 二人は顔を見合わせる
龍次郎
陽斗
花
花
花
私は呆れて、でも── 気づけば、くすっと笑っていた
その瞬間
蓮君、瀬戸君、鬼塚君の視線が、 ふっと私に集まる
不意打ちの笑顔
三人とも、言葉を失った
誰も何も言わなかったけど、 それぞれ、胸の奥を撃ち抜かれたのは確かだった
合宿初日
学校の教室を二つ使い、 一つは先生、もう一つは 私が担当する形になった
花
黒板に書きながら説明すると、 みんな必死にノートを取る
教え方には自信なかったが、 みんなは真剣に聞いてくれた
クラスメイトA
クラスメイトB
理解した瞬間の顔を見るたび、 胸の奥が、少しだけ温かくなる
夕飯は、学校の食堂を借りて みんなで作ることになった
エプロン姿の男子たちが 並ぶ光景は新鮮だ
クラスメイトA
クラスメイトB
クラスメイトC
あちこちから悲鳴が上がる中、 私はフライパンを持ちながら、 全体を見渡す
花
龍次郎
包丁を持つ鬼塚君は、 意外にも手際がいい
無駄がなく、黙々と 作業を進めている
それを見た瀬戸君が、 ふと首を傾げた
蓮
蓮
その言葉に、近くにいた 何人かが手を止める
クラスメイトA
クラスメイトB
鬼塚君は顔も上げず、淡々と答えた
龍次郎
陽斗
龍次郎
陽斗
陽斗
鬼塚君は少し間を置いてから、 ぶっきらぼうに言った
龍次郎
龍次郎
一瞬、食堂が静まり返る
クラスメイトA
クラスメイトB
クラスメイトC
瀬戸君は頭を抱え、 蓮君はぽかんと 口を開けたまま固まる
蓮
陽斗
陽斗
クラスメイトA
クラスメイトA
食堂の空気が、一瞬止まる
陽斗
蓮
鬼塚君は少しだけ 間を置いてから、 視線を逸らしたまま言った
龍次郎
龍次郎
花
鬼塚君は顔を赤くしながら ぶっきらぼうに続ける
龍次郎
瀬戸君は一瞬 きょとんとしたあと、 にやにや笑いを浮かべた
陽斗
龍次郎
短く言い返しつつ、 鬼塚君はちらっと私を見た
私は少し驚いたけど 目を瞬かせそれから小さく笑う
花
花
その一言に、 鬼塚君は耳まで 赤くなった気がした
龍次郎
ぶっきらぼうに言いながらも、 その口元は、ほんの少しだけ 緩んでいた
夜ももちろん勉強
先生も寝泊まりしてくれるので 手分けして範囲を教える
眠そうな顔。 机に突っ伏す人。 それでも、誰も投げ出さなかった
龍次郎
クラスメイトA
クラスメイトD
午後10時
先生
先生
はーい
先生の声で、教室が静まる
布団に入ると、 どっと疲れが押し寄せてきた
そして1週間後
いよいよ追試の日
私は別室で待機していた
ふと窓を見ると、反射で 自分の顔が見え、目の下には クマがあった
花
そう言い聞かせながら、 時計を見る
夕方
結果が張り出された
先生
蓮
陽斗
龍次郎
先生
先生
「よっしゃあああ!!」
次の瞬間、歓声が響いた
クラスのみんなが、 雪崩のように私のところへ来る
蓮
陽斗
次々に声をかけられて、 私はただ、立ち尽くす
クラスメイトA
クラスメイトA
誰かが言った、その瞬間
ぷつんっと 全身の力が抜けた
花
(バタッ)
蓮
陽斗
龍次郎
視界がぐらりと揺れて、 私はそのまま倒れ込んだ
そして私は安心して 眠った