硝子作品展
白く落ち着いた空間に、
色とりどりの硝子の芸術品が飾られている。
寧々
その作品には、
寧々の父の名が記されている。
寧々
階段を何度も昇り降りしたせいか、流石に膝に限界が来ていた。
そんな中、けろりとした人物が一人、寧々の隣を歩いている。
鮎だ。
鮎
鮎
とある美術館の一角を借りてやっているため、
声は抑え目だ。
寧々
鮎
寧々
鮎
寧々
鮎
寧々
窓の無い美術館とは打って変わって、
明るく、賑やかな雰囲気があるスペースに彼女達はやって来た。
寧々は、久しぶりの座位を楽しんでいるようだ。
寧々
鮎
寧々
寧々
鮎
寧々
寧々
そこでふと思いついた質問がある。
寧々
鮎
寧々
鮎
鮎
寧々
寧々
前から思っていたことだった。
鮎は、芸術関連の話に目がない。
それ故に、厳しい態度をとることもあった程だ。
ということは、それだけ熱中出来る理由があるのだろうか。
鮎
鮎は少し目を伏せて、考える仕草をした。
寧々
寧々
鮎は前を向いて答える。
鮎
鮎
鮎
寧々
鮎
寧々
寧々
鮎
寧々
寧々
鮎
鮎
寧々
私は言葉の本質を考える。
寧々
寧々
そう、鮎は部員にも、そして先生にもその技術で腕を認められている。
本当に芸術に関しては、非の打ち所がないのだ。
寧々
寧々
鮎
寧々
寧々
鮎
寧々
寧々
鮎
緊張のあまり語彙力が低下した拙い文章を述べる。
鮎は、静止している。
寧々
鮎
寧々
鮎
寧々
笑顔だった。
鮎
鮎
何かを認めてもらったような。
何かに「諦め」がついたような。
それは、清々しく、柔らかい笑顔だった。
ミラーワールド
寧々
眩しいくらいの光に眉を寄せる。
寧々
慌てて周りを見渡す。
今しがた、異世界研究部の皆で鏡に突入した所のはずなのだが、
ここには、寧々一人しかいないのだろうか。
寧々
幼い頃に迷子になったような感覚に襲われ、
半分パニックになりながら辺りをうろつくと、
見覚えのある人物が見えた。
背が高く、目つきの悪い少年だ。
寧々
安心から思わず大きな声が出る。
寧々
そう言うと、庵は振り返る。
庵
寧々
それを聞くと、庵は少し目元を和らげる。
庵
寧々
寧々
庵
少し不安になって言う。
寧々
庵
寧々
寧々
寧々
寧々
庵
庵
寧々
寧々
庵
寧々
寧々
庵
庵
寧々
寧々
慌てた様子で、彼らは走ってくる。
が、
バスケットボール部の遥斗と、普段から運動はしない優。
その差は明らかだった。
優
寧々
遥斗
優
優
優
庵
庵
庵
遥斗
寧々
庵
寧々
寧々
寧々
庵
庵
寧々
庵
寧々
庵
庵
庵
庵
そこでスマホを見た優が言う。
優
優
庵
庵
そう言って時計を見る。
庵
庵
遥斗
優
庵
寧々
寧々
遥斗
優
遥斗
遥斗
遥斗
優
優
遥斗
遥斗
優
遥斗
優
遥斗
遥斗
優
優
優
優
遥斗
優
遥斗
優
優
遥斗
優
絶望感が辺りを漂う。
その時だった。
見知らぬ学生が話しかけてくる。
遥斗
遥斗
優
遥斗
遥斗
遥斗
遥斗
そんな考えが察されたのか、
学生は自分の名を名乗った。
真子
真子
遥斗
真子
真子
真子
遥斗
遥斗
真子
真子
真子
優
真子
優
遥斗
遥斗
遥斗
遥斗
遥斗
遥斗
遥斗
遥斗
真子
真子
遥斗
遥斗
遥斗
優
遥斗
優
遥斗
遥斗
更に厄介なことに巻き込まれた遥斗と優は、渋々真子の手伝いをするのだった。
───その会話を、誰かが聞いていた。
角に隠れているため、顔は見えない。
だが、やけに陰湿で、
何か、暗い意思を感じる。
その口元が、ある言葉を発する。
驚く程に重たく、暗かった。
その人物は、ふらふらとその場を後にした。
一方、寧々と庵
何とも言えない空気にウンザリしながら、
寧々は遥背の高い庵の横を歩いている。
庵
寧々
庵
寧々
庵が寧々の方を目で見る。
寧々
庵
庵
寧々
寧々
庵
寧々
庵
庵
寧々
返事を聞くと、庵は語り出す。
───ドッペルゲンガーにはな、リーダーがいんだよ
そうだ、まぁ、彼奴は勝手に「鏡の王」って呼んでるがな
あぁ、王でも、男とは限らねぇんだってさ
んで、その鏡の王は、ミラーワールドの全てのドッペルゲンガーを統率するんだ
そうだ、全てだ
統率して何をするかって?
それは勿論───
……「本物」になりに行くんだよ
つまりは現実世界への侵略だ
…そうだな、
例えば最近、ニュースでドッペルゲンガーの話が出ていないか?
……朝見た?
だろ、最近、ドッペルゲンガーが現実世界に増えてんだよ
まぁ、最近と言っても
お前が中学生くらいの頃だがな
件数は増えてるみたいだ
増えてるからなんだって思うよな
……珀の考察だと、
「鏡の王」が、現実世界に出て来たんだ
信じられねぇだろ
でも、証拠らしきものは挙がってんだ
うちの学校でも、ドッペルゲンガーと入れ替わったヤツがいる
誰か分かるか?
……だよな、お前はそもそも其奴の前を知らねぇもんな
まぁ、誰かは自分で考えろ
取り敢えず、今は元の話題で話させてくれ
で、鏡の王が現実世界に来るとどうなるかって言うと
ミラーワールドからドッペルゲンガーを呼び寄せられるんだ
それが無意識であってもな
それと、鏡の王はミラーワールドと現実世界を自由に行き来できるらしい
だから、いつでも入れ替わりを起こせるんだ
……何でこれを今ここで話したかって?
まぁ、気紛れだ
気にすんな
一方、遥斗、優
何かを見つけたのか、真子はその元へ走っていく。
遥斗
優
その先には、桃色の髪の毛の人物がいる。
遥斗
海月のドッペルゲンガー
海月のドッペルゲンガー
優
遥斗
優
遥斗
優
しかし……、
真子は海月にある質問を投げ掛ける。
真子
遥斗
遥斗
そうすると、海月はさも当然のように答える。
海月
海月
優
優の言葉が突然止まる。
その目線は真子の方へ向けられていた。
釣られて、遥斗も真子を見る。
真子
何か大きなショックを受けたかのような顔になっていた。
真子
海月のドッペルゲンガー
真子
真子は今来た道に踵を返した。
優
遥斗
そうすると足を止める。
遥斗
真子
優
真子
真子
遥斗
遥斗
一方、寧々、庵
話を終え、庵は足りなくなった酸素を補給する。
これだけ長く喋ることはあまり無いのだろうか。
庵
そう言って横目で寧々を見る。
寧々
寧々
庵
庵
庵
そう叫ぶと、海月が振り返る。
海月
海月
寧々
海月
そう安堵した瞬間。
何かが海月に背後から襲いかかる。
庵
海月
ドンッ
……重々しい音が響き渡る。
だが、身構えていた海月には、傷一つつかなかった。
────誰かが、襲いかかってきた人物に直前で体当たりしたのだ。
寧々
寧々
遥斗
そんな事を話している内に、
当の殴りかかった本人はもたついた足をバタバタ動かし、その場を去ろうとしていた。
庵
咄嗟に出た庵の足が犯人の腹にめり込む。
寧々
犯人は激しく咳き込み、直ぐに立ち上がれないのか、地べたに突っ伏したまま、庵を睨む。
庵
海月
真子
真子
寧々
寧々
優
優
優
寧々
寧々
真子
遥斗
遥斗
真子
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
海月
鬼のような形相で、海月を睨め付ける。
そんな真子のドッペルゲンガーを前にしても、海月は涼しい顔で立っている。
海月
寧々
庵
海月
部長は、明るくて良い人だったよ
だから、自然と皆が着いて行った
私も、副部長として頼りにしてた
……だけど
海月
海月
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
海月
海月
急に、美術に対して消極的になったって言うか
兎に角、人が変わってしまったみたいなの
それで、私は確信した
目の前にいる人は、部長じゃないって
憧れの部長は、「ミラーワールド」にいるって
……その時、あるアイデアが浮かんだの
怒りを理由にした、残酷なアイデア
ドッ
───そう、二人きりの時
彼女を拘束した
真子のドッペルゲンガー
と言っても、短時間だけどね
これは最近のことだから
「部長」は、とある理由で私になっている
その「とある」は赤の他人にとってどうでもいい事でしょ?
だから、割りと直ぐ信じてもらえた
で、そこで思い出したの
最近、ドッペルゲンガーが現実世界に増えてるってね
その目的を、洗いざらい話してもらおうと思って
…それで、逃げられないようにしてきたんだけど……
────信じられない。
人としてやっていい事なのか、いや、いいことでは無いのは確かだ。
その事実を、淡々と海月は話している。
少し、恐怖を覚えた。
寧々
庵
庵
何事も無かったかのように、庵も話を続ける。
真子のドッペルゲンガー
庵
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
寧々
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
そう言って、彼女は震える指を指す。
……その先に居るのは、
寧々
「 亜 矢 乃 寧 々 」だ。
遥斗
遥斗
優
海月
海月
寧々
寧々
海月
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
そう言って、さっきまで握りしめていた鈍器をまた持ち、立ち上がろうとする。
真子のドッペルゲンガー
庵
庵
ドッ
そう言うや否や、庵は真子のドッペルゲンガーの心臓に目掛けてその手を突き刺した。
寧々
真子のドッペルゲンガー
そのまま、庵は何かを握り潰す。
……パリン
想像していたより軽い音だった。
まるで、何かが「割れた」様な───。
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
真子のドッペルゲンガー
その途端に、真子のドッペルゲンガーの身体は崩れてしまった。
残ったのは、無惨な硝子の破片だけだ。
この光景を、誰もが唖然とした表情で見ている。
だが、
通行人は、気にせず歩いていた。
寧々
寧々
遥斗
庵
庵は普段と変わらない様子で口を開く。
庵
真子
真子
庵
庵
真子
そう言ってふらふらと、歩き出した。
庵と海月は無言で着いて行く。
それに続いて、遥斗、優、寧々も顔を見合せ、
歩き出したのだった。