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人の行き交う通学路を、
真子を先頭に、ズラズラと歩いていく。
若干青ざめた寧々に、海月が話しかけた。
海月
寧々
海月
寧々
寧々
海月
海月
ついさっきまで命の危機に立たされていた海月が言うものだから、
現実感が遠い。
寧々
寧々
寧々は、真子のドッペルゲンガーが放った一言について考えている。
寧々
寧々
寧々
寧々
無言の空気に耐えられなくなり、寧々は海月に問う。
寧々
海月
海月
寧々
寧々
寧々
海月
唐突に庵に話を回す。
庵
海月
海月
寧々
庵
寧々
遥斗
真子
遥斗
遥斗
真子
真子
真子
庵
庵
庵
優
遥斗
寧々
寧々
庵
遥斗
庵
遥斗
寧々
寧々
庵
庵
庵
真子
真子
庵
庵
寧々
寧々
寧々
優
優
庵
真子
道中の話で誰もが学校へ向かっていることを忘れていたのだろうか、
皆はハッとした顔になり、歩みを進めた。
冬華宮高等学校
現実世界と時間がズレているのか、
校門から校舎を覗けば、
外へ昼食を食べに来ている者もいる。
真子
真子
真子
真子
寧々
遥斗
遥斗
優
優
優
寧々
優
優
優
優
優
寧々
校門前を屯していたからだろうか、
いつの間にか、先生のドッペルゲンガーが彼女達の前に立つ。
寧々
寧々
眼鏡をかけ、髪をひとつに結び、
人が良さそうな声を発するのは、
寧々の学科である芸術科、1-Aのクラスの担任である、日笠木だった。
日笠木先生
遥斗
寧々
寧々
日笠木先生
日笠木先生
日笠木先生
優
優
寧々
日笠木先生
私は思わず下を向いて眉を顰める。
日笠木先生の、ゆったりとした声は突然止まった。
寧々
見れば、寧々を見ていた。
日笠木先生
寧々
寧々
寧々
日笠木先生
遥斗
優
庵
寧々
先程とは真逆の態度になり、日笠木は「どうぞ」と校門を開ける。
海月
海月
海月
海月の言葉を受け、混乱しながらも彼女らは校舎へ入っていった。
なるべく人目のつかない廊下に移動し、
寧々達は今後の作戦を考える。
庵
寧々
寧々
庵
遥斗
遥斗
優
寧々
寧々
寧々
寧々
海月
寧々
寧々
寧々
海月
庵
海月
海月
庵
海月
遥斗
海月
優
寧々
優
優
遥斗
優
遥斗
海月
庵
庵
庵
寧々
そうして、寧々達はそれぞれ別方向に動き出した。
───その、彼女らを見ている集団が居た。
今にも泣き出しそうな、弱気な顔の集団だ。
隣にいる人物が怯えるような震える声を出す。
そう言い、生徒達は廊下の奥に目をやる。
涙の浮かぶ、赤い、充血した目で。
そして、ノロノロと動き出す。
獲物を追いかける、ゾンビのように。
その向かって行った先は──────
寧々
記憶を頼りに走っていくと、
───「1-A」と書かれた文字が目に入る。
寧々
そこで、寧々はある事実を思い出した。
寧々
寧々
寧々
すぐそこにある校内図を見ると、
やはり、反対方向に向かってしまったようだった。
寧々
しかし、踵を返そうとした所でその足は止まる。
寧々
寧々
寧々
寧々は静かに、教室のスライドドアに身を潜める。
寧々
寧々
寧々
───身体が、動かない?
寧々
思わず、私は足元を見る。
寧々
───震えている。
寧々
寧々
ガラッ
寧々
何も理解できないまま、突然ドアが開かれる。
妙に聞き覚えのある声だった。
だけど、名前があっているかは確証がない。
…そんな「クラスメイト」の声。
さて、彼女は今しゃがんで身を潜めている状態である。
そのまま、顔をゆっくりと上げる。
寧々
寧々
クラスでは大人しめな子だった気がする。
何なら、目立っている子に怯えていた様な……。
実奈
寧々
────その時
ガンッ
パリン
───激しい衝撃が、私を襲う。
ただ、私の身体は横に投げ出されていて、
その視界はチカチカと光っている。
寧々
何が何だか分からずに、私は頬に手を当てる。
何か、ヌルッとした感触がある。
私は、無我夢中で痺れる手を顔の前に持ってくる。
寧々
あかい。
あたたかい。
におう。
なんども、
何度も
はくほど
嗅いで
のんで
味わった
あの
鉄 の 味 が 。
寧々
実奈
寧々
まだ衝撃に揺れる頭を動かし、
声の主を見る。
複数人居た。
実奈と同じく、
大人しめの生徒達である、夏菜子と心だ。
そう、だがそれは────
「 現 実 世 界 」 で の 話 。
やっと、寧々は理解する。
この生徒が元凶だと。
このクラスを牛耳っているのだと。
────ならば、
現実世界で目立っていた生徒はどうなるか?
夏菜子
夏菜子
心
ガンッ
ドゴッ……
寧々
冗談だって、言って欲しかった。
だって、私が見ているのは────。
箒でボサボサになった髪を叩きつける夏菜子と、
その様子を動画に収める心だったからだ。
寧々
寧々
その刹那、寧々は再び衝撃に襲われる。
実奈
実奈
……蹴られた。
寧々
寧々
最低だ。
私が、幸せだったから。
私が?
幸せ?
今?
今じゃない……。
実奈
実奈
そう言って、赤くなった顔と、腕を見る。
実奈
その言葉で、夏菜子はその生徒に箒を渡す。
さらに、他の生徒にも、椅子を渡す。
実奈
実奈
実奈
生徒の目から、怯えが消える。
全員、寧々の方を凝視する。
寧々
冷や汗が吹き出す。
身体が、頭より先に理解したからだ。
そして、頭でも理解してしまう。
私は、
私は、殺される……?
こんな、人達の言いなりになって。
こんな、奴らの為に痣を増やして。
こんな、屑共に尊いものすら踏み躙られ。
────待って。
何で、私は「知っている」?
あれは「夢」で見た、彼女の過去だ。
それでも、嫌にリアルだった。
なら、これは何だ?
夢か?
……痛い。
ゆめ、じゃない。
なら
なら
なら─────
……パリン
それが、何の音かは分からない。
それでも、
今まで何かを抑えていたものが、
「割れた」気がした。
こ こ ろのこわれる おと がした
実奈
───辺りに散らばるのは、
椅子と、箒と、カッターと……
「 硝 子 の 破 片 」
実奈
実奈
寧々
実奈
実奈
実奈
実奈
寧々
「そっか」
「私が、ドッペルゲンガーに興味を持った理由」
「私が、あの子を認められなかった理由」
実奈
寧々
実奈
「何もせずとも散らばった、破片」
「焦がれてたんだ、愛されることに」
庵
庵
寧々
庵
庵
寧々
寧々
庵
寧々
庵
寧々
寧々
庵
庵
寧々
庵
寧々
寧々
庵
庵
──「『異世界は存在する?!』現代の噂」
「皆さんは、『異世界』を信じますか?」
「非科学的な事は、ロマンがありますよね」
「何と、異世界が存在する証拠と思われるものが幾つか見つかっているのです」
「まず、1つ目は─────」
──思い出した。
確か、ここで父さんに呼ばれたんだっけ…。
寧々
寧々
庵
庵
庵
庵
庵
寧々
庵
庵
寧々
庵
寧々
庵
寧々
庵
庵
庵
寧々
寧々
庵
庵
庵
庵
庵
庵
庵
寧々
庵
庵
寧々
寧々
寧々
庵
庵
庵
……静かな教室だ。
穏やかに、風が吹いている。
そう、
誰1人として、
「生 き て い な い 」教室に。
その残骸に佇む人物がいる。
そして、その人物の後ろから声がする。
ガンッ
飛んできた椅子を何事も無かったかのように避ける。
見れば、佇む人物の横に、ふらふらと次の椅子を用意するドッペルゲンガーがいた。
そう言って、完全にドアから姿を現す。
ガラッ
珀
「無意識」。
それは、防衛反応。
……さて、あの時の続きを見てみよう。
あの、「消された」ニュースの続きを───。
「まず、1つ目は、」
「最近、突然行方不明となった人々が、」
「相次いで、保護されているのです」
「行方不明者がですか?」
「はい」
「それがどう関わってくるのでしょうか」
「そう思いますよね」
「そこで、このVTRをどうぞ!」
可愛げな服を着た幼女が、縦長の画面の中で遊んでいる。
「こちらの女の子は、」
「『亜矢乃 寧々』ちゃん」
「実は、寧々ちゃん、」
「この後、中学生になってから、行方不明となってしまうんです」
「えっ!」
「何があったんですか…?」
「寧々ちゃんの母である紗夜さんは、『この日は喧嘩してしまって』」
「『よほど気に障ったのか、家から出て行ってしまって』」
「『探したけれど、見つからなくて……』」
「『でも、通報しようとしたら、あの子から戻ってきたんです』」
「『それで、ボサボサの髪で、痣だらけで来るもんだから』」
「『喜びよりも先に驚きが来て、病院に連れて行きましたね』」
「『その後は無事、回復していますが』」
「『1日で何があったのかを聞いても、覚えていないって言うんです』」
「『…気になるけど、私は無事に戻ってきてくれた事が何よりも嬉しいです』」
「───とのことです」
「いやぁ、見つかって良かったです」
「では、何故これが異世界と関わりがあるのか?」
「紗夜さんは『そうそう』とつけ加えてこう仰っていました」
『私と、夫の呼び方が変わっていましたね』
『────お母さんから、母さんって…』
焦がれ、焦がされ。
「硝子の孤高」より、彼女は愛を求める。
現実世界で幸せな人を憎み、
その反転した人生を奪う。
……いや、
もう、
奪 っ て い た の だ 。
王は、
……ドッペルゲンガーは、
椅子を奪う。
そう、
「亜矢乃 寧々」の椅子を────。