今日もわざとらしく光る街を飛び回る。 これが私のルーティーン。
昔から住んでるわけじゃないけど。 何故か懐かしく感じた。
前住んでた街は親と姉を置いて出てきてそれきりだ。
あの街にはもう帰ったことはない。帰る必要性を感じられないからだ。
私は一軒の屋根の上で少し休憩をする。
すると家の中から夫婦喧嘩が聞こえてくる。
夏夜
私はつくづくしょうもないことをすると思った。
何より私の親によく似ていた。
私の親もよく喧嘩をしていた。
毎日毎日うるさいんだよ。
私の親は2人揃って冷徹なる怪物のようだった。
父は喋らないし笑わない。泣きもしなければ悲しみもしない。
ただ、怒るだけ。
自分の思い通りに行かないことが気に食わないらしかった。
母はそれは大層美しい人だった。
ただしそれは容姿のみ。
色んな男を手玉にしていた。
父はそれに対しても怒っているようだった。
でもなぜ離婚しないのか。
それは、離婚できないからだ。
うちは沢木グループというグループを経営していた。
沢木ホテル、沢木銀行、沢木スタジアム。
元々あの人達は制約結婚した。
愛はなかった。
でもこのグループの後継を産まなきゃいけなくて。そして私の姉は産まれた。
私は多分、父と血が繋がっていないと思う。
母がそこらの男とやってできた子どもに違いない。
そして私は沢木グループから隠されていた。言わば隠し事というやつだ。
姉だけは表向きに公表され祝福された。
私は邪魔だったらしい。
私が5歳の時、まだ感情がある時だ。
親はいつものように喧嘩をしていた。
そこに私は割って入った。
「もうやめて!」と。
そして1度、私は山に捨てられたことがあった。
そこから私は一生懸命親達の喧嘩を止めた。姉はただ見ているだけか、そそくさと部屋に戻っていくばかりだった。
私は父が、母が好きだったから。
例え顔を水に押し付けられても、廃墟の建物の中に置いていかれても、監禁されても。
けど、けどね。
私はある日、体が軽かった。
ふわふわして。足が床についてないみたい。
いつものようにご飯は床に置いてあった。
冷たいご飯とインスタントの味噌汁。
私は親の喧嘩を止めた日から一緒にご飯を食べることは無かった。1度も。
お腹は空いていなかった。喉もかわいていない。
今ならなんだって出来そうだった。
だから、親と姉を殺した。
シャワーを浴びて服を着替えた。
冷たくなった3人の頬を触って
私は何も思わなかった。
満月の日だったから、縁側から月を眺めていた。
痛々しくも可憐な鮮血を眺めて。
そして気がついたらカラスに化けていた。
そこから私の一人暮らしの始まりだ。
あんな街に帰る必要は無い。
無機質な父、はしたない母、無慈悲な姉。
全員だーいっきらい。
夏夜
そうだ。今喋れなかった。
でも、私はあの人達を殺してから初めてこんな強く感情を持てたと思う。
3年と半年ぶりの感情は心の底からの「憎い」だった。