子どもがほしいと思った
でも、妊活をしてから数年……、妊娠の兆候が現れることはなかった
夫から焦る必要はないよと言われたけれども……
それでも私は子どもが欲しかった
???
どこともなく道化師が現れ、彼女に微笑む
???
私が幼い頃、家族で行った思い出の遊園地だ
数年前に経営難になり閉園。そのまま放置され廃墟と化している
首をかしげた
???
そこで目が覚めた
隣で夫は規則正しく寝息を立てている
時計を見ると午前2時をさしていた
瞼を閉じ、しばらくして意識は闇に包まれていった
数日後、○○○遊園地のことが気になり、行ってみることにした
電車を2回乗り換えて30分後、最寄駅に着いた
休日だというのに人が少ない
もっと人が多かったかもしれない
なんとも言えない感情に襲われ、その場をあとにする
バスに乗り、発車してから10分後──
最寄りのバス停で降り目的地まで歩く
目の前にゲートが現れ、ゲートをくぐった
《立ち入り禁止》と書かれた看板が置かれてたけど、気にしない
奥へ進むと錆びつき朽ち果てた遊具が出迎える
メリーゴーランド、コーヒーカップ、観覧車、その他のアトラクション…………
もちろん人気はない
寂寥感が漂う
かつての賑わいは見る影もなかった
──とそのとき
???
夢の中で見た道化師がメリーゴーランドの木馬に腰かけ、口端を上げ手招きをした
少し目を離した途端、道化師の姿はいなくなっていた
目を離したといってもほんの程度……
そう思った瞬間、今度はコーヒーカップに現れ手を振っている
いつの間にか道化師は雑草が生えた遊歩道に立っていた
右手に風船を持ち、観覧車に向かって歩き出す
まるで誘(いざな)われているように──
観覧車の前で道化師は急に振り返り、口を開いた
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背筋に悪寒が走った
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ここにいてはいけない、早くこの場から逃げろ
頭の中で警鐘が鳴り響く
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???
???
視線を足下にうつすと……
得体の知れないものが彼女にはいよってきた
形容しづらい恐怖と嫌悪感が身体中に駆けめぐる
はいはいするように、四つん這いで近づく
“それ“が彼女の足首を掴み、全身に鳥肌が立った
???
???
???
???
???
……違う!
私がほしいのは夫の……、あの人との間に生まれる子どもだけ……
こんな化け物なんかじゃない……!
あとのことは覚えていない
気がつけば、自宅のドアの前に立っていた
無意識にお腹をさする
それから半年後
妊娠した──
医師から告げられたとき、私はもちろん夫も喜んだ
今までの苦労が実を結んだのだ
さらに1ヶ月後
ソファーに腰を下ろし、なんとなしにネット掲示板を見ていた
そこにはさまざまな都市伝説や噂が投稿されている
そのとき、ある投稿が目に留まった
友達の友達から聞いた話
数年前、当時高2の女の子が好きな男の子に片思いをしてたんだけれど なかなか告白する勇気が出なくて途方に暮れてたんだって
あるとき夢の中で道化師が現れて──
???
女の子が思わず○○くんと両思いになりたいって言ったら
???
???
それから3日後 彼女は片思いの彼から告白されて、晴れてカレカノになった
だけど、翌日の放課後 歩道に突っ込んできた車に撥ねられふたりは帰らぬ人に…………
もし夢の中で道化師が現れたら、決して反応しちゃいけないんだって その道化師は本人の望まない形で願いを叶えようとするから
あと、廃遊園地へ指定されても行かない方がいいらしいよ よくないものを──
憑かせようとするみたいだから
持っていたスマホを床に落とす
わずかに膨らんだ自分のお腹を触れる
自分にそう言い聞かせる
それでも疑念が拭えない
あれだけ子どもを望んでいたのに……
お腹の中の子どもは本当に…………
人ナノ……?