10年前
茜
おはよー
友人
おはよ
友人
めっちゃ休んでたね
茜
そうなの。熱が下がらなくてさー
茜
あとでノート写させて!
友人
いいよ
友人
それはいいんだけど…
茜
どうしたの?
友人
あれ…
茜
あれ?
茜
(あれって、直人と…美春?)
直人
それでさ
美春
ええー?ホントにぃ?
美春
直人くんっておもしろい
直人
いや、だからおもしろいとかじゃなくって
茜
何あれ…
友人
茜が休んでる間中ずっとあんな感じだったの
茜
え?
友人
ほんっとあり得ないよね
友人
他にも色々あって
茜
…そう、なんだ
友人
ビシッと言った方がいいよ!
友人
普通、友達の彼氏にあんな態度取らないって
茜
そうだよね…
茜
でも、さすがに私がいたらあんなことしないだろうし
友人
茜優しすぎ…
友人
私なら友達やめるわ
茜
あはは、怖い怖い
茜
(大丈夫…だよね)
茜
美春は人の彼氏を取るような子じゃないし
茜
それにもしも美春が直人を好きだったとしても
茜
直人は私と付き合ってるんだし
友人
ま、そうだよね
友人
直人くんが相手にするわけないか
茜
そうだよ
茜
でも、心配してくれてありがとね
茜
(大丈夫…絶対に)
茜
直人、美春。おはよう
直人
お、茜。おはよ
美春
…おはよ
茜
なんの話?楽しそうじゃん
直人
えっと
美春
なんでもないよ
美春
それよりもう大丈夫なの?
美春
3日も休むなんて珍しいよね
茜
(…なんか無理やり話を変えた?)
茜
(直人とは結局なんの話をしてたの…?)
直人
ホントだよ。3日も茜に会えなくて寂しかったんですけど
直人
だから今日も休んだらお見舞い行こうかって話してただけだよ
茜
へえ…。そうなんだ
美春
あ、誤解しないでね?
美春
ほら、茜が好きなあのケーキ屋さん
美春
あれを持って行ったら茜が喜ぶんじゃないかなって
美春
直人君に教えてあげようと思っただけだから
茜
ふーん
茜
(でもそう言いながら…)
美春
ねえ直人くん、昨日言ってたあれさ
直人
ん?ああ、映画のやつ?
茜
(私の休んでいた間の話ばっかり)
茜
(まるでわざと私のわからない話をしてるみたい)
キーンコーンカーンコーン
直人
うわ、もう予鈴だ
直人
はー、授業始まるの早すぎ
直人
1時間目なんだっけ?
茜
数学じゃない?
直人
げっ、最悪
直人
そういえば俺、今日の課題当たるんだった
直人
茜…!
茜
え、私昨日休んでたから課題なんてしてないよ
直人
だよなー!どうするか…
美春
私やってあるから見せてあげるよ
直人
やーでも
美春
遠慮しなくていいって
美春
私と直人くんの仲じゃん
美春は直人の腕に絡みつくように身体を寄せた。
茜
(やだ…っ)
直人
そういうのやめて
直人
それに課題なら別の奴に見せてもらうから
直人
茜、行こう
美春
あっ
茜
うん…
茜
(美春、こっちを睨んでる…)
茜
(あんな顔…初めて見た)
茜
(ごめん…)
その後も、美春は私のいないところで度々直人に話しかけるようになった。
そっけなくされても何度も何度も。
茜
(もう我慢できない!)
茜
(美春があんな子だったなんて…)
茜
(高校に入って同じクラスになってからずっと仲がよくて)
茜
(一番の友達だって思ってたのに)
茜
美春!
美春
茜?
茜
ねえ、いい加減直人にベタベタするのやめてよ
茜
直人だって迷惑がってるじゃん
美春
…………
茜
直人のこと、好きなの?
美春
美春
そんなことないよ
美春
やだなー、茜の勘違いだよ
美春
それにそんなに直人くんにベタベタしてる?
美春
自分の彼氏だからってちょっと気にしすぎじゃない?
茜
なっ
茜
あんな態度取っておいてそんなこと言う!?
美春
こわーい。勝手に勘違いして怒鳴らないでよ
茜
…ほんっとむかつく
茜
もういい
茜
とにかく直人には近づかないで
茜
直人は私の彼氏なんだから
茜
あと私にも、もう話しかけないで
茜
あんたなんか、もう友達でもなんでもないから
私はそれだけ言うと美春に背を向けた。
でも。
美春
あーかね
茜
…なによ!
ゾッとするような笑みを浮かべて美春は私を見つめていた。
美春
あーあ、茜なんてずっとお休みならよかったのになぁ
茜
え…?
美春
なんでもなぁい
美春
またね
直人
進路調査、書けた?
茜
まだー。大学なんてわかんないよ
茜
直人はもう出したんだよね?
直人
まあね
茜
なんて書いたの?
直人
茜と結婚するって書いた
茜
嘘!?
直人
うっそー
茜
もう!
茜
一瞬ドキッてしちゃったじゃん!
直人
あはは、ごめん
直人
でもホントにいつかそうなったらいいなって思ってるよ
茜
直人…
直人
高校卒業してさ大学生になったら一緒に住もうよ
直人
それで卒業して就職したら結婚しよ
茜
えー直人ちゃんと家事とか手伝ってくれる?
直人
当たり前だろ。俺の料理の腕舐めんなよ
直人
卵焼きが炭になるからな
茜
ダメじゃん笑
直人
ダメか笑
私たちは顔を見合わせて笑い合う。
茜
でもいいなーそれ
茜
直人と一緒なら毎日が楽しそう
直人
だろ?
直人
だからさ、ずっと一緒にいようよ
直人
じいちゃんとばあちゃんになっても
直人
茜と一緒にいたい
茜
うん…
茜
私も直人と一緒にいたい
直人
よし、そのためにも
直人
さっさとこれ出して帰ろうぜ
茜
だね
茜
とりあえず直人と同じところ書いとこうかな
直人
てきとーだなー
茜
3年になったら真剣に考えるよ
直人
まあそうだよな
直人
先のことなんてまだ全然わかんないもんな
茜
そうそう
茜
よし、これでオッケー
茜
ごめんね、待たせちゃって
茜
職員室に出して帰ろ!
直人
おう
直人
あれ?
茜
どうしたの?
直人
やべっ!俺、教室にスマホ忘れてきたかも
直人
ごめん、取ってくるからちょっと待ってて
茜
わかった
茜
じゃあ、そこのコンビニにいるよ
直人
ごめんなー
直人
あとでアイスでも奢るから!
茜
いいよ、気にしなくて
茜
(直人、申し訳なさそうにしてたなー)
茜
(でも元はと言えば私の居残りに付き合ってくれたからだし)
茜
(そんなに気にしなくていいのに)
茜
あ、青に変わったや
茜
何か新発売のお菓子出てるかなー
横断歩道を渡りきったところで私は後ろから声をかけられた。
美春
茜
茜
え?
茜
…美春
振り返ると横断歩道の向こう岸に美春の姿があった。
茜
(なんで美春が…)
茜
(とっくに帰ったはずなのに)
茜
なに?何か用?
美春
用って言うか…
美春
ちょっと話がしたいなって
茜
(話すことなんて…)
茜
(ううん、でも今話さなかったらもう元には戻れないかもしれない)
茜
…そう、だね。話、しよっか
茜
あ、今からそこのコンビニに行くんだけど美春も一緒に
茜
美春?
美春
ごめ…おなかが、痛くて…
茜
え、ちょっと大丈夫?
茜
(うずくまるってよっぽどだ…)
茜
美春!
茜
ちょっと待って、すぐそっちに
キキーッ
茜
え?
茜
(まぶし…)
ドンッ
茜
っ…あっ…
茜
み…は…
美春
…………
遠くで、サイレンの音が聞こえた気がした。







