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お節介アゲハと弱虫ヒナタ〜アルメリア〜

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お節介アゲハと弱虫ヒナタ〜アルメリア〜

第19話 - 本当の気持ち

150

2023年04月19日

#ドラマ

#青春恋愛

#高校生

#一次創作

×××

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お節介アゲハと弱虫ヒナタ〜アルメリア〜
#19 本当の気持ち / ×××

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浅葱彩芽

あーもうどうしよ！
消しちゃったぁ

浅葱彩芽（あさぎあやめ）はパソコンの前で頭を抱えていた

浅葱彩芽

はぁ〜・・・

眞琴杏樹

どうしたの？彩芽ちゃん

眞琴杏樹　22歳

高校卒業後、鮎屋に就職した杏樹

レストランでの働きが買われ今は事務所で管理職見習いとして日々職務に追われている

浅葱彩芽

あっ、杏樹先輩！

浅葱彩芽

助けてくださぁ〜い

眞琴杏樹

また何か
やらかしちゃった？

浅葱彩芽

なんか変なトコ押したら
データ消えちゃって

浅葱彩芽

あー、せっかく
もう少しで

浅葱彩芽

打ち込み終わる
トコだったのに

浅葱彩芽

はぁ〜・・・

浅葱彩芽

今日残業かなぁ・・・

眞琴杏樹

ホラ！ホラ！愚痴らない！

眞琴杏樹

ちょっと見せてみて

眞琴杏樹

確認してみるから

浅葱彩芽

お願いします

後輩が操作しているパソコンを覗き込む杏樹

眞琴杏樹

えーっと、どれどれ

浅葱彩芽

どうですか？

眞琴杏樹

あっ、なんだなぁ

眞琴杏樹

ゴミ箱に
行ってるだけじゃん

浅葱彩芽

あら？そうでした？

眞琴杏樹

相変わらず
ドジなんだから

浅葱彩芽

杏樹先輩程
じゃないですけどね

眞琴杏樹

なんか言った？

浅葱彩芽

いえ！何も
言ってません！

眞琴杏樹

まったく・・・

葛城絵里香

眞琴さん！

葛城絵里香

今日のレジ上げ
終わったんで

葛城絵里香

確認お願いします

葛城絵里香　23歳

あの騒動の直後、杏樹の勧めで鮎屋のレストランでバイトとして働き始めた絵里香

どんな仕事も全力でやる姿勢は仲間内でも評判が高い

今は正社員としてホールスタッフから新人育成まで幅広い業務をこなしている

眞琴杏樹

なんか絵里香ちゃんに
眞琴さん！って言われるの

眞琴杏樹

やっばまだ
慣れないな・・・

葛城絵里香

もう！いい加減に
なれてよね！

葛城絵里香

一応、形式上杏樹は
私の上司なんだから！

眞琴杏樹

そりゃそうだけど

浅葱彩芽

杏樹先輩って
絵里香先輩の前だと

浅葱彩芽

めちゃ可愛く
なりますよね♫

眞琴杏樹

私の事はいいから
仕事！仕事！

浅葱彩芽

はぁーい♫

葛城絵里香

なんか大変そうな
後輩任されたね

眞琴杏樹

まぁ、一緒に居て
楽しくはあるけどね

葛城絵里香

てか愛莉の話聞いた？

眞琴杏樹

あ！聞いた！聞いた！

眞琴杏樹

仕事しながら
YouTubeやってんだよね

葛城絵里香

そう！そう！

眞琴杏樹

ホント凄いよね！
尊敬しちゃう！！

虹山愛莉

ふぅ〜・・・

虹山愛莉

やっと今日と明日用の
動画編集が終わったぁ

虹山愛莉

はぁ〜疲れたぁ〜・・

虹山愛莉　22歳

高校卒業後に就職したアパレル企業での仕事をしながら憧れだったYouTubeへの動画投稿を始める

毎日投稿とはいかないものの仕事と動画投稿を両立しながら日々勤しんでいる

そんな努力が身をむすび現在、チャンネル登録者が 10万名間近という所まで来ている

虹山愛莉

でも、やっと10万人か〜

虹山愛莉

10万人いったら美咲さんが
コラボしてくれる！！

虹山愛莉

マジで頑張らなきゃ！

葛城絵里香

愛莉も最初は美咲さんへの
憧れで始めたらしいけど

眞琴杏樹

憧れって気持ちだけで
ここまで頑張れるって
才能だよね！

葛城絵里香

それはマジで思う！

葛城絵里香

理想と現実の差で
打ちひしがれそうだけど

眞琴杏樹

それだけ本気
って事なんだよ！

葛城絵里香

近いうちにウチらが
労ってやんなきゃね！

眞琴杏樹

うん♫そうだね♫

葛城絵里香

てかあれから
鮎原さんか連絡とか
あったりする？

眞琴杏樹

全くない・・・

葛城絵里香

そっか・・・

眞琴杏樹

でも社長さんの話だと

眞琴杏樹

毎月決まった金額が
口座に入金されてるんだって

葛城絵里香

それってやっぱ
あのお金だよね

眞琴杏樹

うん・・多分ね

眞琴杏樹

鮎原さんもバカなんだから

眞琴杏樹

全部自分で
背負い込んじゃうんだもん

葛城絵里香

社長さんにも
連絡ないんだよね？

眞琴杏樹

そうみたい・・・

葛城絵里香

早く会いたいよね
杏樹は特に

眞琴杏樹

当たり前じゃん！

眞琴杏樹

一発殴ってやんなきゃ！

葛城絵里香

ふふふ、そうだったね

眞琴杏樹

まったくもう！

杏樹と絵里香が会話していると事務所に拓郎が入ってくる

鮎原拓郎

眞琴さん、居るかな？

眞琴杏樹

あっ、社長

眞琴杏樹

お疲れ様です

葛城絵里香

お疲れ様です

浅葱彩芽

お疲れ様です

鮎原拓郎

ああ、葛城さんと
浅葱さんも居たか

鮎原拓郎

お疲れ様！

眞琴杏樹

どうかされたんですか？

鮎原拓郎

眞琴さんに話しておきたい
事があるんだ

鮎原拓郎

業務が終わったら
社長室に顔を出して欲しい

眞琴杏樹

は、はい・・・

眞琴杏樹

わかりました・・・

鮎原拓郎

じゃあ頼んだ！

葛城絵里香

どうかしたのかな？

葛城絵里香

杏樹に話して
おきたい事って

眞琴杏樹

さぁ、なんだろ・・・

浅葱彩芽

何かやらかし
ちゃったんですか？

眞琴杏樹

彩芽ちゃん
じゃあるまいし

浅葱彩芽

ひっどっ！！

浅葱彩芽

杏樹先輩なんか嫌い

彩芽は頬を膨らませる

眞琴杏樹

まぁ、とりあえず
絵里香ちゃんの
レジ上げ確認終わったら

眞琴杏樹

社長室行ってくるね

葛城絵里香

分かった！

杏樹が出ていった社内で後輩社員が絵里香に疑問を投げかける

浅葱彩芽

絵里香先輩！
ちょっといいですか？

葛城絵里香

なに？

浅葱彩芽

さっき2人が言ってた
鮎原さんって誰ですか？

葛城絵里香

あっ、そっか
杏樹から聞いてないんだ

葛城絵里香

まぁ、なんて
言ったらいいかな

葛城絵里香

杏樹がずっと片想い
してる男性？かな

浅葱彩芽

えー！杏樹先輩に
そんな人居たんですか！？

浅葱彩芽

初耳！！

葛城絵里香

けっこう良い感じ
だったんだけどね

浅葱彩芽

けど？

浅葱彩芽

何かあったんですか？

葛城絵里香

ある日急に
居なくなっちゃたのよ

浅葱彩芽

まじ・・・

葛城絵里香

番号も変わっちゃったから
連絡つかないみたい

浅葱彩芽

杏樹先輩・・・

葛城絵里香

私の前とか職場では
元気にしてるけど

葛城絵里香

やっぱ辛いと思うよ

浅葱彩芽

杏樹先輩・・・
そんな素振り
全くなかった

葛城絵里香

人に言わずにひとりで
抱え込むタイプだからね

浅葱彩芽

私！先輩に
頼りっきりじゃなくて

浅葱彩芽

自分で対処できるように
頑張りますっ！

葛城絵里香

ふふふ

眞琴杏樹

失礼しまーす

鮎原拓郎

ああ、わざわざ
すまないね眞琴さん

眞琴杏樹

いえ・・そんな

鮎原拓郎

急な話になるが

鮎原拓郎

透の居場所がわかった

眞琴杏樹

え！？鮎原さんの？

鮎原拓郎

実は君らに悟られないように

鮎原拓郎

水面下で探っていてね

眞琴杏樹

そう・・だったんですか

鮎原拓郎

どうやら九州で
居酒屋の店長をしている
という事がわかったんだ

眞琴杏樹

鮎原さんが・・・

鮎原拓郎

私は近々会いに行こうかと
思っているんだが

鮎原拓郎

眞琴さんも
一緒にどうかな？

眞琴杏樹

え！？私も？

鮎原拓郎

君も透には会いたいだろ？

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原拓郎

まぁ、無理にとは言わない

鮎原拓郎

一応今月末に
行こうかと思ってるから

鮎原拓郎

それまでに答えを
出してくれればいい

眞琴杏樹

は・・はい・・・

鮎原拓郎

急な呼び出しで悪かったね

鮎原拓郎

話は以上だ

鮎原拓郎

戻ってくれて構わない

眞琴杏樹

は・・はい・・・

眞琴杏樹

し、失礼しました・・・

鮎原拓郎

・・・・・

社長室を出た杏樹は事務所へ通づる廊下を歩く

眞琴杏樹

（鮎原さんに
やっと会える・・・）

眞琴杏樹

（ずっと会いたかった）

眞琴杏樹

（そのはずなのに・・）

眞琴杏樹

（ずっとこの日を
待ってたはずなのに）

眞琴杏樹

（なんで私・・・）

眞琴杏樹

（こんな悲しい気持ちに
なってるの？）

眞琴杏樹

（もう・・・
どうしたらいいの？）

葛城絵里香

あっ！杏樹！
おかえり！

眞琴杏樹

あ、うん・・・

眞琴杏樹

た、ただいま・・・

浅葱彩芽

え？杏樹先輩？

浅葱彩芽

なんかめちゃ
ブルーじゃないですか？

葛城絵里香

確かに！何かあった？

眞琴杏樹

いや、特に・・・

浅葱彩芽

いや！明らかに
何かありましたよね？

眞琴杏樹

あっ、彩芽ちゃん

眞琴杏樹

もうあがっていいよ

浅葱彩芽

え？でもまだ
打ち込みが──

眞琴杏樹

私やっとくからいいよ

眞琴杏樹

もう定時過ぎてるでしょ？

眞琴杏樹

私が代わりに
やっとくから

浅葱彩芽

で、でも・・・

葛城絵里香

ホラ！ホラ！
せっかく先輩が
言ってくれてんだから

葛城絵里香

お言葉に甘えなさい

浅葱彩芽

な、なら・・・

浅葱彩芽

申し訳ありませんけど

浅葱彩芽

後、宜しくお願いします

眞琴杏樹

うん・・お疲れ様・・・

彩芽は腰を引くしながら事務所から出る

葛城絵里香

ねぇ、杏樹？

葛城絵里香

どうかし──

言葉を遮るように鮎原が絵里香に抱きつく

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

葛城絵里香

ちょ、杏樹？

葛城絵里香

どうかしたの？

眞琴杏樹

実は・・・・

眞琴杏樹

鮎原さんの居場所が
分かったらしいの

葛城絵里香

え？まじで？

眞琴杏樹

さっき社長室で聞いたの

眞琴杏樹

社長さん・・・

眞琴杏樹

実は裏でずっと
鮎原さんの行方を
探ってたんだって

葛城絵里香

社長からの呼び出しって
この事だったのね・・・

眞琴杏樹

いま九州に
居るんだって

葛城絵里香

よかったじゃん！

葛城絵里香

でも、なんで
泣いてんの？

葛城絵里香

泣くとこじゃなくない？

葛城絵里香

喜ぶとこでしょ？

眞琴杏樹

嬉しいよ・・・

眞琴杏樹

鮎原さんの
居場所が分かって

眞琴杏樹

社長さんも一緒に
会いに行かないか？
って言ってくれて

眞琴杏樹

嬉しいんだけど・・・

葛城絵里香

けど？

眞琴杏樹

私・・・

眞琴杏樹

会いに行っても
いいのかな？

葛城絵里香

何言ってんの？

葛城絵里香

いいに
決まってんじゃん！

葛城絵里香

躊躇ってんの？

眞琴杏樹

確かに私は鮎原
さんの事好きだし

眞琴杏樹

鮎原さんが居なく
なってからずっと

眞琴杏樹

鮎原さんの事を
忘れた事なんてない

葛城絵里香

なら、尚更──

眞琴杏樹

でもそう思ってる
のは私だけで

眞琴杏樹

もし、鮎原さんが
私の事なんて忘れてて

眞琴杏樹

彼女作って
幸せに暮らしてたら？

葛城絵里香

え？かの・・・

眞琴杏樹

結婚して、子供と
幸せに暮らしてたら？

眞琴杏樹

そんな中に私が行ったら

眞琴杏樹

邪魔になっちゃわない？

葛城絵里香

いや、考えすぎっしょ！

眞琴杏樹

考えすぎかもって
自分でも思うけど

眞琴杏樹

過去の事を
思い出すと・・・

葛城絵里香

過去の事って？

眞琴杏樹

絵里香ちゃんは
知ってるでしょ？

眞琴杏樹

私が過去に揚羽先輩や
奏星さんに何をしたか

葛城絵里香

あっ、それか・・・

眞琴杏樹

それを考えたら怖いの

眞琴杏樹

会うのが
どうしようもなく怖いの

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

当時の私は揚羽先輩を
凄く愛してた・・・

眞琴杏樹

けどその先輩には
奏星さんって
言う彼女が居た

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

私の入る隙
なんてなかった

眞琴杏樹

なのに私は
勝手に自分の中で

眞琴杏樹

奏星さんは勝手に
彼女気取ってる
だけだって・・

眞琴杏樹

自分の考えを正当化して

眞琴杏樹

奏星さんを悪者にして

眞琴杏樹

無理やり
関係を引き裂いて

眞琴杏樹

色んな人に
迷惑をかけた

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

今回も・・・

眞琴杏樹

また同じ事
しちゃいそうで・・・

眞琴杏樹

自分の考えを優先して
迷惑かけそうで・・

眞琴杏樹

怖いの・・・

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

考えれば考えるほど
恐ろしくなるの・・

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

それならいっその事

眞琴杏樹

もうこのまま
会わない方が──

葛城絵里香

それで後悔しないの？

眞琴杏樹

え？

葛城絵里香

そりゃ彼女が
いるかもしれないし

葛城絵里香

結婚してるかもしれない

葛城絵里香

けどだからって
会わなかったら

葛城絵里香

絶対に後から
後悔するよ？

葛城絵里香

あの時会っとけば
よかったって

眞琴杏樹

それは・・・

眞琴杏樹

そうかもしれないけど

葛城絵里香

いいじゃん！
失恋したって！

眞琴杏樹

え？

葛城絵里香

私が思うに

葛城絵里香

当時の杏樹が
暴走しちゃったのってさ

葛城絵里香

心の拠り所を
求めてたからじゃない？

眞琴杏樹

心の・・拠り所・・？

葛城絵里香

お母さんとの関係も
うまく行ってない

葛城絵里香

かと言って仲の良い
友達も居ない

葛城絵里香

そんな孤独
だったからこそ

葛城絵里香

揚羽くんに依存してた

葛城絵里香

違う？

眞琴杏樹

そう・・だね・・・

葛城絵里香

でもさ、今の杏樹は
昔とは真逆でしょ？

眞琴杏樹

真逆？

葛城絵里香

お母さんとも仲良しだし

葛城絵里香

仲の良い友達
だって居るじゃん

葛城絵里香

私と愛莉っていう友達が！

葛城絵里香

そうでしょ？

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

もし杏樹がまた
暴走しそうになったら

葛城絵里香

私が全力で
止めてあげるよ！

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

葛城絵里香

足がちぎれても

葛城絵里香

腕がちぎれても

葛城絵里香

私が絶対に杏樹を
止めてあげるから！

葛城絵里香

あの時・・杏樹が私に
してくれたみたいに♫

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

だからさ！杏樹！

葛城絵里香

安心して会いに
行って来なよ！

葛城絵里香

一発殴って
やるんでしょ？

眞琴杏樹

う゛ん゛

葛城絵里香

だから気にせずに
会って来なさいよ！

葛城絵里香

もう頭吹っ飛ぶくらい
殴ってやんなさい！

眞琴杏樹

うん！吹っ飛ばしてくる！

葛城絵里香

ふふふ

こうして杏樹は拓郎と共に月末に九州へ向かう

アルバイト

じゃあ店長！

アルバイト

お先に失礼します

アルバイト

失礼しまぁーす！

鮎原透

ああ！今日もお疲れ様！

鮎原透

気をつけて帰りな！

鮎原透　24歳

大手居酒屋チェーン店を経営する会社に就職し雇われ店長としては働く透

小さな店舗ながら父親ゆずりのマネジメント力で一時期は自店舗を全店での売り上げＮｏ.１にした事もある

拓郎から借りた示談金400万の返済のために必死に働き残り50万で完済という所まで来ている

自分以外、誰1人として居なくなった店内で椅子に座りタバコに火をつける

鮎原透

ふぅー・・・

鮎原透

後もう少しだ・・・

鮎原透

あと・・５０万・・

鮎原透

あと５０万で完済・・・

鮎原透

けど・・・

鮎原透

完済したら・・・

鮎原透

全て終わったら・・・

鮎原透

俺はどうしたらいい？

鮎原透

親父から借りた金を
返すために

鮎原透

今まで必死こいて
やってきたけど・・

鮎原透

いざ完済目前になると

鮎原透

この先のビジョンが
全く浮かばねー・・・

鮎原透

女だって居ねーし・・・

鮎原透

杏樹ちゃん・・・

鮎原透

今ごろ・・
どうしてんだろうな

鮎原透

葛城とは上手く
行ってんのかな？

鮎原透

まぁ、近くに
親父だって居る事だし

鮎原透

大丈夫だろ・・・

鮎原透

杏樹ちゃんだって
彼氏の1人や2人作って

鮎原透

楽しくやってんだろ

ガラガラ

透がタバコを吸っていると店の引き戸が開く音がする

鮎原透

（はぁ〜・・・）

鮎原透

（たまに居るんだよなぁ）

鮎原透

（閉店後に来る
酔っ払いのサラリーマン）

鮎原透

（あいつらの対応
めんどくせーんだよな）

鮎原透

（まぁ、とりあえず
軽くあしらっとくか）

透はうんざりした様子でタバコを灰皿に押しつぶし入り口に向かって歩く

鮎原透

申し訳ありません

鮎原透

本日の営業は──

鮎原拓郎

一杯くらい良いだろ？

鮎原拓郎

父親が遠路はるばる
来てやったんだ

鮎原透

と、父さん！？

鮎原透

な、なんでここが！

鮎原拓郎

お前な！

鮎原拓郎

仕事を頑張りすぎだ

鮎原透

え？

鮎原拓郎

大手居酒屋チェーン店の
小さな店舗が

鮎原拓郎

若い店長の天才的手腕で
売り上げNo.1に！

鮎原拓郎

なんて話が私の耳に
入らないとでも？

鮎原透

あ・・・

鮎原拓郎

まったく・・バカな奴だ

鮎原透

す、すいません・・・

鮎原拓郎

まぁ、とりあえず
瓶ビール一本くれ！

鮎原拓郎

それくらい構わんだろ？

鮎原透

は、はぁ・・・

グラスのビールを一気に飲む拓郎

鮎原拓郎

もうすぐで完済だな？

鮎原透

え？

鮎原拓郎

私が貸した示談金の話だ

鮎原透

え、ええ・・まぁ・・

鮎原透

そ、そうですね・・・

鮎原拓郎

お前・・完済した後は
どうするつもりなんだ？

鮎原透

ま、まだ考えてません

鮎原拓郎

だろうな・・・

鮎原透

あ、あの・・・

鮎原透

杏樹ちゃんや
葛城は元気ですか？

鮎原拓郎

気になるか？

鮎原透

ま、まぁ・・・

鮎原拓郎

2人とも事故で死んだよ

鮎原透

え！？死んだ？

予想外の言葉に目を見開いて驚く透

鮎原拓郎

なんてな。冗談だ

鮎原拓郎

元気に働いてくれてるよ

拓郎は笑いながら透の方をポンポンと叩く

鮎原透

は・・はは・・

鮎原透

そ、そうですか・・・

鮎原透

（そんな冗談
笑えねーんだよ！）

鮎原透

（殺すぞ！クソオヤジ！）

鮎原拓郎

眞琴さんは今、事務所で
管理者見習いとして
やってもらってる

鮎原透

杏樹ちゃんが？

鮎原拓郎

卒業後に正式に
正社員として
雇わせてもらってな

鮎原拓郎

見違えるほど
成長しているよ！
眞琴さんは！

鮎原透

そうですか・・・

鮎原拓郎

葛城さんにも今は
レストランで
働いてもらってる

鮎原透

葛城が？レストランで？

鮎原拓郎

眞琴さんの紹介でな！

鮎原拓郎

まぁ、色々あったからな
私の目の届くところに
居てくれた方が

鮎原拓郎

何かと都合がいいと
採用したんだが

鮎原拓郎

なんでも全力で
やってくれているから
助かってるよ

鮎原透

そうなんですね・・

鮎原透

（よかった・・・）

鮎原透

（みんな元気にやってんだな）

透の顔から笑顔が滲み出る

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原拓郎

透・・・

鮎原拓郎

戻ってくるつもりは
ないのか？

鮎原透

え？

鮎原拓郎

あれからもう３年だ・・・

鮎原拓郎

もう十分一人で
耐え忍んだだろ？

鮎原透

・・・・・

鮎原拓郎

そろそろ帰ってこい

鮎原透

合わせる顔がありませんよ

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原透

もう・・いいんですよ

鮎原透

完済したら・・・

鮎原透

そうだな・・・

鮎原透

バックパッカーでもやりますよ

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原透

ですから・・・

鮎原透

代わりに杏樹ちゃんに
謝っといてください

鮎原透

もう・・・

鮎原透

俺の事は忘れてくれって

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原透

いや、もう俺の事なんて
とうの昔に忘れてる
かもしれませんけど・・

鮎原拓郎

私は伝えんぞ

鮎原透

・・・・・

鮎原拓郎

伝えるなら
自分の口で伝えるんだ

鮎原拓郎

なぁ？眞琴さん！

鮎原透

え！？

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

あん・・じゅ・・ちゃん

そこには杏樹の姿があった

鮎原透

どういう事ですか？

鮎原拓郎

私は一人で来た！
とは一言も言っていない

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

・・・・・

鮎原拓郎

そもそも私が
眞琴さんに黙って

鮎原拓郎

お前に会いにくる
訳がないだろ？

鮎原透

そ、それは・・・

鮎原拓郎

まぁ、私の役目は
ここまでだ・・・

鮎原拓郎

後は若いもの同士で
適当にやってくれ！

鮎原拓郎

私は宿に戻る

鮎原透

あ、いや、ちょっと！

拓郎は透の問いかけを無視し店から姿を消す

鮎原透

（ま、まじかよ・・・）

鮎原透

（こんな状況で・・・）

鮎原透

（どうしろってんだよ・・）

鮎原透

（ほぼ丸投げじゃねーか！！）

杏樹と透の間に気まずさが生まれる

鮎原透

ま、まぁ・・・

鮎原透

と、とりあえず
座ってくれ・・・

鮎原透

飲み物持ってくるからさ

眞琴杏樹

は、はい・・・

杏樹は言われるがまま椅子に座る

鮎原透

・・・・・

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

（気まずい・・・）

鮎原透

（なんて話したら
いいんだよ・・・）

眞琴杏樹

（どうしよ・・・）

眞琴杏樹

（もう・・社長さん）

眞琴杏樹

（いきなり鮎原さんと
二人っきりなんて
聞いてないよ・・・）

眞琴杏樹

（何話せばいいの？）

眞琴杏樹

（助けて・・・）

鮎原透

あ、杏樹ちゃん？

眞琴杏樹

は、はいっ！！

杏樹の体がビクリと反応する

鮎原透

いや驚きすぎだろ

眞琴杏樹

あ、す、すいません

眞琴杏樹

ど、どうか
なさいました？

鮎原透

仰々しい言葉遣いだな！

眞琴杏樹

あ、すいません

眞琴杏樹

で、どうかしました？

鮎原透

いや、晩飯ってもう
食ったのかな？ってさ

眞琴杏樹

あ、いや、まだです

鮎原透

一応まかない用の
食材なら使えるからさ

鮎原透

どうする？食べる？

眞琴杏樹

あ、そうですね・・

眞琴杏樹

ならお願いしても
いいですか？

鮎原透

わかった！

鮎原透

ならちょっと
待っててくれ

鮎原透

ちゃっちゃと
作ってくるから

眞琴杏樹

あ、は、はい・・・

眞琴杏樹

ありがとうございます

そう言うと透は腕まくりをしながら厨房へと消えていった

眞琴杏樹

・・・・・

眞琴杏樹

（あああ、もう
どうしよ・・・）

眞琴杏樹

（久々に会えたのに）

眞琴杏樹

（やっと会えたのに）

眞琴杏樹

（私・・全然
喋れてないじゃん）

眞琴杏樹

（何を話せばいいのか
全然分かんないよ・・）

眞琴杏樹

（こんな状態で）

眞琴杏樹

（彼女出来ましたか？
なんて聞けない・・）

眞琴杏樹

（聞きたいけど・・）

眞琴杏樹

（聞くのが怖い・・・）

眞琴杏樹

（絵里香ちゃんは
ああ言ってくれたけど）

眞琴杏樹

（私が私じゃなく
なりそうで怖い）

鮎原透

杏樹ちゃん？

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

杏樹ちゃん？

鮎原透

おーい？杏樹ちゃん？

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

おーい！

眞琴杏樹

あっ！は、はい！

鮎原透

どうかした？

鮎原透

ボーっとしてたけど

眞琴杏樹

あ、いや・・・

眞琴杏樹

な、なんでもないです

鮎原透

一応、飯出来たけど

眞琴杏樹

あ、ありがとうございます

鮎原透

大丈夫？食べれそう？

鮎原透

顔色悪いみたいだけど

眞琴杏樹

だ、大丈夫です・・・

鮎原透

まぁ、大丈夫ならいいけど

鮎原透

まぁ、とりあえず食いな！

透が作ったまかないはオムライスだった

眞琴杏樹

わぁ！おいしそう

鮎原透

俺のまかない
結構評判良いんだよ

眞琴杏樹

いただきます

鮎原透

どう？

眞琴杏樹

ふわふわでトロトロで

眞琴杏樹

すっごい美味しいです

鮎原透

だろ？

鮎原透

おかわり欲しいなら
言ってくれよ

鮎原透

まだ材料あるからさ！

眞琴杏樹

ありがとうございます

眞琴杏樹

彼女さんにも──

鮎原透

ん？どうかした？

眞琴杏樹

彼女さんにも
作ってあげたり
するんですか？

鮎原透

彼女？

眞琴杏樹

・・・・・

杏樹は透に不安な眼差しを向ける

鮎原透

（杏樹ちゃん・・・）

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

ま、まぁ、そうだな

眞琴杏樹

（やっぱり・・・）

眞琴杏樹

（彼女居るんだ・・・）

眞琴杏樹

（そ、そうだよね・・・）

眞琴杏樹

（居ない訳ないか・・・）

鮎原透

・・・・・

眞琴杏樹

こんな美味しい
オムライスが食べれるなんて

眞琴杏樹

彼女さん・・幸せ者ですね

鮎原透

あ、ああ・・・

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

（これでいいんだよ）

鮎原透

（杏樹ちゃんは
俺なんかと一緒に
居ない方がいいんだ）

しばらくの間黙々とオムライスを食べ進める杏樹だったが

杏樹の目から涙が溢れだす

鮎原透

杏樹ちゃん・・・

眞琴杏樹

あれ？なんで？

眞琴杏樹

涙が・・・

鮎原透

・・・・・

杏樹は何度も服の裾で涙を拭うが

杏樹の想いとは裏腹に涙は絶え間なく流れ落ちる

眞琴杏樹

（ダメ・・止んでよ）

眞琴杏樹

（止まってよ・・・）

眞琴杏樹

（泣きたくないのに・・・）

眞琴杏樹

（鮎原さんに
見られたくないのに）

鮎原透

・・・・・

鮎原透

（俺は杏樹ちゃんや葛城を）

鮎原透

（救った気持ちになってた）

鮎原透

（アイツらに金渡して）

鮎原透

（全部自分で背負い込んで）

鮎原透

（みんなの前から姿消して）

鮎原透

（それが一番だって
自分自身を誤魔化して）

鮎原透

（自分の考えを正当化して）

鮎原透

（優越感さえおぼえてた）

鮎原透

（これでみんな救われたんだって）

鮎原透

（けど実際はどうだ？）

鮎原透

（俺は自分が優越感に
浸りたいがために）

鮎原透

（みんなに罪悪感を与えて）

鮎原透

（辛い思いを
させただけじゃねーか？）

鮎原透

（しかも今だって）

鮎原透

（杏樹ちゃんは俺と一緒に
居ない方がいいからって）

鮎原透

（杏樹ちゃんの気持ちを無視して）

鮎原透

（彼女の存在チラつかせて）

鮎原透

（杏樹ちゃん泣かせて）

鮎原透

（俺は好きな子に
こんな顔させて）

鮎原透

（クソじゃねーかよ！）

鮎原透

（ダメだ・・・）

鮎原透

（こんなの間違ってる）

鮎原透

（今更になって気がついた・・）

鮎原透

（俺は──）

鮎原透

（杏樹ちゃんの事が──）

鮎原透

杏樹ちゃん！

透は杏樹を力強く抱きしめる

眞琴杏樹

鮎原さん・・・

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

鮎原透

ごめん・・杏樹ちゃん

鮎原透

俺・・・

眞琴杏樹

ダメ・・ですよ

眞琴杏樹

鮎原さんには彼女さん──

鮎原透

嘘なんだ！！

眞琴杏樹

え？嘘？

鮎原透

彼女なんて居ねーんだ

眞琴杏樹

え・・・・

鮎原透

そもそも、親父から借りた
金を返すために

鮎原透

この３年間・・・
働き詰めだったからさ

鮎原透

彼女作る暇・・無くてさ

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

けど杏樹ちゃんは
俺と一緒に

鮎原透

居ない方が幸せだって

鮎原透

杏樹ちゃんの気持ち無視して

鮎原透

彼女居るなんて
嘘ついちまったんだ

眞琴杏樹

鮎原さん・・・

鮎原透

でもやっと気づいたんだ

鮎原透

俺の本当の気持ちに

眞琴杏樹

本当の・・気持ち？

鮎原透

杏樹ちゃんさ・・・

鮎原透

伊豆の海に旅行に
行った事覚えてる？

眞琴杏樹

は、はい・・・

眞琴杏樹

覚えてます・・・

鮎原透

その時に、杏樹ちゃん

鮎原透

俺に好きだって
そう、言ってくれたろ？

眞琴杏樹

は、はい・・・

鮎原透

その答え──

鮎原透

今ここで言うのって
卑怯かな？

眞琴杏樹

え・・・

鮎原透

俺は──

眞琴杏樹

（鮎原さん・・・）

鮎原透

杏樹ちゃんの事が──

眞琴杏樹

ゴクリ──

鮎原透

・・・・・

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

・・・・・

眞琴杏樹

・・・・・

眞琴杏樹

ん？どうかしました？

鮎原透

てか、俺・・・

鮎原透

ものすごく重要な事
聞きそびれてる気がする

眞琴杏樹

重要な事？

鮎原透

杏樹ちゃんってさ──

鮎原透

今、付き合ってる
彼氏っているの？

眞琴杏樹

・・・・・

眞琴杏樹

は？

杏樹は呆気に取られている

鮎原透

あ、いや、その・・あれだよ

鮎原透

俺は今から杏樹ちゃんに

鮎原透

好きだ！

鮎原透

付き合ってくれ！

鮎原透

って言うつもりなんだけど

眞琴杏樹

なんですか！
その新しい告白！

鮎原透

いや、だからその

鮎原透

杏樹ちゃんに、今
彼氏がいるのかどうか

鮎原透

聞いてなかったな・・って

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

もし彼氏が居るんならさ

鮎原透

俺は・・邪魔だよな・・って

眞琴杏樹

ぷっ

眞琴杏樹

あはははは

杏樹は腹を抱え涙を流しながら笑う

鮎原透

いや！笑いすぎだろ！

鮎原透

重要な事だろーが！

眞琴杏樹

だって、鮎原さん

眞琴杏樹

可愛い事言うんだもん

鮎原透

か、可愛いってな！！

鮎原透

バカにすんじゃねーよ！

透は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になる

眞琴杏樹

私が鮎原さん以外に
彼氏なんて作る訳
ないじゃないですか

鮎原透

杏樹ちゃん・・・

眞琴杏樹

鮎原さん・・・

杏樹は透に抱きつく

眞琴杏樹

私は彼氏なんて居ませんから

眞琴杏樹

気にせずに告白してください

鮎原透

そ、そう？

鮎原透

なら──

鮎原透

杏樹ちゃん・・・

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原透

随分待たせちまったけどさ

鮎原透

俺と付き合って
くれるかな？

眞琴杏樹

はい♫

眞琴杏樹

よろこんで♫

杏樹と透は、誰も居ない閉店後の間接照明に照らされた居酒屋の店内で

口づけを交わした

それからしばらく二人はこれまでの事を話していた

空白の３年間を穴埋めするように

丁寧に色付けしていくように

失った時間を取り戻すように

鮎原透

あはは！

鮎原透

面白いな！その後輩！

眞琴杏樹

笑い事じゃないんですよ！

眞琴杏樹

毎回凡ミスばっかりで
フォロー大変なんですから！

鮎原透

まぁ、楽しそうで
なによりだよ

眞琴杏樹

でも鮎原さん
凄いですよね！

鮎原透

え？

眞琴杏樹

このお店の事ですよ！

眞琴杏樹

鮎原さんから聞きましたよ

眞琴杏樹

売り上げNo.１に
した事があるって！

鮎原透

まぁ、あれに関しては

鮎原透

運も味方した上での
結果だからなぁ

眞琴杏樹

いや！いや！

眞琴杏樹

ほら！運も実力のうち！
って言うじゃないですか！

鮎原透

まぁ、確かにな

眞琴杏樹

腐っても社長さんの
息子って事ですね

鮎原透

誰が腐ってんだ！誰が！

眞琴杏樹

そういえば知ってますか？

鮎原透

ん？なにが？

眞琴杏樹

和久井さんと美咲さん

眞琴杏樹

去年、結婚しましたよ

鮎原透

え？まじで？

眞琴杏樹

あ、やっぱり
知らなかったんだ

鮎原透

初耳だよ・・・

眞琴杏樹

ネットニュースにも
載ってましたよ

鮎原透

ネットニュース？

鮎原透

ああ！そっか！
美咲ちゃんは
YouTuberだもんな！

眞琴杏樹

一応社長さんのとこに

眞琴杏樹

鮎原さんの分の
招待状が届いてた
らしいですけど

鮎原透

まぁ、俺は
姿消してたからな

鮎原透

杏樹ちゃんは
結婚式には行ったのか？

眞琴杏樹

はい♫

眞琴杏樹

私だけじゃなくて
絵里香ちゃんや愛莉ちゃんも
一緒に行きましたよ

鮎原透

そうだったんだな

眞琴杏樹

美咲さんの
ウエディングドレス姿

眞琴杏樹

めちゃ綺麗でしたよ

鮎原透

なら今度祝儀を
持って行かねーとな

鮎原透

てか、杏樹ちゃんは
今日はどうするんだ？

眞琴杏樹

え？今日？

鮎原透

親父はホテルに
泊まるみたいだけど

鮎原透

杏樹ちゃんもホテル？

眞琴杏樹

ま、まぁ・・・

眞琴杏樹

出来たら・・・

眞琴杏樹

鮎原さんの家に
泊まりたいです

鮎原透

俺の？

眞琴杏樹

ダメ・・ですか？

鮎原透

いや、駄目じゃねーよ

鮎原透

杏樹ちゃんはその・・

鮎原透

彼女な訳だし・・

眞琴杏樹

私が・・鮎原さんの・・彼女

杏樹の顔に笑みが溢れる

鮎原透

じゃあ帰るか

眞琴杏樹

はいっ♫

杏樹と透は手を繋ぎながら透の住むアパートへ歩いていく