千夏
母
母
空
空
千夏
空
母
母
空
動揺が顔色に現れる。
母
千夏
千夏
千夏
空
母
僕は今、困っている。
なぜ…家に連れてきて しまったんだ。
空
母
空
無理矢理笑顔を つくってそのまま部屋を出る。
ちなつ
そら
そら
ちなつ
ちなつ
そら
ちなつ
そら
ちなつ
ちなつ
ちなつ
そら
彼は微笑んだ。
また、儚げな笑顔で。
ちなつ
立てかけてある スケッチブックらしきものに 顔を寄せる。
表紙に絵の具が点々とついている、 使い古された スケッチブックだった。
そら
そら
ちなつ
そらは慌てて スケッチブックを 取って隠そうとしたが 手から滑らせ落としてしまった。
そら
スケッチブックのページは ペラペラとめくれながら 落ちていった。
ちなつ
ちなつ
女の子だ。
ふわりと髪を束ねた 長髪の少女の絵が そこにはあった。
一瞬しか見えなかったけれど、 それはしっかりと私の目に 映った。
その子が 笑いかける絵。 その子がどこか 遠いところを眺めてる絵。 その子が 浴衣を着ている絵。
あとは…
そら
他のページ覗こうとした時 突然足元にあった スケッチブックが なくなった。
そら
ちなつ
ちなつ
ちなつ
そら
なんとなく、 そらの瞳が揺らいだ気がした。
ちなつ
そら
そらは部屋の隅を見つめた。
ちなつ
そら
母
母
そら
そう太くはないけど 力強い聲だ。 よく響いた。
そら
ちなつ
バタン!!
出てくるなよ と言っているかのように そらは強く扉を閉めた。
ちなつ
ちなつ
ちなつ
ちなつ
机には 一冊の手帳とペンが 置かれていた。
なにか変なオーラを 発している…。
「余計なことだけは しないでね。」
そらの言葉が フラッシュバックする。
ちなつ
欲に抗えないのは 自分の悪いところだ。 ダメ元で目の前の手帳に 手を伸ばしてみる。
ふわっ。
ちなつ
自分は手帳を持ち上げた。
ちなつ
しっかりと手帳に触れた。 なぜだかわからないけれど さわれたんだ。
ちなつ
自分の中で正義と欲が 論争を起こし、もちろん 正義は一瞬にして負けた。
ダメだと思えば思うほど 見てしまいたくなるのだ。
ちなつ
恐る恐る手帳を開く。
ちなつ
どのページも真っ黒だ。 漆黒という言葉がよく似合う。 これは…わざわざ そら が 塗りつぶしたのだろうか?
…いや、違う。
よく見たら何か書かれている。 光に反射した、書かれた跡が 見えた。
その手帳のページはもともと 真っ黒だったのだ。 そら は塗りつぶしてなんかいない。
じゃあそれはそれで、 どうしてわざわざ そんな見えづらい手帳を 買ったのだろう。
開発側だって、なんでこんなにも 真っ黒なページの手帳を 作ったのだろう。
ちなつ
目を細くして、 書かれているものがなにかを たしかめる。
目が慣れてきて だんだんと文字が 見えてくる見えてくる。
ちなつ
見ているだけで 目が疲れるほどの長文が そこには書かれていた。
ちなつ
書かれていることは こんな内容だった。
元気でやってますか。 もっと早く言ってほしかった。 突然すぎた。 こんなことしてもなにも起きない とは思うけれど 噂が本当かもしれない と思えば思うほど 書かずにはいられなかった。 返事をください。
ちなつ
引っ越してしまった友人 への手紙の下書きかと思ったが 手紙の下書きにしては 何かおかしい。
いくら そら でも 手紙ってこんな淡々と事が 書かれているものだったっけ。
まず「噂」とはなんだろう。 それが気にならずには いられなかった。
ちなつ
ちなつ
ちなつ
ちなつ
「噂」がなにか分かるかもしれない。 私は迷わずページをめくった。
いつもどこか遠い目をしていた。 顔色が悪い日があった。 でも大丈夫って言っていたから あまり心配していなかった。 僕は大馬鹿者だ。 もっと気にしておくべきだった。
ちなつ
ちなつ
だとしたら、これは 日記的なものになるのだろうか。
でも日記なのに誰かに 語りかけているような文章が 自分には引っかかった。
ちなつ
ちなつ
ちなつ
ちなつ
君はいつも僕の話を 笑顔で聞いてくれた。 君の優しい声が落ち着いた。 だから僕も君の支えになりたかった。 でもなれなかった。 ごめんなさい。
ちなつ
ちなつ
ちなつ
ちなつ
母
母
空
母
空
空
母
空
母
空
千夏…余計なことしてないかな。
ちなつ
ちなつ
約束した日まで、 正直全然もつと思ってた。 なんなら来年、再来年まで 普通に行けると思っていた。 花火見たかったな。 風鈴、さいごのさいごまで 使ってくれてて嬉しかった。 目を覚ましてよ。鈴。
ちなつ
ちなつ
ちなつ
ちなつ
視界の端に映っていた 隣のページから違和感を覚えた。
鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴
ちなつ
ちなつ
ノートにびっしり書かれた 「鈴」に流石に不気味さを感じた、 その時だった。
そら
コメント
1件
やっちまったなぁ☆