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その船は暗い沖を漂っていた

月もなく、雲で星もない夜

聞こえるのは エンジンと波の音だけだ

 

なぁ、ここどこだ

 

知るかよ

 

とにかく針路をとらないと……

 

せっかく嵐を避けて沖に出たのに

 

計器が狂っちまうなんてな

 

あぁそうだな、ついてない

 

おい! 町の灯だ!

 

港があるぞ!

 

本当か!?

 

やけに明かりが少ないが……

 

それでも港があるらしい

 

この際贅沢は言っていられないか

 

よし、まずはあそこを目指そう!

 

取舵25度!

 

とぉぉりかぁじ25!

港町

 

 

地に足がついたはいいが……

 

なんだか妙な町だな

 

なにがだ?

 

ひどく、その

 

……生臭ぇ

 

港はみんな似たようなもんだろう

 

それよか計器の修理を……

 

いや、それだけじゃねぇよ

 

夜と言っても、まだそんなに遅くない時間だ

 

なんでこんなに人が少ない?

 

夜釣りの影も見えねぇ

 

まるでゴーストタウンだ

 

バカいうな

 

明かりのついたゴーストタウンがあってたまるか

 

田舎の人間てのは、夜は慎ましやかなもんだ

 

だがせめて、町の名前くらいはわからねぇと……

 

おい、標識だ

 

キングスポート……アーカム?

 

知らねぇ地名だな

 

あぁ、あそこに人がいる!

 

そこの旦那、ちょっと聞きたいんだが

 

ここらに修理工は……

 

ヒッ!?

振り向いた男の顔は

大きな目がやけに離れ

鼻が極端に低く

そして

分厚い唇が耳下まで裂けた

とても異様な姿をしていた

 

なんだい、難破でもしたのか?

 

あ、いや……

まるで蛙、それか魚だ

戸惑いを飲み込み

とにかく修理工を探そうと

目を泳がせたときだった

 

どうした、よそもんか?

 

海から来たのか

 

なら……贈り物だな?

 

まるで深海から湧く泡のように

闇の中からぞるりと

男たちが姿を見せる

 

 

……おいおい、なんだこりゃあ

ただその面相が

どれも人とかけ離れていることに

全員が言葉を失った

 

なんか、囲まれてねぇか

 

やべぇって

 

なんとか、ここから逃げねぇと……

 

燃料も限界だってのに、どこに逃げるんだよ!

 

 

ほぉ

 

あんたら、逃げる足もねぇのか

 

背筋をなでるような声だった

男たちはみな 怖気立つような笑みを浮かべる

 

そりゃあお困りだろう

 

もう夜も遅い、神殿においで

 

そうだ、そこで朝を待てばいい

 

い、いや、俺たちは……

 

さぁ

 

さぁ

 

早く神殿へ

 

さぁ

 

男たちが腕をつかむ

その感触はやはり

魚の肌のようにぬめっていた

 

 

わ、ぁああああ!

 

離せ、頼む、離してくれ!

 

神様! 救いを! 神様!!

 

なに、心配することはねぇさ

 

あんたらは今から、おれらの神様に会うんだから

じっとりと笑うそれは 絶望をつきつける

 

商人や役人ですら 一度入れば帰れない場所

 

その町の名はインスマス

 

邪神の手で踊る港

短編ホラー詰め合わせ

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コメント

9

ユーザー
ユーザー

想像したら鳥肌たちました…😱

ユーザー

想像すると最悪ですよねー!😫

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