吉村
(一ノ瀬は…あれか?)
吉村
(写真では見たことあったが…こんなに美人とは)
吉村
あの…一ノ瀬さん?
里穂
あ…吉村さんかしら?
吉村
はい。直接では初めまして。吉村春人です
里穂
一ノ瀬里穂よ。好きに呼んでください
吉村
では…里穂さん…と
里穂
ふふ…いいわよ、春人さん
里穂
貴方のことは、この記事で以前から知っていたの
里穂は、自分の事件の記事の切り抜きを取り出すと、
自分が目覚めた時に医者のがくれたのだと話した。
里穂
この記事が、私の生きる理由をくれた
吉村
それって…『復讐』ですか?
里穂
…………
吉村
安藤と言う男が、めった刺しにされました
吉村
あの男は10年前…
吉村
貴女が遺棄された現場から逃げている
吉村
貴女は…安藤が刺されたことに関与を…?
里穂
…私があなたに答える理由は?
吉村
俺は…俺たちは、あなたと同じ被害者です
吉村は、自分の妻が濡れ衣を着せられ
死んでしまったことを話した。
里穂
あなたたち家族も、安藤たちの被害者…
吉村
俺は、あなたの理解者になれませんか?
里穂
わかったわ…でも、1つ条件がある
里穂
…私と、復讐の共犯者になって
吉村
復讐の…共犯者?
里穂
受け入れてくれるなら、私が知っていることを話すわ
吉村
待ってくれ…俺には小さい子供がいるんだ…
里穂
でも、守るばかりじゃ安藤たちは裁かれないわ
里穂
これまで、真実が何も明かされていないもの…
里穂
何か…大きな力が働いていると思わない?
吉村
(大きな力…大物政治家、神宮寺善治…?)
吉村の脳裏に
隠し子疑惑で追っていた神宮寺のことがよぎった。
里穂
何かを守ることばかり考えたら、復讐は果たせない
里穂
奴らに復讐を果たすか
里穂
何もせず子供と平和に暮らすか
里穂
あなたが選びなさい
里穂
ただし…協力を断るなら、私たちはこれきりよ
吉村
…………
吉村
…君に協力する
吉村
君の知っていることを教えてくれ
里穂
…契約成立。全て話すわ
里穂は、自分が安藤が刺された事件の
黒幕であると話した。
里穂
安藤は簡単に騙せたわ…面白かった
吉村
(里穂さんは美しい…男を騙すのは簡単か…)
吉村
では次は10年前…君が暴行を受けた時のことは…?
吉村
…奴らに監禁されて暴行を受けた時──
里穂
少年3人と…大人の女が1人いたの
吉村
大人の女…!?それは誰だ?
里穂
わからない。でも、奴らの上の立場だった
吉村
これまでの取材でも、そんな女は出てこなかった
吉村
いったい何者なんだ…?
里穂
私、女が事件を揉み消したんだと思うの
里穂
隠ぺいとか責任をとるとかって話してたから…
吉村
…その女が、大きな力と関係してるかもってことか
吉村
さっき…妻が汚名を着せられたと話したが…
吉村
あれには、更に前の話があるんだ
里穂
前の話?いったい何があったっていうの?
自分が神宮寺善治の隠し子疑惑を追っていたこと、
妻が自殺したとされる現場で
なぜか隠し子についての記事が燃えていたことを、
吉村は里穂に話した──
吉村
君が遺棄された現場近くで目撃された安藤は…
吉村
俺の妻に暴行されたと主張した連中の1人…
吉村
…全てが繋がっていると思わないか?
里穂
憶測の域を出ないけど…怪しいわね
吉村
君が暴行された現場にいた女…
吉村
彼女の正体がわかれば…
里穂
…あの女の冷酷な顔は覚えているのに
里穂
それ以外、何も手がかりがないなんて…
吉村
まずは周囲から探ろう…これを見てくれ
吉村
この2枚の写真に写る男は…
吉村
安藤と一緒に、俺の妻に襲われたと証言した男たちだ
吉村
君を襲った連中と、同じ男たちかい?
里穂
…ええ、こいつらよ!
里穂
忘れもしない
里穂
安藤とこの2人…あなたの奥さんに襲われたですって!?
里穂
あり得ない!女を力づくでオモチャにする連中よ!?
里穂
きっと奥さんは…辱めの上に殺されたんだわ…!
吉村
くそっ…
里穂は、片方の写真を指す。
里穂
こいつは、言い訳ばかりしていた小さい男
里穂
こいつなら、簡単に騙せると思うの
吉村
これは黒瀬…『黒瀬 優也』だ
吉村
妻と息子に囲まれて幸せそうに暮らしているよ
里穂
…ふ…ふふふ…『幸せ』ね…
里穂
地獄に落とし甲斐があるわ
吉村
その…殺すのか…?
里穂
大丈夫、うまくやるわ
吉村と里穂は互いの持つ情報を交換し、
今日のところは別れることとなった。
里穂
送ってくださってありがとう
吉村
いや、女性1人で帰らせるわけにもいかないよ
吉村
(復讐に燃える里穂さん…怖かったな)
里穂
ふふ…春人さんってすごいわね
吉村
え?どういうことかな…?
里穂
本当は…私のこと怖がってるでしょ?
里穂
なのにこうして送ってくれた…優しい人なのね
吉村
え?い、いや…まいったな…
吉村
(…あ、ダメだ惹かれるな…この笑顔は罠なんだ)
吉村
里穂さん、黒瀬も安藤のように…
吉村
その美しさで地獄に落とすのか?
里穂
そうよ…これが私の唯一の武器だから
里穂
それじゃまた…黒瀬のところで
吉村
ああ、またね
吉村
(彼女は普通の生活を送ってたはずなんだ)
吉村
(こんな事件さえなければ)
吉村
(彼女のご両親だって…)