この作品はいかがでしたか?
32
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いつの日かの出来事
少なくとも桃華さんと親しき仲になっていた以降の時のことだ
突然の事だった
父さんがこの世を去った
死因は働きすぎとのこと
過労死してしまったんだ
父さんの勤めていた会社はいわゆるブラックと言われるものだった
幼き時の僕はそんなこと知らなかった
いつも疲れて帰ってきてる父さんに無茶を言って困らせてしまっていた
それでも父さんは嫌な顔せず笑顔で僕と接してくれた
そんな優しかった父さんが死んだ
この頃から母さんの様子がおかしくなっていた
今まで僕を可愛がってた母さんは消えた
いや、ある意味”可愛がってた”のかもしれない
「父さんが死ぬ原因は私が悪い
もっと言えばこの子が生まれてきてしまったから」
最初こそ自分のせいと嘆いてた母さんはいつの日からか僕のせいにと変わった
僕が生まれたことで父さんに大きな負担がかかり結果として死を招いた
僕が産まれる前はそんなこと無かった
母さんはそう口を動かしていた
そして父さんが死ぬ原因は僕だって母さんの中で確定してから何度殴られ蹴られたのだろう
大好きだった母さんはこの世にはいない
父さんと共にこの世を去ったんだ
日を重ねるにつれ僕の心は壊れていった
当時の僕の唯一の楽しみは夕方頃の公園だけとなった
一人で公園に向かいなるべく人目のつかないところでただ一輪の花を見つめる
それが最近の楽しみとなっていた
その日もいつものようにたった一輪の花を見て時間を忘れてそして家にと帰る
バレないようにこっそりと家に帰る
いつもはリビングの窓から入るがあいにくその日はのソファで寝そべっていた
仕方なく2階に登りあらかじめ開けていた窓から家に帰る
そしてゆっくりゆっくり1階におりていく
その途中いくつか気になることがあった
何故か開いてる玄関の鍵…
散乱する玄関口…
その中に見知らぬ人の靴が1足
足のサイズは自分とほぼ同じだがデザインはどちらかと言えば女の子向けだった
そして不自然に開いたリビングの扉
幼いながらも今の状況が異様だと気づいた
恐怖しながら少し開いた扉からリビングを覗いてみる
見えたのは小さな女の子が横たわる母さんの前に立っていたこと
この時外は雷雨帰ってきた時は曇りだった
雷が光って一瞬だけ見えたシルエット
それはいつの日か友達になった桃華さんだった
僕の瞳はその一瞬を脳裏に焼き付けていた
ところどころ紅くなってる右頬
刃物を持ってる右手はポタリポタリと水滴が落ちている
横たわる母さんを見れば床は液体でびっしょりと濡れている
母さんは寝転んだまま動かない
これだけの事があの一瞬で捉えたことだった
でもそれらを超えるほど覚えてるものがある
返り血を浴びた桃華さんの顔を見れば一目瞭然だったのだ
笑っていた
声を上げることはなくただニヤリとしていた
横たわる母さんを見ながらニヤリと笑っていた
それを見た僕はあまりの恐ろしさに自室に戻り布団にくるまり震えていた
その後のことは何も覚えていない
次僕が目を開けた時は桃華さんのお兄さんが血を流しながら川で溺れていたとこだ
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
蒼弥
当時の私は今と変わらず元気な子だった
でも私は家族が嫌いだった
お父さんもお母さんも大っ嫌いだ
幼いながらもそんな感情があった
でも家族で唯一好きだったのはお兄ちゃん
お兄ちゃんは私の良き理解者だ
お父さんもお母さんも私とお兄ちゃんを比べる
幼少期の頃のお兄ちゃんはな……
急にお兄ちゃんはな〜 と話を切り出す時はだいたい私を怒る合図だ
お兄ちゃんは確かに優秀だ
それは小さな私でも分かった
でもそれ故に比べられてしまった
孤立感がとても悲しかった
保育園に行ってもあんまり楽しくない
友達と遊んでるのに何故か脳裏にお父さんとお母さんの言葉がチラつく
1番苦痛だったのは友達の両親が嬉しそうにしながら迎えに来る時だった
どちらが笑えばどちらも笑う
あれが幸せなんだと年甲斐もなく思った
両親からの愛情なんてほとんど貰わずに生きてきてる
1番愛情をくれたのはやっぱりお兄ちゃんだった
お兄ちゃんがいる時に私とお兄ちゃんを比べる話をお母さん達がすると
それは違う、と必ずお兄ちゃんが否定してくれる
比べること自体が間違ってると言ってくれる
その言葉を聞く度に私は泣きそうになる
やっぱり私を理解してくれるのはお兄ちゃんだけだったんだと
そんなある日いつもの公園でお兄ちゃんと遊んでいるときだった
私と同じくらいの男の子が私に向かって笑顔で一緒に遊ぼうと言ってくれた
その笑顔と誘ってくれた事に私は胸が高鳴ったことを覚えてる
何となくだけれどもこの子も私の良き理解者になってくれると
その日をきっかけに私とその男の子
後に蒼弥と知るその子と何度か遊ぶようになる
そして日を重ねるうちに私の中に芽生えたある感情
理解者ではなく私が彼に想いを寄せているという事に気付いた
いつかこの想いを彼に伝える
そう思う時が増えていったがそれは叶う事はなくなってしまった
ある日を境に蒼弥とそのお母さんを見ることはなくなってしまったのだ
蒼弥に何かあったのではないか
そう思いほぼ毎日のようにいつもの公園にやってきていた
その行動が実を結んだ
蒼弥を見つけることができたのだ
しかしその時の蒼弥は楽しい表情なんてほとんど見せなかった
遠くからでもわかる蒼弥の肉体的疲労
そして茂みに入り一輪の花を見て癒されている光景
誰もいないその一輪の花と蒼弥だけの空間になると時折ポロッと何かをつぶやく
それを聞き入ってみると虐待を受けてるという実情を知る
それを知り今の自分と蒼弥を重ねてしまう
彼は肉体的な虐待を受けており私は精神的な虐待を受けている
そんなふうに重ね合わせてしまいいてもたってもいられなくなった
きっと彼このままでは死んでしまうと
初めてお兄ちゃん以外の良き理解者
そして初恋の人を無くしてしまうと
そう思うと体は動き出していた
日をかけて彼の家を知り彼を救う計画を立てそして遂にそれを実行する
幼い私でも大人を殺すことができたのだ
これで私の大切なものを失わずに済んだ
そう思うと不思議と笑みがこぼれてしまう
これで彼は思い悩むことは無い
彼が死ぬことはもうない
私はとても満足した
それから私は彼の家を出てなるべく人目を避けて河川敷に行き体についた血を落とす
そして自宅に帰り説教を受けた
内容なんて覚えてない
私の頭の中は彼とお兄ちゃんの事でいっぱいになってたから
蒼弥のお母さんを殺し少し日が経った
いつもの日常に戻りつつあったがその日事件が起こってしまう
帰り道河川敷を通るその河川敷で人が溺れていたのだ
お兄ちゃんはそれを見つけて私を置いて助けに行った
遠くて誰が溺れてるまではわからなかったけれど小さな子というのは分かった
お兄ちゃんがその子の元まで行き引き上げるがあと少しというところで突然お兄ちゃんが苦しみ出した
背負われてたその小さな子は自分だけ陸地に上がりお兄ちゃんをしばらく見たと思ったらその場を後にした
私は急いでお兄ちゃんの元に行く
近くに行って気が付いたお兄ちゃんの背中に刺傷が見つかった
それだけでなく太ももも刺されていたようで泳ぐ事ができなくなっていた
お兄ちゃんを助けるために大きな声を上げ大人の人を呼んだ
でも時すでに遅し…
お兄ちゃんは帰らぬ人になってしまった
ショックでお母さんもお父さんも何も言えくなっていた
その後この嫌な事件を少しでも忘れたくなったのかこの地域から引っ越すことになる
時が経つにつれ私は蒼弥の事もそしてお兄ちゃんの事も忘れていった
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
ピンポンパンポーン
ピートル
ピートル
桃華
桃華
桃華
桃華
桃華
コメント
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最後の話し合いが始まります