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コメント
3件
わあ…読み終えたよ…!😭💦 桑原陽一、完全にヤバいやつじゃん…でも「綺麗」って言いながら中身を暴く感性が、狂気の探究心ってタイトルにピッタリはまってて、ゾクゾクしたよ…! 最初の蝶々から始まって、千鶴の手、研二の目、志乃との対峙…とにかく一貫してて気持ち悪いくらい完成されてるキャラだった…! 慎一の耳が赤くなるところ、ちょっとだけ人間味が見えた気がして、そこが逆に怖かった…🥺 蝶々を追いかけて消えるラストも、狂気のままどこかへ行っちゃった感じが余韻すごい…! 桜城さん、めっちゃ没入できる話をありがとう…!また次のエピソードも楽しみにしてるね🌸✨
前日譚
「無垢なる解体者」桑原陽一の物語
俺は医者の息子として生まれた
普通の家と比べれば、 比較的裕福な家庭だが、 俺は幼い頃は病弱で、体調を崩しやすかった
桑原陽一
正直言うと、 自分の虚弱体質にウンザリしていた
医者の息子だと言うのに、 父さんも母さんもこんな状態の息子を ほったらかしている
ただの風邪が変な方向に悪化して、 何度か死にかけたこともあった
趣味も何もないし、興味のあるものもない 横になって天井だけを見つめる毎日
健康な時なんか、 指で数える数しかない虚弱体質
しかし、 そんな退屈な毎日が、 そんな苦しい日々が、 終わりを迎える時が来るのを、 俺は知らなかった
俺は小さな机の上で、 お母さんから盗んできたピンセットで、 潰れた蝶々の「中身」を見ていた
頭部には感覚器の神経と、 花の蜜を吸い上げるための器官が、 ぎっしりと詰まっていた
胸部はほとんどが強靭な筋肉 それも当然だ 一秒間に何十回も翅を羽ばたかせるからだ
腹部には消化器官と生殖器官が集中している それだけではなく、 人間で例えると脂肪のような組織が隙間を埋めていた
桑原陽一
ピンセットを持つ手が止まらなかった 見れば見るほど興味が湧いてきて、 人間とは違う内部が剥き出しになるのが、 最高に興味深かった
この日だけは、 時間の進みが異常に早く感じた
それ以降、 俺は虫や動物の「中身」を見るようになった
蟻、トンボ、野良猫… 観察対象の動物は、 次第に体が大きいものになっていった
あんなに弱くて体調を崩しやすかった体が、 動物を観察している時だけは、 元気になっているような気がした
桑原陽一
どんなに元気な動物でも、 中身を剥ぎ取れば赤い肉と骨を持つ、 単なる肉の塊
そこに夢も希望も詰まっていない
だけど、 俺はいつしか動物の中身を見て安心するようになった
彼らの中身を暴くことで、 彼らの存在を心から理解することができたからだ
「君も俺と同じ、ただの生き物なんだね」、と
ある日のことだった
寝てばかりの生活に飽きてしまい、 親の目を盗んで自分家の庭に出た
この日はいつもより、 体の調子が良かった
すると、庭で潰れた蝶々を見つけた
桑原陽一
不思議と可哀想だと思わなかった
目を背けるどころか、 俺は潰れた蝶々に釘付けになっていた
周囲に染み付いた黄緑色の液体、 バラバラに千切れた模様のある翅、 微かに動く触覚と足
桑原陽一
俺は初めて、 何かを綺麗だと感じた
千切れた翅を見て、 この蝶々の「中身」を知りたいと感じた
俺は触覚と足すら動かなくなったこの蝶々を、 自分の部屋に持って帰った
虚弱体質だった俺の体が、 元気になり始めたある日のことだった
遠くの町から、 従姉妹の千鶴が家に遊びに来た
槇原千鶴
俺は千鶴を弟の研二と共に迎え入れた
桑原陽一
桑原研二
いつもは無関心な父さんと母さんも、 千鶴が家に入ると、 医学の本を読むのをやめる
桑原陽一
槇原千鶴
桑原陽一
桑原陽一
槇原千鶴
桑原研二
桑原陽一
まさか、 楽しい趣味ができたから… だなんて、そんなわけない
千鶴と研二の顔をまともに見たのって、 いつぶりのことなんだろう…
俺には覚えていない
だけど、 俺の中には危険な探究心があった
いつしか、 動物や虫だけではなく、 「人間」の中身にも興味が湧いてきた
丁度目に入ったのは、 従姉妹の千鶴
俺よりも歳が6歳も離れているのに、 ハイカラでべっぴんさん
こんなに綺麗な千鶴なら、 中身も綺麗なのでは?
桑原陽一
槇原千鶴
桑原陽一
槇原千鶴
千鶴はあまり理解していないようだが、 間を空けてから「行く」と言い、 俺の後ろを着いて行った
引き戸をピシャリと閉め、 二人きりになった部屋で、 千鶴を品定めするように見つめる
槇原千鶴
槇原千鶴
桑原陽一
槇原千鶴
俺はそう言うと、 千鶴を押し倒して、 床に倒れた千鶴の上にまたがった
真っ先に目に入ったのは、 千鶴の小さくて愛らしい左手だった
俺は手元にある大きなノコギリを持つ
槇原千鶴
桑原陽一
怯える千鶴のことなんか、 御構い無しだった
俺は千鶴の可愛い手を、 ノコギリでギコギコと音を鳴らしながら切る
もちろん、麻酔だなんてものはない
槇原千鶴
手首からの流血と千鶴の絶叫
俺はそれらを、 極上の芸術品を鑑賞するかのような目で見た
そして、 ついに千鶴の左手が、 落ちた
槇原千鶴
桑原陽一
俺は千鶴の左手の切れ込み部分を、 冷徹であり恍惚とした表情で眺める
千鶴の手は、 形に残して一生保存したいほど綺麗だった
よし、次は右手… と思いきや、
桑原研二
桑原陽一
引き戸を開ける音と共に、 研二が俺の部屋に入っていた
研二が部屋に入ったことで、 千鶴を解剖するのはまだ先の話となってしまった
その光景を見た研二は、 手と足を振るわせ、 冷や汗をかいていた
千鶴は左手があったはずの部分を抑え、 俺の部屋から飛び出して行った
桑原陽一
あれから日にちが経つと、 俺たちは5人で遊ぶようになった
俺は小さくて可愛い鳥を見つけたので、 常に持ち歩いているメスで、 小鳥の中身を見ていた
あまりにも引き込まれて、 喋ることすら忘れていた
ずっと見ていたいほど、 小鳥の中身は美しかった
すると、
都築慎一
上から慎一の声がして、 慎一は俺の手を覗き込んだ
やっぱり、 これだけ綺麗な鳥なら、 慎一も気になるよな
桑原陽一
都築慎一
桑原陽一
慎一は青ざめた表情をして、 後退りをした
慎一は口を開けたまま、 しばらく言葉を発しようとしなかった
まさに「理解できない」と言う表情だ この綺麗さが理解できないなんて、 慎一も可哀想な子だ
そして、 この小鳥を見ていると、 なぜか俺は、 脳裏に研二の顔が過った
桑原陽一
都築慎一
都築慎一
慎一の表情はほとんど変わっていないものの、 彼の体が小刻みに震えていた
桑原陽一
桑原陽一
俺は研二のことを語るたびに、 平然としていた慎一の表情が、 徐々に歪んでいく
考えれば考えるほど、 研二の中身を暴きたくなった
まさか、 芸術品がこんな近くにいたなんて
家から帰ると、 俺は研二を自分の部屋に誘い込んだ
普段から部屋に研二を誘って、 動物の中身が暴かれる瞬間を、 特等席で見せていた
だけど、 今日は観察対象の動物は、 机の上にはいない
研二は綺麗な瞳を二つ並べながら、 俺の顔をじっと見る
桑原研二
桑原研二
桑原陽一
桑原陽一
俺はそう言うと、 研二を押し倒す
研二はこの前目撃してしまった、 千鶴の出来事を思い出したようで、 手をガタガタと震わせながら、 表情を青ざめる
桑原研二
桑原陽一
俺はポケットからメスを取り出す
桑原陽一
俺は研二の右目に、 メスを突き立てた
右目からは赤い液体がダラダラと垂れ始め、 取れそうになるほど、 俺の口角は上がって行った
桑原研二
研二の掠れた絶叫ですら、 俺にとっては芸術的だった
そして、 俺の手のひらに転がった、 研二の右目
研二は片目を押さえている中、 俺は転がった研二の目を、 眺めるように見つめた
桑原陽一
桑原研二
片目だけでもわかる 研二は俺を見て怯えていた
それでも、 俺はお構い無しに、 もう片方の目も手にしようとしたが、 親の乱入によって、 またもや未遂に終わった
露子が坑道で遊びたいと言うから、 俺たち5人は滅多に近づかない坑道に入った
ところがどっこい、 露子と勲は瓦礫の下敷きになって、 お亡くなりになっちまった
慎一は二人が死んだ時、 いつもは見せないような表情で、 涙を流していた
慎一の綺麗な泣き顔を、 もっと間近で見てみたかった
桑原陽一
都築慎一
桑原陽一
俺は常に持ち歩いているメスを取り出し、 少しずつ、 慎一の元へ近づいた
これで顔を掠めたら、 痛くて涙が出るんじゃないかと考えた
考えれば考えるほど見たくなってしまい、 俺は慎一をすぐに押し倒し、 彼の頬にメスを当てる
都築慎一
桑原陽一
桑原陽一
涙が出そうなのを必死に堪えている慎一の表情が、 愛おしくて仕方なかった
俺が力を強める度に、 慎一の表情は徐々に青ざめ、 歪んでいく
神田志乃
俺がもう一度、 慎一にメスを突き立てようとすると、 志乃が俺と慎一の間に入ってきた
手を振り回していた反動で、 慎一ではなく、 誤って志乃にメスを突き立ててしまった
志乃は涙を流しているが、 「可哀想な自分」になれたことによる嬉し涙なはずだ
桑原陽一
神田志乃
桑原陽一
桑原陽一
神田志乃
きっと、 これも演技だろう
志乃は俺に精一杯反論をするが、 「可哀想な自分」を引き立てるための演技に違いない
志乃はずっと見栄を張っているんだ 可哀想に
桑原陽一
桑原陽一
桑原陽一
俺が話す度に志乃は顔を青ざめる きっと、これも演技だ
本当なら、 喜んでいるはずだ
今よりもっと可哀想な子として愛されるには、 こうするしかないんだから
愛されずに苦しんでいる志乃のために、 俺が志乃の手助けをしてやろう
俺は慎一からターゲットを志乃に変え、 ポケットからペンチを取り出す
神田志乃
桑原陽一
神田志乃
桑原陽一
もう俺には全部わかっている だから、諦めなよと言わんばかりに質問攻めする
志乃は自分の痛みですら、 可哀想な自分を演出するための道具として使うような子だ
否定する態度も、 全部嘘に決まっている
すると…
神田志乃
都築慎一
志乃は豹変して、自分の本心を剥き出しにした
神田志乃
神田志乃
神田志乃
桑原陽一
そんな状態の志乃を見ても、 俺は動じることはなかった
ただただ、 志乃が本心を曝け出せて、 よかったと思っていた
神田志乃
志乃は泣き叫びながら、 坑道を飛び出して行った
志乃の高い叫び声は、 ここまで響いていた
都築慎一
桑原陽一
都築慎一
会話の内容からして、 恐らく志乃は、 精神病院へ連れて行かれてしまったのだろう
だけど、 「可哀想な自分」を求める志乃にとっては、 この経歴でさえ、 いい材料になるはずだ
よかったね、志乃 これでみんなが注目してくれるよ
坑道は完全に崩落して、 残るは俺と慎一だけ
桑原陽一
都築慎一
桑原陽一
都築慎一
桑原陽一
俺は慎一の顎を、 軽く持ち上げた
感情表現の薄い彼には、 ちょっと揶揄いたくなる
慎一は動揺することもなく、 俺のことを見つめるだけだった
だけど、 俺は慎一の耳が僅かに赤いのを、 見逃さなかった
都築慎一
桑原陽一
すると、 俺の近くに紫色の翅を持つ、 小さくて綺麗な蝶々が、 俺の目の前を飛んで行った
初めて「生き物の中身」に目覚めた、 あの頃に見た蝶々と、 そっくりな見た目をしていた
気がついた頃には、 蝶々に目を奪われていた
あの子を捕まえて、 解剖したい
桑原陽一
都築慎一
桑原陽一
俺は、 煌びやかに光る翅を持つ蝶々を、 追いかけて行った
どれほど奥に進んだかはわからない
だけど、 俺は蝶々を追いかけて以来、 二度とこの村に姿を現さなかった
今、 どこにいるかは教えてやらない
君も同じ動物なんだね
君のことを理解できたよ