亮二
あの……
亮二
はじめまして!
郁美
どうぞどうぞ~
いっちゃんに促されて居間へと進む
そこにいたのは
亮ちゃんの何百倍も緊張しているたっくんが
ガチガチに固まって座っていた
美結
たっくんただいま
拓郎
お、おお……
拓郎
おか……え……
拓郎
り……な……
郁美
たっくん固い!
拓郎
郁美さぁん……
亮二
む、村井亮二と申します
郁美
こっちも固いねw
美結
う、うん
昨日プロポーズされたばかりで
いっちゃんの提案で突然連れてくることになって
私もまだ心の準備ができていない
この張りつめた空気の中で
いっちゃんだけが余裕の表情で
郁美
亮二さんはコーヒー?それとも紅茶?
亮二
あ、コーヒー……でいいですか?
郁美
もちろん!
美結
私も……
郁美
美結がコーヒー!
郁美
すっかり大人になったんだね……
郁美
まさか結婚なんて
郁美
ねぇ?たっくん!
拓郎
はひ!
この中でたっくんが一番緊張しているみたいだ
でもそんな姿も
私にとっては愛しい
やっぱり二人は
私にとって大切な両親なのだと
今、改めて思った
郁美
そうだ、美結
美結
なに?
郁美
亮二さんにどこまで話したの?
美結
あ、うん
美結
テレビの話……
郁美
テレビか……
拓郎
あ、あれは
拓郎
大変だったね
郁美
そうだね……
亮二
あの、今はもう……平気なんですよね?
美結
うん
郁美
意外とあっさり克服しちゃったんだよね~
亮二
え!?そうなんですか!?
私がパニックを起こしてから数日後
大晦日の夜
テレビを怖がる私のことを気遣って
年末の特別番組も封印して
たっくんはひたすら絵本などを読み聞かせてくれた
いっちゃんはずっとキッチンに籠り
お正月の準備をしていて
時々様子を見に寝室に来ては
またすぐにキッチンへ戻るを繰り返し
この日は何故か
遅くまで起きていられて
たっくんがたくさんのお話をしてくれた
拓郎
そうだ……
拓郎
美結のパパの話、してもいいかな?
美結
パパ?
拓郎
美結のパパは……
拓郎
遠い遠い……お空の上にいるんだ……
たっくんにとって自慢の弟だった
成績優秀でスポーツも万能で
かっこよくて優しくて
困った時にはいつも相談に乗ってくれた
船に乗る決意をしたたっくんを
誰よりも応援してくれたのは父だった
拓郎
美結のパパは……
拓郎
本当に優しい人だったんだ
たっくんにとって本当に
父は大切な存在たったのだ