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渋谷大

どこまで行くつもりだあいつら……!

霊1

――クスクス

霊3

――くすくす

楽しそうな悪意が降り注ぐ。

渋谷は民家の屋根を走っていた。

渋谷大

悟、この先になにがある!

久留間悟

次の信号から向こうがビジネス街

久留間悟

高層とまでは行かないけど、ビルが増える

渋谷大

車道は

久留間悟

広い。でも歩道橋がある

久留間悟

次で下に降りたら右に10メートル

渋谷大

ほいよぉ!

屋根から塀、地面へと飛び降りる。

指示どおり走破し、階段左右の鉄格子を蹴って歩道橋を駆け上がった。

その最中振り落ちる、不快な臭いに弾かれるように顔を上げる。

渋谷大

吐き気すら催す腐臭。

それが明らかに彼女達から発されていると知り、渋谷は顔をしかめた。

渋谷大

悟、あいつらの臭いが急に酷くなってる

久留間悟

臭い?

久留間悟

あ、悪霊ほどヘドロみたいな臭いするアレ

渋谷大

それ

渋谷大

友理奈ちゃんの近くじゃ感じなかったが、今は頭の上に腐った生ゴミがあるみてーだ

渋谷大

絶対やば――

下りの階段を無視し、歩道橋から一気に飛び降りる中で言葉を切る。

渋谷大

悟、やつらこの先にあるラーメン屋が入ったビルの上に向かった!

渋谷大

外から行けそうなルートあるか!?

久留間悟

はいよ

久留間悟

雑居ビルだな

久留間悟

店の正面から右側、勝手口用の細い通路がある

久留間悟

その奥に外階段

渋谷大

ははっ!

渋谷大

お前のネット検索能力、すっげぇ助かるけどたまに怖い!

茶化し言葉を投げながら通路に滑り込み、階段を駆け上がる。

三つ目の踊り場を蹴った直後だった。

女性

や、ぁ、あぁああああああ!!

うろたえた悲鳴が迸る。

慌てて手摺から身を乗り出し、見上げた先に

ビル間の狭い空の中、恐怖に引き攣った女性が吊り上げられていた。

女性

やめ……! 怖い……!!

女性

降ろして……!!

霊4

――あれ? いやなの?

霊1

――えー、嫌なのぉ?

霊2

――やっぱ違うのかぁ

霊3

――じゃあ仕方ないね

霊4

――降ろしたげなきゃね

霊2

――そうね、放してあげなきゃ

クスクスと笑い、やがて一様に笑みを浮かべる。

霊1

――今 度 は ど ん な 形 に な る か な ぁ

それは唇が裂けたのかと思うほど、深い愉悦の表情だった。

女性

キャ、あぁああああああああ!!

直後、女性が落下する。

久留間悟

なに、どした!?

渋谷大

やりやがった!

久留間悟

なにを!?

渋谷大

うるせぇ、今余裕ない!!

久留間を無視し、全速力で5階まで駆け上がり

そのまま階段から飛び出し、落ちてくる女性を引っ掴んだ。

渋谷大

こんなもんで……!

渋谷大

死ぬかぁああああああ!!

咆哮し、反対の手で隣接するビルの雨どいに手をかける。

渋谷大

痛いっ!

渋谷大

イッテェ! もう!!

落下の勢いを殺しながら、金具に裂かれる痛みに文句を吐く。

どうにか無事に地面に足をつけたときには、すでに頭上に霊の姿はない。

女性の顔は血の気を失い、蒼白になっていた。

渋谷大

はぁ……

渋谷大

お姉さん、大丈夫?

女性

あ……あの……

渋谷大

ごめんね、混乱してるとこ悪いんだけど

渋谷大

やつらに引っ張られる前、なに考えてたか教えてくれるかな

女性

あの、あの……

女性

そ、空

女性

空を

渋谷大

空を、飛びたい?

言葉に、女性が頷く。

それを聞き、渋谷は奥歯を軋ませた。

衝撃でずれてしまったヘッドセットの位置を直し、低く声を投げる。

渋谷大

悟、一応彼女、保護と怪我の手当

久留間悟

手配したよ

久留間悟

ヤマちゃんに連絡入れたし、救急車も行くはず

久留間悟

それよか今の

渋谷大

あぁ、ピース揃ったな

渋谷大

同調できる思考が相手にありさえすれば、霊はそこにつけ込める

渋谷大

一人目は屋根の修理が面倒で

渋谷大

二人目は気分が良くて

渋谷大

三人目は広い空を見てつい

渋谷大

『空を飛びたい』って思ったんだな

渋谷大

運悪く、その付近を奴らがうろついてたんだろ

渋谷大

それで本当に空を飛ばされ――

渋谷大

怖がって、落とされた

渋谷大

最初は本気で仲間探しだったのかもしれねぇけど

渋谷大

少なくとも今は違うな

渋谷大

面白がって虫を殺す、子どもと同じ感覚だ

久留間悟

人の身じゃできない、人間を簡単に嬲る快感を覚えちゃったんだな

久留間悟

でもマジでこれが正しかったら、今日はちょっとまずいかもよ

渋谷大

なに

久留間悟

今日は最高に空が高くて気持ちいい

久留間悟

俺でもきっと、空を見ればふと『飛びたい』と思っちゃうほどね

久留間悟

それに加えて友理奈ちゃんは、ずっと天使って言葉を聞かされ続けてる

久留間悟

空を飛ぶイメージを持ちやすいはずだ

久留間悟

彼女がそれを口に出したら

渋谷大

――ッッッ!!

考えるだけならまだしも、言葉にすれば言霊が宿る。

言霊の「霊」は、同じ「霊」には察知されやすい。

待ち侘びている相手から発されたとなればなおさらだ。

背筋を走る悪寒に、友理奈の学校の方角へと顔を向ける。

腐臭はすでに、来た方向へと去っていた。

渋谷大

っ、戻る!!

久留間悟

うん

久留間悟

さっきじっちゃんも動いてくれた

久留間悟

今、じっちゃんちの車で友理奈ちゃんの学校に向かってる

渋谷大

分かった!

そのまま駆け出しかけ、止まる。

渋谷大

お姉さん、もうちょいしたら警察と救急車来るから

渋谷大

ちゃんと診察してもらってな

渋谷大

事情は警察から会社に話してもらえると思うから

渋谷大

そんじゃ、気をつけて!

被害者に今後の説明だけ言い置き、駆ける。

一方、友理奈の学校。

授業中、開け放たれた窓から空を見上げる友理奈がいた。

崎本友理奈

秋ってこんなに、空高かったっけ……

霊1

(――友理奈、天使になろうよ)

霊4

(――体がないって、ホントに最高だよ)

霊2

(――空は気持ちいいし)

霊3

(――空は)

霊1

(――空ではね)

崎本友理奈

空、かぁ

崎本友理奈

天使にはなりたくないけど

崎本友理奈

空は……飛んでみたいなぁ

カタヅケ屋霊異記【完結】

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コメント

6

ユーザー
ユーザー

うおおおおおおおおおおおお!!! すきだぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!! 続きをおおおおおおおおおおおお!!! 見るぜええええええええええええ!!!

ユーザー

ハッピー兎さんありがとうございます! まさか一気見していただけたんでしょうか 楽しんでいただけてたら嬉しいです!(* ゚∀゚)✨

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