家族のかたち

人はなぜ、好きが嫌いに 変わるのだろう。

1年前、私の両親は離婚の危機に さらされていた。

秋がもうすぐで終わる頃。

お母さんは、私が起きてくるなり

泣きながら、そう言ってきた。

…お母さんの泣き顔を見るのなんて、 初めてだった。

妹の沙良が、お母さんにそう叫ぶ。

でも、沙良も分かっていたはずだ。

うちは、前から終わっていた。

私の両親は、だいぶ前からちゃんと した会話を一切していなかった。

そんな、業務連絡みたいな 会話ばかりだった。

2人とも、目を合わせて 話をしない。

そんな日々が続いても、「離婚」 というワードが出ることは

ないだろうと考えていた。

のに、

今日お母さんは、 「離婚してもいい？」って

聞いてきた。

お母さんが続ける。

嫌々一階に降りる。

一階には、投げつけていたのか、 物が散乱していた。

お父さんが椅子に座っている。

椅子に座らずに、

一階に降りるなり私は そう言った。

離婚されたら、この家から引っ越さ なければいけないし

名字が変わるのも、今までと同じ ような生活ができなくなるのも

全部嫌だった。

自分勝手なことだろうか。

いや、自分勝手なのはあっちだ。

子供の気持ちを考えろよ。

こうやって、何とか離婚は まぬがれた。

そして、あれから1年後。

両親の仲は、未だに最悪だ。

でも。

こんなようなことは、多分

前から何度もあった。

2人は、もうお互いのことを好き ではないかもしれない。

もしかすると、大嫌いなのかも しれない。

それでも

お互いを思いやれる気遣いがあれば、

大丈夫だ。

この家族は、なんとかやっていける。

もう仲が直ることはないかも しれないけれど

私と沙良が成人するまでは、 私たちと一緒にいてね。

何だかんだ、

私は家族が好きだ。