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お節介アゲハと弱虫ヒナタ〜アルメリア〜

第18話 - 自分勝手

151

2023年04月14日

#ドラマ

#青春恋愛

#高校生

#一次創作

×××

男A

なんだよ・・取引って

男B

それより何だ？
その分厚い封筒は？

鮎原透

金だよ・・・

男C

金？

鮎原透

400万ある・・・

男A

よ、400万？

男B

何の金だよ！

鮎原透

お前らの保釈金に150万

鮎原透

それにお前らの
ポケットマネーに
250万！計400万だ！

男B

はぁ？ポケットマネー？
なんの真似だ！

男C

そんな大金・・・

鮎原透

お前らにこの金を
くれてやる

男A

はぁ？

男B

どう・・いう・・事だよ

男C

そんな大金を貰う
覚えも筋合いもねーぞ

鮎原透

勘違すんなよ？

鮎原透

この金をやるにはやるが

鮎原透

ひとつ条件がある

男B

条件？

鮎原透

取引だっつっただろ？

男C

まぁ、いい・・・

男C

で？その条件ってのは？

鮎原透

お前らに出す条件は──

鮎原透

お前に杏樹ちゃんを
襲うように依頼した女を
探そうとするな！

鮎原透

これだけだ

男B

ようはあの事を
忘れろって話か？

鮎原透

ああ・・そうだ

男A

断る！！

鮎原透

断る？

男B

当たり前だろ？

男B

俺らはあの女の為に
危ない橋を渡って
やったってのに

男B

最後の最後に俺らを
警察に売りやがったんだ！

男B

あの女は！

鮎原透

・・・・・

男C

そうだ！

男C

あの女だけは許せねー

男A

あの女を使い物に
ならなくなるまで
犯すくらいしねーと

男A

割合わねーんだよ

鮎原透

なら断るって事か？

男C

あったりめーだろーが！

男B

どんだけ
金積まれても無駄だ

鮎原透

あっそ・・・

鮎原透

ならいいわ・・・

透は呆れ顔でパイプ椅子から立ち上がる

男A

あ？ずいぶんと
呆気ねーな

男B

もっと駄々こねると
思ってたのにな

鮎原透

お前らが話に
乗ってこねーなら
仕方ねぇからな

鮎原透

”この情報”はマスコミにでも
リークさせてもらうわ

透は男たちに A４サイズの茶封筒を見せる

男C

情報？情報ってなんだ？

鮎原透

てめーら随分と
悪どい事
してたみてーだな

透は茶封筒から一枚のプリントを取り出す

鮎原透

なんでも金積まれりゃ
殺し以外なら
何でもやるとか

鮎原透

逮捕歴も相当
あるみてーだな

男B

だから何だ？

鮎原透

俺の知り合いに

鮎原透

”各方面に顔がきく
おっさん”が居てな

鮎原透

そいつに色々と
調べてもらってたんだ

鮎原透

そしたら驚いたぜ

鮎原透

依頼者の名前には
俺でも知ってるような奴が
わんさか居やがった

男A

何がいいてーんだ？

鮎原透

この依頼者の名簿

鮎原透

マスコミに流したら
どうなると思う？

男C

て、てめー！！

鮎原透

お前らは金にゃ
なびかねーみてーだからな

鮎原透

だったらこの情報を
ばら撒かせてもらう

鮎原透

悪く思うな！じゃあな！

男A

ま、待て！

面会室から出ようとする透を男が止める

鮎原透

あ？なんだ？

男A

・・・・・

男A

お前らの条件を呑むなら

男A

その情報は──

鮎原透

当然、俺が握り潰す

男A

本当だな？

男B

おい、まじで言ってんのか？

男A

バカか！あの情報が
マスコミで拡散されたら

男A

俺らは終わりだ・・・

男C

た、確かに・・・

鮎原透

で？どうすんだ？

男A

ひとつ聞かせろ

鮎原透

なんだ？

男A

なんでそこまでする？

男A

あの女の為に・・・

鮎原透

実はお前らに
依頼した女は

鮎原透

つい最近、俺の
古い知り合いだって
分かったんだよ

男A

なに？あの女がお前の？

鮎原透

ああ・・・

鮎原透

そいつには俺は、過去に
迷惑かけた事があってな

鮎原透

そいつには普通に
生きていってもらいてー

男A

・・・・・

鮎原透

そこにお前らの存在は
邪魔なんだよ・・・

男B

わかったよ・・・

男B

お前の言う通りにしてやる

鮎原透

本当だな？

男B

ああ・・約束する

男A

まぁ、元々俺らが
受け取るはずだった
成功報酬よりも

男A

高い金貰えるからな

鮎原透

分かってると思うが

鮎原透

お前らがあの子に
近づいたら

鮎原透

俺の耳にも入るからな？

鮎原透

もしそうなったら

鮎原透

次はまじで殺すぞ？

男C

ならねーよ

男C

約束してやる

鮎原透

分かった・・・

鮎原透

なら約束通りに保釈金に
+αで金をやる

鮎原透

これに懲りたら
悪どい事は辞めるこったな

男A

まぁ、考えとくわ

鮎原透

よし！これで終わったな

鮎原透

これで葛城に危険が
及ぶ事もねーだろ

鮎原透

色々調べてくれた
父さんには
頭があがらねーな

鮎原透

とりあえずは長野に戻るか

透は駅に向かって歩みを進める

時間を少し遡り

透が静岡に向かう新幹線の車内にいる頃

杏樹、絵里香以外の面々が帰宅した病室で

絵里香が杏樹に胸の内を明かしていた

眞琴杏樹

え？警察に自首する？

葛城絵里香

そのつもり

眞琴杏樹

いや、でも私が転んだのは

眞琴杏樹

私自身の不注意が原因──

葛城絵里香

それだけじゃない

眞琴杏樹

え？

葛城絵里香

私は、男を金で雇って
杏樹を襲わせた・・

葛城絵里香

鮎原に精神的な
ダメージを与える為に

葛城絵里香

杏樹を危ない目に遭わせた

眞琴杏樹

でもそれは
結果的に──

葛城絵里香

確かに結果的には
鮎原さんが杏樹を
助けたから

葛城絵里香

杏樹は男たちに
襲われずに済んだ

葛城絵里香

でもそれは、あくまでも
結果論でしかないの

眞琴杏樹

・・・・・

葛城絵里香

しかも私は
その男たちを警察に売った

葛城絵里香

私の通報のせいで
そいつらは
警察に捕まって

葛城絵里香

今は刑務所にいるはず

眞琴杏樹

・・・・・

葛城絵里香

多分そいつらは私を
恨んでると思う・・

眞琴杏樹

でもそれは
自業自得じゃん

眞琴杏樹

目の前のお金に
目が眩んだ
その人たちのせいだよ

葛城絵里香

そのお金を
チラつかせたのは

葛城絵里香

他の誰でもない
私自身なの・・・

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

だから私は──

鮎原拓郎

その必要はない

杏樹と絵里香が話していると病室に拓郎が入ってきた

眞琴杏樹

あっ・・社長さん

鮎原拓郎

眞琴はもう
体調は大丈夫かな？

眞琴杏樹

あ、はい・・・

眞琴杏樹

それは大丈夫
なんですけど

葛城絵里香

自首する必要は無いって
どういう意味ですか？

鮎原拓郎

・・・・・

眞琴杏樹

何か知ってるんですか？

鮎原拓郎

透は今、静岡に
行っている

眞琴杏樹

し、静岡？

葛城絵里香

静岡に何をしに？

鮎原拓郎

静岡の沼津にある
刑務所に行っている

鮎原拓郎

ある人物と
面会をする為にな

眞琴杏樹

め、面会を？

眞琴杏樹

あっ！まさか

眞琴杏樹

伊豆で私たちを
襲った人たち？

葛城絵里香

え！？

鮎原拓郎

彼らに眞琴さんを
襲うように依頼したのは

鮎原拓郎

葛城さん！君だったね？

葛城絵里香

は、はい・・・

鮎原拓郎

彼らは生命身体
加害略取と

鮎原拓郎

公務執行妨害の罪で

鮎原拓郎

懲役５年の実刑判決を受け

鮎原拓郎

今は静岡刑務所
沼津拘置支所に服役中だ

眞琴杏樹

生命・・身体？

眞琴杏樹

公務執行妨害は
何となくわかりますけど

眞琴杏樹

その生命身体なんたら
ってどんな罪なんですか？

鮎原拓郎

生命身体加害略取

鮎原拓郎

危害を加える事を目的に
人を略取、つまり誘拐する罪だ

鮎原拓郎

眞琴さんは彼らに
連れ去られて
しまった訳だからね

眞琴杏樹

そういう事か・・・

葛城絵里香

・・・・・

鮎原拓郎

しかし５年という年月は
頭で考えているよりも
ずっと短い・・・

鮎原拓郎

あっという間に
彼らは刑期を終えて
刑務所から出所する

眞琴杏樹

・・・・・

鮎原拓郎

出所した彼らが
一番最初にする事は
何かわかるか？

眞琴杏樹

ま、まさか・・・

葛城絵里香

私を・・狙う？

鮎原拓郎

おそらくそうだろうな

眞琴杏樹

そんな・・・

鮎原拓郎

まぁ、君がした事は
強姦の教唆な訳だから

鮎原拓郎

そうなる未来は
致し方ないと思う

葛城絵里香

・・・・・

鮎原拓郎

それが因果応報
というものだ・・・

葛城絵里香

そう・・ですよね・・

眞琴杏樹

そんなぁ・・・

眞琴杏樹

社長さん！何とか
ならないんですか？

鮎原拓郎

そうならない為に
透が今面会に
行っているんだよ

眞琴杏樹

え？

眞琴杏樹

ま、まさか・・・

葛城絵里香

あの人たちに
私を狙わせないように

鮎原拓郎

ああ・・・

眞琴杏樹

鮎原さんが・・・

葛城絵里香

なんで・・・

葛城絵里香

なんで鮎原さんは・・・

鮎原拓郎

自分にも責任の一端が
あると思っての
事だろうな・・・

葛城絵里香

だって鮎原さんは・・

葛城絵里香

私に騙されただけで・・

葛城絵里香

利用されただけなのに・・

葛城絵里香

むしろ被害者なのに・・

葛城絵里香

なんでそんな事・・・

鮎原拓郎

だからと言って
君がやったことが
許される訳じゃない

眞琴杏樹

社長さん・・・

鮎原拓郎

我々を騙し

鮎原拓郎

眞琴さんまでも
危険な目に遭わせた

葛城絵里香

は、はい・・・

鮎原拓郎

君がすべき事はひとつ

鮎原拓郎

自らが犯した
罪を背負って

鮎原拓郎

生きる事だ

葛城絵里香

！！！！！！

鮎原拓郎

先ほどのように
自らの命を
粗末にする行為は

鮎原拓郎

許される事じゃない！

葛城絵里香

社長さん・・・

鮎原拓郎

まぁしばらくの間は

鮎原拓郎

ゆっくりしていなさい

鮎原拓郎

働き口が必要ならば
私が紹介したっていい

葛城絵里香

ぐすっ・・・

葛城絵里香

ありがとうございます

葛城絵里香

ありがとうございます

絵里香は涙を流しながら何度も拓郎に頭を下げる

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

鮎原拓郎

まぁ、当分の間は
ゆっくりしていなさい

葛城絵里香

ありがとうございます

絵里香が帰った後杏樹と拓郎は軽く言葉を交わす

眞琴杏樹

社長さん・・・

眞琴杏樹

ありがとうございます

鮎原拓郎

まぁ、あの一件は
葛城さんひとりを
責めたからと言って

鮎原拓郎

解決する話では
ないからね

眞琴杏樹

でもこれで
絵里香ちゃんも

眞琴杏樹

人生を新しく
スタートできる

眞琴杏樹

きっかけが
与えられた！
って事ですもんね

鮎原拓郎

我々の対応は決して
褒められた物ではない

鮎原拓郎

お金で解決しようなどという
汚いと大人のやり方だ

眞琴杏樹

社長さん・・・

鮎原拓郎

だが我々の行動が

鮎原拓郎

眞琴さんが言ったように
キッカケになってくれれば
それが一番だ

眞琴杏樹

なりますよ！

眞琴杏樹

今の絵里香ちゃんは

眞琴杏樹

もう1人で耐えて
苦しんでた頃の
絵里香ちゃんとは違う

眞琴杏樹

新しい絵里香ちゃんに
生まれ変わってます

眞琴杏樹

少なくとも
私はそう思います

鮎原拓郎

君はどことなく
彼に似ているね

眞琴杏樹

彼？

鮎原拓郎

揚羽凛太郎くんだ

眞琴杏樹

揚羽先輩？

鮎原拓郎

私もそんなに
話したことがないから
詳しくは分からないが

鮎原拓郎

どことなく
似ている気がする

眞琴杏樹

似てるか・・・

眞琴杏樹

そうかも
しれませんね♫

鮎原拓郎

おっと、すまない

鮎原拓郎

長話をしてしまったね

眞琴杏樹

いえ・・そんな

鮎原拓郎

私はそろそろ
帰らせてもらう

鮎原拓郎

まだやらなければいかん
仕事が残っているんでね

眞琴杏樹

なんかすいませんね

眞琴杏樹

もうすぐ年末年始
だっていうのに

眞琴杏樹

仕事を休むことに
なってしまって

鮎原拓郎

何をバカな事
言っているんだ！

鮎原拓郎

謝る必要なんかない！

鮎原拓郎

仕事は代わりなど
いくらでもいるが

鮎原拓郎

眞琴さんという人は
君しかいないんだ！

鮎原拓郎

今眞琴さんがすべき事は
しっかり休んで
自分を労ってやる事だ

鮎原拓郎

自分を第一に考えなさい

眞琴杏樹

社長さん・・・

眞琴杏樹

ありがとうございます

鮎原拓郎

じゃあ！私は行く！

鮎原拓郎

ゆっくり休みなさい

眞琴杏樹

はい

眞琴杏樹

今日はありがとう
ございました

拓郎が社長室へ戻るとそこにはすでに透の姿があった

鮎原拓郎

なんだ！透！
戻っていたのか

鮎原透

今さっき戻ったトコです

鮎原拓郎

そのまま直帰して
よかったんだぞ

鮎原透

いえ・・・

鮎原透

ちょっと大事な
話がありまして

鮎原拓郎

大事な話？

鮎原透

まずは、奴らの情報──

鮎原透

調べてもらって
ありがとうございました

鮎原拓郎

ああ、あれか

鮎原透

あれがなかったら
奴らに言いくるめ
られていたかもしれません

鮎原透

本当に助かりました

透は拓郎に深々と頭を下げた

鮎原拓郎

なんだ？仰々しいな

鮎原拓郎

いつもはそんなに
礼儀正しくないだろ？

鮎原透

ま、まぁ・・・

鮎原透

最期くらいは・・・

鮎原拓郎

最期？

鮎原拓郎

どういう意味だ？

鮎原透

俺は──

鮎原透

この街から
出ようと思います

鮎原拓郎

なに？

鮎原透

俺は杏樹ちゃんや
葛城の近くに居ちゃ
いけないんです

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原透

居たら、また彼女たちに
危険が及ぶかもしれません

鮎原透

俺という存在は
近くに居ない方がいいんです

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原透

ですから──

鮎原透

どこか遠い街にでも──

鮎原拓郎

その事を眞琴さんは
知っているのか？

鮎原透

いえ・・話してません

鮎原拓郎

何も言わずに
行くつもりなのか？

鮎原透

そのつもりです・・・

鮎原拓郎

その理由はなんだ？

鮎原拓郎

責任を感じてか？

鮎原拓郎

それとも、ただ
逃げたいだけか？

鮎原透

・・・・・

鮎原拓郎

それっぽい
理由を並べているが

鮎原拓郎

私にはただ単に
現実から目を背ける為に

鮎原拓郎

逃げているように
しか見えんな

鮎原透

逃げている・・・

鮎原透

そうかもしれません・・・

鮎原拓郎

この街を出るという事は

鮎原拓郎

高校も退学するという事か？

鮎原透

は・・はい・・・

鮎原拓郎

となると──

鮎原拓郎

勘当を取り消す！
という約束は果たせないが

鮎原拓郎

それでも構わないんだな？

鮎原透

はい・・・・

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原透

自分勝手で
申し訳ありません

鮎原拓郎

貸した示談金はどうする？

鮎原拓郎

400万なんて大金を
どうやって返すんだ？

鮎原透

コツコツ働いて
必ず返します・・・

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原拓郎

そうか・・・

鮎原拓郎

お前には失望した

鮎原透

・・・・・

鮎原拓郎

和久井くんや姫川さん

鮎原拓郎

揚羽くんや日向さん

鮎原拓郎

それから眞琴さんと出会って

鮎原拓郎

お前も少しは
変わったんだと
期待していたんだがな

鮎原拓郎

私の買い被り
だったようだな・・・

鮎原透

ご期待に添えず
申し訳ありません

鮎原拓郎

そうと決まれば
お前は赤の他人だ

鮎原拓郎

さっさと私の前から
消えてくれ・・・

鮎原透

はい・・・・

鮎原透

失礼します・・・

鮎原透

杏樹ちゃんや葛城を
よろしくお願いします

社長室を去る透の背中は心なしか小さく見えた

鮎原拓郎

（バカ息子が・・・）

鮎原拓郎

（何がよろしくだ・・）

鮎原拓郎

（嫌な役を
やらせるもんだ！）

あれから数週間が経過し杏樹も無事に退院し高校への登校を再開させていた

眞琴杏樹

あれ？おかしいな？

虹山愛莉

どうかした？

虹山愛莉

元気ないね？

眞琴杏樹

いや、鮎原さんに
連絡がつかなくって

眞琴杏樹

しかも番号変わってる
っぽいんだよね・・

眞琴杏樹

携帯繋がらないの

虹山愛莉

え？なにそれ！

虹山愛莉

番号変わった事は
知らされてない訳？

眞琴杏樹

うん・・・

眞琴杏樹

何も聞いてない・・・

眞琴杏樹

おかしいな・・・

眞琴杏樹

何も言わずに
こんな事するような
人じゃないのに・・

虹山愛莉

じゃあ社長さんに
直接聞いてみたら？

虹山愛莉

もうそれが一番早くね？

眞琴杏樹

あっ、確かにそうだね

眞琴杏樹

（後で聞いてみよ）

葛城絵里香

杏樹！！！

眞琴杏樹

どうしたの？
絵里香ちゃん

眞琴杏樹

随分と慌ててる
みたいだけど

葛城絵里香

杏樹はもう
鮎原さんの話聞いた？

眞琴杏樹

鮎原さん？

虹山愛莉

鮎原さんがどうかしたの？

葛城絵里香

鮎原さんが──

葛城絵里香

学校辞めたって！

眞琴杏樹

え！？

眞琴杏樹

社長さんっ！！

眞琴杏樹

どういう
事なんですか！？

鮎原拓郎

・・・・・

葛城絵里香

学校もやめて──

葛城絵里香

職場もやめて──

葛城絵里香

しかもこの長野から
何も言わずに
いなくなるなんて

眞琴杏樹

社長さんな何も
聞いてなかったんですか？

鮎原拓郎

・・・・・

鮎原拓郎

透は・・君たちから
離れる事を選んだんだ

眞琴杏樹

え！？

鮎原拓郎

自分の存在は君たち
悪影響だからと・・・

葛城絵里香

そんな・・・

葛城絵里香

私・・まだ何の
お礼も償いも
できてないのに

眞琴杏樹

社長さんは今
鮎原さんがどこに居るか
知らないんですか？

鮎原拓郎

ああ・・知らない・・・

鮎原拓郎

どこか遠い街に
行くとしか
聞かされていない

眞琴杏樹

そ・・そんな・・・

葛城絵里香

・・・・・

鮎原拓郎

すまない・・・

拓郎は頭を下げる

眞琴杏樹

勝手ですよ・・・

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

眞琴杏樹

みんな・・・
自分勝手ですよ！！

杏樹は涙を流しながら声を荒げる

鮎原拓郎

・・・・・

眞琴杏樹

自分で何もかも背負って

眞琴杏樹

全部自分のせいにして・・・

眞琴杏樹

私って鮎原さんにとって
重荷だったんだ・・・

葛城絵里香

杏樹・・・

鮎原拓郎

違う！そうじゃない！

眞琴杏樹

そうじゃないですか！

眞琴杏樹

私だって鮎原さんの
助けになれます！

眞琴杏樹

子供じゃないんです！

鮎原拓郎

・・・・・

眞琴杏樹

守られてばっかじゃ
だめなんです・・・

眞琴杏樹

3年前に先輩や
奏星さんたちに迷惑
かけた時だって・・

眞琴杏樹

今回だってそう！

眞琴杏樹

もう守られてばっかじゃ・・

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

鮎原拓郎

・・・・・

拓郎に諭され、とりあえず帰路に着く杏樹て絵里香

眞琴杏樹

・・・・・

葛城絵里香

杏樹・・・

眞琴杏樹

鮎原さんと伊豆に言った時

眞琴杏樹

やっと好きだって伝えれたの

眞琴杏樹

やっと・・・

眞琴杏樹

これから鮎原さんと
いろんなとこ行きたかったし

眞琴杏樹

今まで見た事ない景色を
鮎原さんと一緒に見たかった

眞琴杏樹

それなのに・・・

眞琴杏樹

ひどいよ・・こんなの・・

葛城絵里香

でも杏樹・・・

葛城絵里香

これで杏樹の
目的ができたね

眞琴杏樹

え？

葛城絵里香

いつかどこかで
鮎原さんに再会したらさ

葛城絵里香

思いっきり
殴ってやりな！

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

まぁ、私は
鮎原さんのおかげで
今があるからさ

葛城絵里香

私が殴るのは
筋違いだけど

葛城絵里香

杏樹はもう
思いっきり殴りな！

眞琴杏樹

そうだ！そうだよね！

眞琴杏樹

絶対に許さないんだから！

眞琴杏樹

何も言わずに行くなんて
何考えてんだー！って
殴ってやんなきゃ！

葛城絵里香

やっと元気になったね！

眞琴杏樹

え？

葛城絵里香

ずっと元気なかったから

葛城絵里香

このままだとまじで
自殺でもするんじゃ
ないかってくらいに

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

大丈夫だよ！また
会えるよきっと！

眞琴杏樹

うん・・そうだよね・・

眞琴杏樹

絶対に再会したら
許さないんだから！

葛城絵里香

ふふふ

３年後

とある地方都市の小さな居酒屋

そこには店長として慌ただしく動きまわる透の姿があった

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