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眞琴杏樹

揚羽凛太郎と──

眞琴杏樹

和久井龍也って名前に──

眞琴杏樹

聞き覚えない?

絵里香の足が止まる

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

聞き覚えあるよね?

眞琴杏樹

同じ霞北中
だったんだよね?

葛城絵里香

何で・・杏樹が
その名前を・・・

眞琴杏樹

私ね・・・

眞琴杏樹

中学2年の時に──

眞琴杏樹

揚羽凛太郎さんを
ストーキングしてた
事があったの・・

葛城絵里香

杏樹が?揚羽くんを?

絵里香が目を見開いて振り返る

眞琴杏樹

う、うん・・・

葛城絵里香

なんで杏樹が揚羽くんを?

葛城絵里香

もしかして杏樹も
霞北中だったの?

眞琴杏樹

ううん・・違う

眞琴杏樹

私は薊ヶ丘中に通ってた

葛城絵里香

薊ヶ丘?薊ヶ丘って
確か女子校の・・

眞琴杏樹

うん・・・

眞琴杏樹

私ね、その通学途中の
電車で痴漢に遭ったの・・

葛城絵里香

痴漢・・・

眞琴杏樹

怖くて怖くて・・・

眞琴杏樹

私はただ、震える事しか
できなかった・・・

眞琴杏樹

それから助けて
くれたのが──

眞琴杏樹

揚羽先輩だった・・・

葛城絵里香

揚羽くんが・・・

眞琴杏樹

それから先輩の提案で
毎日朝は同じ電車で
通学してたんだ

葛城絵里香

そうだったの・・・

眞琴杏樹

気がついたら私──

眞琴杏樹

先輩の事が
好きになってた

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

けど、先輩は私の事──

眞琴杏樹

可愛い後輩とか妹みたいに
しか思ってなかったの

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

そして、もう同じ電車で
通学しないって先輩が
言ってるのを偶然聞いて

眞琴杏樹

私、辛かった・・・

眞琴杏樹

私はこんなに好きなのに

眞琴杏樹

先輩は違うんだって

眞琴杏樹

そう思ったら辛かった

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

私、当時はお母さんとも
うまく行ってなくて

眞琴杏樹

学校にも仲のいい
友達もいなかったから

眞琴杏樹

そんな私にとって、先輩と
一緒に登校してる時だけが

眞琴杏樹

自分じゃ無い誰かの肌を
感じれる唯一の時間だった

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

私、また・・・
一人ぼっちになっちゃう

眞琴杏樹

また、孤独な生活に
逆戻りしちゃう

眞琴杏樹

そう思ったら・・・

眞琴杏樹

辛くて・・・

葛城絵里香

ストーキング
しちゃった!って訳ね

眞琴杏樹

うん・・・

眞琴杏樹

それから、和久井さんや
先輩のお母さんにまで
迷惑かけちゃって・・

眞琴杏樹

警察に通報しない代わりに

眞琴杏樹

今後先輩に近づかない!
って約束で

眞琴杏樹

私は先輩と過ごした
霞町から引っ越したんだ

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

けど、やっぱり
諦めきれなかった

眞琴杏樹

先輩が居ない生活なんて
耐えれなかった

眞琴杏樹

今後死ぬまで先輩に
会えないんだって思ったら
耐えれなくて・・・

眞琴杏樹

約束を破って
先輩に会いに行っちゃったの

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

それからまた先輩の彼女や
学校の先生にまで迷惑
かけちゃって・・・

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

一応、みんなには
もう許してもらったんだけど

眞琴杏樹

心の奥じゃ・・・

眞琴杏樹

自分を完璧に許しきれてないの

葛城絵里香

そんな事が・・・

眞琴杏樹

絵里香ちゃんの過去を
蒸し返すみたいで悪いけど

眞琴杏樹

揚羽先輩に絵里香ちゃんの
写真を見せたの・・・

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

そしらた先輩・・・

眞琴杏樹

楓咲で間違いないって

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

先輩・・・

眞琴杏樹

すごく心配してた・・・

葛城絵里香

揚羽くんが・・・

葛城絵里香

私の事・・・

眞琴杏樹

スキースクールで
途中で帰っちゃったのだって

眞琴杏樹

あれはバイト
だったんじゃなくて

眞琴杏樹

インストラクターが
和久井さんだった
からなんだよね?

葛城絵里香

・・・・・

眞琴杏樹

下手したら和久井さんに
絵里香ちゃんが楓咲だって
バレちゃうから

葛城絵里香

(そこまで気づいたのね)

眞琴杏樹

それに絵里香ちゃん!

杏樹は絵里香の手を 両手で優しく包み込む

眞琴杏樹

伊豆で私を襲った
男の人たちが複数だった
って知ってるって事は

眞琴杏樹

あの人たちに私を
襲うように依頼したのは

眞琴杏樹

絵里香ちゃんなんだよね?

葛城絵里香

それは・・・

眞琴杏樹

私・・・

眞琴杏樹

恨んでなんか無いよ?

葛城絵里香

え・・・

杏樹からの思いがけない 言葉に驚く絵里香

葛城絵里香

何を・・言って・・・

眞琴杏樹

辛かったよね・・・

眞琴杏樹

そりゃ辛いはずだよ

眞琴杏樹

自殺未遂をするくらいだから

眞琴杏樹

私には想像もできない程に
辛くて悲しかったはず!

葛城絵里香

(杏樹・・・)

眞琴杏樹

先輩に会えなくて
辛いなんて言ってる
私なんかよりも、ずっと

眞琴杏樹

ずっと!ずっと!辛かったよね?

眞琴杏樹

ぐすっ・・・

葛城絵里香

(なんで・・・)

葛城絵里香

(アンタが泣くのよ・・)

葛城絵里香

(何でアンタが
私なんかのために)

葛城絵里香

(泣いてくれんのよ・・)

眞琴杏樹

だから!絵里香ちゃん?

眞琴杏樹

私も一緒に
行ってあげるから

眞琴杏樹

鮎原さんと話し合おう?ね?

葛城絵里香

(杏樹・・・)

眞琴杏樹

鮎原さんも変わったから

眞琴杏樹

話し合えるよ!ね?

葛城絵里香

(変わった?)

葛城絵里香

(変わったってなに?)

葛城絵里香

(なんで変わってんだよ)

葛城絵里香

(何で自分だけ
変わってんだよ)

葛城絵里香

(ふざけんなよ・・・)

葛城絵里香

(私は・・・)

葛城絵里香

(私は・・・)

眞琴杏樹

だから一緒に──

絵里香は杏樹を突き飛ばす

眞琴杏樹

きゃあ!

杏樹はその場で 尻餅をつく

葛城絵里香

うるせぇよ・・・

眞琴杏樹

絵里香ちゃん?

葛城絵里香

鮎原が変わった?

葛城絵里香

変わったって何よ!

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

何勝手に
変わってんだよ!

葛城絵里香

私の時はあの日から
止まったままなのに

葛城絵里香

何でアイツだけ
前に進んでんだよ!

葛城絵里香

変わんじゃねーよ!

眞琴杏樹

違う!絵里香ちゃん

眞琴杏樹

私はそういう意味で──

葛城絵里香

アンタもアンタよ!杏樹!

眞琴杏樹

え?

葛城絵里香

たかだか男に
会えなかったくらいで

葛城絵里香

辛いなんて言って
甘えてるアンタを私を

葛城絵里香

同列に語んじゃねーよ!

眞琴杏樹

絵里香ちゃん・・・

葛城絵里香

知ったような口
きくんじゃねーよ!

葛城絵里香

それに何?
恨んでなんかない?

葛城絵里香

何今更、詭弁垂れてんのよ!

葛城絵里香

正直に恨んでるって
言いなさいよ!

眞琴杏樹

私は恨んでなんか・・・

葛城絵里香

(恨んでるって言ってよ)

葛城絵里香

いい?私がアイツらに
アンタを襲わせたのは

葛城絵里香

弱い杏樹から攻めれば

葛城絵里香

鮎原に精神的苦痛を
与えれる!

葛城絵里香

そう思ったからだよ!

眞琴杏樹

違う!絵里香ちゃんは
そんな事しない!

葛城絵里香

うるせぇよ!したんだよ!

葛城絵里香

人の上辺だけ見て
人を判断すんなよ!

眞琴杏樹

分かる!

眞琴杏樹

絵里香ちゃんは
そんな人じゃない!

葛城絵里香

(杏樹・・・)

葛城絵里香

(なんでそんなにも
私の味方してくれんの?)

葛城絵里香

うるせぇよ!

絵里香は教室から飛び出す

眞琴杏樹

待って!絵里香ちゃん!

眞琴杏樹

待って!話を聞いて!

杏樹は絵梨香の背中にしがみつく

葛城絵里香

ついて来んなよ!

葛城絵里香

邪魔なんだよ!

眞琴杏樹

私は絵梨香ちゃんに
感謝してるんだよ?

眞琴杏樹

絵梨香ちゃんは私に初めて
出来た友達だから!

眞琴杏樹

そんな大切な友達に
危ない事させない!

葛城絵里香

いつまで昔話してんだよ

眞琴杏樹

いつまででも言う!

葛城絵里香

わかった!教えてやるよ!

葛城絵里香

私がアンタに近づいたのは

葛城絵里香

アンタが鮎原と
仲良くしてたから

葛城絵里香

アンタの側に居れば
いつか鮎原の寝首をかける!

葛城絵里香

そう思ったからよ!

葛城絵里香

ただ利用されてただけなのに

葛城絵里香

いつまでも!いつまでも!

葛城絵里香

いい加減うざいんだよ

眞琴杏樹

違う!

葛城絵里香

違わねーよ

葛城絵里香

私が言ってんだから
これが真実なんだよ!

眞琴杏樹

だったら原付の免許は?

眞琴杏樹

一緒に勉強して
くれたじゃん!

葛城絵里香

あれはアンタを
事故に見せかけて
殺すためだよ!

葛城絵里香

原付に乗ってた方が
誤魔化しやすいからよ!

眞琴杏樹

嘘ばっかり!

眞琴杏樹

水着だって一緒に
買いにいってくれだじゃん!

葛城絵里香

あれは愛莉に言われて
仕方なく行っただけよ!

眞琴杏樹

嘘言ったって分かるよ!

葛城絵里香

(もう・・諦めてよ)

葛城絵里香

(やめてよ・・杏樹)

葛城絵里香

(決心が鈍るから・・)

葛城絵里香

どけ!

絵里香は背中を 壁に打ち付ける

眞琴杏樹

うぐ・・・

同時に杏樹も 壁と絵里香の背中に挟まれる

葛城絵里香

消えろ!!

眞琴杏樹

待って!

葛城絵里香

(もう・・やめて・・)

葛城絵里香

(お願いだから・・)

葛城絵里香

(私の味方をしないで)

眞琴杏樹

絶対に諦めないから!

眞琴杏樹

足がちぎれても・・

眞琴杏樹

腕がちぎれても・・

眞琴杏樹

絶対に諦めないから!

葛城絵里香

うるせぇよ!

葛城絵里香

そんな熱血
流行んねーんだよ!

葛城絵里香

いい加減に消えろよ!

眞琴杏樹

いやだ!

杏樹と絵里香が揉み合う

葛城絵里香

いい加減に──

葛城絵里香

諦めろよ!

葛城絵里香

このっ!!

絵里香が杏樹の制止を 力一杯振り解く

その時

眞琴杏樹

(あっ・・・)

杏樹が足を滑らせる

葛城絵里香

あ、杏──

杏樹は足を滑らせ 階段から転げ落ちる

眞琴杏樹

・・・・・

杏樹の後頭部からは 真っ赤な血が溢れ出る

葛城絵里香

杏樹・・・

葛城絵里香

いやぁぁぁぁぁぁ

絵里香は杏樹に駆け寄り 大声で呼びかける

葛城絵里香

杏樹!杏樹!

葛城絵里香

しっかりして!

葛城絵里香

お願い!
目を開けて!杏樹!

眞琴杏樹

・・・・・

しかし杏樹は 打ちどころが悪かったのか 意識を失っており

絵里香がいくら 呼びかけようとも 応じる事はなかった

葛城絵里香

嫌だ・・・

葛城絵里香

なんで・・なんで・・

葛城絵里香

杏樹!しっかりしてよ!

男性教諭

どうかしたのか?

騒ぎを聞きつけた教師が 駆け寄って来る

葛城絵里香

杏樹が・・杏樹が・・

眞琴杏樹

・・・・・

血を流して倒れる 杏樹を目の当たりにした教師は 目の色を変えて小走りで近づいて来る

男性教諭

何があったんだ!

葛城絵里香

杏樹が・・足を滑らせて

葛城絵里香

私が・・私が・・

男性教諭

こりゃいかん・・・

男性教諭

すぐに救急車の手配だ!

葛城絵里香

(杏樹・・・)

程なくして教師の通報により 学校の校門前に 1台の救急車がやってきた

隊員は慣れた手つきで 杏樹を担架に乗せる

葛城絵里香

杏樹!しっかりして!

葛城絵里香

杏樹!

救急隊員

危ないですので
近づかないように

葛城絵里香

は・・はい・・・

男性教諭

では!よろしくお願いします

救急隊員

はい!

隊員は救急車に乗り込み 病院へ向かう

葛城絵里香

杏樹・・・

男性教諭

私はすぐに病院に向かう

男性教諭

悪いが葛城さん

男性教諭

代わりにご家族へ
連絡してもらえるか?

葛城絵里香

は・・はい・・・

葛城絵里香

わ・わかりました・・

絵里香は教室に戻ると 杏樹のバッグからスマホを取り出し

杏樹の母、杏里に電話をかける

眞琴杏里

もしもし?

葛城絵里香

もしもし?

葛城絵里香

おばさんですか?

眞琴杏里

ん?どちら様?

眞琴杏里

これ杏樹のスマホ
ですよね?

葛城絵里香

私──

葛城絵里香

杏樹と同じ高校に
通ってる葛城って言います

眞琴杏里

葛城・・葛城

眞琴杏里

ああ!絵里香ちゃん?

葛城絵里香

お、お久しぶりです

眞琴杏里

どうしたの?

眞琴杏里

それに杏樹のスマホから──

葛城絵里香

実は杏樹が学校の階段から

葛城絵里香

足を滑らせて──

眞琴杏里

え!?杏樹が!?

葛城絵里香

すいません・・すいません

葛城絵里香

私が悪いんです

葛城絵里香

全部・・全部

葛城絵里香

私のせいなんです!

葛城絵里香

ごめんなさい・・・

眞琴杏里

落ち着いて!絵里香ちゃん

眞琴杏里

それで杏樹は?
無事なの?

葛城絵里香

今、救急車で運ばれて

眞琴杏里

分かった!今すぐいく!

葛城絵里香

お、お願いします・・・

葛城絵里香

杏樹・・・

絵里香は流れる涙を 裾でぬぐい

教室から飛び出して 病院へ向かう

鮎原透

ん?なんだ?

鮎原透

騒がしいな・・・

虹山愛莉

鮎原さん!!

愛莉が大声で 透の名前を叫びながら 走って近づいて来る

鮎原透

ああ!虹山さんか!

鮎原透

どうかした?

虹山愛莉

もう杏樹の話聞きました?

鮎原透

杏樹ちゃん?

鮎原透

杏樹ちゃんが
どうかしたの?

虹山愛莉

まだ聞いてなかったんですね

虹山愛莉

実は杏樹が・・・

虹山愛莉

階段から足を滑らせて
頭打ったって・・・

鮎原透

え!?

虹山愛莉

それで救急車で
運ばれたって!

鮎原透

それで?杏樹ちゃんは?

鮎原透

無事なのか?

虹山愛莉

まだ分かりません・・・

虹山愛莉

私もさっき知った
ばっかりなんで

鮎原透

まじかよ・・・

虹山愛莉

私・・すぐ病院に向かいます

虹山愛莉

鮎原さんも──

鮎原透

なら俺の車で行こう!

虹山愛莉

は、はい・・・

虹山愛莉

お願いします・・・

透と愛莉は車に乗り込み 杏樹が搬送された病院へ向かう

病院

透と絵里香が駆けつけた時には

手術中のランプはが点灯した 手術室の前で

杏樹の手術成功を祈る 待合室に杏里、絵里香、教師 3名の姿があった

鮎原透

杏樹ちゃんは!?

眞琴杏里

鮎原さん・・・

眞琴杏里

それに愛莉ちゃんまで

虹山愛莉

お久しぶりです!
おばさん!

軽く会釈をする

鮎原透

杏樹ちゃんは!?

鮎原透

どうなんですか?

眞琴杏里

手術は行った箇所を
縫うだけの簡単な
ものらしいんですが

鮎原透

何か問題が?

眞琴杏里

どうも打ちどころが
悪かったみたいで

眞琴杏里

手術が成功しても──

眞琴杏里

目を覚まさないかもしれないと

杏里は顔を両手で覆う

虹山愛莉

そんな・・・

鮎原透

・・・・・

透は隅で震えている 絵里香に近づく

葛城絵里香

・・・・・

鮎原透

葛城絵里香・・

鮎原透

確か杏樹ちゃんは
お前と一緒に居る時に

鮎原透

階段から足を
滑らせたんだったな?

葛城絵里香

は・・はい・・・

鮎原透

話がある・・・

鮎原透

屋上に来てくれ・・・

葛城絵里香

・・・・・

鮎原透

この場じゃ
話しづらいだろ・・・

葛城絵里香

・・・・・

葛城絵里香

わ・・分かりました

虹山愛莉

ん?何処か行くんですか?

鮎原透

ああ、ちょっとな

鮎原透

外の空気吸って来るだけだ

葛城絵里香

・・・・・

虹山愛莉

絵里香!

虹山愛莉

杏樹は大丈夫だから!

虹山愛莉

お医者さんを
信じよう!ね?

葛城絵里香

・・・・・

絵里香はうつむいたまま 言葉を交わさない

虹山愛莉

絵里香・・・

絵里香は愛莉に応えないまま 透と2人で歩いていく

眞琴杏里

杏樹・・・

杏里は長椅子に腰を下ろし その場でうつむく

虹山愛莉

おばさん・・・

眞琴杏里

愛莉ちゃん・・・

眞琴杏里

来てくれてありがとうね

眞琴杏里

でも、もう大丈夫よ

眞琴杏里

ここには私が居るから

眞琴杏里

あなたは学校に──

虹山愛莉

私もここで待ちます!

眞琴杏里

でも──

虹山愛莉

杏樹は友達ですから!

虹山愛莉

友達が頑張ってるのに
私だけ帰るわけには
いきませんから!

眞琴杏里

ありがとうね・・・

病院の屋上では 透と絵里香が向かい合う

鮎原透

・・・・・

葛城絵里香

・・・・・

鮎原透

葛城・・絵里香

鮎原透

いや──

鮎原透

楓咲絵里香・・・

葛城絵里香

!!!!!!

葛城絵里香

やっと気づいたの?

葛城絵里香

本当に呆れるわ・・・

葛城絵里香

本当に気づかないんだもん

鮎原透

俺が聞きたいことは
ひとつだけだ

葛城絵里香

・・・・・

鮎原透

お前・・・

鮎原透

杏樹ちゃんに何も
してねーよな?

葛城絵里香

・・・・・

鮎原透

お前は俺を恨んでる

鮎原透

それは分かる・・・

鮎原透

けど・・・

鮎原透

もしそれが理由で
杏樹ちゃんに手を
出したんだとしたら

鮎原透

俺は許さねー・・・

葛城絵里香

杏樹が悪いのよ・・・

鮎原透

なに?

葛城絵里香

杏樹が私の目的に
気づくから・・

鮎原透

どういう意味だ?

鮎原透

もしかして杏樹ちゃんが

鮎原透

お前が楓咲絵里香だって
気づいてたってのか?

葛城絵里香

誤算だった・・・

鮎原透

(なんで杏樹ちゃんが?)

鮎原透

(もしかして・・・)

鮎原透

(あのスキーの日に
和久井から聞いたのか?)

葛城絵里香

だから・・・
揉み合ってるうちに

鮎原透

杏樹ちゃんが
足を滑らせた!
って事か・・・

葛城絵里香

私・・私・・

葛城絵里香

どんでもない事
しちゃった

絵里香は涙を流しながら その場にうずくまる

鮎原透

・・・・・

葛城絵里香

杏樹・・・

葛城絵里香

私の事を友達だって
そう・・言ってくれたのに

葛城絵里香

救いたいって・・・

葛城絵里香

言ってくれたのに・・・

葛城絵里香

私のせいで杏樹が・・・

鮎原透

・・・・・

葛城絵里香

これも全部・・全部

葛城絵里香

アンタのせいだよ!

葛城絵里香

鮎原透!!

鮎原透

・・・・・

葛城絵里香

私・・・

葛城絵里香

私・・・

鮎原透

・・・・・

鮎原透

全部聞いたよ・・・

葛城絵里香

え?

鮎原透

お前の妊娠は
俺のせいじゃなかったって

葛城絵里香

何言ってんだよ!

葛城絵里香

全部アンタのせいだよ!

鮎原透

この前親父のとこに
お前の母親が来た

葛城絵里香

え!?お母さんが?

葛城絵里香

なんで?なんで
お母さんが・・・

鮎原透

示談金を返しに来たそうだ

葛城絵里香

・・・・・

鮎原透

嘘をつき続けて
その金を使うのが
申し訳なかったらしい

葛城絵里香

何よ・・それ・・・

葛城絵里香

私のことなんて・・

葛城絵里香

見向きもしなかったくせに

葛城絵里香

今さら・・何、偽善者
ぶってんのよ!アイツ・・

鮎原透

そして・・・

鮎原透

あの妊娠が俺じゃなく

鮎原透

お前の──

葛城絵里香

うるせぇ!!

葛城絵里香

それ以上
喋んじゃねーよ!

鮎原透

・・・・・

葛城絵里香

ああ!そうだよ!

葛城絵里香

確かにあの妊娠は
アンタのせいじゃないよ!

葛城絵里香

けどもう・・・

葛城絵里香

私には恨める相手が
アンタしかいない・・・

鮎原透

そうだよな・・・

鮎原透

あん時の俺が
お前を突き放さずに

鮎原透

もっと真摯に向き合って
話しを聞いてやってたら

鮎原透

こんなことには・・・

葛城絵里香

うるせーよ!

葛城絵里香

もう過去には戻れないんだ!

絵里香はナイフを 透に突きつける

葛城絵里香

殺してやる!

葛城絵里香

お前なんて殺してやる!

葛城絵里香

はぁ・・はぁ・・

鮎原透

・・・・・

葛城絵里香

もうこうするしかないの!

葛城絵里香

アンタを殺して私も死ぬ

鮎原透

・・・・・

葛城絵里香

元々あの日に
死ぬはずだったんだから

葛城絵里香

命なんて惜しくない!

鮎原透

・・・・・

葛城黒江

やめて!絵里香!

葛城絵里香

おかあ・・さん

葛城絵里香

何にしに来てんだよ!

葛城絵里香

今更・・・

葛城絵里香

今更何なのよ!

葛城黒江

ごめんなさい・・・

葛城黒江

私があの時・・・

葛城絵里香

うるせぇ!

葛城絵里香

今頃になって
何言ってんだよ!

葛城絵里香

あの時・・・

葛城絵里香

アンタが味方してくれてりゃ

葛城絵里香

こんな事には
ならなかったんだよ!

鮎原透

この人は・・ ・

鮎原拓郎

葛城絵里香さんの
お母さんだ・・

鮎原透

母親・・・

鮎原拓郎

お前から眞琴さんの
件で電話をもらってから

鮎原拓郎

もしやと思って
お連れしたんだ

鮎原透

・・・・・

葛城黒江

絵里香!

葛城黒江

もう、皆さんには
真実を話したわ!

葛城黒江

だからもう、自分1人で

葛城絵里香

何勝手なことしてんだよ!

葛城絵里香

まさか、自分1人で
抱え込むな!とでも
言うつもりかよ!

葛城絵里香

ふざけんな!ババア!

葛城黒江

絵里香・・・

葛城絵里香

こうなったのも
全部・・全部全部

葛城絵里香

てめーらのせいだろ!

葛城絵里香

それを今更・・・

葛城絵里香

遅いんだよ!

葛城絵里香

手遅れなんだよ!

数日前

葛城黒江

お願いします!

葛城黒江

お願いします!

葛城黒江

どうか・・どうか・・・

葛城黒江

娘を・・・

鮎原拓郎

分かりましたから!

鮎原拓郎

頭を上げてください!

葛城黒江

う・・うぅ・・・

鮎原拓郎

とりあえず話を
お聞かせください

葛城黒江

は、はい・・・

葛城黒江

あれは今から
6年前の話になります

鮎原拓郎

6年前・・・

鮎原拓郎

ちょうど透が
15歳の時ですね

葛城黒江

えぇ・・・

葛城黒江

その日私は、予定していた
仕事が早めに終わったので

葛城黒江

家族に告げた時間よりも
早めに帰宅したんです

葛城黒江

そしたら・・・

鮎原拓郎

どうかされたんですか?

葛城黒江

偶然にも
主人と娘が・・・

葛城黒江

性行為をしている
現場に出くわしました

鮎原拓郎

娘さんと?

葛城黒江

は、はい・・・

葛城黒江

いわゆる近親相姦
というヤツです・・・

鮎原拓郎

・・・・・

葛城黒江

私は2人を
問いただしました

葛城黒江

家族でありながら
交わることなど
あってはならないと!

楓咲黒江

アナタは一体
何を考えてるの?

楓咲黒江

自分が何をしたか
分かってるの?

楓咲乙彦

・・・・・

楓咲黒江

よりにもよって
娘とするなんて・・

楓咲乙彦

それは・・・

楓咲黒江

信じられない!

楓咲絵里香

違うのお母さん!

楓咲黒江

アンタは黙ってなさい!

楓咲絵里香

私がしたいって
言ったの!

楓咲絵里香

だから悪いのは私!

楓咲絵里香

お父さんは悪くないの!

楓咲黒江

どっちが先かなんて
関係ないの!

楓咲黒江

いい?絵里香!

楓咲黒江

どんな理由があっても
父親と娘が体の関係に
なるなんて事は

楓咲黒江

あっちゃならないの!

楓咲絵里香

・・・・・

楓咲黒江

アナタも何か
言ったらどうなの?

楓咲乙彦

・・・・・

楓咲黒江

しかも今日だって

楓咲黒江

私の帰りが遅いって
知ってたうえで
絵里香としてたんでしょ?

楓咲黒江

確信犯よね?

楓咲乙彦

す・・すまない

楓咲黒江

謝って済む
問題じゃないわ!

楓咲絵里香

お母さん・・・

楓咲黒江

もう、アナタ達を
家族とは思えないわ

楓咲黒江

離婚しましょう・・・

楓咲乙彦

・・・・・

楓咲乙彦

わ・・わかった

楓咲黒江

当然、絵里香の親権は
アナタが持ってね?

楓咲黒江

別れた旦那と
体の関係になった
娘を育てるなんて

楓咲黒江

私は御免被るわ!

楓咲絵里香

・・・・・

楓咲黒江

とりあえず今日のところは
ここまでにしましょう

楓咲黒江

後のことは──

次の瞬間

楓咲絵里香

うぅ・・・

絵里香は手で口元を押さえ 洗面所に走り出す

楓咲黒江

絵里香?

楓咲乙彦

まさか・・・

楓咲黒江

ひとつ聞くけどアナタ

楓咲黒江

避妊はしたのよね?

楓咲乙彦

・・・・・

楓咲黒江

まさか!!!

黒江は血相を変えて 絵里香の後を追う

楓咲絵里香

おえっ・・・

楓咲絵里香

ゴホッ・・ゴホッ・・

絵里香は洗面台に嘔吐する

それは明らかに つわりの症状だった

楓咲絵里香

はぁ・・はぁ・・

楓咲黒江

まさか・・・

楓咲黒江

アンタ・・・

楓咲黒江

妊娠してるの?

楓咲絵里香

・・・・・

楓咲黒江

なんとか言いなさい!

楓咲絵里香

・・・・・

絵里香は黙って首を縦に振った

お節介アゲハと弱虫ヒナタ〜アルメリア〜

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