凛子
あの、で、デリヘル嬢の凛子と申します!
凛子
こ、この度はご指名ありがとうございます
浩二
デリヘル……?
凛子
あ、まさか呼んだのって別の人!?
浩二
呼んだのは俺ですけど、まあいいや
浩二
入ってください
凛子
は、はい
浩二
俺は浩二です
凛子
え?
浩二
だから、名前が
凛子
あっ、はい
凛子
浩二さんですね!
凛子
よろしくお願いします
浩二さんはニコリとも笑わず、暗い家の中へと入っていってしまった
凛子
あの、お邪魔します
浩二
二階にきて
浩二
俺の部屋があるから
凛子
わかりました
凛子
(あぁ、自分は今から)
凛子
(するんだよなぁ)
浩二
お姉さん?
凛子
はい?
浩二
ドアの前で突っ立ってないで入ってきてよ
凛子
あの、でもこういうのってシャワーとか……
浩二
シャワー?
浩二
いらないでしょ
凛子
でも臭いが
浩二
汗でもかいてきたの?
凛子
じゃなくて、これからかくというかなんというか
浩二
ほら入って
凛子
(もうなるようになれ!)
凛子
じゃあ、何からすればいいですか?
浩二
ゲーム
凛子
へ?
自分の視界が真っ暗になるのがわかった
凛子
ゲームって、それだけ?
浩二
うん
凛子
他にやって欲しいことは?
浩二
ない
凛子
そんな
自分にはデリヘル嬢としても能力がない、と言われている気がした
凛子
……うぅ
浩二
うわっ!
浩二
なんで泣いてるんですか
凛子
そんなに私は、何もできないの?
浩二
いきなり泣かないでくださいよ
凛子
君のバカ!
凛子
浩二くんの意気地なし!
浩二
な、なんですか急に
凛子
私だって、私だってやりたくてこんな仕事やってるわけじゃないのよ!
凛子
就職した会社が3社も倒産して
凛子
世の中はいい歳した女なんか雇ってくれないのよ
浩二
カーペットが濡れちゃう
浩二
お姉さんやめてって
浩二
仕事しにきたんじゃないの?
凛子
しにきたわよ!
凛子
なのにゲームって
凛子
ご両親とやっていればいいじゃない
浩二
いないんです
凛子
へ?
浩二くんはそれ以上、何も言わなかった
黙々とテレビゲームを起動させる
凛子
……そのゲーム知ってる
浩二
亡くなった父とよくやってました
凛子
じゃあ、この家は君だけで住んでいるの?
浩二
母と二人暮しです
浩二
お姉さん
浩二
ティッシュそこにありますよ
凛子
あ、ありがとう
浩二
化粧が崩れてお化けみたい
凛子
え、嘘
浩二
洗面台は一階です
浩二
ご自由にどうぞ
凛子
あ、ありがとう
凛子
それじゃお言葉に甘えて借りるね
私は暗い階段を下りて洗面台の前に立った
凛子
歯ブラシが三本ある
凛子
髭剃りも二つだ
凛子
……お父さんの、そのままにしてあるのかなぁ
凛子
……
凛子
はぁ
凛子
何事も真面目にやらないとね
私は化粧を簡単に直すと、浩二くんの元へ戻った
浩二
なんか明るくなった?
凛子
今日はお姉さんが一緒にゲームをしてあげます
浩二
何その上から目線、変なの
凛子
おっ、笑ってくれた?
浩二
そ、そんなことない
浩二
お姉さんのまつ毛がゲジゲジみたいになってる
凛子
え、本当!?
凛子
……ってか私付けまつ毛してない!
凛子
嘘ついたの?
浩二
お返しだよ
凛子
んもう
浩二
ゲーム、準備できたよ
凛子
そっか
凛子
それじゃあ、手加減はなしでやろう
凛子
お姉さん強いんだから