テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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おとぎ。

第42話 - 迷い子のはなし。 3

2024年10月28日

#青春恋愛

#ホラー

#一次創作

#ミステリー

#感動

#切ない

R e g e n *☂︎*̣

イヴィ

う……

まず、見えたのは天井だった。

昨夜、ディアベルに連れられたところから記憶が無い。

イヴィ

…気でも失ってたのか

そうですよー

手当させてもらいましたが

逆によく気絶で済みましたね

その女性は他の騎士、兵士とは服装が違い、

首には紫色のスカーフが巻かれていた。

イヴィ

救護隊か？

救護隊

はい！

救護隊

まぁ安静にしといてくださいねー

イヴィ

…しょうがないか……

イヴィ

（機能回復訓練からだな、まずは）

朝の点呼が終わり、騎士や兵士がそれぞれの仕事に就き始める中。

ロック達、ウォルフはファーブラの元に集まっていた。

ファーブラ

────と、言うわけで

ファーブラ

イヴィは3週間くらい機能回復に努める予定だよ

ロック

3週間で回復しきるのか！？

ファーブラ

彼はよく努力しているのを見ているから、大丈夫だと思うよ

リエル

団長、それで話とは？

ファーブラ

あぁ、そうだね

ファーブラ

私が話したいのは、昨夜君達を襲撃した謎の組織についてだよ

ロック

！！

ロック

あの強かった人達か！

ディアベル

へへ、でもどうやら

ディアベル

お前さんがいい具合にコテンパンにしてったらしいなァ

ロック

いや、あれはリエルのサポートもあったし…

ロック

それにイヴィのとこにも行かなきゃと思ってなー

リエル

どちらにせよ、助かりました

リエル

ウォルフで近接戦闘を得意とする者は少なかったので

ディアベル

まァ仕事減って嬉しいわ

ロック

（それ押しつけって言わないか？？）

ファーブラ

仲が良くてなによりだよ

ファーブラ

話を戻してもいいかい？

リエル

はい、お願いします

ファーブラ

うん、それで、今回君達を襲撃した組織が分かったんだ

ディアベル

どこだィ？

ファーブラ

……

ファーブラ

｢魔術結社｣だ

ロック

！！

リエル

通りで、魔術に長けていると……

ディアベル

そりゃ辛いわけだ

リエル

あなたは戦ってすらいないでしょう

ロック

……魔術結社…

ロック

俺、あんま詳しくは分かってないんだけど……

ファーブラ

昨日、魔術は特別な階級か、

ファーブラ

専門的な知識を持った者しか扱えないと言ったね

ロック

（なんか、そんなこと言ってたような……？？）

ファーブラ

つまり、許可証が必要になるわけだけど

ファーブラ

そもそも許可をもらうにも、試験を受ける必要がある

ファーブラ

ちゃんと規定もあるんだよ

ファーブラ

…だけど、それらを全て無視した者が集まったのが魔術結社だ

ファーブラ

そこは魔術の無法地帯

ファーブラ

関わればまず、普通に生きられない

ファーブラ

それを不幸とするかはまた別の話だけどね

ロック

な、なるほど……

リエル

それで、襲撃者が魔術結社の人間だったんですよね

リエル

偶然はありえないと考えた方がいいのでしょうか

ファーブラ

そうだね

ファーブラ

何か狙いがあったはずだ

ファーブラ

最も有力なのは、魔術を扱えるリエルを引き入れようとしたか…

ロック

え！引き入れなんてするのか！？

ディアベル

ま、優秀な人材だもんなァ

リエル

……

ロック

（もしかして、照れてる？）

リエル

……わ、私の魔術は

リエル

あまり実用的ではないので、その可能性は低いかと

ファーブラ

……ふむ

ファーブラ

とにかく、イヴィが復帰するまでは

ファーブラ

一旦、皆には任務を出さないことにしたよ

ロック

奇襲とかされたら危ないもんなー

ファーブラ

そう、だから沢山特訓しようか

ロック

ほんとか！！

ディアベル

おー、直々かァ？

ファーブラ

うん、そのつもりだよ

ロック

へへっ、楽しみになってきたぜ！

そんな風に盛り上がっていたからだろうか。

─────話は聞かせてもらった！！！

威勢のいい声がする。

ドロシー

ねぇ、私達も混ぜてよ

ロック

あ……

ロック

昨日会ったよな？

ロック

えーと

ドロシー

ロック

そう！ドロシーだ！

ディル

ちょっと、もしかして僕もやるの？

ドロシー

あたりまえでしょ

ドロシー

私達は部隊隊長になってやるんだ！

ドロシー

やでしょ？あんな隊長達

ディル

ま、まぁ……

リエル

…どうします？

ファーブラ

うん、いいよ

ロック

いいのか！？

ファーブラ

だけどね、ドロシー

ファーブラ

あまり大きな声でそういうことを言ったらダメだよ

ファーブラ

…分かったかい？

ロック

！

ドロシー

あ─────

ファーブラは、笑顔を崩さない。

ただ、その笑みの裏に、物凄く黒いものが見えたような気がしたのだ。

ドロシー

わ、分かったよ…

先程まで威勢の良かったドロシーも急に大人しくなってしまった。

ドロシー

おら、行くよディル

ディル

え、僕なんのためにここ来たの？

ディルを半ば引きずるようにしてその場を去っていった。

ファーブラ

あ、

ファーブラ

明日の朝、稽古場前集合だから

ファーブラ

よろしくね〜

慌てたようにファーブラが付け加える。

リエル

何か、急に大人しくなりましたね

リエル

ディアベル、睨んでないでしょうね？

ディアベル

いや、俺は暖かい目で見守ってたつもりなんだが

ロック

（な、何か……）

ロック

（ファーブラさんのあの声、何か…）

ロック

あー！！よく分かんねー！！

リエル

あなたも急にどうしたんですか？

ファーブラ

さ、時間を取らせてしまって悪かったね

ファーブラ

話はこれで終わりだよ

ファーブラ

それじゃあ、また明日の朝ね

そうにこやかに笑って去っていった。

もう、先程のような黒さは感じない。

リエル

さて、私達も持ち場に戻りましょう

ディアベル

えー

ロック

さっき物資運搬で2番隊呼ばれてたぞ！

ディアベル

仕方ねーなァ

ディアベル

いっちょ仕事奪ってきますわ

ロック

頑張れー！

リエル

いや、ただ報酬を多く貰いたいだけでしょう

リエル

他人に迷惑はかけないように

リエル

……聞いてないですね、あれ

ロック

はえーー！

ロック

な、ディアベルってリエルくらい速いんじゃねぇか！？

リエル

そうですね

リエル

ですが、速度なら私の方が勝っているらしいですよ

ロック

流石だなあ

リエル

……昨夜の戦い、見させてもらいましたが

リエル

あなたも、充分速かったと思いますよ

ロック

ほ、本当か！？

ロック

ありがとう！

リエル

……まぁ、私には到底及ばないですが

ロック

だよなー、あんな速いの初めて見たぜ！

ロック

今度コツとかあったら教えてくれよ！

リエル

……今のは冗談ですが

リエル

少しは嫌悪という感情を覚えた方がいいですよ

ロック

？？

リエル

……

ロック

？？？？

リエル

……私、目はほとんど見えないですが

リエル

何だか物凄く眩しいです

ロック

おー？

リエル

はぁ

リエル

では、私は行きますね

リエル

あなたはイヴィの所にでも行くといいでしょう

ロック

おう、そうするぜ！

ロック

じゃーなー！

バンッ

勢いよく、救護室のドアが開けられる。

ロック

失礼しまーす！

ロック

お、いたいた

ロック

イヴィ、大丈夫そうか？

イヴィ

まぁ、1週間は安静にしてろって言われたが

ロック

そっか！良かったな！

イヴィ

……死ぬのに比べたらそうだろうな

イヴィ

あと、他にも休んでるヤツいるから静かにしてくれないか？

ロック

あっ、そうだったかー

ロック

申し訳ないな…！

イヴィ

（小声がでけぇってどういうことだよ）

ロック

そうだ、イヴィが昨日回復訓練をやってる間

ロック

ファーブラさんから特訓をつけてもらうことになったぜ

イヴィ

は？

イヴィ

マジで？

ロック

おう、マジだ

イヴィ

クソ…タイミング悪ぃな…

ロック

だよなー

ロック

ま、イヴィも頑張るんだぜ！

イヴィ

あぁ

イヴィ

もし予定より早く終わったら、そっちに合流する

ロック

りょーかい

ロック

あ、あとこれ見舞いだ！

イヴィ

？

イヴィ

あぁ、タッセルトか

イヴィ

買いに行く暇なんであったか？

ロック

作ってきたぜ！

イヴィ

！？？？

イヴィ

おまっ……ちょっ

イヴィ

も、もっと、こう、なんか

イヴィ

いい、過ごし方あっただろ…！？

イヴィ

暇の……！

ロック

何か、わやわやしてるぞイヴィ

イヴィ

うっせぇな

イヴィ

さっさと持ち場つけ！

ロック

はいはい

依然として笑顔を崩さないまま、部屋を出ていく。

イヴィ

……！

イヴィ

（やべぇ、ペースに乗せられて大声出しちまった）

イヴィ

はぁ……

どうして騎士団に入ったの？

リエル

…｢どうして｣ですか

リエル

そうですね…

リエル

私はソンブラという、深海の国の王族のもとに生まれました

リエル

次期国を治めていく者として、父からは厳しく教育をされてきたんです

リエル

まぁ、そんな生活が嫌になったから、とでも言いましょうか

リエル

旅行で来たこの国が、まるで別世界のように感じられたのです

リエル

そこで、興味を持ったのが騎士団でした

リエル

目的は変わりませんが、

リエル

初めて、自分で興味を持ちました

リエル

そこからは、もうひたすらに反抗しまくりまして……

リエル

｢騎士団に入り5年ほど経ったら、ソンブラに戻る｣約束で、入団させてもらいました

リエル

あ、今何年目か、ですか？

リエル

そうですね、もう、3年半経ってしまいましたね

リエル

結果ウォルフにまでなってしまったので

リエル

どうなるかは分かりませんがね…

おとぎ。

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