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「…………圭ちゃんの後ろに、常に元カノさんの影が付きまとっていると思うと、私は、圭ちゃんと一緒にいてはいけないって……。だから私は、黙ったまま、静岡に来たんだ」
「……そうだったのか。こういう事態を引き起こしたのは……何度も言うが、全て俺の責任だ。申し訳ない……」
ひれ伏すような行為をする圭に、彼女は手を伸ばして制止した。
「圭ちゃんは悪くないよ。圭ちゃんから逃げた私が…………悪いんだよ。だから…………もう私に頭を下げないで……」
美花は、力が抜けたように、フニャリと表情を崩した。
「こっちに来てからも……圭ちゃんの事をずっと想ってた。忘れた事なんて…………なかったよ……」
彼の眼差しに包まれながら、美花は想いを綴っていく。
「圭ちゃんに黙ったまま、こっちに行く事、後悔しないって思ってたけど…………転勤の事や元カノさんの事、ちゃんと伝えれば良かったのかなって思ったり……。静岡に来ても、私の中には圭ちゃんの優しい笑顔が、いつも浮かんできて……私、やっぱり圭ちゃんが好きなん──」
「っ!」
彼の節くれだった手が伸び、気付くと美花は、圭の胸の中に閉じ込めれていた。
「美花っ……」
彼の体温が美花の細い身体を包み込み、美花はその暖かさに、泣きたくなるような安堵感を抱く。
圭の胸の奥から聞こえる、命を刻み込む音は、どことなく忙しない。
「美花に会えなかった、この三ヶ月間…………すごく……苦しかった。美花の手紙を読んで……君の文字を見ただけで……会いたくて会いたくて……仕方がなかった……」
彼の声音は掠れて…………今にも消え入りそうで。
圭に『体調が悪い』と嘘をつき、顔を合わせるのを避けていた事に、美花は申し訳なく思う。
「俺は、この先も、美花と同じ風景を見て…………同じ時間を一緒に過ごしていきたい。こんな気持ちになるのを教えてくれたのは……美花。君なんだ」
圭の言葉に、美花はゆっくりと、端正な顔立ちを見上げる。
「美花。もう一度俺に…………チャンスを与えて欲しい」
彼が抱きしめた腕を緩め、彼女の両肩に手を添えるけど、筋張った手が震えているように感じた。
「圭ちゃん。私にも…………もう一回チャンスを………下さい」
「……当然だろ?」
圭の答えに、美花は瞳に弧を描かせながら、小さく顔を綻ばせた。
コメント
1件
うわあ、やっと二人の気持ちが通じ合えたんですね……。美花が「圭ちゃんの後ろに元カノさんの影が」って告白したところ、胸がぎゅっとなりました。ずっと一人で抱え込んでたんだなあ。圭の「同じ風景を見て同じ時間を」っていう台詞、すごく誠実で好きです。お互いにもう一度チャンスを求める姿に、じんわり来ました。この先、ゆっくりと歩み寄っていく二人を見守りたいです。
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