「けどさ、鉄鉱石が欲しいならそう言えばかなり融通する事は出来るのに、俺に何を仕込んでくれるつもりなんだい?」
実際のところ何を仕込まれた所で採掘量がそう変わりはしないだろうしな。何をやらされるんだろう……。
「まあ、そん通りだわな。だからバラしちまうが、あれは嘘だ」
バルゾイおじさんの告白に椅子から転げ落ちてしまった。嘘って。あの空気でそんな嘘を言って連れてこられた俺ってなんなん?
俺が椅子から落ちた音を聞いたからか、ダリルにいちゃんが奥から出てくる。
「もともと、俺たちは巻き込まれたわけでもない。最初から助けるために動いていた。正直金をとろうとか考えてもなくてな……。とはいえ、それなりのものでも貰わないと納得はしてくれなさそうだったからな。特にお前たち親子はな」
「話合わせるこっちの身にもなれってんだ」
唐突なネタバラし。
「俺が連れてこられたわけはわかったよぉ。じゃあそもそもなんで見ず知らずの俺なんかを助けてくれたんだ?」
突然宿を訪ねてきた赤の他人。もう何が本当で何が嘘のことなのか俺にはわかんねぇっ。
「俺たちが動いた理由と言うならジョイスが来たからとしか言えんな」
「巨人にいちゃんかっ!」
そういや、ずっと身体張ってくれていたのは巨人にいちゃんだった。ちょっと気持ち悪いとか思ってごめんよ。
「まあ、あいつは助けられて満足だったらしく、早々に帰ってしまったがな。だから子どもよ、お前は別に何することもない。ただ済まないがお前の父親たちが安心できるようにしばらくはこの街にいて、戻らないでいてくれないか」
泊まるところは手配してある、と近くの宿をダリルにいちゃんの名前で借りてくれてお金の心配は要らないとだけいわれて、さらに生活費といってまとまった金を渡された。それについても足りなければ渡すとまで言われて、自由を与えられた。
売られてここにきた俺はこうして自由なニートになったらしい。
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