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朝だ。街ってのは朝から人が沢山いる。
窓の外からは良い香りもしている。街が起き始めて1日がスタートする。
俺は持ってきた服に着替えて、食堂に降りると気のいいおばちゃんが目玉焼きとトースト、ホットミルクを持ってきてくれた。
「おはようございます」
「ええ、おはよう。よく眠れたかしら? 朝ごはん足りなかったら言ってね」
ここは夫婦でやってるそうで、おばちゃんはとても優しそうだ。旦那さんはまだ見てない。裏方専門だとか。
爽やかな朝なのに気分はモヤモヤしたまま。それもそのはずで、俺は何をしたらいいのかわからないし、そのうえ村には帰るなって。
とりあえずぶらつくことにした。この街にはたまに遊びにも来たけど、外から見ても中からでも相当に広い。
行ったことある場所なんて宿と市場くらいなものだ。それはメインストリートだけで終わってしまう。とりあえず街の北側にあるこの宿から時計回りにでも見ていこう。
街の中は、どこがどうって分かれてる訳でもないらしい。住んでる住人がたまに同じ仕事の人達で固まってるとかくらいだとか。
花屋さんがある。パン屋さんもある。肉屋も魚屋も八百屋も。メインストリートほど大きくはないけど、民家に混じってそういう店がちらほらあるからどこに住んでも、快適なんだろう。
鍛冶屋さんもある。
ダリルにいちゃんのところと違ってここは包丁や鋏をメインに売っているみたいだ。
眺めていると鉄を叩く音がする。ダリルにいちゃんのとこでもしていた音だ。きっと鍛治の仕事中なんだ。
火の粉が舞っている。
街の中を川が流れているのは驚いた。メインストリートには見かけなかったやつだ。中心の方に流れる先は地面の下に入っていくみたいで見えなくなっている。
水の中には魚までいる。川なのにここで洗濯はしないそうだ。不思議に思って聞くと、そういうのは全部家の中でするらしい。流した水はここじゃなくて別の水道を流れていくのだとか。
広場がある。たくさんの親子がここで遊んでいる。
これはブランコっていうらしい。教えてもらって漕いでみるとみるみるうちに高く上がって、一回転してしまって怖くなってやめた。
昼からもそんな感じで散策して、寝て起きてを繰り返す毎日。街の外へは子ども1人で出られないらしい。
時計回りの散策も、西にまでやってきた。
広い敷地に大きめの建物。女の人とたくさんの歳もバラバラな子どもたちが、仕事してたり遊んでたりするところにきた。
「あら? 見かけない子ねー。この辺の子?」
子どもたちの中でもお姉さんというくらいの子に声をかけられた。
「違うよ。俺は山から来たドワーフのトマス。暇だから散歩してたんだ」
「そうなのね。私はレイナよ。山の人ならここは珍しい?」
聞かれて見渡して
「そうだね。こんなにたくさん子どもを産む人はドワーフにはいないなっ」
目を丸くしてクスクス笑うレイナ。
「私たちはきょうだいじゃないのよ。みんな親がいなくてここで一緒に暮らしてるの」
ああ、そういうことなのか。じゃあもしかしたら俺もここにいたかも知れないのかな?
いや、かあちゃんは元気だし、そうはならないか。
「暇なら遊んでいく? 下の子たちも喜ぶだろうし」