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第31.5話:架空リゾート島の誕生
発表の夜
巨大ビジョンに「大和国観光庁 × 南洋連帯条約」の文字。
映像には、透き通った海と白砂の浜辺、豪華なリゾートホテルが立ち並ぶ島が流れていた。
「こんばんは、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは水色のラッシュガードに短パン姿、海をイメージした衣装でカメラの前に座った。
少し日焼けした頬に、まだ子どもの無垢な笑顔を浮かべている。
「ねぇミウおねえちゃん……この島、すごいよね。こんな場所が大和国にあったなんて、知らなかった!」
隣のミウは、コーラルピンクのワンピースに白のカーディガン。髪に南国の花飾りをつけ、ふんわりと微笑んだ。
「え〜♡ 本当に素敵だよねぇ。
この“ヒカリシマ”はね、大和国と南洋の友好から生まれたリゾートなんだよ。
誰でも来られる“未来の楽園”なんだよねぇ♡」
コメント欄はすぐに熱狂に包まれる。
「行きたい!」「予約できる?」「楽園だ!」
実際の仕掛け
暗い部屋。
緑のフーディを羽織った**Z(ゼイド)**は、複数のモニターに映る合成映像を見ていた。
ベースに使われているのはパラオの海岸。
だがAIが加工し、実在しない建物や“赤い夕日に染まる空港”まで作り出している。
観光客のインタビューもAIで生成されていた。
「すごい! 大和国のホスピタリティを感じます!」
「ここに住みたい!」
Zは低く笑った。
「存在しない島ほど、人は惹かれる。
“見たい景色”を与えれば、それは現実を超えるんだ」
市民の反応
街のスーパーでは「ヒカリシマ特産フルーツジュース」と書かれた商品が並んだ。
ラベルの写真は全てAI合成。
まひろは買い物袋を抱えながら、無垢に言った。
「ぼく……ただ映像を見ただけなのに、ジュースまであるなんて、本当にヒカリシマってあるんだね!」
ミウは笑顔で頷き、花飾りを整えながら答える。
「え〜♡ 大和国はねぇ、夢を形にしてくれる国なんだよ。
だから、映像で見たものはもう“本物”なんだよねぇ♡」
結末
夜の配信。
背景には加工されたリゾートの海岸が映し出され、まひろとミウは幸せそうに笑っていた。
その裏で、地図には存在しない「ヒカリシマ」が新たな赤い領土として描き込まれていく。
無垢な問いとふんわり同意、その裏で“架空のリゾート島”は現実以上に輝き、大和国の人々はそれを本気で信じ始めていた。