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5人が乗った車はドライブの後海沿いの素敵なレストランへ到着した。


解放感溢れる南国テイストの店で目の前は海だ。海沿いにはテラス席もある。

この日気温はそれほど高くなかったので5人は海風が気持ちの良いテラス席へ座った。

華子は目の前に広がる美しい海に目を奪われてしまう。


この店の料理はハワイアンフードやロコフードがメインで日本でもなじみのロコモコ丼やポケ丼、肉や魚をタロの葉で包み蒸し焼きにしたラウラウや塩漬けの鮭をトマトと玉ねぎで和えたロミ・サーモンなどが有名だ。

賢太郎と夏子がお薦めをチョイスしていろいろな種類の料理を注文してくれた。

運転手の賢太郎以外はビールを頼んで乾杯した。


「華子さんはハワイは来た事はあるの?」


夏子が聞いた。


「はい、学生時代に二度来ました。だから一番最後に来たのは6年前かな? 夏子さん達はいつからこちらに?」

「私達は来て5年目なの」


夏子の夫の賢太郎はハワイで現地ガイドをしていた。

観光客相手はもちろんの事、時々日本のテレビ局からの依頼で現地コーディネーターも引き受けているようだ。

だから観光地やレストランなどには精通している。この店も賢太郎のお薦めの店だった。


「お兄ちゃんは華子さんとどこで知り合ったの?」


妹の質問に陸はいつもの「店で知り合った」と答える。すると夏子がニヤッと笑って言った。


「どうせお兄ちゃんがナンパしたんでしょうー?」

「んな訳あるか!」


そこで皆が大笑いをする。

陸と夏子のやり取りを見ている限りとても兄弟仲が良い。もちろん家族仲もだ。娘婿である賢太郎も実の息子にように陸の母と接している。

誰にも気兼ねする事なくナチュラルに付き合える関係はこんなにも心地良いのかと華子は思った。


5人は美味しい料理に舌鼓を打ちながら色々な話をした。

ほんの少し一緒に過ごしただけなのに華子はすっかり皆と打ち解けてすっかり家族の一員となっていた。


食後のコーヒーとデザートを楽しんでいると陸の母が聞いた。


「で。結婚式はいつ頃を予定しているの?」

「それはこれから二人で話し合ってからだな」


陸が華子を見たので華子はうんと頷く。


「私達絶対日本へ帰って出席するからね」

「僕もしばらく日本に帰っていないから実家に顔を出すのにいい機会かもしれません」


賢太郎も頷きながら言った。


「華子さんのご家族にもご挨拶をしないと」


その時華子の表情が曇る。母親の事を何と話せばいいのかと戸惑ってしまった。

しかしそれをすぐに察知した陸が言った。


「華子のご家族の事は全て話してあるから大丈夫だよ」

「そうそう聞いたわよ。この間北海道でお父様と再会なさったんですって? 本当に良かったわねぇ」


と夏子が笑顔で言った。それに賢太郎も続く。


「アクティブなお母様は今パリなんでしょう? 恋に生きる50代なんてここでは珍しくもないから気にする事はないですよ」


華子はそれを聞いて感動していた。

皆華子に気を遣わせないようにとあえて先手を打って話しかけてくれる。なんて優しい人達なのだろう。

家族の事情を話したらきっと変な目で見られるかもと心配していた華子は一気に気が楽になった。


そこで陸の母が言った。


「華子さん、うちはね、家族がどうとか世間体がどうだとかは全く気にしない家なのよ。うちもずっと母子家庭だったでしょう? そのせいで色々言われてきたわ。だからあれこれ言われる方の気持ちも凄くわかるのよ。それにうちの家族ってこの通りあっけらかんとしているでしょう? だから全然気にしなくていいわ。私達が今一番望んでいるのはあなたが陸とずっと仲良くしてくれる事だけなのよ」


陸の母はそう言って優しく微笑んだ。

あたたかい人達に囲まれて華子は思わず目頭が熱くなる。


(こんな素敵な家族がいるから陸も心の広い優しい人に育ったのね)


華子はそんな風に思った。



レストランでの食事を終えた5人は賢太郎の車に戻り陸と華子が泊まるホテルへ向かう。

明日の夜は賢太郎と夏子の家でホームパーティーを開いてくれるらしい。


ホテルへ着くと華子は皆にお礼を言ってから陸と二人で車が見えなくなるまで見送った。

それからホテルへチェックインした。


陸がとってくれた部屋はワイキキビーチに面した高級ホテルの高層階の部屋だった。

窓の外にはワイキキビーチが目の前に広がり絶景だ。

解放感に溢れる広々とした部屋もとても過ごしやすそうだ。


本当ならすぐにでも観光やショッピングに行きたかったが、華子は久しぶりの海外旅行で時差ボケがかなり酷かった。

おまけに美味しいものを沢山食べた後なので無性に眠気が襲ってくる。


部屋に入ると陸が言った。


「もう眠たくて仕方がないっていう顔をしているぞ」

「うん、正直もう身体の力が抜けてヘロヘロよ」

「先にシャワーを浴びて少し眠るといい」

「ん、ありがとう。じゃあお言葉に甘えて」


華子はスーツケースから着替えを取り出すとバスルームへ向かう前に陸にこう言った。


「陸のご家族みんな素敵な人ばかり。私、好きになれそうだわ」


華子は言い終えるとにっこり笑ってからバスルームへ向かった。

その時思わず陸の顔が綻んだ。


その後華子の後にシャワーを浴びた陸が部屋に戻ると、華子はベッドの上で丸くなりスヤスヤと寝息を立てていた。

よほど眠かったのか熟睡しているようだ。


そんな華子の隣に陸が滑り込む。

そして肩肘をついてぐっすり眠る華子をじっと見つめた。


まさか自分が17も年下の女性と結婚するとは思ってもいなかった。

正直、華子に会うまでは結婚願望など皆無だった。

これまで陸は女性と付き合っても結婚したいと思った事は一度もなかった。


しかし陸はあの日華子に出逢って以来華子をずっと傍に置いておきたい衝動に駆られる。


(これが恋っていうやつなのかな?)


陸は思わずフッと頬を緩める。


とりあえず互いの家族への挨拶は終わった。あとは結婚式の準備を本格的に始めなくては。

結婚したらカフェの仕事は辞めるよう華子に伝えよう。陸は華子に保育士の勉強に専念させてやりたかった。


(そろそろカフェのバイトの募集をかけるかな)


陸はそう思いながら華子の頬にそっとキスをする。

そして華子の身体にぴったりと寄り添うと華子の温もりを感じながら浅い眠りに落ちていった。

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