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飲み屋の店主が言ってた通り、外は細雪がハラハラと舞っている。
(ヤベェな……。下手したら積もるかもしんねぇ……)
純は足元に気を付けつつ、傘を差して恵菜が待つ吉祥寺駅の公園口へと急ぐ。
純の自宅マンションから駅まで、徒歩十分程度だが、雪が降る中を歩いているせいか、十五分も掛かってしまった。
公園口の周辺を、純は注意深く見回す。
(恵菜さん…………どこだ……?)
雪が降っている中でも、週末のせいか、人がそこそこ多い。
純が隈なく探していると、改札のすぐ横に、白いフード付きのショートコートと黒のスキニーパンツに身を包んだ恵菜が、俯きながら佇んでいた。
人目を避けるように立っている彼女に、彼はゆっくりと近付いていく。
「恵菜さん」
彼の穏やかな声音に、恵菜は顔を上げると、クールな奥二重の瞳が、若干腫れている。
(彼女…………泣いていた……のか?)
恵菜は慌てて顔を逸らし、純と目を合わせようとしない。
「恵菜さん。俺にメッセージを送ってきたって事は…………何か…………あったんだろ……?」
「…………」
彼女は純から顔を背けたまま、おぼつかない様子でコクリと頷いた。
純は、カフェに入ろうかとも考えたが、泣いたような表情の恵菜を、店に連れていくのは気が引ける。
「寒くて申し訳ないんだけど…………うちの近所に公園があるから行こうか。少し歩くけど、いいかな?」
「…………」
恵菜は、再び無言のまま頷く。
「じゃあ…………行こうか」
「…………はい」
掠れたような声音で答えた彼女は、コートのフードを被り、下を向いたまま、純の後に付いていく。
粉雪が舞い上がる中、純と恵菜は、彼の自宅マンション近隣の公園へ向かった。