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彼が案内した公園は、そこそこの広さで、小綺麗な雰囲気。
小さな噴水と、子ども向けの遊具、公園の隅には四阿がある。
雨宿り、ならぬ雪宿りをしようと、純と恵菜は、そこのベンチに腰を下ろした。
公園の街灯が仄かに二人を照らし、彼女は視線を下に落としながら、膝の上に握り拳を二つ乗せ、身体を小さく震わせている。
薄闇の中、朧気に浮かび上がる彼女の顔は青白く、このまま消え溶けてしまうのではないか、と純は感じずにはいられない。
「…………谷岡さん……私が今まで…………素っ気ない態度を取っていたのに…………急に呼び出して…………迷惑掛けてしまって…………本当に…………ごめんな……さ……い……」
「迷惑だなんて、全く思ってないよ」
純は恵菜を宥めるように柔和な声色で答えるが、彼女を改札で見つけてから、気になる事があった。
雪が降っているのに、彼女は傘を持っていない。
「恵菜さん…………ひょっとして…………家に帰ってないのか?」
彼は、俯いたままの恵菜の表情を覗き込んだ。
「はい……」
「ここのところ、恵菜さんの様子がおかしいな、とは思っていたけど……」
純は、目の前に映る仄明るい風景を見やりながら、ポツリと零す。
二人の間に静寂が訪れ、雪が降っているせいか、より一層しんとした雰囲気に包まれた。
「…………谷岡さん」
「どうした?」
「長くなってしまいますが…………話を……聞いてもらっても……いい……です………か……?」
震える声音で恵菜が純に顔を向けると、彼は、もちろん、と目を細めた。
「ドライブに連れていってくれた後…………あれは……谷岡さんが、スーツを着てた日……」
「……うん」
「あの日…………仕事を終え、ファクトリーパークの正門を出てすぐに…………かつての姑が…………待ち伏せしてたんです」
「…………え?」
純の爽やかな顔立ちが、怪訝な表情へと変化させていく。
「挨拶した後…………元義母に……『離婚してから、ずいぶん痩せたのね。結婚してた時、あんなに丸々と太っていたのに……』と……嫌味を言われて……」
「何だよ……それ…………!」
恵菜の言葉に、純の中に燻る怒気の火種が、静かに灯され始めた。
***