テラーノベル
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朝から現場は張り詰めていた。
目黒にとって、勝負の作品。
世間の期待も大きい。
その大事な日に——
🧡「……え?」
台本の最終稿、
差し替えデータが送られていない。
重要なシーンの変更が、現場に共有されていなかった。
監督の顔色が変わる。
スタッフが慌てて動く。
「向井さん、確認しましたよね?」
🧡「……昨日の時点では」
明らかに管理ミス。
そして連絡漏れ。
完全に、俺の責任────
静まり返る空気。
その中心で、目黒がゆっくり振り向く。
🖤「……向井、これはどういうこと」
🧡「すみません、俺が——」
🖤「すみませんで済むと思ってる?」
目が鋭い。
初めて、こんな目を向けられた。
🖤「今、どれだけ大事な時期か分かってるよね」
🧡「……分かってます」
🖤「分かってないからこうなるんだろ」
言葉が、突き刺さる。
周りのスタッフもいる中、
目黒は止まらない。
🖤「俺の仕事、軽く見てる?」
🧡「いえ、そんなことは!!」
思わず大きな声が出る。
でも目黒はすぐに目を逸らした。
🖤「……もういい」
それだけ言って、現場に戻る。
──────────────
撮影はなんとか進んだ。
でも空気は重いままだった。
控室の前で、制作スタッフに呼び止められる。
「向井さん」
「今、目黒さんはとても大事な時期なんです」
「キャリアの分岐点になるかもしれない」
「正直に言います」
「君みたいなのがマネージャーだと困る」
心臓が、どくんと鳴る。
何も言い返せない。
事実だから
「マネージャーの変更も考えています」
頭が真っ白になる。
でも不思議と、涙は出ない。
🧡(そりゃそうやんな)
俺、迷惑…かけてばっかやし。
🧡「……わかりました」
自分でも驚くほど、声は静かだった。
「目黒さんには追々伝えますので」
──────────────
夜──────────
目黒はまだ帰ってこない。
リビングの灯りが余計に寂しさを増す。
向井はソファに座りながら、思う。
ここで何度、抱きしめられただろう。
何度、「お前じゃなきゃ無理」って言われただろう。
胸が痛い。
でも 仕事は別。
俺が足引っ張るわけにはいかない。
スマホを開き、
マネージャー変更の承諾メールを見つめる。
指が震えてくる。
それでも、送信した。
画面に表示される 【送信完了】
静かな部屋で
俺は眠りにつく。
そっと涙を流しながら。
────────────
玄関のドアが開く。
🖤「ただいま」
🖤「寝てるのか…」
起こさないように優しく毛布をかける。
目黒はまだ気づいていない。
——つづく。
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