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EPISODE 2
向井が目黒の家に来てから2週間程たった。
🖤「ただいま〜」
🧡「めめおかえりぃ! 今日は唐揚げにしてん!」
🖤「まじ?やった、うまそ」
🧡「こらぁ!つまみ食いはアカンで!!」
向井は今の姿に少しずつ慣れてきたようで、現在は目黒がレンタルしてくれた車椅子に乗って生活をしている。
おかげで家の中であれば一人で移動ができるし、
料理や洗濯もできる。
そして迷っていた仕事だが、正式に退職し新たな仕事を探すことにした。
現在向井の家から持ってきたノートパソコンで就職活動中といったところだ。
🖤「ん!…うまい…!!」
🧡「せやろ?なんせ塩麹使って柔らかくしとるけんな!買い物は全部任せてもうてすまんな」
🖤「それくらいは全然するよ。というか車椅子になれるの早くない?すげぇ」
🧡「そりゃぁな。めめにいつまでも迷惑かける訳にはいかへんやん?」
向井は人魚になってからの2週間、早く目黒の力を借りずとも生きていけるようにと努力をしていた。
目黒は今をときめく国民的俳優だ。
多忙な仕事に加え自分の世話までしてもらうのはいくらなんでも申し訳ない。
ましてや想いを寄せる相手だ。
むしろここにいる間は少しでも生活を支えられたらとさえ思い家の事はできる限りの事をしていた。
🧡「早うこの姿でも一人で生活出来るようにならな。」
そう言った瞬間、夕食を食べていた目黒が箸を止め顔を上げた。
🖤「え…康二前の家戻るの?」
🧡「そりゃ…いつまでもおる訳にはいかんやろ?仕事決まったらすぐ出るけんさ、長居してごめんやで」
当たり前やん、という表情で言葉を返すと目黒の視線が若干泳いだ。
🧡「めめどしたん?」
🖤「いや…実はさ…
次住むところ探してたんだよね…2人で住めるとこ」
🧡「…え!? 2人って…俺とめめで…!?」
🖤「うん」
予想斜め上の返事に向井は言葉が出てこない。
🧡(それやと…ほ、ホンマの同棲になってまうやん!! ※付き合ってない)
向井は必死に言葉をさがして再び問いかける。
🧡「なんでわざわざそこまでしてくれるん…?」
🖤「だってココだと大変かと思って。部屋少ないし車椅子だとキッチン若干高そうだし」
🧡(俺ん事そんな心配してくれるなんて…)
目黒は昔から気遣いが出来る人間だ。
口よりも先に行動を起こすタイプで、サプライズのつもりもなく人を驚かすこともある。
目黒の気遣いは本当に心に響いた。
しかし…
🧡「めめ…そんな俺ん事は気ぃ使わんでええよ!
めめのお荷物にはなりとうないけんさ」
向井はそれ以上に、人に迷惑をかけるリスクを恐れた。
自分はこの姿を人前に出せない。
引越しとなると荷物の準備も手続きも人に任せてしまうことになる。
仕事も辞めて貯金を切り崩すしかない状態だ。
いつまでも甘える訳にはいかない。
向井が元いた一人暮らしの家に戻るだけならほぼ身一つで済む話だ。
🧡「めめ仕事も忙しいやろ? 俺なんかに時間使うん申し訳ないて!ありがとうな!」
🖤「いやでも…」
🧡「めめは心配症やな! 俺は大丈夫やって!」
本当は飛び上がるほどに嬉しいのだ。好きな人に引っ越して一緒に住もうと言われているようなものだから。
ただ、どこかで自分が目黒の負担になるかもしれないという恐怖が足枷となり、善意を上手く受け取れなかった。
🧡「ほんまに…優しいでな、めめは」
🖤「……そんなことないよ…笑」
向井は明るい表情と声で恐怖心を隠し、再び夕食に手をつける。
目黒も笑いながらも少し納得のいってない表情で夕食を食べ始めた。
夕食の後片付けをしていると、風呂から上がってきた目黒が向井に話しかけた。
🖤「康二さ、この後ちょっといい? 」
🧡「ん? 別に大丈夫やで?」
🖤「俺明日仕事が昼過ぎからだからさ、ちょっと出ない?」
🧡「でるって…どこに??」
🖤「…内緒」
🧡「えぇぇ!? ケチ!教えてぇな!」
🖤「ついてからのお楽しみってことで笑 行く?」
🧡「そんなん言われたら気になるやんけぇ…行く」
片付けを終わらせ、向井は脚の鱗と尾鰭を隠すためにブランケットを巻いて車椅子に座る。
目黒に車椅子を押され、されるがまま車に乗せられた。
<20分後>
都心から離れ、辺りもだいぶ静かになってきた。
この道、この景色。向井はよく覚えていた。
🧡「この道…前来んかったっけ」
🖤「そうそう、康二が見つけた穴場みたいなとこ」
近くの路肩に車を停め、車を降りるとそこには月明かりに照らされて光る広大な海が広がっていた。
🧡「うわ!懐かしいなー! 俺が大学ん時くらいやろ」
🖤「そう、あの時は康二が運転して連れてきてくれてた」
ここは都内でも人が滅多に来ない穴場の砂浜。
向井が大学時代にドライブしていた時に見つけ、夏休みに目黒を連れて遊びに来たことがある。
この砂浜で他の人と遭遇したことは一度もないくらいだ。
🧡「なんでまたこんな懐かしいとこ…」
🖤「康二、1回泳いでみたら?」
🧡「え!? ここで?」
🖤「うん」
🧡「おもろそう!…やる!!」
提案されて、向井は急にワクワクが止まらなくなり、尾鰭をパタパタさせる。
🖤「じゃあ俺連れてくから、捕まって」
そういって目黒は靴を脱ぎ、ズボンの裾を捲り上げる。向井は上着を脱ぎ準備万端で待つ。
目黒は向井を抱え海の中に入っていく。
ザバザバと波を分ける音が響く。
少し海に入ったところでゆっくりと向井を降ろす。
🖤「どう? 冷たくない?」
🧡「ぜんっぜん! うわ!すげぇ!!」
向井は1人深い所まで行き、勢いよく海に潜り込む。
そこに広がるのはまさしく海の世界。
目を開けても痛くない。視界もクリア。
息継ぎをしなくても首にできた鰓で呼吸できているのが分かる。
初めての感覚に高揚する。
自身でも分かってはいたが、この時ようやく体感した。
自分は本当に人魚なのだと。
一度水面にザパッと顔を出し浅瀬にいた目黒に向け叫ぶ。
🧡「俺! 人魚や!!」
目黒は満面の笑みで見てくる向井に思わずつられ笑いながら大声で返す。
🖤「ふははっ 楽しい?」
🧡「めっっちゃくちゃ楽しい!!」
🖤「そう、よかった」
向井は再び海へと潜り遊泳する。
そこにいる小さい魚に挨拶をしたり、サンゴ礁に腰掛けたりもする。
海面からは月光が差し込み、それに照らされる鱗がキラキラと光っていた。
しばらく泳ぎ再び海面に顔を出した時、目黒が砂浜から呼びかけてきた。
🖤「康二〜そろそろ帰るよ〜」
🧡「おん分かったぁ〜!」
浅瀬に向かって泳ぐと目黒が車から持ってきたバスタオルを広げながら近づいてくる。
🖤「楽しかった?」
🧡「バリ楽しい!!」
🖤「みたいだね笑」
バスタオルで水を拭き取り、来た時と同じように目黒に抱えられて車に戻っていく。
束の間の楽しみの余韻に浸りながら車に揺られる。
🧡「ありがとうな、ここの場所覚えとってくれて」
🖤「そりゃ何回も来てたしね。息抜きにでもなればなって」
🧡「やっぱモテ男のやることは違うな〜」
🖤「なにそれ笑 また来たらいいよ」
🧡「やったぁ〜」
そういってご機嫌な向井を横目に目黒は微笑む。
2人を乗せた車は静まり返った夜道をひっそりと走っていくのだった。
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#めめラウ